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 11月29日〜12月1日に中国・成都で行われたITTF男子ワールドカップ。日本からは張本智和(木下グループ)と丹羽孝希(スヴェンソン)が参戦し、張本が準々決勝で丹羽、準決勝で馬龍(中国)を下し日本選手で初めて決勝に進出。決勝では樊振東(中国)に破れたものの準優勝を果たした。

 張本は1回戦でアルナ(ナイジェリア)を4-1で下すと、準々決勝では前週行われたT2ダイヤモンドでも対戦した丹羽との対戦。張本が幸先よく2ゲームを連取するもその後、3ゲーム連続のジュースの接戦を丹羽に奪われゲームカウント2-3とされる。第6ゲームを張本が取り、最終ゲームにもつれ込んだ勝負の行方は、8-8から張本が3ポイントを連取し2週連続で丹羽を破り準決勝に駒を進めた。
 続く準決勝で張本は馬龍に3ゲームを先取し、現五輪・世界王者を追い詰める。馬龍も2ゲームを取り返すも第6ゲームを張本が5点で制し、馬龍に4-2で勝利し決勝進出を決めた。決勝の相手はDA.ハベソーン(オーストリア)、ボル(ドイツ)、林昀儒(チャイニーズタイペイ)を破って勝ち上がってきた樊振東。張本は決勝まで1ゲームしか落としていない好調ぶりを見せる樊振東にゲームカウント2-1とリードするも、そこから3ゲームを連取され惜しくも初優勝はならなかったが、日本人初となる銀メダルを獲得した。優勝した樊振東は2年連続、3度目のワールドカップのタイトル獲得となった

 また、3位決定戦は林昀儒がゲームオールで馬龍に勝利。初出場で3位という好成績を残した。
 
■ITTF男子ワールドカップ記録
● 決勝
樊振東(中国) −9、4、−6、8、2、7 張本

●3位決定戦
林昀儒(チャイニーズタイペイ) 4、11、−8、−9、8、−5、4 馬龍(中国)

●準決勝
樊振東 8、6、8、5 林昀儒
張本 6、9、8、−8、−4、5 馬龍

● 準々決勝
樊振東 6、9、5、−7、10 ボル(ドイツ)
林昀儒 −5、4、6、6、3 カルデラノ(ブラジル)
張本 6、7、−10、−10、−12、3、8 丹羽
馬龍 −6、9、4、11、3 オフチャロフ(ドイツ)

● 1回戦
樊振東 8、11、7、2 Da. ハベソーン(オーストリア)
ボル −7、8、5、9、8 グナナセカラン(インド)
林昀儒 8、4、7、−4、9 カールソン(スウェーデン)
カルデラノ −9、−9、6、−9、7、5、8 ジャー(アメリカ)
張本 7、11、10、−6、6 アルナ(ナイジェリア)
丹羽 6、8、−14、7、−8、11 李尚洙(韓国)
オフチャロフ(ドイツ) 8、−3、−8、8、−10、7、11 ファルク(スウェーデン)
馬龍 7、8、−9、5、−8、13 ゴーズィ(フランス)
  • 準優勝の張本(左)と優勝の樊振東、3位の林昀儒 提供:ITTF

 11月30~12月1日に大阪・アミティ舞洲(大阪市舞洲障がい者スポーツセンター)で「第11回国際クラス別パラ選手権」が開催された。

 国際大会と同じクラス別けが採用される、「肢体不自由者の全日本」に当たる今大会。今年は参加人数が増え、昨年まで行われていたダブルス種目は開催されず、男女シングルスのみの開催となった。また人数増加により、昨年は男子クラス1と2、女子クラス3と4は合わせて行われていたのが、個別に行われるなど、カテゴリー数自体も増加した。

 クラス1~5が車椅子、6~10とSが立位で、それぞれ数字が小さいほど障害が重度となっている。各クラス優勝者は以下の通り。

●男子シングルス優勝
クラス1:原正幸(愛知)
クラス2:宇野正則(滋賀)
クラス3:北川雄一朗(愛媛)
クラス4:斎藤元希(静岡)
クラス5:中本亨(大阪)
クラス6:七野一輝(東京)
クラス7:井上全悠(岡山)
クラス8:武田宜久(埼玉)
クラス9:岩渕幸洋(東京)
クラス10:垣田斉明(熊本)
クラスS:柴崎文仁(宮城)
●女子シングルス優勝
クラス2:西村亜佑子(熊本)
クラス3:茶田ゆきみ(東京)
クラス4:吉海美代子(東京)
クラス5:別所キミヱ(大阪)
クラス6-7:藤本けい子(東京)
クラス8:友野有理(兵庫)
クラス9:石川恵子(静岡)
クラス10ーS:青木佑季(北海道)

 大会の模様は『卓球王国』2020年2月号(12/21発売)に掲載します。
 11月22〜24日に広島県・広島県立総合体育館にて第32回全国ラージボール大会、通称「全国ラージ」が開催された。昨年度より全日本ラージボール選手権がスタートし、かつての日本一決定戦であった全国ラージも試合方式が変更されてから2度目となった。各種目の入賞者は下記のとおり。

【男子シングルス一般】
優勝:角正平(西東京クラブ/東京)
準優勝:宮下慎太郎(安藤塾/宮崎)
3位:芋谷慎太郎(尾道さくら茶屋/広島)、竹中真生(TEAM一本道/東京)

【男子シングルス40】
優勝:小林広明(飯田市役所/長野)
準優勝:豊永大地(南国卓球ごめん/高知)
3位:斎田和也(龍卓会/茨城)、多田和史(翔和クラブ/岡山)

【男子シングルス50】
優勝:黄飛(あさきたクラブ/広島)
準優勝:渡部洋二(MD相模/神奈川)
3位:渡部之伸(小樽市役所/北海道)、松本直也(松山大学職員/愛媛)

【男子シングルス60】
優勝:加藤儀彦(函館卓栄会/北海道)
準優勝:釋迦郡一雄(Shaka Taku/大阪)
3位:新谷悟(リージョン/広島)、水津一利(廿日市卓球/広島)

【男子シングルス65】
優勝:佐々木富也(秋田ノースクラブ/秋田)
準優勝:松谷昇(みらいクラブ/茨城)
3位:山本巧(呉夢TTC/広島)、中山久(堀金卓球クラブ/長野)

【男子シングルス70】
優勝:轡田崇幸(新潟ドリーム/新潟)
準優勝:地引政博(翔和クラブ/岡山)
3位:井内勲(丸井クラブ/北海道)、橋本幸治郎(松原市卓球連盟/大阪)

【男子シングルス75】
優勝:稲垣英喜(横内夢クラブ/静岡)
準優勝:藤田勝巳(安クラブ/秋田)
3位:柿川了一(市原ラージ同好会/千葉)、加藤光則(パンジー/静岡)

【男子シングルス80】
優勝:中山和英(クロサキ/徳島)
準優勝:佐伯勇(あたごクラブ/愛媛)
3位:藤澤豊(個人/山口)、金子智一(世田谷クラブ/東京)

【男子シングルス85】
優勝:北川清一(中央緑地クラブ/三重)
準優勝:水野宏(浜北クラブ/静岡)
3位:笹渕文也(北秋マスターズ/秋田)、星加道士(すばる/愛媛)

【女子シングルス一般】
優勝:中山実紀(TOSA/高知)
準優勝:鶴来香央里(チームかがやき/石川)
3位:長山千尋(朋友クラブ/茨城)、六波羅希(ステルス/東京)

【女子シングルス40】
優勝:徳田明子(Spitz/愛媛)
準優勝:長山寛子(双葉台クラブ/茨城)
3位:小山智子(和泉ラージクラブ/大阪)、西谷美子(チームN・E・O/島根)

【女子シングルス50】
優勝:吉田恵里(スマイル会/山形)
準優勝:北原文江(KATSUクラブ/茨城)
3位:川西真由美(平田卓ポン会/島根)、奥幸代(RALLY-O・N/大分)

【女子シングルス60】
優勝:高野悦子(藍住クラブ/徳島)
準優勝:翁淑美(久留米フレンド/福岡)
3位:長谷川泉(市原クラブ/千葉)、今野珠美(札幌市役所/北海道)

【女子シングルス65】
優勝:沖山美佐子(P愛P/岡山)
準優勝:稲垣あや子(磐田ラリークラブ/静岡)
3位:久我たか子(九十九会/埼玉)、小椋章子(HYOGOラージ/兵庫)

【女子シングルス70】
優勝:延広令子(LBC岩国/山口)
準優勝:鴻島ヒロ子(卓和クラブ/新潟)
3位:大場清美(白石卓球クラブ/山口)、阪本三枝子(呉ピンポンクラブ/広島)

【女子シングルス75】
優勝:吉村美智恵(COSMOS/福岡)
準優勝:河村泰子(周南クラブ/山口)
3位:新井陽子(秋田卓球会館/秋田)、高畠富子(オリオンクラブ/茨城)

【女子シングルス80】
優勝:西本邦子(広島ラブオール/広島)
準優勝:武石千恵子(大分LGC/大分)
3位:朝倉静枝(狭山フレンズ/埼玉)、橋本節子(安クラブ/広島)

【女子シングルス85】
優勝:虫明博子(なにわフレンズ/大阪)
準優勝:田邊倫子(わかくさ/愛知)
3位:梅本美雪(金沢マスターズ/石川)、村岡良子(三隅クラブ/山口)

【混合ダブルス一般】
優勝:角正平/角聡望(西東京クラブ/東京)
準優勝:川上聖志/田中亜希子(S・FAMILY/SRDJ/岐阜)
3位:吉田宜功/山本莉子(デンソーテン/兵庫)、高下玲央/三上江里(三次卓球同好会/吉田クラブ/広島)

【混合ダブルス80】
優勝:西田忠洋/西谷美子(チームN・E・O/島根)
準優勝:斎田和也/北原文江(龍卓会/KATSUクラブ/茨城)
3位:奥田新吾/中尾恵子(直方卓球クラブ/福岡)、端崎秀一/林清美(菁莪/丸和ホーム/富山)

【混合ダブルス100】
優勝;白井正典/徳田明子(タカタスポーツ/Spitz/愛媛)
準優勝:井上吉晴/川西真由美(斐川クラブ/平田卓ポン会/島根)
3位:渡部之伸/渡部恵美子(小樽市役所/リベラル/北海道)、釋迦郡一雄/中村加津代(Shaka Taku/大阪)

【混合ダブルス120】
優勝:藤田賢治/内田貞子(あんず/ウチダスポーツ/山口)
準優勝:大久保勝/逆瀬川伸恵(HYOGOラージ/兵庫)
3位:宮川光彦/下田浩子(萩中クラブ/つばさクラブ/東京)、四宮暁/髙橋光枝(名西クラブ/個人/徳島)

【混合ダブルス130】
優勝:天野勝巳/黒島里美(城西ラージ/徳島)
準優勝:寺上忍/寺敷裕子(T・Cross/パワフル/福岡)
3位:新谷悟/猪子純子(リージョン/広島)、河野孝/延広令子(LBC岩国/山口)

【混合ダブルス140】
優勝:森政健治/大場清美(白石卓球クラブ/山口)
準優勝:山本修久/竹本幸子(チーム絆/大阪)
3位:伊東俊彦/福岡房枝(小浜クラブ/HYOGOラージ/兵庫)、藤田勝巳/豊田都(安クラブ/床原STC/広島)

【混合ダブルス150】
優勝:原田正/吉村美智恵(博多ベテラン会/COSMOS/福岡)
準優勝:山本英樹/栗原啓子(呉夢TTC/呉ピンポンクラブ/広島)
3位:川原田伸一/中道多美子(卓愛会宇部/柳友クラブ/山口)、中山和英/鎌田順子(クロサキ/名西クラブ/徳島)

【混合ダブルス160】
優勝:佐伯勇/渡部登美子(あたごクラブ/徳島)
準優勝:三上一郎/畠山凉子(広島卓球ベテラン会/KTクラブ/広島)
3位:広井丈夫/源川紘子(植水クラブ/埼玉)、林力/畑山しげ子(個人/北海道)


この大会の模様は卓球王国2020年2月号(12月21日発売)に掲載しますのでお楽しみに!
 世界のトップ選手だけで競うT2ダイヤモンド(シンガポール)の決勝で、宿敵・孫穎莎(中国)にマッチポイントを握りながら逆転負けを喫した伊藤美誠選手の試合後のインタビュー。

●伊藤美誠のコメント
・・・試合を終えてどうでしょう?
「今日は30、40%の力でここまでできた。スマッシュとか自分の良さが少し出しづらかった。スマッシュが入る時は自分らしいと思う時だし、自分が前に行けている時には良い展開で、今調子が良いなと思える。いろんな技術が出しづらかったり、相手はラリーに持ってきている、相手が攻めてきたいんなだというのが、今日の試合はわかりやすかった。その中で、自分の卓球がやりにくかった。でも0−2から2−2に追いついて、孫選手と競れることは少し前まではあり得ないこと。
 本当に自分が30、40%だと前は1ゲームも取れないくらいの差があった。今は自分の卓球がしづらくてもここまで競れるようになったのはすごく自信になります。もちろん満足はしてないけど、自分の卓球をできるようにしたら勝てるんだなと思えた。負けたけど自信がついた試合でした。
 毎回、毎回やるたびに『これは強いわ』『あ、やられた』というのがあったけど、前よりも絶対取れないというボールはなくなりました。だから打ち合いにもなれるし、パワーボールも打ち返せるようになって、これからの自分自身が楽しみです。孫選手はこれからも上がってくる選手なので、彼女に対応できるようになりたい。彼女の持っている技術を出されても勝てるように余裕を持って戦えたら良いなと思えました」

・・・最後の1本(4−4)はどういう心境でしたか?
「チームワールドカップの時より気楽でした。あの時も10−7からだったし、あの場面を経験したら今日は勝てるかと思ったけど、そんなに甘くはなかった。展開としては悪くなかった。サービスの瞬間はなかったけど、3球目攻撃の瞬間、『あ、これはミスる』と思いました。孫選手にミスを誘ってもミスをしないから、自分が決めるというか、相手に強いボールを打たせたくないので、ちょっと無理に行ったかなと。1本の取り方は大事。でも、その1本の試合って、T2しかない。この接戦を経験できたT2の試合に感謝しています。この試合を抜ければ、どんな試合でも自信を持って戦える」

・・・この短期間で孫選手が変えてきたことはありましたか?
「面白いのが、前回の試合で効かなかったことが今回効いている。この前よりも今回のほうがいろんなことが効きました。組み立てや、どの場面で何をするかによって効いたり、相手はミスをすると感じました。接戦になって効くこともあるので、改めて面白いと思いました。孫選手もいろんな打ち方をしてきて、毎回毎回、打ち方が増えるのでやっていて面白い。まだあるのか、まだあるのかという孫選手の引きだしを毎試合見れているので、幅広いなと思います。オリンピックまでにはすべてを出し切ってもらえるように自分が頑張りたいと思います」

・・・自分の安定感や成長を感じる部分は?
「目の前の1戦1戦で自分の実力を出し切って勝つことを目標にしています。1回戦で中国選手と当たっても良いようにしっかり練習してきている。グランドファイナルまでしっかり実力をつけたい。大会ごとに試合が自分の伸びしろを感じさせてくれる。まだまだ上に上がるチャンスはあるし、何でもできる選手になりたい」

・・・孫選手が引き出しを出してくると言いましたが、それによって自分の力を引き出されることもありますか?
「ありますね。孫選手はほかの選手が持っていないような技術を持っているし、彼女のおかげで、まだこれに対応し切れていない、こういう打ち方があるんだとか、まだまだ練習しなければいけないと思うし、自分の中でレベルアップできている」

・・・今回、30、40%と言うけど、残りの60、70%は何ですか?
「睡眠です(笑)。こっちにきて湿気で、寝ても1時間で目が覚めたりとか、深く寝れていない。今日も10分昼寝したら、その10分でもいびきをかいて気持ちよかった。眠りが浅くて、日々疲れが出てきて、決勝の後も階段上るのもきつかった。でも、前よりも体力がついていることも自覚しています。今回も3大会連続でやったけど、オリンピックでも3週連続はあると思うので、最後の決勝戦で120%を出し切るのを目標にして頑張りたい」

・・・睡眠の割合が大きい(笑)。60、70%は技術的なことだと思いました。
「大きいですよ(笑)。睡眠は本当に大事。睡眠とれば頭の回転も良くなるし、さらに足も動くし、足も動けば自信になる。全部つながっている」

・・・孫穎莎に対する手応えがあったとは言え、やはり2試合連続、マッチポイントを奪ってから逆転で負けた。
「今回のT2の試合は精神的に鍛えてくれる試合だと思ってました。5点勝負とか、ジュースがなく、10−10からの1点勝負と、普段の試合ではあり得ないルールだから、そこを取れるかどうか、精神面を鍛えてくれたのがT2。もちろん5本勝負のほうが中国には勝ちやすい。ただ、強いて言えば、チームカップの時のほうがもっと勝ちたかった。
でもチームカップの敗戦が今回生かされたと思う。孫選手だけじゃなくて、田志希選手の試合でのラスト1本をどう取るかというのは、チームカップでの孫選手との試合が生きた。さらに今回の試合は次につながる試合ができた。グランドファイナルや来年の試合が本当に楽しみになりました」
T2ダイヤモンド4日目
●男子シングルス決勝
許シン(中国/シュ・シン) 9、5、8、6 林ユン儒(チャイニーズタイペイ/リン・ユンジュ)

ブロックの名手たちが手こずる許シンの強烈なドライブを天才・林ユン儒はどうやって攻略するのだろうか。今大会の林ユン儒の出来の良さを見ていると、許シン超えもありえるのでは?と予想されたが、その期待を吹っ飛ばすかのように許シンが完勝した。

序盤から許シンの強烈なドライブが火を噴き、林ユン儒の堅陣を崩していく。林ユン儒も果敢にカウンターを狙っていくが、フォア対フォアでは勝てず、曲がって浮き上がる許シンのドライブに角度とタイミングが合わない。バックでチャンスを作ろうも、チキータのコースを読んだ許シンのカウンターに捕まり、得意の展開に持ち込めなかった。

また、ジャパンオープンの決勝では効いていたサービスも許シンはしっかりと対策しており、レシーブミスはほぼなく、むしろ一発で打ち抜く場面も多かった。どんな相手にも臆することなくロングサービスを出していく林ユン儒だが、許シンに対しては中盤から短い縦回転が主体にせざるを得なかったのだ。サービスを封じられた林ユン儒は、翼をもがれたのも同然だ。

林ユン儒が唯一チャンスがあったとしたら3ゲーム目だろう。リスクのあるストレート攻撃で厳しく許シンのフォアを狙い、大きく飛びつかせる戦術だ。しかし、甘いコースでは許シンの足が届いてしまう。あくまで打ち抜くレベルのスピードで狙わないと逆に許シンのフォアで倍返しを食らってしまう。
後半になるにつれて、無理に強く攻めるしかなかった林ユン儒がミスを重ね、その隙きを許シンは見逃さなかった。

スコアは4−0。圧巻の試合だ。
まさに最強のペンホルダー・許シン。
優勝のコメントでは
「2位だったら賞金は子どもの粉ミルク代だったのですが、1位になったのでさらに妻のためにブランドバッグをいくつか買うでしょうね」と会場を笑わせた許シン。

許シンは、海外選手に絶大的な強さを見せる反面、馬龍・樊振東にはやや分が悪く、東京五輪のシングルスに出場するかは未確定。また、劉詩ウェンとの混合ダブルスも有力視されているため、3種目戦うことが足かせとなり、シングルスの枠から外されるかもしれない。
「いや、やれる。俺は強い」
コート上の許シンはさもそう言っているように見えた。
絶対的な強さを見せつけ、ビッグタイトルへのチャンスを自分の手で掴もうとしている。
T2ダイヤモンド4日目
●女子シングルス決勝
孫穎莎(中国) 7、3、−6、−6、−3、3、4 伊藤美誠(日本)

 卓球のエンターテイメント性を追求しつつ、スピード感のある競技ルールのT2ダイヤモンド。世界の上位16人で争う高額賞金大会がシンガポールで開催。
 女子決勝に進んだのは伊藤美誠と孫穎莎。2週間間のチームワールドカップでは、団体決勝で両者は対戦。伊藤はマッチポイントを奪いながらも逆転された。その因縁の相手と、シンガポールの決勝の舞台で再戦した。

 1ゲーム目は互角のスタート、5−5。6−6から孫の強打で6−8と伊藤がリードを奪われる。7−8から孫の3球目ドライブで7−9。7−10からは強烈な孫のバックドライブが決まり、7−11で落とす。

 2ゲーム目、0−3から2−4、3−5から3−11と落とす。孫の強打が1ゲーム目から襲いかかってくるために、どうしてもリスクの高い攻めになっていき、打ち急いでしまうのか。

 3ゲーム目、3−1、5−1、ようやく攻撃が決まり始める。一気に8−1と離す。8−5と差を詰められたところでタイムアウト。その後、11−6で取り返す。

 4ゲーム目、2−2、4−4、伊藤の速いバックハンドに孫もミスが出始める。5−5から3球目のスマッシュがオーバーして、5−6。すぐに6−6。ブロックでしのぎ7−6。バック強打で8−6。
 バック強打からのフォアスマッシュのコンビネーションで9−6。10−6とゲームポイントを取ったあと、最後はバックブロックがエッジとなり11−6でゲーム奪取。0−2から2−2とする。会場では「ミマコール」が飛び交う。

 5ゲーム目からFAST5。2−0とリード。2−2から2−3、2−4から3球目スマッシュで3−4、最後は孫のバックドライブをブロックしきれず、3−5で落とす。

 6ゲーム目。体が前に乗った状態でブロック、そして強打すると伊藤の得点になる。ミスしたとしても、仕方ない。リスクを取らないと孫には勝てない。孫もグッと前に出て打球した時のボールは世界一の威力だ。攻撃をかわしては勝てない相手。伊藤のカウンター、スマッシュが孫を襲い、5−3で取り返し、最終ゲームへ。

 7ゲーム目、サービスエースで1−0のスタート。1−1からフォアドライブが決まり、2−1、孫の連続ドライブで2−2。互角だ。ロングサービスからの連続バック強打で3−2。あと2点。ブロックミスで3−3。
 巻き込みのサービスエースで4−3、マッチポイントを伊藤が先に奪う。孫の強打で、4−4。最後は勝負をかけた3球目のスマッシュがわずかにオーバーミスして、伊藤は敗れ、孫が優勝を飾った。
 直後のインタビューで伊藤は語った。
「この大会では絶好調でない中で決勝まで来て、0−2から挽回したけど、最後は負けてしまったので、次は勝ちたい。孫さんには今年に入ってたくさん負けているので、来年は勝てるように頑張りたい」
 伊藤の速さ対孫の威力の対決。スピードと回転という卓球の特徴を究極まで高めた二人の試合。素晴らしい内容だった。
 この試合に敗者はいない。
そこで見たのは、卓球を極限まで高めようとする「二人の勝者」だった。
T2ダイヤモンド4日目
●女子シングルス3位決定戦
王曼ユ(ワン・マンユ/中国) 7、7、−8、6、2   田志希(ジョン・ジヒ/韓国) 

●男子シングルス3位決定戦
張本智和(日本) −8、−3、6、10、3、−3、3 林高遠(リン・ガオユァン/中国)  

 張本は林高遠に1勝2敗。1年前のグランドファイナルで4−1で勝ち、今年6月の香港オープンでは2−4で敗れている。許シン戦での敗戦のショックが残っているかもしれないが、この試合に勝って、4日後に始まる成都でのワールドカップに向かいたい張本。

 1ゲーム目、1−1からのバックカウンターブロックで声が出た。まだモチベーションは残っている。林を左右に揺さぶり、4−2、6−2とするが、すぐに6−6と追いつかれる。8−8から8−11。1ゲーム目を奪われた。

 2ゲーム目、1−3、2−6とリードを広げられる。3−11とこのゲームを落とす。中陣からの林の両ハンドにブロックとカウンターでミスが出ている。

 3ゲーム目、3−0のスタート、相手に十分な体勢で打たせないような台上技とブロックが決まりだした。5−2、6−3、11−6でゲームを奪い返した。

 4ゲーム目、林の速いドライブ攻撃が決まる。3−5。張本が台上フリックで4−5としたところで中国ベンチがタイムアウト。5−5にするも、打ちミスが出て5−7。
 ラリーからのフォアドライブで6−7、台上強打で7−7。次をブロックで止め、8−7と逆転。8−8からの台上ドライブで9−8。9−9でバックドライブが決まり10−9とゲームポイント。台上のミスで10−10。ここで張本がタイムアウト。「林はチキータをしてくるだろう」と張本は考えた。最後は林のドライブを両ハンドブロックでしのぎきり、11−10でゲームスコアをタイにした。

 5ゲーム目からFAST5に突入。2−3からチキータを決め3−3。4−3でゲームポイント。バックドライブを決め、5−3で取り、ゲームを逆転した。

 6ゲーム目、2−2から下回転のロングサービスをフォアに出しエースを取り、3−2とするも、このゲームは5−3で林が取った。
 最終7ゲーム目、台上強打が決まり2−0。ドライブレシーブで4−1とマッチポイント。次を5球目フォアドライブが空振りとなり4−2。林のバックドライブが決まり、4−3。最後はフォアドライブを決め、5−3で勝利した。
 勝利の瞬間、観客席に向かって雄叫び。セレブレーションとともに腕を何度も回し、観客に叫んだ。
 勝利後のインタビューで「リードされてから吹っ切れて向かって行けた。自分の目標は五輪の金メダル。今回は銅メダルだったけど、金メダルを取れるように頑張ります」と力強く答えた。
 
・・・素晴らしい勝利でした。
「出足6−2とリードしたけど、最初、回転に慣れていない部分もあり、しっかり点を取った感じではなかった。3ゲーム目から少しずつ自分のしたいことができた。昨日も0−2から吹っ切れて、ノンプレッシャーでやったほうが良いプレーができる。次のワールドカップでは1ゲーム目からそうしたい。10−10のタイムアウトでは、しっかり考えて、相手はチキータからくると思ったけど、自分から攻めるとミスしそうだったので、そこは耐えて耐えて、5ゲーム目から攻めようと考えました」

・・・中国選手に逆転で勝てたことは自信になると思うけど。
「ルールは違うけど今日勝てたので、次のワールドカップにつなげたい。ワールドカップは絶対3位以上、グランドファインルでは2連覇という目標をしっかり持って頑張りたい」

・・・前回、香港オープンでは負けているけど、お互い変えた部分はあったんだろうか。
「今回は相手がレシーブからフリックをたくさん使ってきた。前回も自分の凡ミスから負けてしまった。今回は1、2ゲーム目は相手は思ったよりも良くて、今回は相手にやられている感じがしたので、厳しいと思った。点数が競ってから相手のミスが出てきたので、粘ることを考えた」

・・・3ゲーム目から台上を厳しく攻めていた印象があった。
「チキータを使うタイミングがわからなくて、3ゲーム目からチキータとストップの使い分けができた」

・・・この1勝の意味は?
「3位と4位ではオリンピックでも、その意味は全然違う。しっかり勝ちきらないといけないし、決勝よりも緊張するかもしれない。正直、0−2の時には厳しいと思ったけど、そこで我慢して勝ち切れたことは次の大舞台につながると思う」
 11月23・24日に埼玉・所沢市民体育館で開催された、「2019年(令和元年度)第16回 全日本学生選抜卓球選手権大会」。

 10月に開催された「全日本大学総合選手権(個人の部)」、通称「全日学」での男子優勝・及川瑞基(専修大)が欠場となる中、全日学準優勝の木造勇人(愛知工業大)が危なげなく決勝まで進出。三部航平(専修大)らとの接戦を制して勝ち上がってきた、後輩の田中佑汰との同士討ちとなったが、打球点の早いバックとフォアドライブ速攻のコンビネーションが冴えて主導権を握る。3-1となった第5ゲーム目に一気に優勝を決めるかと思われたが、そこから田中がブロックや強力なバックハンドなどで逆転。しかし第6ゲームは気合いを入れ直した木造が押し切って、優勝を決めた。

 女子は全日学優勝の森田彩音(中央大)が、山本笙子、梅村優香との同士討ちを制して、準決勝では好調の三條裕紀(青山学院大)を接戦で下して決勝進出。競った場面の安定感で、全日学に続く優勝に迫った。しかし奥下茜里(日本大)、鎌田那美(早稲田大)ら実力者に快勝して決勝に進んだ木村香純(専修大)が、両ハンドドライブのラリー戦で優位に立つ。体の切れが良く、打球点の早さと連打で一歩上回った木村が4-2で押し切って、自身初となるシングルスのタイトルを手に入れた。

男子優勝:木造勇人(愛知工業大)
2位:田中佑汰(愛知工業大)
3位:龍崎東寅(明治大)
4位:坂根翔大(関西大)
ベスト8:出雲卓斗(明治大)、高見真己(愛知工業大)、一ノ瀬拓巳(中央大)、三部航平(専修大)

女子優勝:木村香純(専修大)
2位:森田彩音(中央大)
3位:三條裕紀(青山学院大)
4位:鎌田那美(早稲田大)
ベスト8:奥下茜里(日本大)、松岡優香(東京富士大)、岡崎日和(東洋大)、梅村優香(中央大)

大会報道は卓球王国2020年2月号の掲載します
T2ダイヤモンド4日目
●男子シングルス準決勝
許シン(中国) 7、7、−9、6、4  張本智和(日本)

世界ランキング2位、29歳の許シンに立ち向かうのは、同5位、16歳の張本智和。過去6回の対戦はすべて許が勝っている。

 1ゲーム目も許ペース。7−3から7−6にして追い詰めるも、張本は7−11で落とす。連敗している許からの重圧なのか、普段しないようなミスが出た。
 2ゲーム目、許のドライブが唸りを上げ、張本を襲う。許のドライブの力と質が高すぎ、ブロックが止まらない。11−7と許がゲームを連取した。
 3ゲーム目、なんとか食らいついていきたい張本。5−5、ラリーの主導権を奪いたい張本。6−5、6−6、7−6から台上フォアフリックで8−6。ドライブを決められ、8−7となったところでタイムアウト。次を許の裏面バックがミスして9−7。2本打ちミスで9−9、10−9と先にゲームポイント奪った。ここで許は裏面ドライブをミスして、張本がゲームを取り返した。
 4ゲーム目、3−3から4−6、5−9とリードを奪われた張本は、このゲームを6−11で落とした。許のドライブが張本のブロックをはじいてしまう。
 5ゲーム目からFAST5に入ったが、3−3から張本の打ちミスで3−4となるが、次をチキータで決め、4−4。最後はフォアドライブで決めにいった張本のラケットが空を切り、許の勝利が決まった。

 許のドライブの威力ゆえに、先に攻撃を仕掛けようとする張本。それが打ち急ぎとなり、ミスにつながってしまう。ドライブの重圧が張本の攻撃を狂わせている。
 世界ランキング2位と5位の間には、ボールの威力という大きな溝があるようだ。
「いつものように試合がすることができた。優勝したら賞金をどうするか? 子どものために使うよ(笑)」と許シン。
 張本は夜の3位決定戦で林高遠と対戦する。

●張本のコメント
・・・試合を振り返ってどうですか?
「毎回同じパターンで、フォアドライブを取れない。それでも3ゲーム目を取ってチャンスはあったけど、簡単なドライブミスだったり、サービスが(台から)出てしまう。どこでやっても後1、2本が取れない。最初はチキータで攻めた。点は取れたけど、返されたらどうしようもなくて、3ゲーム目からストップに変えて、相手の打ちミスもあった。相手の凡ミスがなければ勝ちはない。4ゲーム目からサービスを変えられた。相手もどんどん進化している」

・・・ワールドカップもあるし、越えなきゃいけない壁ですね。
「勝ち方が全然わからない。勝ち上がって、何回も(彼と)やっていって慣れるしかない。次も中国選手ですけど、今の相手よりは少し下なので、自分の持ち味を出したい」

・・・何回もやっていても、あの許シンのボールは対応できないですか?
「誰も打てないボールなので、練習のしようがない。今回、坪井さんも練習相手してくれて、できる限りの良い準備はできたけど、それでも許シンは全然レベルが違いました」

・・・具体的に言うと、彼のボールはほかの選手と何が違うんだろう。
「普通は横(回転)が入っているとスピードは落ちるのに、彼のドライブはまっすぐと同じスピードに横が入っているので、オーバーミスしてしまう」

・・・あのドライブの威力があるので、打ちミスが出てしまうのかな。
「ストップが浮いてきたのに焦ってしまう。最後(4−4)のボールもそうです。そういうミスはゼロにしないといけない。ラリーをしていては絶対勝てない。浮いたボールに対するミスもなくしたい」
T2ダイヤモンド4日目
●女子シングルス準決勝
伊藤美誠(日本) 7、−5、10、2、1 田志希(ジャン・ジヒ/韓国)

 石川、佐藤と同士討ちを制し、準決勝に上がってきた19歳の伊藤美誠は世界ランキング7位。対する田志希は平野美宇、陳夢と格上の二人を倒した中国からの帰化選手で世界20位、27歳。二人の対戦は伊藤の1勝0敗。
 
 1ゲーム目、3−0から3−3、4−3からバック強打で5−3。2本連続サービスエースで7−3と離す。9−5、10−7からサービスエースで11−7で伊藤がゲームを先に奪った。サービスが効いている。
 2ゲーム目、一転して田が反撃に出る。11−5で取り返す。
 3ゲーム目、伊藤がリードしていたが、8−5から田が8−10と逆転、9−10から伊藤のバックドライブが決まり、10−10。次に伊藤のサービスが決まったかと思ったが、田がビデオチェックを要求。ネットインとわかり、プレー再開。次のボール、ラリーで伊藤がよく飛びつき、11−10で取り返した。このゲームを取ったのは大きい。

 4ゲーム目、出足で2−0から2本連続サービスエースで4−0。流れは完全に伊藤だ。5−1、7−2、11−2で一気にゲームを奪い、勝利に王手をかけた。
 5ゲーム目はFAST5に突入。まずは伊藤の巻き込みサービスがエースを取り、ゲームが始まる。一気に4−0でマッチポイント。サービスミスで4−1。最後はフォアストレートのドライブが決まり5−1で田を下し、決勝進出を決めた。ここまで失ったゲームは2ゲームのみ。伊藤美誠の完璧な試合ぶりが光る。

「3ゲーム目は相手が思いきってきたので、このゲームを取ったのは大きい。孫さんとの試合は楽しく、自分らしい試合をしたい」と伊藤はコメントした。