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ユース五輪・卓球競技

 14〜18歳までの選手たちが出場するユース五輪。日本代表のふたりは連日熱い戦いを繰り広げている。その一方で、この大会の先にはまだ長い競技人生がある。昨日の男子シングルス準決勝の前、中国の樊振東は練習場で、国家男子2軍チームの劉国正監督からハードな多球練習を受けていたという。それは調整というだけでなく、先を見据えた強化の一環なのだ。
 村松、加藤の両選手の今日の戦い、その収穫と課題について田㔟監督が振り返った。

「加藤には、リリー・チャンはフォア前があまりうまくないので、そこにサービスを出そうと言っていた。回転量よりもコントロールを重視してフォア前に持ってきて、バックへの長いサービスも活かそうと。でも、競ってくるとサービスが台から出てしまった。どのゲームも中盤まではよく攻めているのに、終盤になるとミス待ちのプレーが多くなった。リードした時に積極的な姿勢を貫ければよかった。銅メダル決定戦というのは残酷な試合だと思います。「メダルがほしい」と思ったから、最後はミス待ちになってしまったところもある。最終的には精神的な部分でしょうね。

 オリンピックとかそういう舞台でメダルを獲ろうと思ったら、技術的なことだけでは取れないというのを今日痛感しました。人間的なものや、メンタルも含めて総合的な部分がレベルアップしないとメダル獲得は相当難しい。加藤は負けて苦しい思いをしたけど、非常に良い経験をしたと思う。これをひとつの経験と軽く思わず、しっかり立ち止まって自分を見つめ直して、成長していってほしい。

 村松は個人戦を振り返っても、非常に内容が充実していた。樊振東戦は2ー1の6ー4でリードしていて、樊振東がタイムアウトを取って、次の一本を樊振東のレシーブに対してポロッとミスしてしまった。やはりそういう細かいところが大事。樊振東もサービスミスをしてタイムアウトを取って、回転も読み切れていなかったのだから、もっとプレッシャーをかけていきたかった。樊振東のチキータでのレシーブも回り込んで一発で狙うとか、バックドライブで狙うという姿勢がほしい。あとは最終的にフォアを攻められたので、これから世界で勝つためには、フォアのカットやカウンターももっと向上させたいですね」
 混合団体を3ー0のストレートで押し切り、大会第4日目を終えた日本チーム。田㔟邦史監督は混合団体の試合に入る時に、村松と加藤のふたりが口にした言葉を明かした。「田㔟さん、団体は金メダルを獲りましょう」。

 熱戦の興奮冷めやらぬ、というよりも、会場全体が一種の虚脱感に包まれた中で始まった混合団体。日本の村松、加藤のプレーは落ち着いていた。トップ加藤が対戦したS.ムケルジは堅い守りとフォアのスマッシュを得意とする実力者。しかし、加藤は巧みな緩急でS.ムケルジを攻略し、2番村松にバトンタッチ。村松はヤダブの左腕から繰り出すフォアドライブを、カットとカーブロングで完璧にシャットアウトした。何しろ、世界3位のパワードライブを受け続けた後なのだから。 
 3番の混合ダブルスも第1ゲームこそ競り合ったが、ここをしっかり取ってからは問題なし。ゲーム間にはふたりに笑顔ものぞいた。

 混合団体を終えたふたりに少しだけ話を聞く。「シングルスでは中国に負けてしまったので、混合団体の決勝でまた中国とやって勝ちたいっス」(村松)。「シングルスではメダルが獲れなかったので、混合団体では何としてもメダルが獲れるように頑張りたい。カットの村松さんとのダブルスは、早い打ち合いにならないので結構やりやすいです」(加藤)。この後、ふたりとも地元のボランティアの子たちから「写真攻め」に遭っていた。村松クンはボランティアの女の子に結構人気があるのだ。
 
 「今日は一日、いろいろな葛藤や苦しさがあった中で、ふたりとも強い気持ちで金メダルに向かって突き進んでいるので、一緒になって最終日の金メダルを目指して頑張りたい」(田㔟監督)。短いようで長い1日が終わった。明日は混合団体の予選グループ2試合が行われる。
  • インド戦トップ、見事な勝利を挙げた加藤

  • 2番で勝利した村松を迎える田㔟監督

●混合団体・予選グループ1回戦
〈日本 3ー0 インド〉
○加藤 8、5、6 S.ムケルジ
○村松 5、1、8 ヤダブ
○加藤/村松 9、5、4 S.ムケルジ/ヤダブ

 男女シングルスの表彰式が終わってからほどなくしてスタートした混合団体・予選グループ。1番・女子シングルス、2番・男子シングルス、3番・混合ダブルスの順番で行う2シングルス・1ダブルスの団体戦。予選グループでは2ー0になっても最後の混合ダブルスまで行われ、決勝トーナメントから2点先取となる。
 対戦した日本やインドのように、男女とも出場権を獲得して単独チームを組んでいるところもあれば、ラテンアメリカチームやインターコンチネンタルチームなど、国を超えてチームを組んでいるところもある。

 午前中の激戦の後、しかもクセ者・インドが相手ということで、油断できない戦いと思われたが、日本は3試合とも3ー0のストレートで完勝。「気持ちを切り替えるのは大変だったけど、シングルスで逃したメダルを、団体では絶対に獲りたい」と試合後の加藤。さすがはアスリートだ。

 「混合ダブルスの練習はNTC(ナショナルトレーニングセンター)でやってきました。NTの選手をお借りしたり、藤井(寛子)さんが来ていたので、相手をしてもらったり、アドバイスを聞いたりもした。結構準備してきているので、今日のインド戦は確認という感じでした」(田㔟監督)。混合ダブルスでは、村松のカットを相手が打ってきても、加藤が冷静にブロック・カウンターでさばいていた。
 中国だけでなく、チャイニーズタイペイ、韓国、タイなど難敵は多いが、金メダルを目指して日本チームの新たな戦いが始まった。
  • 初戦をしっかりストレート勝ち、加藤/村松!

  • インドのS.ムケルジ(左)/ヤダブ組

  • ベンチにコーチ2人、選手2人。もうちょっと一体感があっても…

 男子シングルス表彰では少しだけ笑顔を見せた村松。速報を打っていたら、早くも日本の混合団体がスタート。急いでフロアに向かいます!
●男子シングルス決勝
樊振東(中国) 8、ー9、ー9、8、5、4 村松

 村松雄斗、男子シングルスは銀メダル……!

 惜しくも敗れたものの、村松のプレーは素晴らしいものだった。樊振東の強烈なパワードライブに一歩も退かず、何本でもバックカットで返球。樊振東が焦って強打をミスするパターンが多かった。ゲームカウント1ー1の10ー9では、カットから逆襲のバックドライブを見事に決め、大観衆をどよめかせた。第3ゲームも、力攻めに来る樊振東にミスが目立ち、村松が11ー9で連取。

 第4ゲーム、3ー4で村松はまたも連続バックカットから、前に出て必殺のバックドライブを一閃。5ー4と逆転したところで樊振東のロングサービスがオーバーミスになる。ベンチの閻森監督がたまらずタイムアウト。中国独特の、先手を取ってくるタイムアウトではなく、追い詰められて取らざるを得なかったタイムアウト。中国の勝利を確信していた観衆もさすがにざわつきはじめる。

 しかし、ここから樊振東は世界ランキング3位の底力を見せた。無理にコースを打ち分けるよりも、フォアへの低く沈むドライブと、バッククロス・フォアストレートへのパワードライブで攻める。フルスイングしたボールは、さすがの村松も抑えきれない。一度は崩れかけたように見えた樊振東のメンタルだが、終盤にいくに連れて再び揺るぎない強さを見せた。

 ユース五輪というにはあまりにハイレベルな男子シングルス決勝。村松の頑張りには本当に涙が出た。「負けて悔いなし」などと言える選手は絶対にいないと思うが、不肖・速報担当は取材して悔いなし。さあ、混合団体でリベンジだ。
  • 村松、最高のプレーを見せたが…

  • 豪腕・樊振東、最後は崩れず

  • 観客にも卓球の醍醐味を伝えた一戦だった

●女子シングルス決勝
劉高陽(中国) 6、5、ー6、1、3 杜凱琹(香港)

 女子シングルス優勝は地元・中国の劉高陽。前回大会で優勝した顧玉ティン(中国)に続き、中国の左シェークドライブ型がユース五輪女子の頂点に立った。

 杜凱琹の両ハンドの安定感は相変わらずだったが、劉高陽の非常に打球点の早いフォアのシュートドライブ、バックのショートスイングのカウンタードライブが、次々に杜のフォアサイドを駆け抜ける。右利きに対してはバック対バックで確実に優位に立てる杜凱琹が、サウスポーの劉高陽に対してはいつもの強さを発揮できなかった。

 しかし、それ以上に劉高陽のプレーも良かった。フォアのスイングの速さは素晴らしく、相手コートにバウンドした後に低く速く伸びていく。決勝ではプレー中にもよく声を出し、優勝を決めたベンチでは可愛らしい笑顔。氷の女王が、ようやくプレッシャーから解放された瞬間だった。
  • 左腕からの快速ドライブが冴えた

  • 杜凱琹は無念の銀メダル

  • 頑張って笑ってみましたが……

  • 表彰台でもこの表情。リリー・チャンが優勝したみたいです

●男子シングルス銅メダル決定戦
カルデラノ(ブラジル) 9、8、9、ー9、ー9、10 楊恒韋(チャイニーズタイペイ)

 男子シングルス銅メダル決定戦では、昨日の準決勝で村松に敗れたカルデラノが勝利。ブラジルに歓喜のメダルをもたらした。
 観衆を沸かせる中陣でのドライブの打ち合いが、随所に展開されたこのゲーム。ゲームカウント3ー0から3ー2に追いつかれ、第6ゲームも中盤でリードされたカルデラノだが、中陣に下げられても両ハンドの柔軟なコース取りで対応。最後は11ー10のマッチポイントで、フォアクロスの引き合いでサイドを切られたボールを、さらにフォアサイドへ厳しく攻め、実にカッコよく勝利を決めた。

 まだ戦術的にも詰めのあまさが目立つが、今後の世界の卓球界を背負って立つであろう逸材。昨日のカット打ちでは苦い経験もしたが、本格的な卓球歴の短さを考えれば、ユース五輪3位は驚異的。今シーズンからはドイツに練習・プレーの拠点を移し、もっともっと強くなってもらいたい。
  • スケールの大きなプレーを見せたカルデラノ

  • 楊恒韋、2ゲームを挽回するも届かず

  • 勝利の瞬間、カルデラノのラケットが宙を舞う

  • ベンチで歓喜の抱擁!おめでとう!

●女子シングルス・銅メダル決定戦
リリー・チャン(アメリカ) ー10、9、10、ー9、9、8 加藤

 無念。火の出るような両ハンドのラリー戦。中国の観衆もかたずを飲むほどの激しい打ち合いの末に敗れた加藤。女子シングルスは4位。

 昨日までに比べ、出足から表情に落ち着きがあり、冷静かつ積極的に戦った加藤。第1ゲームを12ー10で先取。しかし、リリー・チャンとの両ハンドのラリー戦の中で、バックサイドを切る厳しいコース取りに押される。第3ゲーム10ー9のゲームポイントから逆転され、次第に厳しい表情に。しかし、第4ゲーム5ー9という大ピンチから6点連取でゲームカウント2ー2に追いつく。

 第5ゲーム以降も一進一退の攻防だったが、リリー・チャンの球威がわずかにまさり、2ー4で惜敗。しかし、日本代表として本当によく頑張っている加藤。まだ混合団体がある。メダル獲得のチャンスがある。涙を拭いて、午後の混合団体に全力を注いでほしい。
  • 本当に激しい打撃戦だった

  • 試合後、悔し涙の加藤。速報担当ももらい泣き

  • リリー・チャンの目にも嬉し涙

 大会も折り返しの第4日目。今日は朝10時から、加藤美優が登場する女子シングルス・銅メダル決定戦が行われる。村松雄斗と樊振東(中国)の決勝は、午前12時15分にスタート。さらに混合団体の予選グループまでスタートする今日のタイムテーブルは、下記のとおり。

10:00〜 ●女子シングルス銅メダル決定戦 
加藤美優 vs. リリー・チャン(アメリカ)

10:45〜 ●男子シングルス銅メダル決定戦 
カルデラノ(ブラジル) vs. 楊恒韋(チャイニーズタイペイ)

11:30〜 ●女子シングルス決勝
杜凱琹(香港) vs. 劉高陽(中国)

12;15〜 ●男子シングルス決勝
村松雄斗 vs. 樊振東(中国)

15:30〜 ●混合団体・予選リーグ1回戦
日本(村松/加藤) vs. インド(ヤダブ/S.ムケルジ)

 混合ダブルスも予選グループの組み合わせが決定し、日本はインド、アファナドル(プエルトリコ)とルオ・アンチー(カナダ)のインターコンチネンタル1、アラッサニ(トーゴ)とサラー(ジブチ)のアフリカ3と同じグループ。グループの2番手に位置するのはインターコンチネンタル1だが、はっきり言ってインドのほうが怖い。左腕から切れ味鋭いフォアドライブを放つヤダブと、バックブロックの堅いS.ムケルジのふたりだ。

 試合の順番は女子シングルス、男子シングルス、そして混合ダブルス。インド相手には村松の勝利は堅いので、トップで加藤がS.ムケルジを下して、一気に流れを引き寄せたい。なるべく混合ダブルスにまで勝敗を持ち込みたくない。男女シングルスの大一番の後で、集中力を保つのが難しいが、非常に重要な一戦だ。
 今日の男子シングルス準々決勝の終了後、熱戦の余韻にひたっていた速報担当の耳に飛び込んできた、ちょいと懐かしいイントロ。「負けない事、投げ出さない事、逃げ出さない事……」。なんともう20年以上前に大ヒットした、大事MANブラザーズバンドの『それが大事』の中国語版。手拍子と一緒に歌っている人が結構いた。こちらでは『紅日』というタイトルらしい。

 ちなみに5年前の青島での全中国運動会では、中島みゆきの『銀の龍の背に乗って』を中国語でカバーした『最初的夢想』が何度も流れていた。意外に中国の人は、原曲が日本の歌であることを知らなかったりする。「これは日本の歌だよ!」と興奮して、会場のボランティアの女の子に信じてもらえなかったのを思い出します。……どうでもいい話でした。