速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

平成24年度全日本選手権大会

 クロアチアリーグでプレーする吉田光希に続いて、ドイツで腕を磨く若武者たちを紹介しましょう。昨夏の全中男子決勝で対戦した三部航平(写真左)と及川瑞基(写真右)。彼らは丹羽孝希、松平健太、吉田雅己(セカンドチーム)が所属する、ドイツ・ブンデスリーガ男子1部のフリッケンハウゼンを練習拠点として、腕を磨いている。今シーズンは三部が3部リーグ、及川が4部リーグでのプレー。ここから1部リーグを目指す。

 三部はまだプレーに際立った特徴はないが、非常にバランスの良い両ハンドのドライブ型。及川は対照的に、どんなボールにでも食らいついて、とにかく相手コートにねじ込むというアグレッシブなスタイル。孔令輝とJ.セイブという感じだろうか(あくまでもイメージです)。互いに切磋琢磨して、どんどん強くなってほしい若き「龍虎」だ。

 写真下はドイツで三部らを指導する名コーチ・邱建新さん。元中国ナショナルチームで、ドイツ・ブンデスリーガでは選手としても活躍した。あのサムソノフをキリキリ舞いさせたほどのマジックサービスの名手でした。
 女子シングルス2回戦、クロアチアリーグのトップチームであるDr.casl(ドクター・チャッスル)でプレーする吉田光希(青森山田高卒)が登場。中国電力の土井みなみと、迫力ある前陣での両ハンドの攻防を見せた。女子ヨーロッパチャンピオンズリーグでは、リ・チャンビン(オーストリア)と1勝1敗だった吉田。フォアの一発ドライブとバックドライブの回転量は凄い。まさにヨーロッパスタイルだ。

 第1ゲームは先取した吉田。しかし、第2ゲーム以降は土井にうまくフォアストレートのボールを混ぜられ、強打も中陣からのブロックにつかまり、競り合いながらもあと一本が遠かった。第4ゲームは6−10から9−10まで挽回したが、最後は土井のフォアストレートへのパワードライブが決まり、勝負あり。

 「日本での公式戦は、3年前に全日本に出て以来で、会場の雰囲気とかボールの伸びがヨーロッパとは全然違っていた」と吉田。クロアチアリーグでのプレーは3年目で、昨シーズンはシングルス全勝、今シーズンもまだ1敗しかしていないという。「クロアチアリーグももう3年目。来年はドイツ・ブンデスリーガやスペインリーグでプレーしたいですね」(吉田)。サッカーでは今や各国リーグに必ず日本人選手がいるという状況だが、卓球でもこんな「越境プレーヤー」がいるのだ。
 下写真右は吉田と、ベンチに入った四元奈生美さん。
 女子シングルス4回戦でスーパーシードの32選手が登場し、男女ジュニアと混合ダブルスでベスト4が決定する大会第3日目。

 今日の東京もかなり冷え込んでいる。会場の代々木第一体育館は、フロアにかなり外気が流れ込んでくるので、昨日は平野早矢香選手も「めっちゃ寒いコートがあった」と言っていた。「(東京体育館よりも)広くて高い感じで、ボールの飛び方も若干違う。会場の広さによって、自分の感覚も変わってくる」(平野)。

 現在行われている試合前の練習でも、今日はまだ試合がない水谷隼選手や岸川聖也選手が朝から練習している。少しでもこの新しい会場に慣れようということか。福原愛選手は何度もボールを高く投げ上げては受け止め、照明の状況を確認している。
 男子ジュニアでベスト32が出揃った。32名の所属の内訳を見てみると、JOCエリートアカデミー(以下EA)が8名の選手をベスト32に進出させている。インターハイや全中には選手が出場しないEAだが、全日本ジュニアでその実力を証明していると言える。中でも第1シードのチョッパー村松雄斗と、サウスポーから回転量の多い両ハンドドライブを放つ東勇渡は強い。

 ただし、4回戦以降になれば強豪高校の選手たちも黙ってはいない。EAに次ぐ5名がベスト32に残った青森山田中・高は、昨年ベスト4の丹羽孝希・吉田雅己・町飛鳥という強力トリオが3年生でジュニアに出場しないが、昨夏のインターハイ2位の森薗政崇、全中優勝の三部航平らが優勝を狙う。03年度の水谷隼から9年連続でヤマダ勢が優勝しているだけに、タイトルを死守したいところ。

 さらに野田学園高が吉村和弘ら4名、希望が丘高が第2シードの田添健汰ら4名、愛工大名電高が右両面裏ソフトドライブ型の松下大星ら3名をベスト32に送り込んでいる。ここまでの4校は、昨夏のインターハイの男子学校対抗のベスト4だった。男子ジュニアはエリートアカデミー+高校トップ4の選手たちで、実に32名中24名を占めているのだ。ラウンドが進むにつれて、同じウェアの選手があちらこちらで試合をしている、という状態になっている。「地方の無名校から新星が登場」というシナリオはなかなか描きにくい時代か。左写真はEAの東、右写真は青森山田高の森薗。
 ジュニア男子3回戦、第1シード村松(JOCエリートアカデミー/帝京)の初戦は稲嶋(愛工大名電高)との対戦。ブツ切れカットと鋭いドライブ攻撃で稲嶋を全く寄せ付けない、危なげない戦いで勝利。初戦を突破した。試合後には「初戦が大事だと思った。第1シードだから絶対に優勝する気持ちで臨んでいる」とコメント。

 試合後にはテレビカメラを含めた囲み取材に応え、うっすら(?)笑顔も見せた村松。実力に見合った風格、貫禄も少しずつついてきたように見えるのだが、取材後は「インタビュー苦手なんすヨ…」とひと言。しかし、実力的には「一般での優勝のチャンスもある」という声も聞かれる。パリの世界選手権への扉を、自分自身の手で開きたい。

●ジュニア男子3回戦
村松(JOCエリートアカデミー/帝京) 5、4、4 稲嶋(愛工大名電高)
女子ダブルス1回戦でゲームオールの勝利を収めた、東奥学園高の柿崎/佐藤ペア。青森県青森市にある東奥学園高。「まさか勝つ気ではあるまいな?」と胸元の「ねぶた」がにらみを効かせてます。

東奥学園高女子卓球部は、新保(現姓:斎藤)富美子、神田(現姓:大津)絵美子という世界代表選手を輩出した名門。男子でも、田中満雄(シチズン)や沼田勝(住友金属物流)らのOBが今大会に出場している。校名の読み方は「とうおうがくえん」。卓球界では常識ですネ。
●女子ジュニア3回戦
平野(ミキハウスJSC山梨) 8、5、5 鹿股(武蔵野中)
伊藤(豊田町卓球スポーツ少年団) 6、−5、−9、2、13 玉石(大成中)

 女子ジュニアに登場した平野美宇(左写真)と伊藤美誠(右写真)は、ともに中学生との対戦。平野は相変わらずの冷静沈着な試合運びから、さらに威力を増した両ハンドドライブを連発し、快勝したが、伊藤は苦しい試合になった。玉石のしゃがみ込みサービスに手こずり、レシーブからバックフリックとフォア強打で攻める積極性が全く見られず。バック表ソフトにもミスが多く出て、自分に対していら立ちを隠せない。
 最終ゲームも中盤で5−8とリードされ、7−10と玉石がマッチポイント。コートサイドを埋めた報道陣が固唾をのんで見守る中、伊藤は相手の5回のマッチポイントを辛くもしのぎ、最後は3球目ループドライブで強打のミスを誘って逆転勝ち。観客席からも安堵のため息がもれた。

 平野、伊藤とも今日は女子シングルス1回戦にも出場する。すでに「天才少女」などと言わずとも、そのアスリートとしてのセンスと能力はジュニアの域を越えているが、メンタルのコントロールだけはまだ難しさがある。
 今大会は女子ダブルスのみの出場となった四元奈生美(東京アート)。青森山田高出身の吉田(Dr. casl)とのペアで初戦突破を狙ったが、ゲームカウント1-2とリードされた最終ゲームで高校生ペアの勢いに押され1-3で敗退。2回戦進出はならなかった。
 注目のウェアは四元が登場したテレビの企画でデザインされたもの。2回戦で着る予定だったという自身のデザインしたウェアは披露することができなかった。
 試合後の会見では「2年ぶりの全日本だったので緊張した。出産をしてから初めての大会だったので、思ったより足が動かなかった。これからもママさんアスリートとして、少しでも試合で勝つことができたらいいと思う」とコメント。ママさんアスリートとしてのこれからの活躍に期待したい。

●女子ダブルス1回戦
遠藤/熊谷(桜の聖母学院高) 3-1 四元/吉田(東京アート/Dr. casl)
  卓球王国のポータルサイトブロガーも登場!

 「しげもんののほほんDiary」の重本幸恵(サンリツ)選手は、明治大の平野友樹選手との混合ダブルスで2回戦に出場。両者ともに両ハンドでグイグイ攻めるタイプで、伸びのある両ハンドドライブが冴え渡った。奥山/池田(関西学院大)組をストレートで下し、3回戦へ進出。

 写真(左から):持ち前のフォアドライブが冴えた重本(右)、試合後、笑顔を見せる平野/重本ペア
●混合ダブルス2回戦
藤本/平野(近畿大/ミキハウス) 9、4、8 鈴木/富川(中央大/千葉英和高)
吉村/石川(愛知工業大/全農)3−0 河辺/佐用(新日鐵住金広畑/神戸市役所)

 ロンドン五輪女子団体銀メダリストの平野早矢香、石川佳純、そして昨年の全日本王者・吉村真晴が全日本の初戦を迎えた。
 3年前の全日本で混合ダブルス準優勝の実績を持つ藤本とのペアで出場した平野は、レシーブから少しでも長いサービスは積極的にフォアドライブで攻めた。吉村/石川ペアにも共通する点だが、少しでも長いサービスは絶対に見逃さない。ラリー戦でサイドを切るコース取りの厳しさもさすが世界標準だ。

 吉村/石川はカットの河辺/佐用ペアに対し、吉村がクネクネとコースの読みにくいフォームの台上処理で先手を取り、石川が強打で狙っていった。ともに強打型だけに、石川がある程度つなぎ役になったほうが確実に勝てるが、ふたりともプレースタイルを変えてまで混合ダブルスのタイトルを取りには来ないだろう。