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 石川と平野のあまりに過酷な選考レース。その決着の舞台となった『ITTFワールドツアー・グランドファイナル』だが、実はそのクライマックスは先週カナダで行われた、普段なら日本のトップ選手には無縁の国際大会だった。

 ITTFワールドツアーの下部大会に当たる『ITTFチャレンジプラス』のノースアメリカンオープン。獲得できる世界ランキングのポイントは少なく、優勝者に与えられる「1100ポイント」でなければ、石川・平野は自らの世界ランキングのポイントを伸ばすことができなかった。
 大会前の時点で平野に「65ポイント」のリードを許していた石川は「最後の最後、本当に最後のチャンス」と覚悟を決めた。平野も接戦の連続で気力を振り絞って、女子シングルスの決勝で対戦。激しい接戦の末、石川が4−2で勝利して優勝し、平野を逆転して「135ポイント」の差をつけた。

 「最後のチャンスと思っていたカナダ(ノースアメリカンオープン)で、今年一番良い試合ができた。結果がどうあっても納得できるプレーで、最後にトンネルを抜けられたという気持ちでいられるのはすごく大きい」と石川は語る。一方の平野は「ノースアメリカンオープンが終わった時点で、気持ちの整理はある程度ついていた。今日は悔しいというより、1年間いろいろあったなとすごく思いました」とコメント。グランドファイナルでは平野の敗戦で、石川の五輪代表が決まったが、直接対決で決着をつけられたというのは、東京五輪を戦ううえでも吹っ切れる部分があるのではないか。

 五輪開催年の1月の世界ランキングで、上位2名が五輪シングルスの代表候補になる選考方法を、日本卓球協会は2012年ロンドン五輪から採用している。このロンドン五輪で、日本女子が歴史的な団体銀メダルを獲得。続くリオ五輪では男子団体銀メダル、女子団体銅メダル、水谷隼の男子シングルス銅メダルというメダルラッシュにつながっていった。あまりに過酷な五輪選考レースが、選手たちを追い込み、鍛え、レベルを上げてきたのもまた事実だ。

 「五輪の考えられないようなプレッシャーの中で戦う強さは、この1年で本当に鍛えられたと思う。それを力にして、パワーアップした自分で半年後にコートに立ちたい」。石川佳純はそう語った後、「でも今は休みたいです」と笑った。

 この選考レースで味わった苦しみは、一生心のどこかに残るだろう。一方で、石川と平野は五輪団体戦を見据えて国際大会でダブルスのペアを組み、五輪団体戦では1番ダブルスという「要(かなめ)」を担う可能性が大きい。戦い済んで、同じ苦しみを分かち合った者として、地元開催の東京五輪で思う存分暴れてほしい。そして今はただひと言、「本当にお疲れさまでした」と(柳澤)。
 なぜ、ここまで追い詰められなければならないのか。石川佳純(全農)が平野美宇(日本生命)を世界ランキングポイントでわずかに上回り、伊藤美誠(スターツ)に続いて東京五輪・卓球競技のシングルス代表候補に確定した女子五輪代表の選考レース。「光が見えなかった」(石川)、「もう卓球をやめようと思った」(平野)と語り、赤く泣き腫らした眼で質問に答えた両選手。倒れ込むようにゴールテープを切った、まるで勝者なきレースだった。

 石川は現世界女王の劉詩ウェン(中国)に0−4、平野は王芸迪(中国)に1−4とともに1回戦で敗れ、獲得した世界ランキングのポイントは同じ「1020」。リオ五輪から3年、そしてこの1年で一気に激しさを増した選考レースで、石川と平野の世界ランキングポイントの差はわずか「135」だった。年間12大会行われるITTFワールドツアーでも、1回勝ち進むことができれば逆転可能な差。石川も平野も、その1勝を挙げるためにもがき、苦しんだ。

 「1年間長かったな……という気持ちです。この1年、うまくいったことがほとんどないくらい辛いシーズンだった。なかなかチャンスを生かせない自分がすごく悔しかった」。ミックスゾーンでそう語った石川。10月のスウェーデンオープン、ドイツオープンと格下の選手に早いラウンドで敗れる大会が続き、世界ランキングポイントで平野に逆転を許した。「内容的にもダメな負けが続いて、光が見えなかった」と石川は言う。
 「自分の一番大事な時になかなか調子が上がらなくて。家族のサポートだったりとか、つらい時に励ましてくれた方々がいなかったら、今日ここにいることも難しかったんじゃないかと思うくらい大変でした」(石川)。

 一方の平野は、16年リオ五輪で代表入りを逃し、Pカード(選手負傷時の代替出場選手)として、会場で日本女子の銅メダル獲得を見守った。その悔しさと五輪に懸ける思いを胸に、2017年にアジア選手権で中国選手を連破して優勝、17年世界選手権で銅メダル獲得と歴史的な快挙を連発。しかし、その後は卓球へのモチベーションの維持に苦しみ、ラケットを置くことさえ考えた。

 「去年くらいはずっと卓球をやめたかった。その中で自分なりに、今年は頑張れたかなと思います。(リオ五輪からの)3年間、ずっと頑張ることができなかった。卓球に対しての気持ちが弱かった。自分の中ではこれが精一杯だったと思うし、今回はこういう結果だったということを受け止めたい」(平野)。日本女子の団体3番手の選手は強化本部推薦で、現時点では平野に確定したわけではないが、実績と世界ランキングから考えれば、平野が選ばれる可能性は大きい。
●男子シングルス1回戦
樊振東(中国) 5、16、10、7 ボル(ドイツ)
林昀儒(チャイニーズタイペイ) 7、9、11、9 ファルク(スウェーデン)
梁靖崑(中国) 4、6、8、1 黃鎮庭(香港)
許シン(中国) −5、−8、10、7、8、4 趙子豪(中国)

男子シングルス1回戦の4試合の結果は上記のとおり。樊振東、林昀儒、梁靖崑、許シンという優勝候補の強豪たちが準々決勝へ勝ち上がった。

一時の不調を完全に脱した感のある樊振東は、ボルと見応えあるカウンターの応酬。以前はチキータからのバックハンド速攻がトレードマークだったが、バックハンドの緩急やツッツキからうまく打たせてとるプレーが増え、馬龍のような完成度の高い攻守が光った。林昀儒はチキータで先手を取ってからの連続攻撃と、長短の読みにくいサービス&台上プレーからのカウンターでファルクを料理。見事に試合をコントロールしていた。

梁靖崑の対戦相手である黃鎮庭は、準決勝進出ペアに東京五輪の出場権が与えられる混合ダブルス(準々決勝)では奮闘したが、シングルスの梁靖崑戦は「とにかくコートに立っていられればいい」というプレー内容。T2ダイヤモンドで傷めた右足首が完治しておらず、フォアドライブはほとんど振らずに裏面打法のみで戦った。

許シンは上海・曹燕華卓球学校の後輩である趙子豪にコースを読み切られ、得意のループドライブも通じずに2ゲームを落としたが、そこから逆転勝ち。明日の男子シングルス1回戦で張本智和がフランチスカ(ドイツ)を破って勝ち上がれば、再び許シンと相まみえることになる。
●女子シングルス1回戦
佐藤瞳 -4、4、-7、8、9、4 丁寧(中国)

 カットの佐藤瞳が6月のジャパンオープンに続き、リオ五輪女王の丁寧を破る金星。ゲームカウント2−2の5ゲーム目、中盤でリードを奪われてから逆転し、6ゲーム目は丁寧が崩れた。前に寄せられてからミドルを突かれてもきっちり返球し、低く厳しいカットを送り続ける佐藤の鉄壁の守りに、地元の大観衆も驚嘆。長いラリーから佐藤のカットがエッジで入ると、大きなどよめきが巻き起こった。

 ライバルの劉詩ウェンほどカット打ちは得意ではないが、ドライブの回転量と驚異的な粘りで対カットにも強さを見せてきた丁寧。しかし、佐藤に対しては「根負け」したようなラリーも目立った。ここ最近は故障や病気も多く、以前のような驚異的なフィジカルを生かしたパワープレーは影を潜めている。

 試合後の丁寧の表情は穏やかだったが、中国代表の五輪選考レースもここに来て風雲急を告げる展開。劉詩ウェンはほぼ当確だが、残る1枚のシングルスの代表切符は丁寧か、孫穎莎か、それとも陳夢の巻き返しがあるのか。今大会の結果が大きく影響すると言われる中で、丁寧にとっては痛い敗戦だ。
●女子シングルス1回戦
劉詩ウェン(中国) 7、12、7、9 石川佳純
王曼昱(中国) 8、6、6、6 朱雨玲(中国)
王芸迪(中国) 6、7、6、−6、5 平野美宇

 石川佳純対劉詩ウェン、平野美宇対王芸迪の2試合が続けて行われた女子シングルス1回戦。石川は0−4、平野は1−4でともに敗れた。両選手のITTFワールドツアー・グランドファイナルでの獲得ポイントは同じ1020ポイント。これをもって、世界ランキングのランキングポイントで135点をリードしていた石川が、伊藤美誠に次いで東京五輪・卓球競技の二人目のシングルス代表候補となることが確定した。

 石川は過去0勝11敗の劉詩ウェンに対し、試合後に「2ゲーム取るのが今日の目標だった。2ゲーム取れば勝ちがやっと見えてくる」と試合後のコメント。劉詩ウェンは両ハンドでのストレートの攻めを得意とする石川に対し、特にストレートのバック対バックで優勢に立った。右利きのバックストレートへのバック連打は、対右利きにはあまり使わないコース。コントロールの精度が落ちてもおかしくないのだが、劉詩ウェンのバックストレートのバック連打は見事だった。そしてバックに意識がいき過ぎると、フォアサイドを切られる。ミドルをうまく突いても、一度は効いても二度目にはすかさず狙われた。

 2ゲーム目にはゲームポイントを2回奪い、4ゲーム目も5−1と大きくリードした石川だが、劉詩ウェンからゲームを奪うことはできず。「……強い、劉詩ウェン。まだまだです。ネットやエッジがついても崩れないし、すごく勉強になった」と語った。この時点で五輪代表切符の行方は平野の結果待ちになったが、「今はもう、自分以外のことはどうもできない。やることはある程度できたかなという今の試合だったので、あとはもう待つだけです」とスッキリした表情を見せた。

 一方、平野は王芸迪に対し、出足から思うような試合運びができない。フォアの攻撃力に比べ、バックに難があると思われた王芸迪だが、「平野対策」は相当積んできたか、バック対バックでも簡単には崩れない。逆にバック対バックから王芸迪が先に平野のフォアを突き、ノータッチで抜く。強打者のイメージがある王芸迪だが、サービスも意外にうまく、平野のストップやツッツキのミスが試合を通じて何本も出た。

 緩急をつけたバックドライブなどで得点を重ねた4ゲーム目のプレーが、出足からできていれば結果は変わったかもしれない。しかし、序盤の出遅れを取り戻すことができず、平野も1−4で敗れた。勝てば自力で五輪代表の切符を手にできる戦いだったが、連戦の疲れもあり、センターコートの強い光に照らされた平野の顔は蒼白に見えた。「3人目の五輪代表は自分が決めることではないので、待つだけかなと思いますけど、可能性のある位置にはいる。選んでいただけたらしっかり結果を残せるように頑張りたい」と試合後に語った。
 今日の試合に先立って行われた開会式。観客から最も大きな声援を受けたのはこの男だ。地元・河南省新郷市出身の劉国梁・中国卓球協会会長。大会マスコットにも採用されるなど、会場の至る所に顔を出している。

 大会のオフィシャルホテルは、開発区にそびえ立つ60階建ての超高層ホテル『JWマリオット鄭州』。会場もこれまた広大な開発区に、新しく建てられたばかりの鄭州オリンピックセンター体育館。劉国梁会長の「面子」もヒシヒシと感じる大会だ。

 さあ、いよいよ男子シングルス1回戦がスタート。続いて女子シングルスの石川佳純対劉詩ウェン戦、平野美宇対王芸迪戦も行われる。日本女子の五輪代表選考を巡る戦い、過酷な選考レースの最後の直線を、しっかりと見届けたい。
●女子ダブルス準々決勝
木原美悠/長崎美柚 9、−6、−9、6、4 バラージョバ/マテロバ(スロバキア/チェコ)
陳思羽/鄭先知(チャイニーズタイペイ) 9、−7、6、9 平野美宇/芝田沙季
孫穎莎/王曼昱(中国) 7、11、7 呉穎嵐/蘇慧音(香港)
田志希/梁夏銀(韓国) 9、9、−5、4 杜凱琹/李皓晴(香港)

●男子ダブルス準々決勝
梁靖崑/林高遠(中国) 9、−5、11、7 陳建安/荘智淵(チャイニーズタイペイ)
ボル/フランチスカ(ドイツ) −9、10、5、−8、9 デュダ/チウ・ダン(ドイツ)
樊振東/許シン(中国) 7、5、3 何鈞傑/黃鎮庭(香港)
寥振ティン/林昀儒(チャイニーズタイペイ) 8、−7、7、1 鄭栄植/李尚洙(韓国)

 2019 ITTF・WTGF(ワールドツアー・グランドファイナル)は男女ダブルスも準々決勝が進行。女子ダブルスの第1シードで、世界ジュニア選手権で優勝したばかりの木原/長崎ペアは、ラリー戦に強いバラージョバ/マテロバに苦戦。「試合前の練習でうまくいかない部分があって、精神的に不安を抱えたまま試合に入ってしまった。出足から100%試合に集中できなかった」と長崎が試合後に語ったように、抜群のコンビネーションを誇るふたりがどこか噛み合わないプレー。イージーミスが多く、集中力が低い状態が続いていた。それでも中盤から、台上から先手を取って攻める本来のパターンが少しずつ増え、ヨーロッパペアを振り切った。

 続く準決勝の相手は孫穎莎/王曼昱(中国)。ベンチに入った中澤鋭コーチは「ジャパンオープンで良い試合(ゲームオールで孫穎莎/王曼昱が勝利)をしていたけど、自分たちが押していたのに最後の一本をミスする場面があった。長崎が台上で先手を取り、木原の守備やチャンスメイクとうまく噛み合えば、勝つチャンスは十分あると思います」と語る。長崎は「世界選手権優勝ペアなので、自分たちがどれくらいできるか試して、楽しみたい」と前向きだ。

 一方、平野/芝田ペアはタイペイペアに苦杯。両ハンドでうまく緩急をつけたのだが、タイペイペアは鄭先知がミスなくコースを突き、陳思羽がスッと前に出て豪打を打ち込んできた。平野はこの後、女子シングルス1回戦の王芸迪(中国)戦という大一番が待っている。さすがにベストのプレーは難しいだろう。
 (公財)日本卓球協会の元副会長で、熊本県卓球協会名誉会長の深水伸一(ふかみ・しんいち)さんが、12月8日に亡くなった。93歳だった。

 深水さんは平成2年より熊本県卓球協会の会長に就任し長年熊本の卓球界を牽引。平成12〜13年には日本卓球協会の副会長として活動し、平成14年からは日本卓球協会の顧問を務めていた。
●混合ダブルス準々決勝
許シン/劉詩ウェン(中国) 3、5、11 趙大成/申裕斌(韓国)
黃鎮庭/杜凱琹(香港) 10、9、7 ピスチェイ/バラージョバ(スロバキア)
水谷隼/伊藤美誠 7、6、6 フロール/ガスニエ(フランス)
林昀儒/鄭怡静(チャイニーズタイペイ) 7、3、4 スーディ/ペルゲル(ハンガリー)

 こちら、中国・河南省鄭州市の鄭州オリンピックセンター体育館。『中国農業銀行杯・ITTFワールドツアー・グランドファイナル2019』が開幕!
 中国卓球協会の劉国梁会長のお膝元(出身地)、しかし今までビッグゲームを開催した経験の少ない鄭州市。融通の利かないこと甚だしく、実際に取材を始めるまでが大変だったのだが……それは置いておいて。大会はまず混合ダブルス準々決勝からスタートした。

 日本から出場の水谷/伊藤ペアはフランスペアに快勝。試合後に伊藤が「自分と水谷選手の位置取りがたまに入れ替わったりもするし。いろいろな位置でプレーできるのが自分たちの良さ。やっていて「ここ入ってくる?!」と自分でもビックリすることもあるし、すごく楽しい」と語ったように、両選手とも前でも後ろでも変幻自在のプレー。サービス・レシーブで確実に優位に立ちながら、常にリードを奪った。

 ワールドツアーで好成績を連発し、すでに五輪代表選考レースを勝ち抜いている伊藤。勝手知ったる仲の水谷と混合ダブルスを戦った後ということもあるが、表情には余裕が感じられた。

 一方の水谷は腰の状態が思わしくなく、コルセットをはめてのプレー。「腰は昨日より良くはなってきている。無理はできないですけどやるしかない。この大会ですべてを出し尽くして、終わったら休養したい」とコメント。「五輪に出場できなければ、これからの試合が一試合一試合、引退試合になるので悔いのないように戦いたい」と悲壮な言葉を口にした。自力で五輪への道が拓けるシングルスの代表切符でなければ、五輪出場は確約されていないということだ。他力ではなく、最後まで自力で五輪への切符を取りに行く。

 「東京五輪でのミックス(混合複)は、出場できるとしたら優勝しか目指していない。どの国のペアともやったことがあるし、中国や香港のペアに負けたりしているけど、シングルスや団体に比べるとミックスは圧倒的にチャンスがある。一番チャンスがあるんじゃないかと思います。美誠はビックリするプレーだったり、自分が「取れないかな」と思うボールでも取ったりするので、ぼくの反応が遅れることがある。もっともっと美誠を信じて、そういうことはなくしていきたい」(水谷)。
石川佳純と平野美宇にはリオ五輪に忘れてきたものがある

 日本女子二人にはリオ五輪に忘れてきたものがある。だからこそ、石川佳純(全農)と平野美宇(日本生命)はどんなことをしてでも東京五輪のシングルスのコートに立ちたいと思っている。
 2016年のリオデジャネイロ。12年のロンドンで準決勝に進出していた石川はメダル候補と言われていた。ところが、シングルスの初戦で北朝鮮のカットマン、キム・ソンイに対し、前半強打を連発し、飛ばしていたが、途中で粘りきられ、6ゲーム目に足がつり、最終ゲームにもつれ込み、無念の敗北を喫した。団体でメダルを獲ったものの、石川にはシングルス敗退の無念さが残ったはずだ。
 平野はリオ五輪の時にはリザーブのPカードで、練習相手、ボール拾い、会場での応援と裏方に徹した。リオ五輪の翌年(2017年)の1月で全日本選手権で優勝を飾った後、インタビューで彼女はこう振り返っている。
「リオのオリンピックに出られなかったことは大きかった。かなり悔しかったし、絶対自分が一番で東京オリンピックに出たいと思いました」
「(リオに)行ってよかったと思います。でも、行った直後は『早く帰りたい』と思いました。正直リザーブで行くよりは5番とかで落ちていたほうが良かったと思いました。ただオリンピックの終わりのほうにも感じたんですけど、今になってみればやっぱり『行かせてもらって本当にありがたかった』と感謝しています」
 彼女が望んだ1番では行けないが、彼女が東京五輪に挑む理由は明白だ。

石川18大会、平野19大会に参戦し、その差は135点。過酷なレースのエンディング

 中国の鄭州で行われているITTFワールドツアー・グランドファイナル。この大会のシングルスには世界のトップ16人が参加する。文字通り、この1年間のワールドツアーの獲得ポイントの高い選手だけが参加できる大会だ。女子シングルスには10名の中国選手と4名の日本選手、あとはシンガポールとチャイニーズ・タイペイの選手がひとりずつというアジア独占の大会となっている。
 東京五輪のシングルス枠は2名のみ。伊藤美誠(スターツ)がすでに内定を確実にしており、残り1名を石川佳純(世界ランキング10位)と同11位の平野美宇が激しく争っている。両者の間のポイントはわずかに135点で、石川がリード。
 今回のグランドファイナルで、同じラウンドで両者が負けた場合は石川が日本選手として2番目の世界ランキングとなり、シングルス代表が決定する。平野が石川を超え、2番手に上がるためには石川よりも1回多く勝つこと。

 今日の夜、7時20分(日本時間8時20分)から石川は世界チャンピオンの劉詩ウェン(中国)と対戦して、平野は世界ランキング18位の王芸迪(中国)と8時10分(日本時間9時10分)に対戦する。
 石川は劉に0勝11敗で、直近では9月のアジア選手権で0-3のストレートで敗れている。平野は王に0勝1敗。10月のドイツオープンで平野は1-4で敗れている。
 石川は劉のライジングでとらえる両ハンドの超速ドライブをどれほどしのいで、フォアドライブの攻撃に持っていけるのか。一方の平野は、どれほどの平常心でコートに立ち、ハリケーンと呼ばれた両ハンドを王のコートに叩き込めるかが鍵だ。

 今日の試合で東京五輪代表のシングルスが決まるかもしれない(二人がともに勝てば明日以降に持ち込まれる)。これほど熾烈で過酷な代表レースは世界中で日本だけである。
 1年間のワールドツアーや大陸での試合の獲得ポイントの上位8大会のポイントの合算で世界ランキング決まる。その世界ランキングの上位2名がシングルスに出場できるというのが日本卓球協会が決めた選考基準だ。
 すでに今年に入って石川は18大会、平野は19大会に出場してきた。そのうえで、両者の差はわずか135点。そんな過酷なドラマのエンディングをこれから迎えることになる。 (今野)