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中国リポート

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 3月22日まで行われたITTFプロツアー・カタールオープン。ITTFプロツアーの中でも、最も格付けの高いこの大会で、韓国女子の帰化選手旋風が吹き荒れた。
 女子シングルス1回戦。まず中国香港から移籍した元中国選手・郭芳芳(クワック・バンバン)が世界ランク7位のリ・ジャウェイ(シンガポール)に4-1で勝利。続けて、同じく中国からの帰化選手である唐イェソ(タン・イェソ)が、元ヨーロッパチャンピオンのリュウ・ジャをこちらも4-1で破った。

 そして衝撃的な活躍を見せたのが、韓国女子に現れた「第三の帰化選手」である石賀ジュン(にすい+争)(ソク・ハジュン)だ。唐イェソと同じ大韓航空女子チームのメンバーである彼女は中国名:石磊(シィ・レイ)、1985年生まれの23歳。3歳で引っ越した遼寧省鞍山市で卓球を始め、遼寧省体育学校から山東省へ移籍。これは進路としては世界選手権2位の李暁霞と同じコースで、山東省チームではともに喬雲萍(96年五輪複銀メダリスト)のコーチを受けていたという。15歳で韓国に渡り、昨年唐イェソとともに国籍取得のための試験を受け、韓国国籍を取得した。

 カタールオープンでは、1回戦で同郷(鞍山市)の先輩である王越古(シンガポール)を4-3、続いて同じくシンガポールのスン・ベイベイを4-2で撃破。準々決勝では王楠(中国)にストレート負けを喫したが、世界ランキング6位と18位を連破したことで、4月発表の世界ランキングでは一気に20位台に飛び込んでくる可能性が高い。

 大韓卓球協会の内紛と呼応するように、一気に帰化選手が飛び出してきた韓国女子チーム。ベテランの郭芳芳、唐イェソと違って、石賀ジュンはまだ23歳。中国でも「警戒すべきは唐娜(唐イェソ)ではなく石磊(石賀ジュン)」という声が上がっている。韓国女子チームの主力選手として、日本を含め、ライバルチームにとっては厄介な存在になりそうだ。

Photo上:カタールオープンで一躍その名を轟かせた石賀ジュン。父方のいとこである白石はかつて国家チームに選出されたこともあり、現在はドイツ・ブンデスリーガでプレーしている(写真提供:ITTF)
Photo下:五輪アジア大陸予選で王楠を破った唐イェソ、次第に国際試合にも慣れてきたか
 今日24日の午後6時(現地時間:午前11時)、ギリシャのオリンピア遺跡で、北京五輪の聖火の採火式が行われる。国際オリンピック委員会(IOC)のジャック・ロゲ会長や、ギリシャのパプーリアス大統領なども出席し、ギリシャの女優ナフプリオトゥさんが採火する巫女(みこ)の役を務める。中国からは北京オリンピック組織委員会(BOCOG)のホームページの特約記者として、今や世界的女優となったチャン・ツィイー(章子怡)が採火式を取材するとのこと。

 24~29日まで、ギリシャ国内を回る聖火リレー。そのランナーの中には、中国から来たふたりの元名選手も含まれている。ひとりは04年アテネ五輪の競泳・100m平泳ぎで金メダルを獲得した羅雪娟(ルオ・シュエジュエン)、そしてもうひとりが北京五輪選手村部の副部長を務めている卓球界の元女王・トウ亜萍だ。
 これまでにシドニー五輪、アテネ五輪、トリノ冬季五輪でも聖火ランナーを務めているトウ亜萍。しかし、これまで3回はいずれも中国国内でのリレー参加で、五輪の聖地・ギリシャでの聖火リレーは感慨深いものになりそうだ。採火から6番目の聖火ランナーを担当する。

 ところで、太陽光線を一点に集める凹面鏡に聖火トーチをかざすことで行う聖火の採火式。残念ながら、今日24日の現地の天気予報は雨。昨日行われたリハーサルでもあいにくの曇り空だったそうだが、心配はご無用。事前に採火しておいた種火を使って採火式が行われるそうだ。これから8月8日に行われる北京五輪開会式まで、5大陸での聖火リレーが行われ、4月26日には日本の長野市を走る予定だ。

Photo:04年五輪予選に姿を見せたトウ亜萍
 今月5日、香港卓球総会は長く総会の秘書長(実務責任者)などを歴任した薛緒初(シュエ・シューチュ)氏が、2月23日にカナダで亡くなっていたことを発表した。享年86歳。
 薛緒初(以下敬称略)は上海市出身で、1950年に香港へ移住。52年の第19回世界卓球選手権ボンベイ(現:ムンバイ)大会で、当時の香港チャンピオンだった姜永寧や、傅其芳とともに香港男子チームを初の団体3位入賞へ導いた。

 薛緒初を語る上で欠かせないのが、61年世界選手権北京大会を巡る、中国と日本の情報戦だ。59年の世界選手権ドルトムント大会で、容国団(中国)に男子シングルスのタイトルを奪われた日本は、新たな秘密兵器として裏ソフトラバーによる「ドライブ」を開発。強力なトップスピンによって、ベルチック(ハンガリー)ら欧州の強豪が一蹴されたというニュースが中国を震撼(しんかん)させた。
 国家チームは数少ない情報をもとに、仮想・日本選手を急遽育成し、フォアドライブの習得に当たらせることを決定。当時、チームで数少ない裏ソフトの使用者として、薛緒初の弟である薛偉初が立候補した。(中国リポート07/10/29『国家隊の名もなき英雄たち-中編』参照)。当時、香港チームは日本チームとよく練習試合を行っていたため、薛緒初は日本選手のドライブを熟知しており、手紙を通じて弟にアドバイスを与え続けたのだ。
 そして中国は、タイミングの早いショートを軸とした速攻戦術で日本のドライブを封じ、北京大会の男子団体決勝で日本を5-2で破った。ワックスで滑りやすくなったフロアなど他の要因もあるが、大会前に薛緒初によってもたらされた情報は、中国の団体初タイトルに大きく貢献した。

 52年の世界選手権ボンベイ大会で、ともに香港男子チームのメンバーとして団体3位入賞を勝ち取った傅其芳や姜永寧は、のちに中国国家チームに入り、現役引退後は傅其芳が国家チーム総監督、姜永寧がコーチを務めた。しかし、ふたりとも68年に文化大革命による迫害で自殺。香港から中国へ戻っていたら、薛緒初も同じ運命をたどったかもしれない。今年は盟友たちの死からちょうど40年目だった。 
 今月28日、福建省・福州市で、卓球の世界チャンピオンたちが集う「世界チャンピオンたちといざ北京五輪へ!(世界冠軍与奥運同行)」と名付けられたエキシビション・マッチが行われる。往年の名選手とともに、より北京五輪を盛り上げようというこのエキシビション、荘則棟、徐寅生、郭躍華、陳新華、曹燕華ら豪華なメンバーが顔を揃える。

 今回の目玉は、何と言っても福建省チームの先輩・後輩である郭躍華と陳新華のエキシビションマッチだろう。世界選手権で2度の優勝を誇る郭躍華は、これまでにも中国全土で、カットマンの梁戈亮や陳新華らとエキシビションを行っている。なにしろ超一流の技術の持ち主が、コミカルな動きと神業(かみわざ)のようなボールさばきを披露するのだから、面白くないはずがない。豪快なドライブと華麗なカットの応酬が続いたかと思えば、ラケットをショーツの前に差し込んで打ち合ったり、ちゃぶ台ほどもある巨大ラケットでラリーを続けたりで、観客はまさに抱腹絶倒、拍手喝采だ。

 3月16日には会場となる福建省体育館に姿を現し、自らチケット販売とサイン会を行った郭躍華。「エキシビションマッチをやるのは、何か利益を得るためじゃない。より多くの若者を卓球に引きつけ、彼らに卓球が大好きになってほしい。そして実際にラケットを握ってほしいんだ」と記者会見で語った。現在、福建省卓球チームの総監督を務める郭躍華、卓球への情熱はまだまだ健在なのだ。

 それにしても、中国はかつての名選手がよく集まる。それだけ影響力があるということだろうが、年に何回こんなイベントをやっているんだろうか…。

Photo上:95年世界選手権天津大会で「ショーツ差し込みラリー」を披露する郭躍華。今からもう13年前になる
Photo:実業界から引退して、現在は福建省チームで指導に当たる郭躍華
 張燮林が国際卓球連盟(ITTF)から表彰されたのを良い機会として、かつて中国伝統の戦型のひとつだった「ペンホルダーカット主戦型」を少し紹介してみたい。
 二十年くらい前まで、中国の卓球の技術書の「グリップ」の項では、必ずペンホルダーカット主戦型のグリップが紹介されていた。ラケットの表面は親指だけで支え、裏面は四本の指を開いて支える独特のグリップで、フリスビーの持ち方をイメージしてもらうと分かりやすい。ラケットはペンホルダーだが、握り方はシェークとペンの中間という感じだ。

 フォアカットもバックカットも、すべて表(おもて)面で打球するペンホルダーカット主戦型。フォアカットはシェークカット主戦型とほぼ同じスイングだが、バックカットはフリスビーを床に向かって投げるようなスイングになる。左写真上は、張燮林のバックカットのインパクト直前をとらえたもの。ここからラケットを振り下ろしていく。
 ちなみに、前陣でバックハンド強打に行く時だけ、普通のペンホルダーと同じように人差し指を表面に出す。実際にやってみるとわかるが、そうしないとうまくラケットがかぶさらず、高く浮いたボールを強打できないのだ。

 日本選手を大混乱に陥れた、張燮林の変化カット。使用していたツブ高ラバーは、彼が紅双喜の工場で偶然見つけた、不良品のツブの高い一枚ラバーだった。それを遊びで使ってみる、というところまでは卓球選手なら誰でもやりそうなこと。しかし、その特性を自らも学びながら、世界のトップクラスに成長していった彼はやはり非凡だろう。そしてその研究心が、中国女子チームの監督として、世界選手権団体8連覇(75~89年)を支える下地ともなった。ペンツブ高攻守型の葛新愛や黄俊群、シェークカット主戦型の童玲、そしてシェーク異質攻守型のトウ亜萍など、ツブ高ラバーを使用する多彩な戦型の選手が育ち、中国女子の黄金時代を支えた。

 1970年代後半、ハンガリーに代表される、ヨーロッパのパワードライブ型の隆盛とともに、次第に姿を消していったペンホルダーカット主戦型。77年世界選手権で男子団体優勝メンバーのひとりだった王俊が、中国代表メンバーに入った最後のペンカットマンだった。
 これから中国がペンホルダーカット主戦型を育成することはないだろう。裏面をうまく使ってバックカットの弱点を補いながら、強力な変化サービスからの速攻や、前陣でのショートとカットの使い分けによって、相手をかく乱するプレーヤーが出てくる可能性はある。…それは守備主体の優雅なペンカットプレーとは、まったく別物と言うべきだろう。

Photo上:表(おもて)面で打球する張燮林のバックカット
Photo下:張燮林が使用した伝説のラケット「順風」。使われていた木材は、シベリアから輸送されてきた缶詰の木の箱で、その乾燥と締まり具合がラケットにピッタリだったという

 話はさかのぼって先月28日のことになるが、中国卓球界の名士ふたりが長年の国際卓球界への多大な貢献により、国際卓球連盟(ITTF)から『貢献賞』の表彰を受けた。そのふたりとは、オールドファンにはおなじみの張燮林(チャン・シエリン)氏と、中国の審判員のトップ・孫麒麟(スン・チィリン)氏。

 張燮林氏は現在68歳。世界選手権では団体4回、ダブルス1回、混合ダブルス1回と6つのタイトルを獲得した名選手だ。戦型は右ペンホルダーのカットマン、工場の不良品の一枚ラバーにひらめきを得て、世界初のツブ高ラバーとして使用。対戦した選手たちを大混乱に陥れ、「海底撈月(ハイディラオユエ)」と称賛された。これは麻雀の役ではなく、「海に映った月を本物と思って掬(すく)い取ろうとする」、つまり相手が無駄な凡ミスを重ねるということ。ついたアダ名は「卓球界の魔術師」。
 現役引退後は1972年から中国女子卓球チーム監督を務め、95年に監督職を陸元盛に譲るまで、8連覇を含む10回の団体優勝を達成。中国を代表する名伯楽のひとりとなった。2001年に国家体育総局の卓球・バドミントン管理センター副主任の職を辞して第一線を退いたが、交歓イベントなどでは元気な姿を見せている。

 上海の名門大学・上海交通大学の体育学部長を務める孫麒麟氏は、現在58歳。ワールドカップや中国開催のプロツアーなどで審判長を歴任し、世界選手権広州大会でも審判長を務めた。卓球や体育理論の教材にも多くの著書があり、中国の卓球界では知らない者のいない存在なのだ。
 北京五輪を控え、中国卓球協会は審判員の育成を進めてきた。孫氏にとっても、これからますます忙しい日々が続きそうだ。

Photo上:昨年10月に来日した際の張燮林氏
Photo下:こちらは昨年11月、地元・上海で開催された上海ラージ大会に出席した孫麒麟氏
 世界選手権団体戦・広州大会の男子予選グループ、初戦でA.フィリモン(ルーマニア)に1-3で敗れた王励勤。中陣からブンブン振り回してくるフィリモンのバックドライブに、調子が上がり切らないまま敗れた。
 王励勤が世界選手権のシングルスで敗れるのは、実は久しぶりのこと。彼は2003年の世界選手権個人戦・パリ大会準々決勝でシュラガーに敗れて以来、このフィリモン戦まで一度も負けていなかったからだ。王皓が世界選手権の団体戦でいまだ無敗、18連勝中であることは先に述べたが、王励勤の記録はさらにその上を行く。その連勝街道を一気に掲載すると…。

[2004世界選手権団体戦-ドーハ大会] 7勝0敗
 3-0 バリン(フランス)
 3-2 遊澤(日本)
 3-0 陳衛星(オーストリア)
 3-2 シュラガー(オーストリア)
 3-1 柳承敏(韓国)
 3-0 ロスコフ(ドイツ)
 3-1 フェイヤーコナート(ドイツ)
[2005世界選手権個人戦-上海大会] 7勝0敗
 4-1 マゴチ(南アフリカ)
 4-0 スッフ(ポーランド)
 4-0 ベンツェン(デンマーク)
 4-3 李静(中国香港)
 4-2 陳杞(中国)
 4-1 呉尚垠(韓国)
 4-2 馬琳(中国)
[2006世界選手権団体戦-ブレーメン大会] 9勝0敗
 3-0 クリサン(ルーマニア)
 3-0 ハイスター(オランダ)
 3-1 メイス(デンマーク)
 3-0 ルンクイスト(スウェーデン)
 3-0 ボボチーカ(イタリア)
 3-1 エロワ(フランス)
 3-0 ズース(ドイツ)
 3-2 ボル(ドイツ)
 3-2 柳承敏(韓国)
[2007世界選手権個人戦-ザグレブ大会] 7勝0敗
 4-0 江宏傑(チャイニーズタイペイ)
 4-0 P.セイブ(ベルギー)
 4-0 劉松(アルゼンチン)
 4-0 侯英超(中国)
 4-0 ハオ帥(中国)
 4-3 柳承敏(韓国)
 4-3 馬琳(中国)
[2008世界選手権団体戦-広州大会]
×1-3 フィリモン(ルーマニア) →シングルスの連勝ストップ

 なんと04年ドーハ大会から、勝ちも勝ったりシングルス30連勝。…調べてみて初めてわかったことだ。
 かつては「ガラスのハート」の持ち主と言われ、団体戦ではメンバーを外されることも多かった王励勤。01年世界選手権大阪大会では、決勝戦でベンチに入ることすら許されず、観客席からひとり優勝に歓喜するチームメイトを見つめていた。03年世界選手権パリ大会準々決勝のシュラガー戦も、勝利を9割9分手中にしながら、まさかの大逆転負け。そのせいか、世界選手権で3回の優勝を果たしてなお、王励勤のチャンピオンとしての風格は、まだ先輩の劉国梁や孔令輝に及ばない印象がある。しかし、この4年間の世界選手権での成績は、中国男子チームの大エースの名に恥じないものだ。
 彼に足りない最後の1ピース。それはもちろん、北京五輪でのシングルスの金メダルだろう。

 Photo上:01大阪大会では、団体戦での屈辱をバネにシングルス初優勝。試合後のベンチで涙する
Photo中:03パリ大会準々決勝ではシュラガーに失意の逆転負け
Photo下:広州大会ではフィリモンに敗れたものの、その後再び7連勝。自信満々の戦いぶりでチームを優勝へ導いた
 世界選手権広州大会の女子団体決勝で、中国と好ゲームを展開したシンガポール女子チーム。準決勝で力なく敗れた中国香港とは違って、中国とがっぷり四つに組み合い、「ガチンコ勝負のシンガポール」を改めて印象づけた。
 しかし、新記録の団体銀メダルを携(たずさ)え、シンガポールのチャンギ国際空港に降り立った彼女たちを待っていたのは、あまりにも閑散とした光景だったようだ。帰国当日の3月3日、空港でチームを出迎えたのは、なんとシンガポール卓球総会の職員2名と、男子選手の母親ひとりだけ。凱旋を讃える歓声も、報道陣のカメラの砲列やまばゆいフラッシュも、そこにはなかった。

 シンガポール女子チームのエース、リ・ジャウェイは、シンガポールの華字紙(中国語の新聞)『聯合早報』の取材に応えて次のように述べている。
「私たちチームのメンバーの多くは、非常に落胆しています。卓球総会が大々的な歓迎をしないのは普通だとは思いますが、やはり納得できない部分がある。東南アジア選手権から帰国した時は、いつも熱烈な歓迎を受けるのに、今回は世界選手権にも関わらず、私たちの帰国を知る人はかえって少なかったようです」。
 シンガポール卓球総会の鄭杰奇会長は「私たちはチームの帰国当日、非常に忙しく、また体育協会からも(出迎えの)人数を集めることができないという連絡があった。普段はチームのメンバーが帰国するたび、熱烈な歓迎ぶりで出迎えている」と苦しい弁明。

 シンガポール・ボウリング総会の潘黄惠珍会長は、同じ『聯合早報』紙上でこうコメントしている。
 「スポーツはある意味ではビジネス。選手が良い成績を挙げたら、体育総会はいわばセールスマンとなって、そのニュースを大々的に宣伝するべきでしょう。総会がアピールをしなければ、国民には何も伝わらないし、国民が何も知らなければ、どうして空港で選手たちを歓迎することができるでしょうか。
 総会はもっと積極的になるべきです。帰国した選手たちを歓迎することは、スポーツ文化発展の一翼を担うことになるのだから」。さすが国際ボウリング連盟会長にも選ばれた女傑、なかなか「やり手」の発言だが、的を得た指摘と言うべきだろう。

 日本でも、選手たちをもっと空港で熱烈に歓迎してもいい。世界選手権やオリンピックからの帰国はだいたい平日になるし、成田空港や関西国際空港まで足を伸ばすのは大変だ。それでも、卓球ファンが50人でも集まればかなりの集団になる。テレビで選手たちの記者会見と同時に、選手を迎えるファンたちの映像が流れれば、「卓球は盛り上がっている」という印象を視聴者に与えることができる。
 北京五輪の閉会式は8月24日、選手団の帰国はおそらく25日(月)だ。特に夏期休暇の中高生や大学生の皆さん、ひとつ考えてみてはどうでしょう。

Photo上:女子表彰でのシンガポール女子チーム
Photo下:見事にエースの重責を果たしたリ・ジャウェイだったが…
 中国の大手ポータルサイト「新浪」のスポーツページなどで、今回の世界選手権団体戦の「七大イケメン」が選ばれ、卓球ファンの間でちょっとした話題になっている。「八大美女」というのは良く聞くが、「七大イケメン」というのは初耳だ。中国は日本と同じように、人や物を数字でくくることが多く、卓球界でも世界団体の代表選手を「五虎将」「五金花」と表現したり、王励勤、馬琳、王皓の3人を見出しに入れる時は「二王一馬」。なんとも分かりやすい。
 さて、気になる「七大イケメン」の人選は…。

1. ルベッソン(フランス)
2. メイス(デンマーク)
3. コルベル(チェコ)
4. 李静(中国香港)
5. 王皓(中国)
6. オフチャロフ(ドイツ)
7. ツグウェル(デンマーク)

 うなずける顔もあり、首をかしげる顔もありといったところだ。ただ、人選のバランスはなかなかのもので、アダルトな魅力の李静とコルベル、正統派のメイスと王皓、あどけなさを残すオフチャロフに、タフガイ系のツグウェルとよりどりみどり。…ルベッソンだけはなんとも分類のしようがない。それ以前の問題のような気もする。左の写真を見て考えていただきたい。

 ひとつ気になるのは、中国では誰もが認めるナイスガイ・陳杞の名前がないこと。彼は別格ということなのか、それとも素行の悪さが影響しているのか…。

Photo上:広州大会では日本戦で吉田海偉に敗れたルベッソン
Photo:「俺を忘れちゃ困るゼ」。編集部イチオシ、ルーマニアのフィリモン

 中国の卓球総合サイト「全Pingpang(alltt.com)」の投稿掲示板で、世界選手権広州大会の終了後、面白い論争が持ち上がっている。事の発端は最初に書き込んだ投稿者の、甚だ私的な意見によるものなのだが…。その論争の渦中にいる人物は、男子世界ランキング1位の王皓だ。

 これまでは「鉤子発球」と呼ばれる、手首を内側に折り曲げて出す変化の激しいフォアサービスが武器だった王皓。しかし、テレビでそのプレーを観ていた人はお気づきかもしれないが、今大会で王皓は新しいフォアサービスを試していた。
 男子決勝の李廷佑戦で、王皓が何気なく出したそのサービスのフォームをひと目見た筆者は息を呑んだ。「り、劉国梁がいる」。劉国梁監督はベンチにどっかり座っているから本人ではないし、健康そのものだから亡霊でもないのだが、そのサービスフォームはとにかく劉国梁と瓜ふたつなのだ。
 これは伝統的に中国のペン速攻選手に多いサービスのフォームで、通常フォアサービスは左足を踏み込みながらサービスを出す選手が多いのだが、この劉国梁スタイルのサービスはまず右足を高く上げながら右肩を引き、そのまま体を回しながら、右足を踏み込んでインパクトする。

 この王皓の劉国梁式サービスに対し、「全Pingpang」の掲示板で「王皓、あんな劉国梁がやるような気持ち悪いサービスは出さないでくれ」と書き込んだ投稿者がいたことから論争が始まった。論争といっても、99%は書き込みの主に否定的な意見。「完全に偏見だ」「効果が重要、見た目は重要じゃない」「劉国梁はあのサービスでシェークをなぎ倒したんだ」等々…。最も傑作なのは「見た目が大事ならフィギアスケートでも見に行け!」。

 劉国梁監督直伝の、王皓のニューサービス。確かにちょっと格好悪い気はするのだが、中国の卓球ファンはひとまず王皓の試行錯誤にエールを送っているようだ。

Photo上:劉国梁先生の往年のフォアサービス
Photo中:王皓クンのフォアサービス。先生と比べるとやはりぎこちない。ちょっと世界ランキング1位には見えません
Photo下:個性的なフォームを正面からどうぞ