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 1月23日、木下グループ(本社:東京都新宿区/グループCEO:木下直哉)は、邱建新(チウ・ジェンシン)氏が木下グループ卓球部の監督に就任したことを発表した。

 元中国ナショナルチームの邱建新氏は、選手時代は巧みなサービスを操る右ペン表ソフト速攻型として、ドイツ・ブンデスリーガでも活躍。現役引退後はドイツでコーチとしてのキャリアを積み、日本の青森山田学園で指導したり、水谷隼選手のプライベートコーチとしても活動。名コーチとしてヨーロッパや日本で高い評価を得ており、水谷隼選手をはじめ多くの強豪選手が所属する木下グループ卓球部の監督として、辣腕(らつわん)を振るうことが期待される。下写真は17年世界選手権個人戦で、松平健太選手(木下グループ)のベンチに入った邱建新氏。
 1月15〜21日に東京・東京体育館で行われた平成29年度全日本選手権大会が終了した。
最終結果は以下のとおり。

大会の詳細は速報ページをご覧ください。

http://world-tt.com/ps_info/ps_report.php?bn=185&md=1

報道は卓球王国4月号(2月21日発売号)に掲載します。
ご期待下さい!


平成29年度全日本卓球選手権・最終結果

★男子シングルス
優勝:張本智和(JOCエリートアカデミー)
2位:水谷隼(木下グループ)
3位:森薗政崇(明治大)
3位:松平健太(木下グループ)

☆女子シングルス
優勝:伊藤美誠(スターツSC)
2位:平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園)
3位:石川佳純(全農)
3位:永尾尭子(アスモ)

★男子ダブルス
優勝:水谷隼/大島祐哉(木下グループ)
2位:上田仁/吉田雅己(協和発酵キリン)
3位:宇田幸矢/張本智和(JOCエリートアカデミー/大原学園・JOCエリートアカデミー)
3位:藤村友也/吉村和弘(日鉄住金物流/愛知工業大)

☆女子ダブルス
優勝:早田ひな/伊藤美誠(日本生命/スターツSC)
2位:梅村優香/塩見真希(四天王寺高)
3位:田代早紀/前田美優(日本生命)
3位:佐藤瞳/橋本帆乃香(ミキハウス)

★混合ダブルス
優勝:森薗政崇/伊藤美誠(明治大/スターツSC)
2位:軽部隆介/松本優希(シチズン時計/サンリツ)
3位:大島祐哉/早田ひな(木下グループ/日本生命)
3位:吉村真晴/石川佳純(名古屋ダイハツ/全農)

★ジュニア男子シングルス
優勝:張本智和(JOCエリートアカデミー)
2位:宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園)
3位:戸上隼輔(野田学園高)
3位:金光宏暢(大原学園高)

☆ジュニア女子シングルス
優勝:長崎美柚(JOCエリートアカデミー)
2位:塩見真希(四天王寺高)
3位:大藤沙月(ミキハウスJSC)
3位:木原美悠(JOCエリートアカデミー)


いよいよ今日から1/21(日)まで全日本卓球選手権大会が開催されます。

卓球王国WEB 全日本速報
http://world-tt.com/ps_info/ps_report.php?bn=185&md=1
のほか以下のホームページをチェックしてみよう!

ミズノ
http://www.mizuno.jp/tabletennis/

卓球ショップ「国際卓球」
http://www.kokusaitakkyu.com

ニッタク(日本卓球)
http://www.nittaku.com

WEB SHOP 卓球屋
http://www.takkyuya.com/

卓レポ.com(タマス)
http://www.takurepo.com/

全日本卓球(公式ページ)
http://japantabletennis.com/zennihon2018/
 国際卓球連盟(ITTF)とT2APACが12月のグランドファイナルで今後、協力関係を結ぶことに合意したと発表した。
 この合意は今後、ITTFのワールドツアーとT2が世界の卓球界の中で協力関係を作り、発展させることを意味している。

 T2の代表で、ITTFワールドツアーのスポンサーの『Seamaster』社長でもあるフランク・ジーはコメントを発表した。
「私の目指していることは、卓球選手が多くの人、卓球ファンだけではなく一般の人からも尊敬され、愛される環境を作ることです。しかも、その環境が、この卓球というスポーツに、もっとメディアの関心が集め、テレビで放映され、さらなるファン、お金が注がれることにつながっていくと思います。私は卓球がこの地球上で最大のスポーツになることを願っているし、選手たちがもっと裕福になり、もっと有名になってほしい。それが私がT2を作り、ITTFのワールドツアーをスポンサーしている理由です。
 ITTFとT2が親密な関係で一緒にやっていけば、さらなるシナジー効果が発揮されるでしょう。その時に前述したような私のゴールが達成されます」

 フランク・ジーはITTFのバイカート会長のコマーシャル・ビジネス部門での特別顧問にもなっている。
 協力関係の中で、T2が作り出した新ルールが一つの改革としてワールドツアーに採用される可能性もあり、それはテレビ放映をも変えるかもしれない。またこの両者の合意で特筆すべきは、試合中のボールのスピンやスピードのトラッキングシステム(追跡システム)や他競技にあるような審判のジャッジへのチャレンジシステム(ビデオ判定)。このような試みをT2をとおして実現していくかもしれない。

 ITTFのバイカート会長はコメントした。
「フランク・ジーのような人が協力してくれることはとてもハッピーなことだ。我々はもっと情熱とエネルギーを注いでいき、卓球をより魅力的なものにしていきたい。2018年は重要な年になる。このT2との協力合意によって、ITTFのワールドツアーがより高いレベルに上がっていくことになるだろう」
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 T2は今まで卓球王国の誌面でも紹介してきたように、革新的なやり方で観客やテレビの前の人をひきつけるルールを作っている。時間制限ルールや「ジュース無しゲーム」、キルゾーンシステム、ボールボーイによる試合の短縮、などだ。
 それらのルールが今後ワールドツアー、ひいては一般のルールにも一部採用される可能性があることをこのITTFの発表はにおわせている。

 T2の代表、『Seamaster』社長でもあるフランク・ジーは、ITTFのビッグスポンサーになることで巧妙にT2を普及させ、ITTFとの協力を取り付けた。ガチガチの卓球人でない、ビジネスマンのアイデアが卓球界を変えようとしている。 (今野)
  • 左がITTF会長のトーマス・バイカート、右がT2代表のフランク・ジー

 日本の卓球界全体は活況を呈している。世界のトップクラスを維持し、いかに中国に勝つのかが大きなテーマになっている。プラス要素だけが見える日本卓球界において「Tプレミア」は苦しみながら進んでいる。
 この状況は1993年にスタートしたサッカーのJリーグや、2016年に開幕したバスケットボールのBリーグと比較するとわかりやすい。

 サッカーは当時の日本リーグで観客も入らず、ワールドカップには一度も行けないサッカー後進国の日本を何とか変えたいと川淵三郎さん(元Jリーグチェアマン)を中心に、サッカー協会も一致団結した。そして、アジアに誇るプロリーグを作り上げた。
 一方、バスケットボールもbjリーグとNBLという二つのリーグが存在して、実質的な分裂状態で国際バスケットボール連盟から国際大会に参加できないという制裁を受けていた。日本代表の実力も世界的には低いものだった。それをサッカーの川淵さんが短期間で統合し、新リーグを作り上げた。
 このサッカーとバスケットに共通していたのは、「負の環境」があったことだ。彼らは変えなければ自分たちの競技団体に未来はない、ことを重々承知していた。マイナス要因が多かったからこそ、変えたいという強い意志が働き、変えやすかった。

 卓球はどうなのか。
 リオ五輪以降、ある種の「卓球ブーム」が訪れている。多くの卓球関係者が今のまま卓球ブームが続いてほしいと思っている。危機感はさほど持っていない。かつてのサッカーやバスケットボールのようにお尻が火がついているわけではない。
 つまり、「変えないと未来はない」という競技団体の対極に卓球があり、「変えなくても未来は安泰」と感じている節があるのだ。

 しかし、Tリーグの松下浩二代表理事 専務理事は「未来は必ずしも安泰ではありません。今は素晴らしい環境ですが、そんな今だからこそ、この環境を継続していけるよう新リーグを立ち上げるのです」と言う。
 スポンサー集め、新規チームとの協議、海外選手への対応に追われている日々も卓球界の未来を思ってのことだ。
 現在、卓球界は「正の環境」だが、Tリーグ自体は「本当に大丈夫か!?」といぶかしがられ、チームが確定しないとプロ選手も動きようがない。ヨーロッパのトップ選手はほぼ12月中には翌シーズンのチームも決まる。
 そんな「負の環境」の中で彼はもがいている。

 いろいろな卓球界のしがらみに縛られ、まさに産みの苦しみのど真ん中でもがいている松下氏。そして、自分の活躍の場を探しながら、じっとTプレミアの進展を待つ日本のトップ選手たち。
 日本の卓球愛好者や関係者の人にはこう問いたい。
「5年後の卓球界、10年後の卓球界にとってTリーグはプラスですか、マイナスですか」と。
 ほとんどの人は「プラス」と答えるだろう。トップ選手の活躍の場、セカンドキャリアの場が作られ、彼らの試合を定期的に見ることができ、さらに卓球がマスコミに取り上げられる。

 ところが、残念ながら、卓球界が一致団結してTリーグを推進しているようには見えない。
 「Tリーグが日本の将来にとってプラスですか?」という問いに、「卓球界にとってプラス」と答えるならば、卓球界の人たちはTリーグをポジティブにとらえて、松下氏の背中を押してほしいと切に願う。
 彼を「孤高の代表理事」にしてはいけない。  (今野)
 本日、新潟・長岡市南部体育館にて全国ろうあ者選手権が開催され、男女一般の部、そして今回が初開催となる男女ユースの部で優勝者が決定した。各種目の上位入賞者は下記のとおり。

【男子一般】
1位:井藤博和(千葉)
2位:亀澤史憲(東京)
3位:灘光晋太郎(東京)

【女子一般】
1位:川崎瑞恵(東京)
2位:椋田愛梨(千葉)
3位:高岡里吏(東京)

【男子ユース】
1位:川口功人(横浜市立ろう特別支援学校)
2位:金田力正(静岡県立沼津聴覚特別支援学校)
3位:潟岡京介(広島県立広島南特別支援学校)

【女子ユース】
1位:杉山愛美(静岡県立沼津聴覚特別支援学校)
2位:國島佳純(愛知県立一宮聾学校)
3位:影山光輝(神奈川県立平塚ろう学校)

 男子一般は上位常連の井藤が初優勝。勝敗で亀澤と並んだが、直接対決で勝利し優勝を決めた。女子一般優勝は大正大4年の川崎。全勝で大学1年時以来2度目の優勝となった。
 今回から初開催となった中・高校生年代で争われるユースの部は川口と杉山がともに全勝で初代王者に輝く。また、今回ユースの部でベスト4に入った男女8名は2019年1・2月に開催される第1回ユースデフリンピック(開催地・アルゼンチン)の日本代表に内定。本大会での活躍にも期待したい。

 この大会の模様は卓球王国3月号(1月20日)に掲載しますのでお楽しみに!
  • 男子一般1位:井藤博和

  • 女子一般1位:川崎瑞恵

  • 男子ユース1位:川口功人

  • 女子ユース1位:杉山愛美

 先月、12月のある日、松下浩二氏はこうつぶやいた。
「今まで生きてきて、こんなにしんどいのは初めてです」
 Tリーグの松下浩二代表理事 専務理事はさまざまな問題に直面していた。彼の人生の中では、プロ第一号の卓球選手として自ら苦しんで歩いても、道は開けて成功した。ヤマト卓球の社長になった時も、彼が歩けば多くの人が支えてくれた。そして会社の業績もV字回復した。

 ところが、Tリーグだけは規模が違いすぎる。卓球界だけの話ではなく、チーム編成で卓球界以外の人との交渉を重ねていくしかない。しかも、誰もが知っているようなトップ企業との交渉なのだ。
 彼の個人プレーだけでは立ち向かえない。「チーム・Tリーグ」としてのチームパワーが必要とされているのだが……。

 今年の10月(もしくは11月)に開幕を予定しているTリーグのトップリーグ「Tプレミア」。今月の末に男女4チームずつが決定し、発表される予定になっているが、チーム選定において苦慮しているとの情報も漏れ聞こえる。
 現時点で、松下浩二氏はチーム編成に奔走しているが、1月末、もしくは2月にでもチームの発表があることを期待しよう。
 
 日本卓球リーグ実業団連盟(日本リーグ)は、Tリーグ加入を先送りしつつ、2021年以降の加入への検討に入った。
 「(日本リーグのチームのTリーグ参戦は)妨げないし、日本リーグとしても各チームに募集をかけていくし、個々のチームがTプレミアに出ることは自由です。各チームが判断することです」と昨年9月の卓球王国のインタビューで佐藤真二・日本リーグ専務理事は答えている。

 女子では日本リーグからTプレミアに参戦するチームもあると聞いているが、スムーズに移行できるだろうか。
 各チームにとって、最大のハードルは1億数千万円とも言われる予算がひとつと、リーグ側が求めているような世界級の登録選手をスカウトできるのかという点だろう。
 
 なぜこれほどTリーグ設立への動きが遅くなってしまったのか。この何年間のTリーグ設立へ向けての動きを振り返ると、見えてくるものがある。
 現存する日本リーグへの配慮と、日本リーグとの共存共栄という理想に引きずられたとも言える。結果、前述したように日本リーグからの回答は「2021年以降の加入への検討」だった。
 もしもTリーグがスタートし、マスコミも注目し、成功への道を歩むことができるならば、その時に日本リーグは「Tリーグへの加盟」を表明するのだろうか。Tリーグでトップ選手たちが世界レベルで激しく戦う時に、日本リーグの優勝チームはそれをどのような思いで見つめるのだろうか。
 
 サッカーのJリーグやバスケットボールのBリーグは、それが国内最高峰の戦いの場になっている。卓球ではTプレミアと日本リーグとの二重構造が発生してしまうのだろうか。
 そのからみ合った「しがらみ」というヒモを解きほぐすような作業をしつつ、大きな絵を描くために松下氏は戦っている。この大きなプロジェクトで必要なのは松下氏の個人プレーではない。実は卓球界全体のチームプレーなのだ。 (今野)
 1月2日に東京・東中野にある、卓球スタジオ「YOYO TAKKYU」がリニューアルオープンした。オーナーは映画『ミックス。』で卓球指導を行った川口陽陽さん。

 もともと4台置いてあった卓球スタジオを拡張して、合計7台を設置。床と壁は無垢のアカシアの木を使い、何ともオシャレ。卓球台を縦に置いて、男子選手同士の引き合いも可能になった。

・ジュニア、トップアスリート育成コース新設(最大週6回)
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問い合わせ先 070-5072-3013
https://www.yoyo-takkyu.com/

 ワールドツアーに大挙して参戦する日本選手団の活動の根底にあるのは、「世界ランキング至上主義」だ。日本代表選手のみならず、自費参加の選手が多いのは、所属団体に活動資金があるから。そしてオリンピックのみならず、世界選手権の代表選考基準に世界ランキング上位者の推薦が明記されているため、選手や母体は躍起(やっき)になってワールドツアーに参戦していく。トップ選手になると1年で十数大会に出場する。
 つまり、1・プロリーグがない(スケジュールが空いているためにツアーに参戦しやすい)、2・派遣する協会や母体からの経済的な補助を受けられる、3・世界ランキングが選手を選考する基準となっている、という3つの理由がある。

 一方、ヨーロッパ選手は対照的で、1・生活基盤はプロリーグで、毎週のように試合がある、2・協会が派遣するほどの潤沢な予算を持っていないし、母体スポンサーもそこまで予算がなく、プレーする基盤のクラブは逆にツアー出場で選手が疲弊することを嫌う、という背景がある。

 世界王者の中国はどうか。
 彼らのプレー基盤は国家チームでの集合訓練と、1年のうち約3カ月間で行われるスーパーリーグだ。ワールドツアーはすべて協会派遣のみで、自費参加はない。中国卓球協会は世界ランキングを全く参考にしない。世界選手権やオリンピックの派遣選手は協会がすべて決定するか、世界選手権の時には「直通○○」という選考会をやるのみ。
 協会が選手の実力を計るのは、世界ランキングや国際大会での実績と言うよりも、国家チーム内での実力や成績なのだ。ツアーに出れば上位を独占することが多く、世界ランキング自体が派遣選手を決める協会がコントロールできるのだから意味がないのだろう。

 こういった事情によって、日本選手だけが熱心にツアーに出るようになった。以前はジュニアサーキットやU21(21歳以下)の試合もレーティングポイントに加算されたので、日本選手はツアーはもとより、ジュニアサーキットやU21にも出まくり、海外の関係者からは「日本選手はマイレージプレーヤー」と揶揄(やゆ)された。つまり、航空会社のマイレージカードのように移動距離でポイントを獲得していたこともあった。もちろんある程度の強さがなければ、マイレージもたまらないのだが・・・。

 さて、本題に戻ろう。
 従来の世界ランキングの盲点は、レーティングがあるために強い選手はすべてのツアーに出なくてもランキングを維持できたことだ。レーティングポイントは一度獲得すると減ることはなく、消失するのはボーナスポイントのみ。試合に出ないでランキングから消えたとしても、またツアーに復帰すれば、すぐに以前のランキングを取り戻すことができる。ベテランになったトップ選手や中国選手でも、要所要所でのツアーに出れば、自分のランキングを維持できた。
 一方、2018年1月からの新ランキングでは、過去1年間の上位8大会のポイントの合計でランキングが決まる。つまり、なるべくツアーなどに多く出てポイントを獲得することが、世界ランキングを上げるためには重要となる。

 このシステムはテニスのランキングシステムと似ている。狙いは、トップ選手をなるべく多くのツアーに出させることだ。ITTFとしては各地のツアーにトップ選手が出てほしい。各地のスポンサーや冠スポンサーの獲得にも影響するからだ。
 しかし、テニスと違うのは、前述したように多くの卓球選手、特にヨーロッパ選手がプロリーグを生活の基盤にしていることだ。ツアーに参戦するほどの経済的なバックボーンが選手にあるのか。プロリーグとの両立が選手たちを悩ませることになる。

 また、日本選手の過剰なほどのツアー参戦は減るのだろうか。
 そうはならないだろう。世界ランキングが第一優先の選考基準がある限り、ツアー参戦は積極的に行われ、派遣の予算がある限り、「経験のため」という目的でジュニアサーキットやチャレンジシリーズなどへの若手の参戦は続くだろう。もちろん、それは選手にとって悪いことではない。
 
 世界ランキング至上主義は、日本にとっては避けられないやり方とも言える。現状では、日本は分厚い選手層を持っていて、中国のように協会がビッグゲームの代表を決めることは不可能だからだ。自由競争が原則なので、協会が一方的に日本代表を選ぶと選考に外れた選手や母体からクレームも来るだろう。その母体からの不満を解消するために、世界ランキングによる選考は必要不可欠のものとなっているからだ。世界ランキングが、自由競争による公平さの象徴的なシステムなのだ。

 新ランキングによって選手のポジションは大きく変動している。男子の1位はツアーにも多く出ているオフチャロフで、世界チャンピオン、五輪チャンピオンの馬龍はツアー参戦も少なく、1位から7位に落ちた。女子でも馬龍同様、試合数の少ない五輪チャンピオンの丁寧は3位から21位に落ちている。
日本選手の1月の主だった世界ランキングは以下の通りだ。※( )は前回のランキング

●男子
丹羽孝希  6位(8)
松平健太  10位(15)
張本智和  11位(17)
水谷隼   13位(7)
大島祐哉  19位(25)
上田仁   28位(34)

●女子
石川佳純  4位(5)
伊藤美誠  5位(9)
平野美宇  6位(6)
早田ひな  11位(14)
加藤美優  13位(18)
森さくら  17位(32)
佐藤瞳   19位(14)
橋本帆乃香 28位(21)

 日本選手はおしなべてランキングを上げている。これは今までのツアー参加数が多いからだ。例外的に水谷が7位から13位にランキングを落としているのは、この1年間はロシアリーグやT2などの試合が主で、ツアー参戦が少なかったからだ。今後、日本の水谷を含め、中国選手もツアーへの参加を増やしていくことが予想される。数大会のツアーを経て、世界ランキングは落ち着いたものになっていくだろう。
 また、日本でのTプレミアの開催や、T2などの試合がどのように影響を与えていくのか。新しい世界ランキングのシステムは今後の選手の活動形態を徐々に変えていくかもしれない。 (今野)
  • 最新の世界ランキングで1位に立ったオフチャロフ

  • 女子の世界ランキングで1位となった陳夢

 世界ランキングが毎月、定期的にリリースされ、オリンピックの出場権獲得や世界選手権のシーディングに反映されるようになったのは1990年代後半からだ。
 同時に、今のワールドツアーの原型であるプロツアーを世界各地で開催するようになった。アイデアを実行したのは前国際卓球連盟会長のアダム・シャララ氏だ。実行の狙いは、賞金大会を世界各地でサーキット化し、プロ選手の報酬を増やして自立を促すこと、そして世界各地で行うことによる卓球の普及と発展だった。またプロツアーによって、卓球のメディアへの露出も増えていくことになる。

 ランキングシステムの根底にあるのはレーティングだった。言い換えれば、それぞれの選手の「持ち点」だ。選手間の勝敗によって、この持ち点「レーティング」において獲得するポイントと失うポイントが決まっていく。しかも、このレーティングは試合に出ていなくてもある一定期間は消失しないので、試合に出ていない選手が再びプロツアーに出るようになると、ゾンビのように世界ランキングの上位に躍り出てくることもあった。
その長く続いた世界ランキングのシステムがこの1月の最新ランキングから変わった。

 賞金大会をサーキット化していくのは、テニスを模範にしたやり方だった。しかし、テニスになくて卓球にあったものは、ヨーロッパのクラブによる団体リーグだった。ブンデスリーガ、フランスリーグ、スウェーデンリーグなどは、8月末からの5月までの9ヶ月間は毎週のようにクラブ間のリーグ戦を行い、プレーオフで優勝を決めるという試合がある。これはほかのヨーロッパの国でもほとんど同じやり方をして、プロ選手にとっては生活の基盤になっていた。

 しかし、プロツアーができてからは、トップ選手たちは世界ランキングを上げるためにツアーにも出場したいが、生活基盤であるクラブのリーグ戦にも出場しなければいけないため、スケジュールは過密になる一方だった。特にヨーロッパのトップクラブは、それに加えて「ヨーロッパチャンピオンズリーグ」というヨーロッパのトップクラブによる試合を行う。ほぼ毎週、何らかの試合に出ているようなスケジュールになり、練習をやり込む時間を確保できないのが選手たちの悩みだった。
 試合に出なければ生活は成り立たないが、さりとてツアーに出なければ世界ランキングも上がらない。ランキングを上げるためには練習をやり込んで実力を上げたいが、試合が多くてやりこめない。プロツアーとプロリーグの両立は、出口のない迷路をさまようようなもので、ヨーロッパ選手にとって頭痛の種となっていた。

 一方、日本選手にとってワールドツアー( プロツアー)は好都合だったかもしれない。もともと日本にはプロリーグがなかったからだ。日本リーグは年2回しかないし、基本はセントラル方式(1カ所で行う試合方法)なので、スケジュールは空いている。男子のトップ選手たちは1990年後半から2000年以降はヨーロッパのクラブでプレーするようになるが、近年はプロクラブにも所属しないで、所属スポンサーで生活を保証され、ワールドツアーに出場して世界ランキングを上げることに専念する選手も増えた。
 ゆえに毎回のワールドツアーには、日本から選手やスタッフが大挙して参戦するようになる。あまりの人数の多さに各国の関係者には驚きをもって迎えられ、金満ニッポンに苦笑する人も少なくない。
当事者の日本選手の心情、つまり過密なスケジュールや、せき立てられるようにツアーに参戦する気持ちは卓球王国の最新号の丹羽孝希のインタビューからも感じ取ることができる。 (今野)

★写真は17年12月のITTFワールドツアー・グランドファイナルでプレーする丹羽孝希(左)と石川佳純(写真提供:ITTF)。18年1月の世界ランキングで日本選手最高位となった