速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

全中国運動会・速報2017

 今朝は朝から快晴だった天津の街。……正確に言うと、天津市内から60キロ近く離れた武清の街。男女シングルス決勝が終了し、すべての取材を終えて外に出てみると、大きな大きな満月が出ていた。

 団体戦5日間、個人戦5日間という日程の全中国運動会。さすがに全日程を取材するのは厳しいので、大会2日目に現地に入り、3日目の団体準々決勝からの取材になった。それでも8日間の取材は世界選手権並みだ。

 「日本選手が出ない中国の国内大会を、わざわざ取材しなくても……」と思う方もいるかもしれない。実際、現地でも「なぜわざわざ全中国運動会を取材に来るのか」と、2件ほど取材を受けたくらいだ。前回の鞍山大会の時はもっと多かった。

 しかし、今日の男子シングルス決勝の馬龍対樊振東は、6月の世界選手権決勝と同じ対戦カード。女子シングルス準決勝の丁寧対朱雨玲、決勝の丁寧対劉詩ウェンも、それぞれ前回と前々回の世界選手権決勝と同じ顔ぶれだ。それだけのメンバーが、五輪や世界選手権にまさるとも劣らぬ全身全力のプレーでぶつかり合う。取材申請や現地でのIDの取得など、相当な手間がかかったけれど、十分に取材する価値はある大会だと思う。

 上海市を団体優勝に導いた許シンは、個人戦に入って故障が悪化。テーピングだらけの体にさらにコルセットを巻き、大会最終日に力尽きるまでコートに立ち続けた。全中国運動会に懸ける中国選手の意気込みはすさまじい。大会のレベルとしては、普段使い慣れていないシームレスボールの影響もあり、前回大会よりやや下がった印象もあるが、ハイレベルなラリーが随所に展開された。

 各種目の詳細はもちろん、大会の雰囲気を一変させてしまった「張継科ガールズ」から大会の内幕まで、全中国運動会の報道ページは9月21日発売の卓球王国11月号に早くも掲載。明日、北京首都国際空港を飛び立った飛行機は、締め切りのまっただ中に着陸します。気合いを入れてページを作りますので、どうかご期待ください!
  • 男女チャンピオンの最高のスマイル。もちろん郭炎コーチも

  • 一方、北京市チームのチームメイトは……。右端の孫晨はこの後ピースしてました

★第13回全中国運動会・卓球競技/最終成績

●男子団体
優勝:上海市
2位:四川省
3位:解放軍、広東省

●女子団体
優勝:四川省
2位:黒龍江省
3位:北京市、湖北省

●男子シングルス
優勝:馬龍(北京市)
2位:樊振東(解放軍)
3位:王楚欽(北京市)

●女子シングルス
優勝:丁寧(北京市)
2位:劉詩ウェン(広東省)
3位:朱雨玲(四川省)

●男子ダブルス
優勝:周雨/樊振東(解放軍)
2位:馬龍/許シン(北京市/上海市)
3位:閻安/林高遠(北京市/広東省)

●女子ダブルス
優勝:顧玉ティン/木子(山東省/解放軍)
2位:朱雨玲/陳夢(四川省/山東省)
3位:丁寧/劉詩ウェン(北京市/広東省)

●混合ダブルス
優勝:于子洋/王曼昱(黒龍江省)
2位:ハオ帥/王芸迪(天津市/雲南省)
3位:樊振東/朱雨玲(解放軍/四川省)

第13回全中国運動会・卓球競技、開催された7種目の結果は上記のとおり。女子団体優勝、男子団体2位、そして個人戦では朱雨玲が銀メダル1枚・銅メダル2枚を獲得した四川省の健闘が光った。男子団体での上海市の52年ぶりの優勝、男子シングルスの馬龍と男子ダブルスの周雨/樊振東の2連覇など、様々なトピックスが生まれた大会となった。
  • 男女シングルス優勝の馬龍と丁寧

  • 許シンの棄権で3位決定戦は行われず。男子単で17歳で銅メダルの王楚欽

●男子シングルス決勝
馬龍(北京市) 8、ー8、ー9、7、6、9 樊振東(解放軍)

大会のフィナーレを飾る、男子シングルス優勝は馬龍!
大会史上初の男子シングルス2連覇!

6月の世界選手権個人戦決勝と同じ顔合わせ。序盤は両選手ともフォアハンドの手数が少なく、緩急をつけたバック対バックのラリー戦という展開も、世界選手権と共通していた。互いに堅いバックの守備力を誇るふたり。準決勝の王楚欽戦では効いた、馬龍のバックの横下回転ショートも、樊振東には一発で打ち抜かれるシーンが多かった。

そして、バック対バックのラリーでは、やはり馬龍が一枚上手だった。伸ばすバックハンドでチャンスを作り、横殴りのバックドライブで得点を狙う樊振東に対し、馬龍はバック面の粘着性ラバーの特製を生かし、球質を巧みに変化させてミスを誘う。成績が出ない時期の「窮余の一策」だったバック面の粘着性ラバーだが、今や馬龍の大きな特長だ。

樊振東の得点は、基本的に自分で狙って取った得点しかない。しかし、馬龍には自分から取った得点と、相手にもらった得点の2種類がある。互いに積み重ねていくと、競り合っても最後は馬龍が抜け出す。

馬龍がゲームカウント3ー2と王手をかけた第6ゲーム。馬龍は3ー3から7ー3とリードを広げる。樊振東も馬龍が3球目で攻めてくるのを読み、ストレートへのバックハンドでノータッチを奪う冷静なプレーを見せるが、最後までフォアハンドでプレッシャーをかけ続けたのは馬龍。9ー9から2点連取して優勝した瞬間、その場に倒れ込んだ。それはまるで世界選手権のリプレイだった。

前回の全中国運動会の決勝では、馬龍に対してゲームカウント3ー2の9ー8でリードを奪い、優勝まであと一歩だった樊振東。今大会、確実に成長した姿を見せたが、またも馬龍の軍門に下った。かつての馬龍がそうだったように、世界の頂点に立つためには避けられない、雌伏の時期なのか。
  • 馬龍、最後はやはりパワードライブがものを言った

  • 樊振東、馬龍という壁の前に立ち尽くした

  • 優勝の瞬間、馬龍は大きくガッツポーズ

  • その場に倒れ込んだ

  • 着替えたウェアを応援団にサービス!

  • 王皓が、樊振東のベンチに入った王涛に物申していた

●女子シングルス決勝
丁寧(北京市) ー13、3、4、ー8、5、9 劉詩ウェン(広東省)
●女子シングルス3位決定戦
朱雨玲(四川省) ー7、7、9、ー7、7 王芸迪(雲南省)

女子シングルスは丁寧が初優勝!

第1ゲームのラブオールから、劉詩ウェンが快速バックハンドで丁寧のフォアサイドを打ち抜いた決勝。このゲームはジュースの連続となるが、劉詩ウェンが15ー13で奪取する。

その後は、お互いにフォアサイドに決定打を狙いながら、激しい両ハンドのラリー戦を展開。ベンチに戻ってきた丁寧の額に幾筋も汗が流れる。コートの両サイドの3階席には、それぞれ丁寧のファンと劉詩ウェンのファンが陣取り、応援合戦を繰り広げる。

ゲームカウント2ー2の第5ゲーム、2ー2から丁寧が5点を連取し、そのままリードを保って11ー5。両サイドに大きく振り合うラリー戦になると、最後には上背のない劉詩ウェンが苦しくなり、最後はミドルやフォアサイドに打ち抜かれる。先に仕掛けたい劉詩ウェンだが、もうひとつ攻め手を欠く。

第6ゲームの3ー3でも、劉詩ウェンは台上にやや浮いたボールを打ち込めず、ダブルストップ。逆に丁寧はそのストップをすかさずバックハンドで狙い、得点した。9ー9まで競り合ったこのゲームも、最後は丁寧が2本連取して11ー9。その瞬間、両手を高々と挙げて吠えた。

このふたりの試合を観ていると、どうしても2010年の世界団体選手権を思い出す。ともに決勝のシンガポール戦で失点して金星を献上。ふたりの再出発は、スタートラインよりもかなり後方からだった。それから7年。身長もプレースタイルも対照的なふたりのライバルは、全中国運動会という「もうひとつのビッグゲーム」で、改めて明暗を分ける形となった。

劉詩ウェンが復活の優勝を遂げ、そこから一気に飛躍していくというシナリオも、見てみたかったのだが……。
  • 優勝の瞬間、丁寧は大きくガッツポーズ!

  • 苦楽をともにしてきた、ベンチの郭炎コーチと抱擁

  • 放心したような笑顔のあとで、

  • 大粒の涙を流した。その胸に去来するものとは……

  • ボールセンスを見せつけた劉詩ウェンだが、運命を変える一球が欲しかった

●男子シングルス準決勝
馬龍(北京市) 3、8、6、ー5、7 王楚欽(北京市)
樊振東(解放軍) キケン 許シン(上海市)

男子シングルス準決勝の馬龍対王楚欽の試合が行われている時、大会審判長からの通知があり、許シンが男子シングルス準決勝を棄権することが発表された。一昨日の男子シングルス準々決勝、昨日の男子ダブルス決勝といずれもインジャリータイム(故障の治療のためのタイム)を取り、やっとのことでコートに立ち続けてきた許シンだったが……。

馬龍対王楚欽という、北京市チームの先輩・後輩対決は、さすがに二枚も三枚も役者が違った。強力なチキータから、クロス・ストレートに威力あるフォアドライブを打ち分ける王楚欽だが、まだ自分のプレーで精一杯。対する馬龍は、バックの横回転ショートを巧みに混ぜ、王楚欽がつないできたところを一発のパワードライブで打ち抜くなど、心憎いプレーを随所に披露。多彩なレシーブで王楚欽に的を絞らせず、4ー1で快勝した。

許シンの棄権で、王楚欽は男子シングルス3位が確定した。2回戦の程靖チィ戦ではマッチポイントを取られ、準々決勝の周愷戦もゲームオールジュースの大激戦。まだ試合運びには詰めの甘さがあり、勝利が近づいてくると守りに入る時があるが、最後の最後まで追い詰められるとすごい力を出してくる。

サービスが非常にうまく、フォアドライブでの体の使い方にも天性の柔らかさを見せる王楚欽。顔つきにはまだあどけなさを残すこのサウスポーを、中国男子チームは厳しく鍛えてくるだろう。樊振東に続く、未来の主力候補だ。
  • 馬龍、後輩を退けた瞬間はガッツポーズはなく、軽く汗をぬぐったのみ

  • 王楚欽、先輩の壁を感じた一戦だっただろう

  • 大きなフォームから出すサービスが、王楚欽の強力な武器

●女子シングルス準決勝
丁寧(北京市) 6、ー8、9、ー4、ー7、8、9 朱雨玲(四川省)
劉詩ウェン(広東省) 8、8、ー4、7、8 王芸迪(雲南省)

女子シングルス準決勝を勝ち上がったのは、丁寧と劉詩ウェン!
丁寧対朱雨玲の一戦は、お互いに死力を尽くした好ゲーム。6月にドイツ・デュッセルドルフで行われた世界選手権女子シングルス決勝の再現。その世界頂上戦に引けをとらない試合内容だった。

朱雨玲は精度が高く、コースの厳しいバックハンドで丁寧を振り回し、ゲームカウント3ー2とリード。第6ゲームも4ー7から7ー7まで挽回して勝利に迫ったが、ここで丁寧が気迫のこもったフォアドライブをフォアクロス、さらにフォアストレートに決める。追い込まれるほどに強い女王の底力。丁寧が11ー8としてゲームオールに追いつく。

最終ゲームは丁寧が4ー1、5ー2、8ー4、9ー5と終始リード。10ー6でマッチポイントを握った後、朱雨玲も10ー9まで追いすがる。ここで勝負を賭けた朱雨玲、フォア前のサービスにバックハンドで回り込み、チキータでの強打を狙ったが、ボールは無情にもオーバーミス。熱戦に終止符が打たれた。

劉詩ウェン対王芸迪は、調子の上がらない劉詩ウェンと、硬さの見える王芸迪、ともにややミスが多かった。その中でも、フォア前へのサービスで王芸迪を動かしてから、ピッチの早いバックハンドで先手を取った劉詩ウェンが主導権を握り、4ー1で勝利。今大会、センセーショナルな活躍を見せてきた王芸迪だったが、3位決定戦に回ることになった。
  • 丁寧、熱戦を制して大きく吠えた!

  • 朱雨玲、決勝進出はならずも、早いラウンドで敗れた前回大会から躍進

  • フォアサイドから相手フォア前へのサービスもうまく使った劉詩ウェン

  • 快進撃の王芸迪、敗れたものの飛躍の大会となった

★大会最終日・9月6日のタイムテーブル

[女子シングルス準決勝]
●11:00〜(現地時間10:00〜)
丁寧(北京市) vs. 朱雨玲(四川省)
●11:45〜(現地時間10:45〜)
劉詩ウェン vs. 王芸迪(雲南省)

[男子シングルス準決勝]
●12:30〜(現地時間11:30〜)
馬龍(北京市) vs. 王楚欽(北京市)
●13:15〜(現地時間12:15〜)
許シン(上海市) vs. 樊振東(解放軍)

[男女シングルス3位決定戦]
●女子:16:30〜(現地時間15:30〜)
●男子:17:00〜(現地時間16:00〜)

[男女シングルス決勝]
●女子決勝:17:30〜(現地時間16:30〜)
●男子決勝:18:30〜(現地時間17:30〜)

第13回全中国運動会の卓球競技も、いよいよ最終日!
男女シングルス準決勝と3位決定戦、そして決勝が行われる。

男子シングルスは、馬龍が大会初の男子シングルス連覇に挑む。過去に王涛が2回優勝(87・97年大会)したことはあるが、連覇はまだ誰も成し遂げていない。まず準決勝で後輩の王楚欽の挑戦を受ける。決勝の相手は前回大会と同じ樊振東か。

女子シングルスは、現五輪・世界チャンピオンの丁寧が「全満貫」(五輪・世界選手権・ワールドカップ・全中国運動会での優勝)に挑む!
男子ダブルス決勝の終了後、会場では男女ダブルスの表彰式が行われた。

男子ダブルス優勝の周雨/樊振東は、王涛監督と3人でお決まりの「敬礼ポーズ」。準優勝の馬龍/許シンは、表彰台に上がる際に馬龍が許シンを抱擁するひと幕もあった。ファンの妄想がふくらみそうです……。

抱擁といえば、山東省チームの顧玉ティンを抱きしめていた写真中段右の女性。選手全員と親しげに話しているので、タダモノではないと思っていたら……95年世界選手権3位の喬雲萍(チャオ・ユンピン)さんでした。今大会には山東省チームの副団長として参加。オールドファンには懐かしい顔ですね。
  • 女子ダブルス優勝の顧玉ティン/木子。コーチも表彰台に上がるんです

  • 男子ダブルス優勝の周雨/樊振東は、解放軍おなじみの敬礼ポーズ

  • ショックを引きずっている許シンを馬龍が抱擁

  • こちらの顧玉ティンを抱擁している女性が……

  • 往年の名選手・喬雲萍さんでした

●男子ダブルス決勝
周雨/樊振東(解放軍) 14、ー9、ー11、8、8、ー1、9 馬龍/許シン(北京市/上海市)

男子ダブルス決勝は、ゲームオールの激闘の末、周雨/樊振東が勝利!

第5ゲーム終了後に、許シンが再びインジャリータイム(治療のためのタイム)を取ったこの試合。もともと左肩を傷めていたが、昨日は脇腹、今日は左足と治療を受ける箇所が変わる。左肩をかばうと、それだけ他の部分に負担がかかるということか。

しかし、裏面ドライブとカウンターで必死に戦う許シンを、今日も馬龍が全力でアシスト。馬龍の集中力は素晴らしいもので、イージーミスはほとんどなし。バックの緩急でミスを誘ったかと思えば、中陣から目の覚めるようなバックストレートへのパワードライブを見せた。

最終ゲームもスコアが離れないシーソーゲーム。9ー9まで競り合ったが、ここで許シンが全身全霊を賭けて放ったパワードライブが、わずかにコートを外れた。無念の敗戦に、試合後のベンチでがっくりと肩を落とす許シン。明日のシングルスは絶望的な戦いが待ち受けているだけに、今日は何としてもタイトルを獲りたかったのではないか。

優勝した周雨/樊振東は、周雨に相変わらずミスが多かったが、樊振東が強烈なチキータでのレシーブと、コースを突くバックハンドでカバーした。男子ダブルス2連覇は、93・97年大会の王涛/劉国梁ペア以来。偉大な先輩に肩を並べた。
  • 樊振東が最後まで崩れなかった優勝ペア

  • 解放軍チームの王涛監督もベンチでこのガッツポーズ

  • 馬龍/許シン、奮闘及ばず2位

  • 落胆を隠せない許シンを、馬龍がなぐさめていた

●女子ダブルス決勝
顧玉ティン/木子(山東省/解放軍) 7、8、10、ー8、6 朱雨玲/陳夢(四川省/山東省)

女子ダブルス優勝は顧玉ティン/木子!
準決勝で丁寧/劉詩ウェン、決勝で朱雨玲/陳夢を連破し、文句なしの優勝を飾った!

両ハンドのバランスに優れているゆえに、プレーが守勢に回った感のある朱雨玲/陳夢に対し、顧玉ティン/木子はグイグイ攻めた。右シェークバック表の木子が、名人芸のフォアフリックと豪快なフォアドライブで先手を取り、左シェークドライブ型の顧玉ティンが直線的な弾道の両ハンドを突き刺す。

試合中盤から顧玉ティンにイージーミスが目立ち、第4ゲームを落としたが、最後まで攻撃の手を緩めなかった。前回は前回は曹臻とペアを組んで女子ダブルスを制した木子。今大会ではその曹臻がベンチに入り、ふたりで若い顧玉ティンを支えた。「今大会では優勝できるとは思っていなかった」と試合後の木子。

朱雨玲/陳夢は、8ー10から10ー10に追いついた第3ゲームを取りたかったが、最後までプレーの歯車がかみ合わず。6月の世界選手権個人戦に続き、準優勝となった。
  • 堂々の勝ちっぷり、顧玉ティン/木子!

  • ベンチの曹臻と歓喜の抱擁

  • 朱雨玲/陳夢は準優勝に留まる