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中国リポート

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 女子に続いて、深セン市で行われた中国男子のエキシビションマッチの結果をお伝えしましょう。5月1日および13・14日に行われた試合の結果は下記のとおり。

★5月1日
馬龍 4ー3 方博
樊振東 4ー1 王楚欽
張継科 4ー2 刘吉康
許シン 4ー3 周雨
馬龍 4ー1 孔令軒
張継科 4ー0 鄭培峰
樊振東 4ー0 閻安
許シン 4ー1 周愷

★5月13・14日
〈13日・シングルス〉

馬龍 ー10、ー6、6、8、9、7 梁靖崑
樊振東 9、ー9、8、ー6、8、ー8、4 尚坤
林高遠 5、7、ー9、8、9 許シン
張継科 8、ー10、7、8、ー6、ー8、14 方博
馬特 8、ー8、6、ー8、ー5、9、11 林高遠
〈14日・シングルス〉
許シン 6、8、8、7 于子洋
樊振東 ー8、8、ー10、9、10、5 梁靖崑
周雨 ー9、9、ー9、7、3、7 馬龍
張継科 9、ー6、ー8、6、8、3 尚坤
〈13日・ダブルス〉
方博/朱誠 6、8、8、ー8、9 閻安/朱霖峰
馬龍/于子洋 ー7、9、8、4、ー9、7 樊振東/許シン

 シングルス代表の5名(馬龍・張継科・許シン・樊振東・林高遠)と対戦したのは、同じ国家1軍チームのチームメイトたち。右シェークドライブ型の梁靖崑・方博・閻安、左シェークドライブ型の周雨・尚坤・孔令軒・王楚欽、右ペンドライブ型の鄭培峰、そしてカットの馬特という選手たちだ。左シェークドライブ型が4人と多いのが目につくが、日本の水谷と丹羽、ドイツのボル、ポルトガルのフレイタスなど、サウスポーの強敵が多いからだろう。特に許シンは、エキシビションマッチでも周雨・林高遠・于子洋と対戦した4名中3名がサウスポーだった。

 「最近は右利きの選手の対策に重点を起き、左利き対策が少しおろそかになっていた部分がある。だから今回の集合訓練では、左利きの選手との練習をたくさんやってきた。海外選手にも左利きの選手は多いし、主要なライバルは半分くらいが左利きだからね。左利きが相手でも、より自信を持って戦えるようになったと思う」(許シン/出典:ITTF)。

 世界選手権でのプレーが注目される張継科は、シングルス4試合を4勝0敗で終えた。ゲームオール16ー14という大激戦になった5月13日の方博戦は、最終ゲーム3ー8のビハインドから6点連取で逆転し、苦しみながらも競り勝った。一方、馬龍はこれまで圧倒的に分の良かった周雨にゲームカウント2ー1から逆転負け。これまでは台上で先手を取り、守備力の低い周雨のバックサイドへ回転量の多いループドライブを多用して主導権を握っていた馬龍だが、周雨にブロックされる場面が多く、次をつないだボールをカウンターで狙われた。これはやはり、ボールが紅双喜からニッタクに変わり、回転量が減少したことが大きい。

 なお、公式のエキシビションマッチではないが、中国男子は5月5日にもチーム内での練習試合を行っている。中国卓球協会の蔡振華会長が見守る中、シングルス代表5名に梁靖崑を加えた6名で試合が行われ、馬龍が樊振東に4ー0、許シンが張継科に4ー0、林高遠が梁靖崑に4ー3で勝利。アジア選手権で中国の孤塁を守り、男子シングルスで2連覇した樊振東もまだまだ発展途上。一方、馬龍の完勝に、劉国梁総監督は「この勝利が馬龍に自信を与えてくれるといいね」とコメントしている。
 ちなみに劉国梁総監督、男子チームが合宿を行う深セン市と、女子チームが合宿を行う湖北省黄石市を頻繁に往復する不規則な生活と、夜な夜な王皓や馬琳、劉国正らと火鍋を食べていたため、また体重が5キロ以上増えてしまったとか……。男子監督という肩書きは外れたが、まだまだ心安らかではいられないようだ。
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 またまた遅くなってすみません……。5月1日と5月13〜14日、男女チームとも「熱身賽(エキシビションマッチ)」を開催した中国。まず女子の結果からお伝えします。少々見にくいですが、それぞれの対戦結果は下記のとおり。

★5月1日
丁寧 4ー0 張瑞
陳夢 4ー2 王曼昱
劉詩ウェン 4ー1 陳幸同
朱雨玲 2ー4 車暁㬢
木子 4ー1 陳幸同
孫穎莎 4ー0 武楊
〈ダブルス〉
朱雨玲/陳夢 3ー2 王曼昱/陳可
丁寧/劉詩ウェン 3ー0 劉斐/胡麗梅

★5月13・14日
●第1グループ

丁寧 ー6、5、3、4、6 陳可
陳幸同 ー8、3、2、8、ー9、ー11、9 孫穎莎
陳幸同 ー6、8、5、3、ー9、9 丁寧
●第2グループ
文佳 10、12、ー6、10、ー8、ー5、6 劉詩ウェン
劉斐 ー11、7、ー5、9、ー3、5、9 木子
劉詩ウェン 4、4、ー9、3、10 張瑞
●第3グループ
朱雨玲 9、4、6、3 李佳イ
張瑞 4ー2 孫銘陽
朱雨玲 9、ー8、14、ー8、ー9、8、4 木子
●第4グループ
陳夢 9、5、8、6 顧玉ティン
王曼昱 4、5、7、1 武楊
王曼昱 ー5、ー7、9、7、6、9 陳夢

〈ダブルス〉
朱雨玲/陳夢 6、9、5 武楊/胡麗梅
李暁丹/王芸迪 9、10、ー5、11 王曼昱/車暁㬢
丁寧/劉詩ウェン 6、9、10 孫穎莎/陳可
文佳/陳幸同 10、8、5 馮亜蘭/劉高陽
丁寧/劉詩ウェン 11、5、7 李暁丹/王芸迪

 シングルスの世界代表5名、丁寧・劉詩ウェン・朱雨玲・陳夢・木子は2回のエキシビションでシングルス4試合を戦ったが、ひとりも全勝をキープできなかった。 若手選手たちによるコピー選手の分担については先にお伝えしたが、5月13日のエキシビションマッチでは、丁寧が平野美宇のコピー選手である陳幸同に敗れ、『平野にまたも敗れる』とメディアの注目を集めた。陳夢も平野のコピー選手である王曼昱に敗れているが、これくらいのレベルになるとコピーどうこうは関係なく、単純に王曼昱が強いだけ……という気もしてくる。この選手が今大会のシングルス代表に選ばれなかったのは残念だ。非常に食が細いそうで、左右に振られた時に体勢が崩れやすいのは、体幹を含めた体作りが進んでいないからだろう。

 劉詩ウェンは陳幸同に快勝したものの、左腕のベテラン・文佳にゲームオールで敗れている。「王楠2世」と呼ばれた文佳も28歳になったが、まだまだ強い。14日の試合では劉詩ウェンは世界代表同士の木子との対戦はなく、第3グループの張瑞と対戦して4ー1で勝利した。中国女子の孔令輝監督は集合訓練を終え、次のようにコメントしている。「ボールへの対応に関しては確実に向上している。具体的な選手を挙げると、最もうまく適応しているのは劉詩ウェンで、新しい(ニッタクの)ボールへの苦手意識は全く持っていないようだ。その次が丁寧だろう。朱雨玲はプレーを改良している段階で、敗戦が多く自信を失っている部分があるが、少しずつ改善していきたい」(出典:『ピンパン世界』)。

 集合訓練の初日に、まずアジア選手権で中国選手が敗れた映像を選手たちを見せ、敗因を分析させることから始めたという中国女子。デュッセルドルフ大会は近年では最も大きなプレッシャーの中で臨む大会になる。
  • 世界選手権で3位・3位・2位・2位の劉詩ウェン。ついに戴冠の時?

 アジア選手権の閉幕直後から行われた、湖北省黄石市での31日間の集合訓練を終えた中国女子チーム。完全に休みになるのは、4月28日と5月8日の2日だけというハードなスケジュールで、中国では「魔鬼訓練」と大々的に報道された。地獄の特訓みたいな感じですね。

 5月1日と5月13〜14日には、2回の「熱身賽(エキシビションマッチ)」を開催。その対戦カードは、明確に「対平野美宇」を意識したものとなった。日本でも報道されているので今さらではありますが、世界代表以外の国家1・2軍チームの選手たちに与えられる「対手模倣(ライバル選手のコピー)」という役割について、資料として紹介しておきたい。最近ではすっかり国家チームの「スポークスマン」となった中国・CCTVのナイスガイ・李武軍さんが、黄石市の国家卓球訓練基地に貼り出された「主要対手模倣名単(主要なライバルのコピー選手リスト)」を微博(マイクロブログ)に掲載している。

平野美宇  孫穎莎・王曼昱・陳幸同・劉銘(2軍)
伊藤美誠  張瑞
石川佳純  陳可・顧玉ティン
早田ひな  劉高陽・文佳

キム・ソンイ/徐孝元/金璟娥   胡麗梅(2軍)・劉斐(2軍)
リー・ジエ/リー・チェン     武楊
ゾルヤ/サマラ          文佳・劉高陽・顧玉ティン
馮天薇              馮亜蘭・顧若辰・王芸迪
ユ・モンユ            袁雪ジャオ・郭艶(2軍)
フー・メレク           孫銘陽・張瑞
李皓晴/杜凱琹/鄭怡静      顧若辰・王芸迪・李暁丹・李佳イ・車暁㬢・劉㬢・郭艶(2軍)

 平野美宇の「コピー選手」として、4名もの若手選手をあてているあたり、中国も最大級の警戒をしていることが伺える。小柄で前陣でのプレーを主体とする孫穎莎・陳幸同・劉銘に比べ、身長176cmでプレー領域も中陣寄りの王曼昱は「どこが美宇ちゃんに似ているの?」と感じるが、同じ巻き込みサービスの使い手であることが考慮されたのだろう。プレーを見てきた感覚としては、両ハンドでガンガン攻めてストレートを突くのもうまい陳幸同が、一番再現率が高いかもしれない。ただ、打球点の早さとコースの厳しさでは、今の平野のほうが上だと感じる。……冷静に考えてみれば凄いことだ。

 伊藤のコピー選手は、国家チームでも数少ないシェーク異質型の張瑞。昨年のリオ五輪前から伊藤のコピー選手は木子と張瑞が務め、若手の張瑞はバック面の表ソフトも伊藤と同じものに貼り替えて「模倣」に務めてきたが、今大会シングルスに出場する木子はお役御免。1軍チームのもうひとりのシェーク異質型・孫銘陽はフー・メレクの担当で、張瑞がフー・メレクの役に回ることもある。2軍チームにも14年世界ジュニア代表の何卓佳というシェーク異質型がいて、リオ五輪前にはこちらもバック面のラバーを変えて福原愛のコピー選手を担当していたのだが、今回はメンバーに加わっていない。

 石川のコピー選手は同じ左シェークドライブ型の陳可と顧玉ティン。サービスから打球点の高い連続攻撃を放つ陳可は石川のコピー選手、両ハンドから回転量の多いドライブを放つ文佳はゾルヤ・サマラのコピー選手と、同じ左シェークドライブでもタイプに応じて選手を選んでいる。また、今大会シングルスに出場しない早田に、他の選手との共有とはいえ2名のコピー選手がついているのも目を引く。高い攻撃力を備えた早田の評価は中国でも高い。

 「誰のプレーがより対象となる選手に近いか、コーチ陣が対象選手のプレー映像を見ながら、技術や戦術、コース取りなどをチェックして決定していく。このようなコピー選手による強化は数十年来の伝統であり、確かに犠牲を払う選手もいる。しかし、ラバーを変えたり、他の打法を研究することは選手たちにとって学びの機会でもあり、一概に悪いこととは言えない」(出典:『新浪体育』)。昨年のリオ五輪の前、中国女子チームの孔令輝監督はそう語っている。
 集合訓練でのエキシビションマッチは、このようなコピー選手を相手にした強化の成果を発表する場なのだが、どのような結果になったかは明日お伝えします。
  • 成長株・陳幸同は平野美宇のコピー選手のひとり

 少し前のニュースで恐縮ですが、5月3日、国家男子1軍チームの新たな「教練組(コーチグループ)」の編成が発表された。
 3月30~31日に行われた国家チームの監督・コーチ選考会議で、王皓・馬琳・劉国正・劉恒・馬俊峰の5名が選出されていたが、現在63歳の呉敬平がまたもコーチ陣に加わった。定年後の「嘱託」のような立場だ。「高血圧の持病があるし、体力的には厳しい」とインタビューで語っていたが、まだまだ休めないようだ……。担当コーチの編成は下記のとおり。

◎国家男子1軍チーム・担当コーチグループ
呉敬平  許シン・王楚欽
王皓   樊振東・薛飛・朱霖峰・周愷・馬特・朱誠
馬琳   馬龍・于子洋・崔慶磊・劉イ
劉国正  張継科・方博・徐晨皓・梁靖崑・陳ジン
劉恒   林高遠・閻安・鄭培峰・任浩・呂翔
馬俊峰  周雨・劉丁碩・尚坤・劉吉康・頼佳新


 馬龍の担当コーチだった秦志戩が男子チーム監督となり、張継科の担当コーチだった肖戦が女子チームに異動になったことで、担当コーチのグループ分けは大幅に改編されている。

 リオ五輪まで許シンと樊振東を担当していた呉敬平は、引き続き許シンを担当。リオ五輪前には樊振東も担当していたが、それに変わって呉敬平の門下生となった王楚欽には首脳陣の期待がうかがえる。とはいえ、ひとりで4〜5人の選手を担当する他のコーチに比べれば、実質的には許シンの専属に近い。「許シンは今、低調な時期を迎えており、この時期を乗り越えるのは決して簡単ではない。今回の世界選手権が、許シンにとっては巻き返す最後の機会であり、それに失敗すれば彼は主力の地位を失うだろう」。そう言って脅しをかけるのは劉国梁総監督だ。昨年のジャパンオープンで東京五輪の展望を尋ねた時は、「樊振東が主力だけど、許シンも東京五輪まで出られるでしょう」と言っていたのだが……。さすがに手綱はゆるめない。

 一方、樊振東は所属先である八一解放軍チームの監督でもある王皓が担当コーチとなった。馬龍は馬琳、そして張継科は劉国正の指導を受ける。長く張継科の担当コーチだった肖戦の女子チームへの移動は意外だったが、樊振東が育ってきた男子に比べ、女子は陳夢・朱雨玲の下の若手がなかなか育たず、首脳陣も危機感をつのらせていると聞く。肖戦はいきなり劉詩ウェンや、若手のホープである王曼昱・孫銘陽らの担当コーチになったが、これで女子チームのテコ入れを図っていくのか。

 男子チームの顔ぶれを見ていると、最強軍団といえど、2020年東京五輪は決して簡単ではない戦いだと感じる。かつての中国なら、五輪を終えて28歳という年齢である馬龍と張継科は、若手に押し出される形で国家チームを引退し、許シンもチームの主軸からは外れていただろう。ところが今回の世界選手権でも、前回2位の方博をシングルスにエントリーせず、張継科をエントリーしてきた。国内での張継科人気の加熱ぶりを考えれば、致し方ないことかもしれないが……。
 すっかりお伝えするのが遅くなって申し訳ありません。4月6日、国家体育総局卓球・バドミントン管理センターは、国家男女1軍・2軍チームの監督・コーチ選考会議の結果を発表した。新たなコーチ陣の陣容は下記のとおり。

★総監督:劉国梁

●男子1軍チーム監督:秦志戩
●男子1軍チームコーチ:劉国正、王皓、馬琳、劉恒、馬俊峰

○女子1軍チーム監督:孔令輝
○女子1軍チームコーチ:肖戦、李隼、陳彬、張琴、黄海城

●男子2軍チーム監督:劉志強
●男子2軍チームコーチ:劉彬、于洋、陳振江

○女子2軍チーム監督:閻森
○女子2軍チームコーチ:李大成、朱文韜、王翔


 総監督兼男子監督だった劉国梁は総監督に専任となり、替わって男子1軍チーム監督には、唯一の立候補者であった秦志戩が就任した。劉国梁は『新浪体育』の取材に対し、次のようにコメント。若手の成長著しい日本の脅威について触れ、コーチ陣に釘を刺している。
 「東京五輪までの任期で、秦志戩が私に替わって男子チーム監督になることで、私は卓球のその他の分野にもエネルギーを注ぐことができる。優秀な成績をキープしながら、チームの社会的な価値を高めていきたい。若手の育成に力を入れている五輪のホスト国・日本は、中国の最強のライバルになりつつある。その脅威を決して楽観視してはならない」(劉国梁)。

 そして男子1軍チームのコーチ陣には王皓と馬琳が加わった。男子2軍チーム監督だった劉国正も1軍チームコーチとなり、一時代を築いた中国男子のスターたちが「入閣」。一方で、張継科の担当コーチ、スキンヘッドがトレードマークの肖戦は、第二希望だった女子1軍チームに異動となった。

 張継科の後任の担当コーチについては「劉国正か?」など、憶測の報道はあるものの、正式なアナウンスはされていない。馬龍の担当コーチだった秦志戩は監督となり、許シンや樊振東を担当していた呉敬平はリオ五輪を最後に正式に国家チームから身を退いた。主力の「ビッグ4」については、担当コーチは全員が入れ替わることになる。正式な担当コーチの振り分けは、現在行われているアジア選手権の終了後になるだろう。

 また、女子1軍チームで劉詩ウェンの担当コーチだった劉志強が、立候補者のいなかった男子2軍チーム監督に就任。肖戦が劉詩ウェンの後任の担当コーチになる可能性もある。張怡寧や李暁霞を育て、現在は朱雨玲の担当コーチだった李隼、丁寧や馮亜蘭の担当コーチだった陳彬は健在。男女1軍チームで唯一の女性コーチである張琴は、実業団のサンリツでかつて選手としてプレーしており、女子2軍コーチからの昇格となった。黄海城コーチも女子2軍チーム監督からの昇格だ。
  • 秦志戩、劉国梁の後を継いで男子チーム監督に就任

  • 王皓はまだ33歳。誰の担当コーチになるのか

  • 15年世界戦で方博に球出しをする肖戦。女子コーチへの異動は意外だった

 中国リポート2017/03/24『名将・劉国梁が退任? 中国男子の監督交代は起こるのか』でもお伝えしたとおり、3月30・31日に遼寧省鞍山市で国家男女1軍・2軍チームの選考会議が行われた。
 
 事前に報道されていたとおり、劉国梁・総監督兼男子監督は総監督にしか立候補せず。そして男子監督には秦志戬(チン・ジィジェン)ひとりしか立候補しなかった。そのため秦志戬の男子監督就任が4月1日に発表されるはずだったが、まだ正式に発表されていない。正式発表が待たれるが、よほどのことがない限りは秦志戬で決まりだろう。また、女子監督の立候補も孔令輝ひとりだけで、こちらは問題なく再任される見込みだ。
 秦志戬は1976年10月5日生まれの40歳。現役時代は左ペンドライブ型のテクニシャンとして、ダブルスでも強さを発揮した。指導者としては、以前に王励勤や許シンを指導したこともあるが、馬龍の担当コーチとして、彼を五輪&世界チャンピオンまで育て上げた実績が大きい。

 ちなみに馬琳と王皓は男子1軍チームのコーチに立候補し、現任の肖戦・馬俊峰・劉恒の3名に加え、男子2軍チーム監督だった劉国正も男子1軍チームコーチに立候補。5人の枠に6人が立候補したことで、誰かひとりが落選することになる。一方で、男子2軍チーム監督は「立候補なし」という寂しい結果。女子2軍チーム監督の座は、女子2軍チームでのコーチ経験が豊富な黄海城と、現任の閻森監督が争う形となっている。最終的な人事が発表されたら、またお伝えします。
  • 時の人、秦志戬コーチ。後ろのお父さんみたいなのは黄ピャオマネージャー

  • 劉国梁、総監督になったら少しは娘さんたちと過ごす時間も増えるでしょうか

 3月29日、中国卓球協会は世界選手権個人戦デュッセルドルフ大会の中国代表メンバーを発表した。各種目へのエントリーは下記のとおり。

★第54回世界選手権個人戦・中国代表選手 5.29〜6.5/ドイツ・デュッセルドルフ
[男子シングルス]張継科、馬龍、許シン、樊振東、林高遠
[女子シングルス]丁寧、劉詩ウェン、朱雨玲、陳夢、木子
[男子ダブルス]許シン/樊振東、馬龍/ボル(ドイツ)
[女子ダブルス]丁寧/劉詩ウェン、朱雨玲/陳夢
[混合ダブルス]方博/P.ゾルヤ(ドイツ)、グルーツ(デンマーク)/馮亜蘭

 3月上旬に行われた代表選考会「地表最強12人」では、男子は樊振東と林高遠、女子は劉詩ウェンと丁寧が代表権を獲得していた中国。男子シングルスは、それに加えて張継科、馬龍、許シンという順当な人選。一方、女子シングルスは朱雨玲、陳夢までは予想どおりだが、最後のひと枠には15年世界選手権3位の木子が入った。

 ダブルス種目の国際ペアを除けば、概ね予想どおりと言えるエントリーの中で、28歳のベテラン木子の選出は小さなサプライズと言えるかもしれない。東京五輪の中国女子代表3名は、今回シングルスにエントリーされた5名の中から選ばれる可能性が高いが、一番若い朱雨玲でも東京五輪時には25歳。その他の4名も31歳(木子)、30歳(丁寧)、29歳(劉詩ウェン)、26歳(陳夢)という年齢になっている。かつての中国女子といえば、曹燕華や鄧亜萍のように20歳前後で世界の頂点に立ち、25歳になる頃にはもう引退というのが既定路線だった。現在はむしろ25歳を超えてからが勝負、という感じだ。20歳の丁寧と19歳の劉詩ウェンを抜擢し、シンガポールに金星を献上した2010年世界団体戦を境に、傾向が変わってきた感がある。

 ……話が少しそれてしまったが、ダブルス3種目を見てみると、男子ダブルスでは前回につづいて馬龍/ボルの国際ペアが出場。前回は2回戦で優勝した張継科/許シンと当たる不運な組み合わせで、善戦むなしく敗れたが、今大会はどこまで勝ち上がるか注目が集まる。女子ダブルスの2ペアは、2020年の時点で丁寧と劉詩ウェンのどちらかがまだチームのエースであるか、それとも朱雨玲と陳夢のどちらかがエースにのし上がっているか、五輪団体戦を見据えてどちらのケースにも対応できる「世代別ペア」というところか。丁寧と劉詩ウェンは今年9月の全中国運動会にも、違う省同士のペアリングとして出場する。

 混合ダブルスの方博/P.ゾルヤは、戦型の相性から言ってもなかなか強そうなペア。グルーツ/馮亜蘭は豪快なラリーで観客を沸かせるだろう。今回の選手団について、中国チームの首脳陣から何らかのコメントがあれば、追って掲載します。
  • 15年世界選手権での馬龍/ボルのプレー。このペアがまた見られる!

 昨日お伝えしたとおり、3月30〜31日に遼寧省鞍山市で行われる国家1軍・2軍チームの選考会議。CCTV(中国中央電視台)は3月22日、この選考会議での人選について、このように伝えている。
 「現在は劉国梁が総監督と男子チーム監督を兼任しているが、新しい周期(東京五輪までの期間)においては、男子チームは新しい監督を迎えることになるかもしれない。具体的に言うと、王皓は許シンと樊振東の担当コーチとなり、そして馬琳が男子チームの監督になる可能性が大きいのではないか」。

 2003年に蔡振華の後を継ぎ、中国男子チームの監督となった劉国梁。世界選手権団体戦では無傷の8連覇(最初の優勝は01年大会)を達成するなど、中国男子の強さを揺るぎないものにしてきた。04年アテネ五輪で男子シングルスの金メダルを逃したのが、失敗と言える唯一のものだが、それ以外はほぼ完璧に監督としての責務を果たしてきた。まだ41歳の若さで、監督退任が決定的とは言えないが、より多角的に中国卓球を発展させる事業へ、力を注いでいく意思を表明している。

 一方、『広州日報』では、馬琳が「コーチとして世界選手権かオリンピックに参加していること」という資格を満たしていないとして、馬龍の担当コーチである秦志戬(チン・ジィジェン)コーチが新監督の最有力候補だと伝えている。秦コーチも01年世界選手権混合複のチャンピオン。そして国家チームのコーチとしても10年以上のキャリアを積んできた。ただ、北京五輪金メダリストの馬琳と比べると、ビッグゲームでのキャリアという点ではどうしても見劣りするし、馬琳は広東省チーム総監督という立場から、広東省女子のエースである劉詩ウェンを指導し、国際大会にも帯同してきた。

 先日の世界代表選考会では、男子の林高遠、女子の劉詩ウェンという広東省チームの選手たちが代表権を獲得し、人民解放軍チームに所属する樊振東も、もともとは広東省の出身。広東省の選手たちの活躍を手土産に、馬琳が新監督となるのか。当の馬琳は「ずっと国家チームで指導をしたいと思っていた。その目標はいつだって変わらない」(出典:『広州日報』)と述べている。
 ライバルの王励勤のようなクリーンなイメージはない馬琳だが(失礼)、五輪の大舞台で選手に言うことを聞かせるには、彼くらいの剛腕が必要かもしれない。果たして監督の交代劇は起きるのか。要注目だ。
  • 馬琳、その眼に映る未来とは……?

  • 王皓は引退する師匠・呉敬平の後を継ぐか

 3月30〜31日、遼寧省鞍山市で国家1軍・2軍チームの監督・コーチの選考会議が開催される。北京市ではなく鞍山市で行われるのは、3月23〜29日に第13回全中国運動会の予選会が鞍山市で開催されるからだ。2年に1回開かれるこの選考会議。本来なら昨年末までに行われるべきものだが、3月末まで延期されていた。今回の会議で、2020年東京五輪を戦う国家チームの指導陣が決まる。選出される監督・コーチの定員は下記のとおり。

・総監督 1名
・男女1軍チーム監督 各1名
・男女1軍チームコーチ 各5名
・男女2軍チーム監督 各1名
・男女2軍チームコーチ 各3名


 監督・コーチの選考は、国家卓球・バドミントン管理センターの劉暁農主任をはじめとする「2017年国家卓球チームコーチ選考委員会」、現在の国家チームのコーチ全員、国家チームの選手代表、国家チーム顧問グループ、各省・区・市の優秀男女チームの監督および卓球運動管理センターの主任、さらにスーパーリーグのクラブ代表……等々が出席する。国家チームの顧問グループは、北京市女子チームの張雷監督をリーダーに、王涛(人民解放軍)、馬文革(天津市)、于沈潼(遼寧省)、曹燕華(上海市)、王励勤(上海市)、馬琳(広東省)、喬雲萍(山東省)といった往年の名選手たちが名を連ねている。現役の選手を除けば、まさに「中国卓球界、全員集合」という感じだ。
 ちなみに総監督や男女チーム監督には、世界チャンピオンかオリンピックチャンピオンでなければ就任できない。下記は男女チーム監督になるための条件だ。

■男女チーム監督になるための条件
1:世界チャンピオンもしくはオリンピックチャンピオンであること
2:これまでに世界チャンピオンかオリンピックチャンピオンを育てていること
3:コーチとして世界選手権あるいはオリンピックに参加していること
4:4年制の大学卒業以上の学歴を有していること
5:高級以上のコーチの資格を有していること
6:世界における男子/女子卓球の発展の動向、最新の練習方法を正確に把握していること

 ……恐ろしいハードルの高さである。総監督もほぼ同等の条件だが、コーチの国家資格として最上級となる「国家級」の資格を取っていなければならない。
 選手時代のビッグゲームでの実績が問われるのは総監督と男女チーム監督だけで、1・2軍チームのコーチや2軍チームの監督はあくまでコーチとしての能力が問われる。普段の指導はコーチが数人の担当選手を受け持ち、ビッグゲームでは監督が自身の経験を生かし、選手たちの「モチベーター」として機能する。この役割分担は非常に明確だ。たとえば国家女子1軍チームの李隼コーチは張怡寧や李暁霞を育て、指導者としての実績では群を抜いているが、監督にステップアップすることはできない。表舞台で注目を集める監督のため、担当選手を鍛える裏方なのだ。

 国家男子チームの劉国梁監督、同女子チームの孔令輝監督の留任が濃厚と見られていた今回の選考会議だが、CCTV(中国中央電視台)は劉国梁が男子監督を退任して総監督に専念し、男子チームの監督交代が行われる可能性を示唆している。噂は以前から囁(ささや)かれていたが、監督になるための条件を満たせる数少ない男……馬琳がその第一候補だという。そのニュースは追ってお伝えします。
  • コーチ選考委員会の主任となる劉暁農氏(左/写真は15年スーパーリーグ・プレーオフ)

 世界選手権個人戦デュッセルドルフ大会の中国代表選考会、「地表最強12人(地上最強の12人」直通選抜の女子第2ステージ。第1ステージで代表権を獲得した劉詩ウェンの代わりに車暁㬢を加えた12名で、世界選手権への2枚目の切符を争い、第1ステージ2位の丁寧が代表権を獲得した。結果は下記のとおり。

〈女子〉
●予選リーグ
[グループA]◎1回戦

陳夢 2ー1 武楊
木子 2ー1 袁雪ジャオ
◎決定戦 陳夢 2ー1 木子
[グループB]◎1回戦
丁寧 2ー0 顧玉ティン
王曼昱 2ー1 陳可
◎決定戦 丁寧 2ー0 王曼昱
[グループC]◎1回戦
馮亜蘭 2ー0 車暁㬢
朱雨玲 2ー0 李佳イ
◎決定戦 馮亜蘭 2ー0 朱雨玲

●決勝リーグ
丁寧 9、7 陳夢
陳夢 ー6、12、2 馮亜蘭
丁寧 ー4、8、9 馮亜蘭
★丁寧が2人目の代表権獲得!

 「順当」といえる丁寧の代表権獲得だが、組み合わせは決して楽ではなかった。昨シーズンのスーパーリーグで2連敗を喫し、今回の第1ステージでも1ゲームを先取されて敗戦の瀬戸際まで追い詰められた王曼昱が、同じBグループに入ってきたからだ。ともに黒龍江省出身、171cmの丁寧と176cmの王曼昱。丁寧はこの難関を2−0で乗り切り、決勝リーグに進出。陳夢と馮亜蘭を連破して代表権を手にした。

 決勝リーグで随一の激戦となったのは、丁寧対馮亜蘭戦。第3ゲーム、丁寧の10−4のマッチポイントから馮亜蘭が10−8まで挽回し、次の一本で中陣でのパワードライブの応酬から、フォアに大きく振られた後、バックサイドへの返球を左手に持ち替えてフォアドライブ。これが丁寧のフォアサイドを切って決まり、「何が起こったの?」と呆然とする丁寧。最後は馮亜蘭のフォアドライブがオーバーミスとなり、丁寧が際どく接戦をものにしたが、馮亜蘭の「ハンドスイッチショット」はITTF(国際卓球連盟)のニュースにも取り上げられるなど、大いに注目を集めた。劉国梁総監督も「馬龍や張継科にも打てないショットだよ!」と賞賛している。

 丁寧と同様、一部の女性ファンから「タカラヅカ」的な人気を集める馮亜蘭。勝利を決めると観客の拍手をあおる豪快なパフォーマンスを見せ、それが少しも嫌味(いやみ)がない。丁寧・劉詩ウェンと同世代で国際大会ではチャンスに恵まれていないが、男子の張継科のように、人の目を惹き付ける魅力のある選手だと思う。黒のアンダーウェアを着ているのでわからないが、上半身の至るところにタトゥー(入れ墨)を入れており、その派手さは張継科の比ではない。その一方で、チームメイトの李暁霞からは「気の弱い性格で、昔は試合で負けた時にはいつも『ひとりカラオケ』でストレスを発散していた」と暴露されている。

 劉詩ウェンと丁寧が順当に代表権を獲得し、中国女子のシングルスの出場枠は残り3つ。朱雨玲と陳夢、そして将来性を評価して王曼昱というのが規定路線か。それとも今回の選考会で健闘した馮亜蘭にラストチャンスを与えるか?
  • 中国女子の代表第2号となった丁寧(写真は16年荻村杯)

  • 惜しくも第2ステージ2位の馮亜蘭、15年スーパーリーグプレーオフでのパフォーマンス