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平成28年度全日本選手権速報

2017/01/19
 大会第4日目の1月19日、今日は男女シングルス3〜4回戦が行われ、4回戦でスーパーシードの32名が登場する。

 男子シングルスでは、リオ五輪単銅メダル・団体銀メダルの水谷隼(beacon.LAB)をはじめ、水谷とともにリオ五輪団体銀メダリストとなった丹羽孝希(明治大)と吉村真晴(名古屋ダイハツ)、昨年12月の世界代表選考会で優勝した松平健太(ホリプロ)、男子でも屈指のパワーヒッター・大島祐哉(ファースト)などのトップ選手がコートを賑わせる。松平健は4回戦で岸川聖也(ファースト)と対戦する組み合わせで、実現すれば4回戦屈指の好カードとなるだろう。また、昨日のジュニア男子準々決勝でよもやの敗戦を喫した張本智和(JOCエリートアカデミー)も、男子シングルス3回戦に登場する。痛恨の敗戦から一夜、どこまで頭を切り換えられるか。

 女子シングルスも3連覇中の石川佳純(全農)を筆頭に、「黄金世代」と言われる伊藤美誠(スターツSC)、平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園)、早田ひな(希望が丘高)、加藤美優(吉祥寺卓球倶楽部)、浜本由惟(JOCエリートアカデミー/大原学園)、佐藤瞳(ミキハウス)と実力と個性を兼ね備えた若手がズラリ。長く大会の顔だった福原愛(ANA)の欠場は残念だが、役者は十二分に揃っている。森薗美月(サンリツ)、加藤杏華(十六銀行)ら実業団プレーヤーも意地を見せたい。

 そしてジュニア男女と混合ダブルスではチャンピオン&チャンピオンペアが決定する。各種目の準決勝の対戦カードは下記のとおりだ。果たして優勝杯は誰の手に?

●混合ダブルス準決勝
田添健汰/前田美優(専修大/日本生命) vs. 時吉佑一/藤井優子(ZEOS/愛媛銀行)
吉村真晴/石川佳純(名古屋ダイハツ/全農) vs. 横山輝/土田美佳(原田鋼業/中国電力)

●ジュニア男子準決勝
木造勇人(愛工大名電高) vs. 沼村斉弥(野田学園高)
高見真己(愛工大名電高) vs. 宮本春樹(愛工大名電高)

●ジュニア女子準決勝
笹尾明日香(横浜隼人高) vs. 加藤美優(吉祥寺卓球倶楽部)
長﨑美柚(JOCエリートアカデミー) vs. 早田ひな(希望が丘高)
  • 昨日の記者会見での吉村/石川

●混合ダブルス準々決勝
田添健汰/前田美優(専修大/日本生命) 6、ー6、4、6 田中佑汰/田中千秋(愛工大名電高/早稲田大)
時吉佑一/藤井優子(ZEOS/愛媛銀行) ー7、4、10、8 中林滉貴/宋恵佳(原田鋼業/中国電力)
吉村真晴/石川佳純(名古屋ダイハツ/全農) 7、8、4 岡田崚/古川聖奈(岡谷市役所/東京富士大)
横山輝/土田美佳(原田鋼業/中国電力) 7、8、ー8、11 及川瑞基/安藤みなみ(専修大)

混合ダブルスも準々決勝が終了。優勝経験のある田添/前田、吉村/石川ら実力派ペアが順当に勝ち上がる中、初めてのペアリングという時吉/藤井ペアがベスト4入り。中陣に下がっても粘り強い藤井の両ハンドドライブに、時吉の切り裂くようなバックドライブがマッチして、対戦相手にペースをつかませなかった。
  • 巧みな緩急を見せるペアリング、時吉/藤井

  • 快勝に笑顔を見せる吉村/石川

●ジュニア男子準々決勝
木造勇人(愛工大名電高・愛知) 3 (7,11,8) 0 五十嵐史弥(遊学館高・石川)
沼村斉弥(野田学園高・山口) 3 (8,6,3) 0 柏友貴(関西高・岡山)
髙見真己(愛工大名電高・愛知) 3 (-6,9,-7,7,9) 2 宇田幸矢(JOCエリートアカデミー・東京)
宮本春樹(愛工大名電高・愛知) 3 (-5,9,5,-8,9) 2 張本智和(JOCエリートアカデミー・東京)

ジュニア男子で最年少優勝を狙った張本が、準々決勝で宮本に苦杯……!
ゲームカウント1ー2のビハインドから2ー2に追いつき、最終ゲーム0ー3、2ー4とリードされながら逆転して8ー6とリード。しかし、ここで張本らしくないフォアドライブのミスなどが続き、8ー10と再び逆転を許して、最後はフォア前のチキータがオーバーミス。ラリーでは徹底的にフォアにボールを集められ、連続でフォアドライブで強打できない弱点を突かれてしまった。

試合後、かなり時間が経ってから行われた会見では、泣きはらした目で会見場に現れた張本。「今大会のジュニアでは絶対に優勝したかったので、ベスト8で負けてしまって一番悔しいです。内容は全然悪くなかったんですけど、最後にフォームが崩れて凡ミスが増えてしまった。最後のゲームは逆転して8-6にできたんですけど、やっぱり気持ちは緊張して焦っていて、凡ミスが出てしまったのが良くなかった」と涙を浮かべながら語った。
明日からの一般シングルスについては、「ジュニアで負けていて一般で優勝するとか言えないので、一般では一戦一戦頑張っていきたい」と言葉を絞り出した。
  • 敗戦に肩を落とす張本

  • 試合後の会見では涙を浮かべながらも、しっかりコメント

  • 冷静なプレーが光った宮本がベスト4へ

  • 宇田は高見との激戦、あと一歩及ばず

●ジュニア女子準々決勝
笹尾明日香(横浜隼人高・神奈川) -8、11、6、4 梅村優香(四天王寺高・大阪)
加藤美優(吉祥寺卓球倶楽部・東京) 2、2、3 伊藤佑希子(札幌大谷高・北海道)
長崎美柚(JOCエリートアカデミー・東京) -6、2、9、4 塩見真希(四天王寺高・大阪)
早田ひな(希望が丘高・福岡) 5、6、8 木村光歩(山陽女子高・岡山)

ジュニア女子でベスト4が決まった!
優勝候補の双璧である加藤と早田は、ともにストレート勝ち。加藤は両ハンドドライブの威力が以前よりも相当増しており、フォアでミート打ちを混ぜる意外性も健在。打たれ強さに力強さが加わっている。一方の早田も力強いドライブを連発しているが、ラリーは長引く傾向があり、体への負担も大きい。これから一般シングルスも始まることを考えると、体力の消耗はなるべく防ぎたい。

横浜隼人高のエース・笹尾はフットワークが良く、フォアハンドでどんどん強いボールが打てるスタイルはプラボール向き。第1シードの梅村を破り、メダルを確定させた。そして大健闘を見せているのが、中学2年の長崎。低く伸びていくような回転量の多い両ハンドドライブは、高校生の選手と打ち合っても全く引けをとらない。明日の早田との左腕対決が楽しみだ。
  • 両ハンドの球威が確実にアップしている加藤

  • 中学2年の長崎、怒涛のベスト4進出

●ジュニア女子5回戦
梅村優香(四天王寺高・大阪) 8、8、-3、9 竹内嘉菜(JOCエリートアカデミー/帝京・東京)
笹尾明日香(横浜隼人高・神奈川) 5、3、-7、-5、12 野村萌(愛み大瑞穂高・愛知)
加藤美優(吉祥寺卓球倶楽部・東京) 4、6、4 岡崎日和(川口総合高・埼玉)
伊藤佑希子(札幌大谷高・北海道) -4、3、13、13 青木千佳(福井商業高・福井)
塩見真希(四天王寺高・大阪)  -7、4、10、5 三村優果(明徳義塾高・高知)
長﨑美柚(JOCエリートアカデミー・東京) 2、5、4 森本枝里(白子高・三重)
木村光歩(山陽女子高・岡山) 3、6、-2、8 木村香純(四天王寺高・大阪)
早田ひな(希望が丘高・福岡) 7、6、8 出雲美空(ミキハウスJSC・大阪)

 ジュニア女子5回戦(ベスト8決定戦)随一の激戦となったのが笹尾vs野村。序盤は笹尾ペースで、2ゲームを先取してそのままいくかと思われたが、野村が3ゲーム目からロングサービスを多用し、スマッシュに近い両ハンドの超速ラリーで圧倒。最終ゲームのジュースにもつれたが、最後は笹尾がサービスにも対応して打ち勝ち、ベンチの小林コーチと会心の笑顔で握手をかわした。

  • 接戦を制し8強入りした笹尾

●ジュニア男子5回戦
木造勇人(愛工大名電高・愛知) 3 (-11,4,5,15) 1 金光宏暢(大原学園高・東京)
五十嵐史弥(遊学館高・石川) 3 (9,-11,-10,8,3) 2 戸上隼輔(野田学園中・山口)
沼村斉弥(野田学園高・山口) 3 (9,5,-10,2) 1 浅津碧利(JOCエリートアカデミー/帝京・東京)
柏友貴(関西高・岡山) 3 (8,6,4) 0 田中虹太朗(東山高・京都)
髙見真己(愛工大名電高・愛知) 3 (9,2,11) 0 三上貴弘(遊学館高・石川)
宇田幸矢(JOCエリートアカデミー・東京) 3 (7,-11,6,-15,4) 2 加賀美利輝(愛工大名電高・愛知)
宮本春樹(愛工大名電高・愛知) 3 (-9,9,8,-9,4) 2 田中佑汰(愛工大名電高・愛知)
張本智和(JOCエリートアカデミー・東京) 3 (6,-14,7,7) 1 宮川昌大(野田学園中・山口)

ジュニア男子5回戦が終了。昨夏のインターハイで男子団体・シングルス・ダブルスを完全制覇した愛工大名電高から3名がベスト8進出を果たした。また、敗れたとはいえ、健闘を見せたのが加賀美だ。サウスポー宇田の切れ味鋭いフォアストレート、レシーブからの強烈なチキータに臆することなく、ブロックとカウンターで粘りに粘って大接戦を演じた。チームメイトの木造や高見のようなスマートなプレーではないが、その頑張りは大いに光っていた。写真は加賀美。
 今年度に尚志学園高から改称した、北海道札幌市の北海道科学大高。北科大高の3年生・吉川が、一般男子シングルスに初出場。「初戦を突破して御内さん(シチズン時計)と当たりたい」という目標だったが、法政大の大槻に1-3で敗れ、悔しさをにじませた。

 181cmの恵まれた体格で、中陣でのフォアドライブの打撃戦では互角以上にわたりあった吉川。1ゲーム目を打撃戦で制しガッツポーズを連発したが、2ゲーム目以降は経験と台上にまさる大槻が、吉川の強打を封じ、逆に的確な両ハンドドライブで得点を重ねた。

 「大きいラリーに目がいきすぎて、台上など細かい技術がダメだった。相手はレシーブからの4球目などもうまく、自分もそのような台上からの展開などをもっとしっかり追い詰めてやっていく必要を感じた」と反省しきりの吉川。打ち合いでの強さは折り紙付き。北の大地が生んだ大型プレーヤーは、また来年スケールアップしてこの全日本に戻ってきてほしい。


●男子シングルス1回戦
大槻周瑛(法政大) -7,8,9,2 吉川充起(北海道科学大高)
  • 1ゲームを取るにとどまった吉川

昨年、所属するポーランドリーグのグルジョンツが男子ECL(ヨーロッパチャンピオンズリーグ)で勝ち進んでいたため、全日本に出場することができず、今大会は埼玉県予選を1位通過して出場した吉田海偉。大会10日前にポーランドから帰国したが、直近のリーグ戦2試合は全日本選手権をイメージして戦い、4戦全勝で手応えを感じたという。今、ポーランドリーグは各国から選手が集い、飛躍的にレベルが高くなっている。

「2年ぶりだから、どうしてもちょっと緊張してますね。レシーブのタイミングがちょっと遅いとか、ドライブの打球点がちょっと遅いとか……。自然に肩に力が入っちゃう。全日本は年に1回だけで、出る国内大会はこれだけですからね。最初のほうのラウンドは5ゲームズマッチだし、出足に集中しないといけない。ボクとやる選手はみんなノープレッシャーで向かってくる。こちらは良い緊張を持って、少しずつ調子を上げていきたい。目標はもちろん高く持って、ベスト4以上を狙いたい」(吉田)

●男子シングルス1回戦
吉田(Global Athlete Project) 9、6、7 上村(大阪桐蔭高)
フロアの一番端の第24コート、ひと際大きいかけ声が耳に入ってきた。鳥取・因幡TTCから出場の山添良太選手。バック面表ソフトの異質攻撃型で、巻き込みも駆使するフォアサービスは非常に変化が激しく、サービスエースを連発。レシーブはチキータ全盛のこの時代に、バック面の表ソフトで何ともいやらしいレシーブをする。しかし、これがよく効く。
日本リーグ2部・豊田自動織機の主力で、フォアドライブに威力がある法花堂選手に対してゲームカウント1ー2と劣勢に立たされたが、食い下がって挽回。最終ゲームは大きくリードして勝利を決めた。

「ジュニア時代(鳥取東高)は県1位になって全日本ジュニアにも出ましたけど、一般で出るのは初めてです。今年は県予選は2位。県予選の決勝でゲームオール10ー6で、あと1点取れば優勝だったんですけど、足がつってしまって……、もう打てなくなりました。
大会前は所属している因幡TTCと、小中学時代にお世話になったオリーブジュニアというクラブで練習してきました。サービスは高校時代から、県内はあまりレベルが高くないので、県外の相手と勝負するにはひとりでも練習できるサービスを磨こうと思った。1ゲームにサービスエースを4本か5本は取りたいですね。バック面の表ソフトはエクステンドPO。レシーブが横下の回転になって飛んでいくので、相手が結構落としてくれますね」(山添選手)

山添選手は、鳥取東高から新潟大を経て、京都大大学院では工学部で研究をしていたという頭脳の持ち主。決して主流とは言えないスタイルだが、不利な環境でも勝利を目指して磨いてきたことが、全日本という大舞台で1勝をつかむ原動力となった。忘れられないこの1勝、おめでとうございます!
  • 万感迫る全日本初勝利!

 長崎出身で、小学1年生から地元で卓球を始めた冨田真穂。現在、鎮西学院高1年で、長崎県予選では大学生を破って全日本一般の部代表となった。昨年に続き2度目の出場となる。ちなみに冨田は日本卓球協会80周年記念誌感想文コンクール最優秀賞を受賞しているという選手だ。

 1回戦の相手は早稲田大出身の実力者・梶本麻莉菜(FILFLUR)。序盤は梶本のペースだったが、3ゲーム目以降、緩急を使いつつ、サウスポーの利点を生かして広角に攻め、鮮やかな逆転勝利を収めた。

冨田「相手はほとんど年上で、全員強い人ばかりなので、自分が100%の全力を出し切ることだけを考えて臨みました。1、2ゲーム目はパンパンと打ちやすいラリーをしてしまったが、3ゲーム目からは緩くつないだり、相手のやりにくさを考えてプレーできたのが良かったです」

 高校1年ながら落ち着きた試合態度と、ベテラン顔負けの戦術を見せた、念願の全日本一般初勝利をあげた冨田。14:10から予定されている2回戦では竹内(JOCエリートアカデミー/帝京)と対戦することになる。


●女子シングルス1回戦
冨田真穂(鎮西学院高) -6,-9,9,9,5 梶本麻莉菜(MILFLUR)