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2014世界ジュニア選手権大会速報

 個人戦が始まる大会第5日目、まず男子シングルスの予選リーグがスタート。日本選手で唯一、予選リーグに出場する吉村和弘(野田学園高)は、9時30分からの第1試合でチャンバース(オーストラリア)と対戦。実力差がある相手に、どのゲームも序盤で大量リードを奪う展開。危なげなくストレート勝ちを収めたが、この大会で彼が戦うのはまだ3試合目。相手のゆるいボールに合わせてしまう場面も見られた。ここからもっとエンジンがかかってくるはずだ。
 卓球台の前では、もっともっと「王様」になっていいし、王様になれる選手だ。

●男子シングルス・予選リーグ1回戦
吉村 4、7、4、4 チャンバース(オーストラリア)
  • 吉村、続く第2試合で勝てばリーグ1位通過が決まる

  • 吉村に敗れたチャンバース

●混合ダブルス1回戦
坪井/佐藤 8、3、5 ビルチェス/ロレンソッティ(スペイン/ウルグアイ)
酒井/前田 6、6、4 アッバリ/リリー・チャン(アメリカ)
●混合ダブルス2回戦
アキュズ/ザリフ(フランス) ー8、9、8、6 坪井/佐藤
酒井/前田 9、6、ー6、9 キャサン/ミゴ(フランス)

 男女団体の表彰式の後にスタートした混合ダブルス。予選に続いて本選の1・2回戦が行われ、2回戦で坪井/佐藤ペアがフランスペアに敗れた。
 団体戦では村松のカットをうちあぐんだアキュズだが、佐藤の攻撃やカットに対しては、強烈なパワードライブやカウンターを打ち込んできた。坪井/佐藤は、女子のザリフが佐藤のカットを打つ順番だった第3ゲームをしっかり取りたかったが、序盤で離されて落としたのが響いた。日本から出場したもうひとペア、酒井/前田は同じくフランスのペアを2回戦で下し、3回戦進出。酒井のサイドを切るコース取り、前田の巧みな緩急が光っている。
  • 坪井/佐藤は2回戦で姿を消す

  • 日本ペアを下したアキュズ/ザリフ

  • 酒井/前田は3回戦進出

 男子団体決勝で中国に挑みながら、3試合ともストレートで敗れ、準優勝となった日本男子チーム。田㔟邦史監督は「やはり決勝で負けるのは一番悔しい。そして世界一にならないと意味がないということですね。勝たないといけない」と絞り出すように語り、悔しさをにじませた。初めて監督として指揮を執った世界ジュニアの団体戦で、中国の強さをまざまざと思い知らされた。「どうやったら中国に勝てるのか。それはまだ冷静に考えることができませんが…、やるべきことは数多くあります。まだ中国とは差がある」。

 「テーマにしていたコース取りにしても、日本選手がコースを突いても、中国はそれ以上に厳しいコースを突いて来る。レシーブでもチキータで攻撃したのに、より早くバックハンドが返ってくる。コースの厳しさと攻めの速さでは中国が上。その速い攻めに対して、こちらがリスクをおかしてしまっている。アグレッシブにいきながらも、ミスをしない安定性を身につけないといけない。
 精神的な部分でも、本気で中国に勝つという思いがなければ、試合前にはあった自信が、次第に失われてしまうこともある」(田㔟監督)

 選手たちには「世界ジュニアはまだ終わっていないし、大会が終わってからゆっくり反省しようとミーティングで伝えました」という田㔟監督。個人戦では中国だけでなく、韓国や香港、チャイニーズタイペイといった強豪チームが行く手に立ちふさがる。「中国のことばかり考えるわけにはいかない。一試合、一試合勝っていくことが大事です」。
 「本当に悔しいですね。あそこ(決勝)で勝たないと意味がないから」。世界ジュニアの団体戦では初采配の田㔟監督、この敗戦がスタートラインだ。あの天才集団・スウェーデンでさえ、中国から覇権を奪うのに10年近い月日を要した。一歩ずつ、しかし確実に、日本は中国に勝つための道を進んでいかなければならない。
  • 試合前、トップ村松にアドバイスを送る田㔟監督

 男女団体の表彰式を終え、会場内が慌ただしさを増す中で、日本女子チームの呉光憲監督は「2位というのは残念な結果です。アジアジュニア選手権の女子団体決勝では1ー3で、今回はもっといけるという手応えを感じていたけど、中国の強さを改めて経験した」と女子団体決勝を振り返った。「技術的には台上のプレーやレシーブは、日本チームは去年より確実に進歩している。ただ、ラリー戦になると中国選手のフットワークや、パワーにはまだ及ばない。これは時間のかかる部分です。動きの幅を広げ、攻撃力を追求していく必要がある」(呉監督)

 女子団体決勝では、「日本女子をエースとして背負っていく」と評価する平野を3番に置き、トップ伊藤、2番佐藤というオーダー。一方で、アジアジュニアの団体決勝で劉高陽を下した前田はオーダーから外れた。
 「去年の世界ジュニアでも伊藤を1番で出しました。今回も劉高陽に対して、バック表のナックルボールでチャンスを作る作戦で、実際にチャンスはありましたが、やや凡ミスが多かった。彼女らしく、もっと元気良く戦ってほしかった。
 2番の佐藤は9月のアジアジュニアの団体でも陳幸同と当たって、良い勝負をしていましたが、今回は相手もかなり佐藤のプレーを研究していましたね。平野を3番で起用したのは、3番は確実に勝って、4番の佐藤につなげる作戦でした。前田はアジアジュニアで良いプレーをしてくれましたが、今回は若い選手にも経験を積ませたかった。これからまだ4回は世界ジュニアに出る機会がある、伊藤や平野にその経験を活かしてほしかった」

 「個人戦はメダルを獲れるように頑張ります。悔いのない戦いをしたい」と締めくくった呉監督。闘将の戦いはこれからだ。
  • トップ伊藤にアドバイスを送る呉監督

  • 決勝前にコートで整列する日本女子チーム

 表彰式では笑顔がのぞいた日本チーム。決勝で負けるのは、選手にとっては一番悔しいもの。しかし、落ち込むのも、反省するのも、大会が終わってからだ。個人戦でひとりでも多く、中国の壁を破るぞ!
男子団体は9連覇、女子団体は4連覇を果たし、男女とも12回の世界ジュニアの歴史で11回優勝。今大会も圧倒的な強さを見せつけた中国。表彰式では晴れやかな笑顔を見せた。
  • 中国女子、危なげなく4連覇

  • 中国男子も、競った試合はあったが無失点でV

〈中国 3ー0 日本〉
○于子洋 8、8、10 村松
○梁靖崑 7、9、4 酒井
○呂翔 4、9、5 坪井

 無念! 日本は男子も決勝で中国に敗れ、銀メダル…。

 試合の流れを決めたのは、トップの于子洋対村松だった。于子洋は切れたカットは確実にループドライブでつなぎ、すこし浮いてきたらミドルへパワードライブの連打。これに広角へのコースの厳しいドライブを混ぜる。
 村松は第1ゲームから声を出し、気合い十分だったが、第1ゲーム7ー6から4点連取で逆転され、第2ゲームも8ー9から于子洋の下回転サービスにツッツキがネットミス。8ー10となって、次の一本は相手のナックル性のループドライブに、バックカットがネットミス。于子洋は得点の稼ぎ方も巧みだった。
 第3ゲームは村松が7ー0と大きくリードしたが、8ー2から6点を連取されて追いつかれ、最後は10ー12。最後の世界ジュニアに懸ける気持ちが、プレーを硬くしてしまったのか……。

 2番酒井は、過去の対戦成績が1勝1敗という梁靖崑と対戦。酒井は中盤からしゃがみ込みサービスを混ぜながら戦ったが、梁のプレーは崩れない。「梁はとにかく打球が速いけど、ブロックで止めるのもすごくうまい」と試合後の酒井。ゲームカウント0ー2とリードされた第3ゲームは、3ー5でサービスをミス。田㔟監督がすぐタイムアウトを取ったが、終盤はやや集中力を欠いてしまった。
 3番坪井は呂翔とのサウスポー対決。坪井はチキータでレシーブエースも奪ったが、バック対バックの高速ラリーでなかなか先手が取れず、先に回り込まれてシュートドライブを打たれる。多彩なテクニックを披露する前に、呂翔の速い攻めと切れたツッツキ・ストップに振り回され、なかなかフォアで攻撃できなかった。

 男女とも中国の壁に跳ね返された日本。しかし、落ち込む暇もなく混合ダブルスがスタート。酒井/前田と坪井/佐藤が1回戦に出場する。
  • 村松は前回決勝で2点落とした雪辱ならず…

  • 豪快さと老かいさを見せた于子洋

  • 酒井のしゃがみ込みサービスも、梁靖崑に通じず

  • ポイントゲッター・坪井も呂翔に敗れた

〈中国 3ー0 日本〉
○劉高陽 8、9、6 伊藤
○陳幸同 9、5、5 佐藤
○王曼昱 11、ー10、9、4 平野

日本女子、決勝で中国に0ー3で敗れ、銀メダル…!

 1番伊藤が第1ゲームのラブオールで、バックハンドからフォアスマッシュを決めて幕を開けたこの試合。試合前の練習で、バック表ソフトでのレシーブや変化ブロックなどを入念に確認していた伊藤は、フォア前でも基本的にバック表ソフトでレシーブし、フォアのストップを混ぜた。第1ゲーム1ー4から5点連取で6ー4、第2ゲーム7ー7からまたもバック表ソフトのレシーブでミスを誘い、8ー7とリードして中国ベンチのタイムアウトを誘う場面もあった。しかし、左右に振り回しても、劉の低く伸びのあるフォアおループドライブになかなかカウンターができず、連続攻撃を許す展開。バックにつないだボールは、上からたたくようなバックドライブで狙われ、次第に打つ手がなくなった。

 2番佐藤は、アジアジュニアチャンプの陳幸同と対戦。陳のフォアのパワードライブは女子離れした迫力で、第1ゲームで2個ボールが割れるほどだったが、それ以上に中陣での守備力が抜群だった。佐藤の威力ある3球目フォア強打を正確にブロックし、カットに追い込んでドライブで反撃する。
 佐藤の後陣からの正確なカット、機を見ての反撃は観客の心をとらえ、貴賓席で観戦していた徐寅生・元ITTF会長が盛大な拍手を送る場面も。しかし、豪快に攻めながら、対カットの深追いを避けて冷静に攻めた陳が勝利した。

 日本女子で唯一ゲームを奪ったのは平野。フォア前への巻き込みサービスで長身の王を揺さぶり、ループドライブで持ち上げてきたボールはフォアクロスへ正確なカウンタードライブ。フォアドライブの連打にもミスがなく、常に自分の間合いでプレーしていた。昨日の準決勝後、「平野は日本女子のエースになっていく存在」と語っていた呉光憲監督。その平野をあえて団体戦の要(かなめ)・3番に配して必勝を期した、その期待に応える試合内容だったが、あと一歩及ばず。

 中国の壁はまだ、厚かった。
  • トップ伊藤、チャンスを作るも攻撃力で及ばず

  • 2番佐藤、カットで魅せるも攻撃がブロックにつかまった

  • 力を出し切った平野。王曼昱と互角の打撃戦

  • 佐藤のカットを攻略した陳幸同

 下写真左は、昨日の男子団体準々決勝、韓国対香港戦での観客席の様子。これまでの世界ジュニアでも、韓国のコーチやチームの関係者は、観客席で立って選手たちに声援を送ることが多い。……なかなかの圧迫感だ。韓国の応援団の中には、審判の判定に観客席から口を出して、香港チームからひんしゅくをかっている人もいた。これはさすがにいただけない。

 今大会、男女チームとも第2ステージを1位で通過した韓国。しかし、すでにお伝えしたとおり、女子チームは準々決勝でアメリカに屈してベスト8。男子チームは、準々決勝で香港に対し、2ー0のリードから2ー2に追いつかれ、からくも逃げ切った。快調にリードしながら、少しスコアが競ってくるとプレッシャーでプレーが硬くなり、逆転を許す展開が多かった。

 準決勝の中国戦では好プレーも随所に見せたが、これまでの戦いを見る限り、韓国選手たちは観客席から降り注ぐプレッシャーとも戦わねばならないようだ。その点、中国は地元開催のプレッシャーはあるだろうが、「ジュニアはまだ通過点」というのがハッキリしているように思える。
 今大会、選手団の女子スタッフとしてチームに帯同している藤井(現姓:下川)寛子さん。ドイツのコーチに「フジイサ〜ン!引退したんじゃなかったの〜?」と声をかけられて、思わず笑顔(下写真右)。

 昨日の女子団体準決勝が終わった後、呉光憲監督は2番で勝利した佐藤のプレーについて、こう語っていた。「彼女は少しスロースターターなので、1番の平野の試合が始まった時、藤井(寛子)コーチと練習場で練習してから試合に入らせた。それが良かったですね。前後左右にバランス良く動けていた。藤井コーチのおかげです」。呉監督の言葉どおり、試合前の練習ではラケットを握り、選手たちのトレーナーを務めている。当たり前ですが、まだ滅茶苦茶強いです。頼りになりますね〜。