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リオ五輪

 五輪の選手は違う。世界選手権などのビッグゲームとも違う。
 彼らが背負うのは国旗なのか。国の代表意識を強く持ち、それぞれの国のメディア、そして国民から注目されるからなのか。アドレナリンが出まくり。地元のツボイはカメラからのぞいていると、表情が明らかにおかしい。手も震えていた。案の定負けてしまった。
 オリンピックには魔物がいる。しかし、それは個々の選手が作り出している心の中のモンスターだ。

 昨日の試合、クールなサムソノフが吠える。96年から出場する40歳の選手がだ。
 横ではオフチャロフとトキッチが熱い。1ゲーム目からシーソーゲーム。スコアは・・・33−31。なんだこれは。普通ならどちらかが心折れるでしょ。

 そして、リオの観客。最高だぜ。盛り上がる。まるでサッカーか。試合の途中では騒ぐ。ブーイングも出る。水谷がカルデラノと試合をしていて、水谷がサービスを出そうとするとブーイングが出る。少し卓球を知っているほかの観客が「シー!」といさめる。というシーンが何度もあった。
 実は観客は卓球を知らない人が多い。これはロンドンでも北京でも同じ。みんな五輪体験をしたい一般観客だ。だからこそ彼らは楽しむ。これがオリンピック。やっぱりいいよね。選手は負けた悔しさもあるけど、誰もがこの舞台でプレーした喜びにあふれている。
 かつて松下浩二君がこう言った。「オリンピックに一度出たら、何度でも出たくなる。何物にも代えられない素晴らしい瞬間があるから」。
 どんなことを言われてもリオ五輪は最高!(今野)
  • ラテンの血が騒ぐのか。試合中は大変な騒ぎだ

  • このあと、オフチャロフ対トキッチの第1ゲームは33−31でトキッチが取る

  • 40歳のサムソノフも8強入り。燃える

  • ドリンコール。ちなみに26歳(!)

 大会の最初が苦しいのはわかっていた。これは選手の話じゃなくて、取材する人間ね。
 ロンドンの時に写真撮影、速報をやっていたら最初の2日間で全身ばらばら。これは最後まで持たないと思っていた。
 そのために1年間スポーツジムに通った。全く体重は減っていない。ダイエット目的じゃないからね。まずは取材も足腰ですから。

 日本出発からリオまで30時間。甘く見ていたのだが、到着してから時差なのか、何なのか、その時点での時間がよくわからなくなった。いつ寝るんだという感じ。そんな状態なので開会式はパス。写真は同じくITTF公式カメラマンのレミー君から調達しよう。

 テレビの取材できていた松下浩二君に会った。彼らはひとりで外出できないとか、ビーチでほかの日本人が盗難に遭ったとか、バスジャックされたとか、さんざん脅かされた。
 あまりにネガティブなこと聞かされて意識過剰になってしまう。最初の時には過敏になり、現地の人がみんな泥棒に見えた(笑)。でも、実際にはフレンドリーで優しい人ばかり。

 リオの空港に到着して、同じ時間に到着して、ホテルも同じタマスの中川君と大会オフィシャルカーで移動。ここまでは良かった。
 ところが、乗った車の運転手は地元のおばさま。スマホに打ち込んだ地図が頼りなのだが、1時間はかからない道なのに、彼女がパニックになり、3時間近くでホテルに到着。途中、私が降りて警官に聞いたり、大変、大変。それに運転が超ヘタ。向こうの車はほとんどマニュアル操作なので、このおばさま、ほとんどローとセカンドで走り、たまにサード、4速にしないので、カックンカックンで車酔いしそう。それにスマホを見ながらの運転だから危ない、何度もぶつかりそうになり、クラクションを何度も鳴らされる。たぶん、この大会でもワースト3に入るほどの運転手に違いない。
 降りる時、それまで怒ったように運転していたのに、「ソーリー、ソーリー」と謝っていた。そういう気持ちがあったのね。「OK、オブリガート(ありがとう)」と笑顔で別れる。

 町中には軍隊やポリスがひしめいているので何となく安全。でも輸送の時間はルーズ。初日は来るはずのバスが来なかった。昨日は朝、タクシーで会場に向かったら道路封鎖で途中で無理矢理降ろされた。見れば、会場ははるか遠く。体重100キロを超える中川君とカメラバックを引きながら歩く。実際には3キロか4キロかな。でも体感は10キロ。汗びっしょりで第1試合に滑り込んだ。
 朝は6時くらいに起き、会場へ向かい、途中の試合セッションの合間にITTF用の写真選び、終わったのは夜の11時。外へは一歩も出ず。ホテルに帰ってカップラーメンをすすって、1時半に就寝。
 大会前半の地獄は終わった。少しは余裕が出るかも。頑張ろう。日本選手も調子がいいぞ。メダルへGO!だ。(今野)
男女シングルス準々決勝が1台進行で行われる。
組み合わせと各試合の開始予定時刻(日本時間)は以下の通り。

●女子シングルス準々決勝
李暁霞(中国) vs.鄭怡静(チャイニーズタイペイ)………8/9 22:00~
☆福原愛(日本) vs. 馮天薇(シンガポール)………………8/9 23:00~
ユ・モンユ(シンガポール) vs. キム・ソンイ(北朝鮮)…8/10 00:00~
丁寧(中国) vs. ハン・イン(ドイツ)………………………8/10 01:00~ 

●男子シングルス準々決勝
オフチャロフ(ドイツ) vs. サムソノフ(ベラルーシ)……8/10 04:00~
☆丹羽孝希(日本) vs. 張継科(中国)………………………8/10 05:00~
☆水谷隼(日本) vs. フレイタス(ポルトガル)……………8/10 08:30~
馬龍(中国) vs. アルナ(ナイジェリア)……………………8/10 09:30~



☆の日本選手の試合は、テレビでライブ放送される予定だ
大会4日目のテレビ放送予定は以下のとおり
〈地上波〉
22:00~(23:45)NHK総合   女子シングルス準々決勝 LIVE(福原戦)
0 :50~( 2 :00)NHK Eテレ  女子シングルス準々決勝 LIVE
 3 :55~6:00  フジテレビ   男子シングルス準々決勝 LIVE(丹羽戦)
8 :30~10:30  フジテレビ  男子シングルス準々決勝 LIVE(水谷戦)
10:05~11:54   NHK総合   男女シングルス準々決勝 録画
〈BS〉
 3 :55~( 5 :45)NHK BS1   男子シングルス準々決勝 LIVE(丹羽戦)
 8 :25~( 9 :55)NHK BS1   男子シングルス準々決勝 LIVE(水谷戦)
男女4回戦終了時の勝ち上がりは以下のとおり。
 大会に入ってから倉嶋監督は「丹羽の調子が上がってきている」と言っていたが、まさにそれを証明した。
 春先からのワールドツアーでは連戦連敗、世界ランキングも19位まで落としていた。対するは香港のエース黄鎮廷。ペンホルダーの両面攻撃型。丹羽と入れ替わるように世界ランキングをぐんぐん上げ、大会前は世界8位となっていた。

 上昇選手と少し落ち気味の選手の対決。しかし、ここで丹羽は意地を見せた。1ゲーム目こそ黄鎮廷に先取されたが、そこから追い上げ、逆転をする。前・中陣でミスがなく、チキータも効いている。
 最終ゲームはスタートでリードを奪うも逆転され、そこからの競り合いで最後まで攻めきった。久しぶりに丹羽らしい、速攻を見せた。勝利した瞬間もガッツポーズはないが、胸に手を当て、タオルで顔を覆い、応援席に手を上げた。
 あくまでクール。これが丹羽の流儀だが、地元の観客の「ニワコール」に呼ばれ、観客席で記念撮影の時には笑顔がこぼれた。

  • 勝った瞬間、ガッツポーズはなかったがタオルで顔を覆った丹羽

  • ベンチに戻った丹羽を倉嶋監督が持ち上げた

  • 熱狂的な地元のファンにもみくちゃにされる倉嶋監督

  • 選手の引き上げるラインは観客席に近い。スマホでの写真に笑顔で応える丹羽

 日本女子はエースの石川の敗戦で重い空気が流れていたが、その雲を蹴散らすように福原愛が素晴らしいプレーを見せた。まず午前中にドデアン(ルーマニア)に完勝し、夜には北朝鮮のカットマン、リ・ミョンスンにこれまた完勝。
 ドライブで粘るのではなく、ドライブにツッツキやストップなどを混ぜ、バックハンド攻撃も入れながら、フォアのスマッシュも織り交ぜるなど、完璧なカット攻略を見せた。
 
 明日の準々決勝はシンガポールの馮天薇。オリンピックに調子を合わせてくる選手だが、4年前のロンドンでは団体戦トップで福原が勝っている相手。この選手を下せば、反対側からは李暁霞が上がってくる。仮に負けても、メダル決定戦では、ユ・モンユ(シンガポール)とキム・ソンイ(北朝鮮)の勝者と対戦する可能性が高い。
 明日の馮天薇にメダル獲得の可能性がかかっている。
  • 強打と軽打の絶妙な組み合わせのカット攻略を見せた福原

  • 気合も十分だった

男子シングルス4回戦が終了。
水谷に続き丹羽も黃鎮廷(香港)に逆転で勝利し、ベスト8入りを果たした。

●男子シングルス4回戦
馬龍(中国) 4(-6、-10、5、1、11、11)2 鄭栄植(韓国)
アルナ(ナイジェリア) 4(10、10、5、-3、-5、9)2 ボル(ドイツ)
フレイタス(ポルトガル) 4(8、7、5、7)0 コウ・レイ(ウクライナ)
水谷(日本) 4(5、6、-11、-8、8、10)2 カルデラノ(ブラジル)
オフチャロフ(ドイツ) 4(-31、10、5、4、7)1 トキッチ(スロベニア)  
サムソノフ(ベラルーシ) 4(9、6、8、-15、-7、8)2 ドリンコール(イギリス)
丹羽孝希(日本) 4(-6、6、-8、-5、10、4、8)3 黃鎮廷(香港)
張継科(中国) 4(8、9、12、5)0 クリサン(ルーマニア)
 女子の4回戦が終了。
日本の福原愛は北朝鮮のカットマン、リ・ミョンスンをストレートで下しベスト8進出を決めた。
詳細は追って掲載します。

●女子シングルス4回戦
丁寧(中国) 4(3、5、4、4)0 杜凱琹(香港)
ハン・イン(ドイツ) 4(4、4、-8、3、11)1 リー・シュエ(フランス)
ユ・モンユ(シンガポール) 4(10、-8、10、7、2)1 田志希(韓国)
キム・ソンイ(北朝鮮) 4(2、6、-10、-8、9、9)2 陳思羽(チャイニーズタイペイ)
李暁霞(中国) 4(5、6、4、4)0 李皓晴(香港)
陳怡静(チャイニーズタイペイ) 4(5、9、3、-4、-5、-9、7)3  徐孝元(韓国)  
福原愛(日本) 4(5、10、1、7)0 リ・ミョンスン(北朝鮮)
馮天薇(シンガポール) 4(6、6、7、-6、4)1 リュウ・ジャ(オーストリア)
 実力から言えば、まだ水谷が一枚も二枚も上だが、敗れたブラジルのカルデラノは敗戦後に大粒の涙を流した。
 卓球不毛の地、ブラジル。今までは日系選手が中心で代表を担ってきたが、カルデラノによって新しいブラジルの卓球の歴史が切り開かれるだろう。
 小さい頃から卓球が盛んな町で生まれていないカルデラノだが、陸上やサッカーに親しみながらも最終的に卓球を選び、越境しながら腕を磨くがやはりブラジルでは難しい。しかし、神が味方したのか、リオ五輪が決まり、国の援助の元、ヨーロッパ各地で練習する機会をもらった。
 
 日本のように強い選手が名門校に集まり切磋琢磨しながら強くなっていく光景はカルデラノには想像つかないだろう。
 2年前からドイツのオクセンハオゼンのマスターカレッジで練習に励み、ブンデスリーガで力をつけてきた。
 抜群の身体能力とクレバーな頭脳。まだまだ強くなるだろう。南米から世界へ飛び出す20歳だ。

 試合後に大粒な涙を流しながら、役員にファンサービスのために観客席にボールを投げることに嫌な顔を見せなかった。彼はここに来た観客たちの多くが卓球を知らない人たちであることを理解していた。少しでも卓球ファンが増えればという気持ちで涙をこぼしながら、ボールを投げていた。
 アフリカのアルナの活躍、そしてカルデラノの躍進と、卓球というスポーツが世界中から個性的な選手を生み出している。
  • しなやかな全身から放たれるドライブは強烈だ

  • 観客は大いに沸いた

  • 家族と思われる人たちと抱き合う。涙は止まらない

  • 涙を流しながらファンサービスに努めた

水谷隼  4(5、6、−11、−8、8、10)2  カルデラノ(ブラジル)

 何千人が入ったのかわからない。とにかく満員に近い大観衆が叫びながら、会場の熱気を作り出していく。卓球会場のリオセントロ・パビリオン3はさながらサッカー場だ。
 出足から水谷はサービスの変化でカルデラノの出鼻をくじく。ラリー戦に強いカルデラノの調子を出させないように台上での接近戦に持って行ったのか。それともカルデラノが打ち気がありすぎてミスしたのか、いきなり2ゲームを連取。
 
 正直、このままワンサイドかなと思いきや、3ゲーム目から息を吹き返すカルデラノ。3ゲーム目をジュースで取ると会場の熱狂とともに水谷を押していく。2−2とタイゲームになると会場は大騒ぎだ。
 水谷がサービスの構えに入ると観客から妨害するかのようなブーイングが襲ってくる。しかし、ヨーロッパでのリーグを経験し、タフなメンタルを持つ水谷は動じない。6ゲーム目は10−8とカルデラノがゲームポイントを奪うが、水谷は勝負強さを発揮して、勝利を勝ち取った。明日、準々決勝でポルトガルのフレイタスと勝負する。
 
  • 勝利の瞬間の水谷

  • 応援団に手をあげる

  • 試合後にインタビューを受ける