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速報・現地リポート

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世界卓球ブダペスト大会

★2019世界卓球選手権ブダペスト大会(個人戦)・メダリスト一覧

〈男子シングルス〉
優勝:馬龍(中国・3大会連続3回目)
準優勝:ファルク(スウェーデン)
3位:安宰賢(韓国)、梁靖崑(中国)

〈女子シングルス〉
優勝:劉詩ウェン(中国・初優勝)
準優勝:陳夢(中国)
3位:丁寧(中国)、王曼昱(中国)

〈男子ダブルス〉
優勝:馬龍/王楚欽(中国・初優勝)
準優勝:イオネスク/ロブレス(ルーマニア/スペイン)
3位:梁靖崑/林高遠(中国)、アポロニア/モンテイロ(ポルトガル)

〈女子ダブルス〉
優勝:孫穎莎/王曼昱(中国・初優勝)
準優勝:早田ひな/伊藤美誠(日本)
3位:橋本帆乃香/佐藤瞳(日本)、陳夢/朱雨玲(中国)

〈混合ダブルス〉
優勝:許シン/劉詩ウェン(中国・初優勝)
準優勝:吉村真晴/石川佳純(日本)
3位:樊振東/丁寧(中国)、フランチスカ/ゾルヤ(ドイツ)

2019世界卓球選手権(個人戦)ブダペスト大会の詳報は、5月21日発売の卓球王国7月号に掲載されます。全メダリストの独占インタビューをはじめ、大会の興奮が伝わる特大ボリュームの世界卓球特集号。ご期待ください!
  • 男子シングルス優勝の馬龍

  • 男子シングルス準優勝のファルク

  • 女子ダブルス準優勝の早田ひな(左)/伊藤美誠

  • 女子ダブルス3位の橋本帆乃香(左)/佐藤瞳

 女子ダブルス決勝の2-2で迎えた5ゲーム目、9-9でその「事件」は起きた。

 早田ひながサービスを出した。「私がサービスを出したけど、ボールの軌道も変わらず、ネットの白線にも触れずに、相手もミスをしたという表情になったのに、急にネットインになった。選手たちもネットじゃないと思っていたはず。運がなかった。でも運も実力のうち」と早田は振り返る。

 中国の孫穎莎のレシーブがオーバーミスをした直後に、王曼昱が手を上げ、早田のサービスがネットインだとアピール。その直前に副審も手を上げていたが、それに抗議する日本ペア。オーロラビジョンに映しだされるスローモーションでは、明らかにネットインしていない正規のサービスだった。しかし、抗議は通らず。10-9になるはずの状況で、ノーカウントの9-9として試合続行。日本のベンチからの要求でタイムアウトになった。

 「審判も中国系だったので、審判は日本と中国系は避けてほしかった」と伊藤は言う。「自分たちが10-9になっていたら、次の中国ペアのチキータが来ても返せたと思う。あそこでのタイムアウトが良かったのかなと思います。それまで私たちのほうが冴えていたし、中国の二人だけだったら9-9からの1本はないけど、あそこでタイムアウトを取ったから、(ベンチの指示で)次を回り込んできた」(伊藤)。

 明らかにこの9-9からの1本を、精神的にも日本ペアは引きずった。決勝が終わり、表彰式になっても日本ペア、特に伊藤の顔には笑顔はなかった。怒りが収まらなかったのだろう。その後の記者会見や囲み取材でも質問はその時の1本に集中していた。

 彼女たちの怒りのクールダウンには時間がかかった。その後にテレビの収録があり、さらに小誌・卓球王国は恒例の「メダリストのインタビュー」をお願いしていた。
 場所を選手団のホテルに移して、レコーダーを向けた時には多少怒りは収まっているようにも見えた。もちろん、悔しくてもその1本は返ってこないし、優勝ペアと再戦できるわけでもない。そしてこのペアはもちろん銀メダルに満足せず、かといって愚痴を言うでもなく、その思考をポジティブに切り替えようとしていた。

 伊藤は冷静に言葉を選んだ。「言いたいことはたくさんあります。決勝は悪くはなかった。5ゲーム目の9-9は重要ではあるけど、2-0から2-2にしてしまったのが良くなかった。自分たちにも余裕がなかった。2-0になった時にもう1ゲーム取りたかった」 「気持ちは切り替えられる。中国オープンでぶつかった時、さらに頑張れるかなとプラスに捉える。『絶対勝ってやる』という思いを胸に頑張れる。次は見てろよ、と」。

 早田も言葉をつないだ。「完敗じゃないし、勝負で負けた感じではない。こんな負け方はない。力はほぼ出せたし、負けたけどうまくいっていた部分が多かったので、もやもやした気持ちをどこにぶつけたらいいかわからない」

 インタビュー直前の表彰式や囲み取材で笑顔もなく、怒りの表情だった伊藤美誠の表情がいつしか変わっていた。帰国する日本選手団だが、翌日の早朝に次の国際大会、セルビアオープンに早田は向かう。「この悔しさを胸に毎日を頑張っていける気がする」。早田ひなも顔を上げ、前を向いていた。
 
 ふたりを次号の表紙に予定していたのだが、表彰式での憮然とした表情では難しかった。そこであえて、表紙用にホテルのロビーで撮影を懇願し、ふたりは快くメダルを胸に賭けてくれた。そして、ようやくいつもの「みま・ひなスマイル」を見せてくれた。

 伊藤美誠と早田ひな。逃した金メダルの価値は大きなものだった。しかし、この二人が得たものは金メダルよりも重いものかもしれない。その経験が二人をさらに成長させることは間違いないだろう。

*メダリストインタビューの詳細は5月21日発売号で掲載
  • 女子ダブルス決勝後の会見、ふたりの表情は硬かった

  • 女子複決勝5ゲーム目、9ー9での早田のサービス

●女子ダブルス決勝
孫穎莎/王曼昱(中国) ー8、ー3、8、3、10、8 早田ひな/伊藤美誠

早田/伊藤ペア、孫穎莎/王曼昱から2ゲームを先取してプレッシャーをかけたが、惜しくも敗れて銀メダル……!

出足から中国ペア、特に王曼昱は動きが硬く、逆に早田/伊藤は伊藤がバック表ソフトで巧みに球質の変化をつけ、レシーブから強烈なバックフリックで得点。早田のパワードライブも決定力抜群だった。2ゲーム目は3ー0、7ー2、9ー3と一気にリードを広げて11ー3で連取。場内の中国応援団を沈黙させた。

しかし、4ゲーム目から中国ペアは孫穎莎がうまい球さばきを見せた。短く前に落とすループドライブや、フォアストレートへのカウンターなど、男子選手並みの技術力を発揮。王曼昱も次第に硬さが取れ、中国ペアが2ゲームを返す。

勝負の分かれ目は5ゲーム目だった。早田/伊藤が7ー5、9ー7とリードを奪いながら、9ー9と中国ペアが追いつく手に汗握る展開。ここで早田のサービスに対し、孫穎莎のチキータがネットを弾いてオーバーミス。「ゲームポイントだ」と思われた瞬間、審判から「レット」の判定。早田/伊藤は「ネットには触れていない」と抗議し、場内のオーロラビジョンでも確認したが、レットの判定は覆らず。オーロラビジョンで見る限りは、レットには見えなかった。結局、このゲームを11ー9で中国ペアが取る。

6ゲーム目、孫穎莎がフォアストレートへのドライブを連発し、8ー4、9ー5と中国ペアがリードして、10ー6でマッチポイント。早田/伊藤も10ー8まで挽回したが、最後は早田のフォアドライブがネットとなり、中国ペアがガッツポーズ。早田/伊藤、中国ペアを追いつめながら、紙一重の差で勝利を逃した。惜しまれる一戦だった。
  • 早田/伊藤、不運な一面もあった。悔しい銀メダル

  • 表彰式でも笑顔はなかった

  • 孫穎莎が強心臓のプレーを見せた中国ペア

  • 中国の5種目完全制覇を決めた

●男子シングルス決勝
馬龍(中国) 5、7、−7、9、5 ファルク(スウェーデン)

 馬龍、男子シングルス決勝でファルクを破り、3連覇!

 1ゲーム目、機先を制したのは馬龍。ファルクのロングサービスを確実にレシーブから狙い打ち、バック対バックの展開ではバックの粘着性ラバーでタイミングを外してミスを誘う。決勝の1ゲーム目とは思えないほど落ち着いたプレーを見せる。2ゲーム目も6−6まで競り合うが、馬龍のフォア前を突くファルクのバックサービスは、完璧にストップでレシーブされ、良い展開を作れない。馬龍が2ゲームを連取する。

 3ゲーム目、「このままでは勝機はない」とファルクも勇気あるプレーを見せる。ロングサービスを積極的に使い、馬龍のフォアへ長くツッツキしてからのカウンターなど、自分から長いサービスやレシーブでチャンスを作り、馬龍のドライブをカウンターで狙って5−1、9−2と大量リード。中盤で追い上げられるが、11−7で1ゲームを返す。

 4ゲーム目もファルクのペース。馬龍にフォアドライブのミスも2本出て5−1。7−5、9−7とリードを保つが、9-8となってファルクがタイムアウト。ここでも馬龍はレシーブを台上に止め、長いツッツキをフォアドライブで狙い打って11−9と逆転。ゲームカウント3−1、3連覇まであと1ゲームとする。

 5ゲーム目は馬龍4−1のリードから、ファルクのクロスの快速カウンターなどで4−4。しかし、ここからが馬龍の本領発揮。ファルクのスマッシュをしのぐ守備力、バック対バックでナックル性のボールを混ぜる変化、ストップ対ストップで何本でも返す対応力と、パワードライブはなくともオールラウンダーの真髄を発揮して9−4と5点連取。9−5でタイムアウトを取ったのも、万全を期してということか。

 最後はファルクのバックドライブを、必殺のバックストレートのパワードライブで狙い打ってマッチポイントを握ると、フォアに来るツッツキを打球点を落として思い切りループドライブ。カウンターのミスを誘って得点し、両手の拳を高々と天に突き上げた。得点術の幅の広さは、まさに究極の戦術マスター。球史に残る3連覇だ。
  • 馬龍、3連覇の偉業達成!

  • ファルクと健闘をたたえ合った

  • 台上やバックハンドでも確実に得点を重ねた馬龍

  • ファルク、敗れたとはいえ勇気あるプレー。見事な準優勝だ

◎大会第8日目・4月28日のタイムテーブル

〈男子シングルス決勝〉
●13:30〜(日本時間20:30〜)
馬龍(中国) vs. ファルク(スウェーデン)

〈女子ダブルス決勝〉
●14:30〜(日本時間21:30〜)
早田ひな/伊藤美誠 vs. 孫穎莎/王曼昱(中国)

 世界選手権(個人戦)ブダペスト大会も、ついに最終日を迎えた。最終日は2試合のみ、男子シングルス決勝と女子ダブルス決勝で、最終試合は女子ダブルス決勝だ。

 男子シングルス決勝は馬龍とファルク。「中国 vs. スウェーデン」という、オールドファンにはちょっとうれしい組み合わせ。しかし、中国選手に挑戦するのはかつての創造的なオールラウンダーではなく、高い集中力と長いリーチで接戦の連続を勝ち上がってきた、職人肌のシェークフォア表だ。

 馬龍はファルクのサービスに対し、ストップとバックへの深いツッツキ、待ちを外すフリックを織り交ぜ、台上に浮けばパワードライブ、深いツッツキをバックドライブで持ち上げてくればカウンターで狙っていくだろう。馬龍に台上でかなう選手はいない。そして馬龍のループドライブをカウンターするのは、さすがのファルクといえども容易ではなく、馬龍の優位は動かない。

 ファルクとしては、リスクを負ってでもロングサービスを織り交ぜ、馬龍を揺さぶっていくしかない。そして馬龍のフォアが強いからといって、バックにボールを集めていると強烈な回り込み強打を浴びる。安宰賢戦の終盤で、思い切ったフォア攻めが功を奏したように、恐れずに馬龍のフォアを攻めていけるか?

 そして女子ダブルス決勝は、早田ひな/伊藤美誠と孫穎莎/王曼昱の対戦。早田/伊藤が優勝すれば、日本選手同士のペアということでは1967年ストックホルム大会の森沢幸子/広田佐枝子ペア以来。「0.5冠」ということでは、73年サラエボ大会で濱田美穂、75年大会で高橋省子がアレキサンドル(ルーマニア)とカットペアを組み、優勝している。

 伊藤は準決勝後の会見で「何年ぶりとかはあまり感じていないし、知らないことなので……。自分たちらしく、目の前の試合に集中してやっていきたい」と語っている。そのとおり。そうやって新しい歴史は作られていくのだと思う。孫穎莎/王曼昱は恐るべき攻撃力を誇るが、プレーは圧倒的に攻撃重視。守備力が高くて大崩れしない陳夢/朱雨玲より隙はある。歴史的快挙で、このブダペスト大会を締めくくってほしい。
  • 準決勝後のインタビューでの早田/伊藤ペア。大会のフィナーレを飾りたい

  • 超攻撃的ペアの孫穎莎/王曼昱

  • 馬龍、大会3連覇の偉業なるか?

  • ファルク……スイングが馬龍とシンクロ?

  • 女子複準決勝で敗れた陳夢(左)/朱雨玲。朱雨玲、頑張ってたんです

●女子ダブルス準決勝
早田ひな/伊藤美誠 9、−10、−14、5、5、7 橋本帆乃香/佐藤瞳
孫穎莎/王曼昱(中国) 3、9、−9、−6、6、−9、5 陳夢/朱雨玲(中国)

女子ダブルス準決勝、日本勢同士の対戦は早田/伊藤が決勝進出!
同じくチームメイトとの対決を制して勝ち上がった孫穎莎/王曼昱と決勝で激突だ。

今年1月の全日本選手権でも準決勝で対戦し、3ゲーム目はジュースまでもつれたものの、早田/伊藤が3−0のストレートで勝利していたこの対戦。しかし、早田/伊藤が一昨日の準々決勝後、「相手も何か変えてくると思うので、そこでしっかり対応したい」(早田)と警戒していたとおり、橋本/佐藤は1ゲーム目から積極的に攻撃を仕掛け、いきなり5−0とスタートダッシュ。しかし、早田/伊藤は自信を感じさせるプレーで、中盤で追いつき、11−9で1ゲーム目を先取する。

これで伊藤/早田が一気に走るかと思われた。しかし、早田/伊藤は2ゲーム目に7−10、3ゲーム目に6−10とゲームポイントを取られたところから追いつきながら、最後に伊藤のスマッシュにミスが出て、2ゲーム続けて落とす。橋本/佐藤のカットは非常にミスが少なく、橋本の前陣に躍り出てのバックハンド、佐藤のフォアドライブでの反撃は大いに会場を沸かせた。

それでも早田/伊藤はあわてない。伊藤が少しずつバック表ソフトのツッツキなどの変化を混ぜ、早田のパワードライブとの球質の変化をつけながら、ゲーム中盤で一気に突き放す。4・5ゲーム目を連取し、6ゲーム目は5−5から5点連取で10−5。最後は10−7の3回目のマッチポイントで、伊藤の快速フォアドライブがバッククロスに決まった。

★早田/伊藤の勝利者インタビュー
早田「一度も負けたことがないペアだったんですけど、ここまで世界選手権であがってきているのでしっかり対策して試合に入りました」
伊藤「明日の決勝は、(準決勝の)どちらが勝っても中国ペアなので、私たちはとにかく良いプレーを出せるよう、自分たちのプレーを出せるよう、備えていきたいと思います」
  • 早田/伊藤、前回の準決勝からステップアップ。ついに決勝へ

  • 橋本/佐藤、まだまだ伸びしろは残されている。今後に期待・大

●男子シングルス準決勝
ファルク(スウェーデン) −8、7、−3、4、9、−2、5 安宰賢(韓国)

 男子シングルス準決勝、もうひとりのファイナリストは右シェーク表ソフトのファルク!

 勝負の分かれ目は5ゲーム目だったか。安宰賢が7−2とリードし、さらに9-6とリードしたところからファルクが逆転した。次の6ゲーム目、小さく前に落とすループドライブなどを駆使して安が取り返したが、最終ゲームは11-5でファルクが完璧な勝利。

 ファルクの表ソフトの強打はもちろんだが、バック対バックからストレートへの打球点の早い強打が、常に回り込んでフォアで狙おうとする安に対して有効だった。スウェーデン選手の決勝進出は1997年のワルドナー以来、22年ぶり。表ソフト使用の選手では1999年の劉国梁以来、20年ぶりのことだ。旧姓は(マティアス・)カールソンだが、今大会で「ファルク」の名は広く知れ渡ることだろう。

「とてもハッピーで、言葉が出てこないよ。一球一球に集中することだけを心がけていた」(ファルク)。
  • ファルク、ついに決勝の舞台へ!

  • ベンチに戻り、最高の笑顔を見せた

  • 安宰賢、敗れたとはいえ一発のパワードライブは強烈だった

●男子シングルス準決勝
馬龍(中国) 8、−6、9、9、12 梁靖崑(中国)

男子シングルス準決勝、ひとり目のファイナリストに決定したのは馬龍!

5ゲーム目の13−12。2回目のマッチポイントで、梁靖崑のストップレシーブを、ミドルからフォアに曲がっていくような絶妙なコースにストップした馬龍。梁靖崑の台上バックドライブのミスを誘った最後の1本に、「戦術マスター」馬龍の凄みが凝縮されていた。

バック対バックのラリーから、互いに回り込みのチャンスを狙う駆け引きが展開されたこの試合。馬龍は梁靖崑の回り込みのタイミングを見計らうように、伸ばすバックハンドで押し込み、クロスへ鮮やかなカウンターを見舞う。逆に自分からは強いバックハンドで仕掛け、必殺のバックストレートのパワードライブを決める。梁靖崑も馬龍が仕掛けるバックハンドを逆に狙い、丹羽も認めた堅いブロックでミスを誘うが、競り合っても最後の1本が遠かった。

故・荻村伊智朗氏の「卓球は100m競争をしながらチェスをするようなスポーツ」という言葉を借りるなら、馬龍より100m競争が早い選手は他にもいる。しかし、馬龍よりチェスがうまい選手は、恐らく今、世界の卓球界にはいないだろう。

また、敗れたとはいえ梁靖崑のプレーの充実ぶりも光っていた。梁靖崑と馬龍の対戦というと、梁靖崑がまだジュニアだった13年全中国運動会での激しい打撃戦を思い出す。「樊振東のバックハンドに、馬龍のパワーを合わせたような選手」だと感じた。それから雌伏の時を経て、世界の表舞台へ躍り出てきた梁靖崑。孤高の雰囲気を醸し出すプレーヤーだが、これからさらに活躍の場が増えそうだ。
  • お見事、馬龍。巧みな戦術で梁靖崑を制す

  • バック対バックから、機を見てパワードライブで狙い打った

  • 馬龍親衛隊も大感激!

  • 梁靖崑、敗れたとはいえ存在感を見せた

 女子シングルス決勝の第6ゲーム、10−9。劉詩ウェンが陳夢に対して迎えた、2回目のマッチポイント。半分、祈るような気持ちでコートを見つめていた。ここで10−10に追いつかれ、陳夢に逆転を許して最終ゲームにもつれれば、劉詩ウェンの勝機は限りなく薄いと感じたからだ。15年蘇州大会の女子シングルス決勝で、丁寧をあと一歩まで追いつめながら、丁寧の負傷で流れが変わり、逆転を許した試合が思い起こされた。4年前の蘇州の表彰台で、劉詩ウェンはあふれ出す涙をぬぐおうともしなかった。

 陳夢もこれまで世界選手権では辛酸を舐めてきた選手だが、彼女は恐らく、21年のヒューストン大会でもチャンスが残されている。しかし、若手の王曼昱や孫穎莎の台頭で、世代交代の波にのまれつつある劉詩ウェンは、今大会が最後の世界選手権個人戦になる可能性が高い。このラストチャンスは、悲運の天才プレーヤーにつかんでもらいたかった。優勝を決めた最後の一本、フォアクロスに突き刺したカウンタードライブには、万感の思いがこもっていた。

 劉詩ウェンは優勝後の会見で、優勝した瞬間の心境について、「まるで夢のようで、何も考えられなかった」と語った。17年6月の中国オープンでのボイコット事件に加担した馬琳が担当コーチを外れ、本人曰く「精神的に落ち込み、もうあきらめそうになったこともあった」という。しかし、劉国梁が中国卓球協会の会長としてカムバックし、馬琳も中国女子チームのヘッドコーチとして現場に復帰した。「馬琳コーチと劉国梁会長が復帰し、私に機会を与えてくれ、教え導いてくれたことに感謝したいと思います」(劉詩ウェン)。

 ちなみに劉国梁会長の復帰がもたらしたものが、もうひとつある。準決勝の丁寧戦、そして決勝の陳夢戦といずれも第5ゲームを11−0で制した劉詩ウェン。これまで中国では、スコアが10−0になったところで片方の選手がサービスをミスしたり、レシーブをわざとネットミスして相手に1点を与えるという、暗黙の「マナー」があるとされていた。世界選手権の大舞台でこのマナーを破った劉詩ウェンには、丁寧戦後に中国の報道陣から質問が飛んだ。

 「今回の世界選手権の前、劉国梁会長から特にこの(10−0での)ケースについて話がありました。『試合自体には、必ず相手に1点を与えるというルールのようなものはない』と。私はすべてのポイントでベストを尽くすことが、相手に対するひとつの敬意だと感じています」。そう答えた劉詩ウェン。決勝後の会見でも同様の質問があったが、やはり「ベストプレーこそ最大の敬意」だと繰り返した。

 思い起こせば前回の17年世界選手権個人戦の期間中、ギャンブルでの借金問題が報道された中国女子の孔令輝監督が中国に呼び戻された。その後、劉国梁総監督の退任やそれに抗議する中国オープンでの選手・コーチのボイコット事件などが発生。中国卓球界は大揺れに揺れた。もちろん、それでも強いことに変わりはなかったのだが……。
 しかし劉国梁の中国卓球協会会長への就任で、その混乱は過去のものとなりつつある。ふたつの「11−0」が、卓球大国・中国の完全復活を告げたように思えてならない。(柳澤)
  • 決勝後の会見での劉詩ウェン

  • 決勝の第5ゲーム、11−0を示すスコアボード

●女子シングルス決勝
劉詩ウェン(中国) −9、7、7、−7、0、11-9  陳夢(中国)

 劉詩ウェンは2009年大会で3位に入ると、その後、3位(11年)、2位(13年)、2位(15年)、3位(17年)と、メダルは獲得しているものの優勝には手が届いていない。
 そんな彼女がほしかったのは、金色のメダル。
 長い道のりの末に、卓球の神様は彼女に微笑んだ。涙とともに28歳の劉詩ウェンは金色のメダルを胸に掛けた。 

 1ゲーム目、陳が8−4とリード、劉が追い上げたが11−9で陳が先取した。両ハンドでの激しい応酬だが、劉はやや前につき、陳はそれよりもわずかに下がり目でプレーする。2ゲーム目は劉が7本で奪い、1−1。

 劉は速さで勝負し、陳はその速さをしのぎながらフォアのドライブで決めに行く展開。3ゲーム目も激しいラリーの応酬だが、最後は劉がバックハンドで強攻し、11−7でゲームを連取した。

 4ゲーム目は9−6で陳がリード。9−7からの陳の3球目の回り込みドライブがエッジをかすめ10−7、そのまま11−7で陳が取り返し、ゲームカウントを2−2にした。

 5ゲーム目、なんと劉が11−0と相手に1点も与えず、優勝に王手を掛けた。

 6ゲーム目、3−0と劉がリード、前ゲームから14本連続で得点し、優勝に近づいていく。3−1の後、劉の速い両ハンドが陳を攻め立て、4−1。5−2、6−3、劉は精度の高いバックドライブで7−3、8−3と離す。8−5になったところで劉がタイムアウト。あと3本で優勝だが、その気持ちを落ち着かせるかのようなタイムアウトだった。

 バック対バックで完全に優位に立つ劉が9−5。9−6から素晴らしいラリーの応酬を陳が制し、9−7。簡単に劉には屈服しない。そして次の劉のミドルへのドライブをカウンタースマッシュで決め、9−8にした陳。10−8で最初の劉のマッチポイント。しかし、陳がフォアドライブで跳ね返し10−9。最後は強烈なフォアドライブを陳のフォアコーナーに決め、劉詩ウェンは10年越しの悲願の優勝を決めた。
 
 両手を突き出し、そして次の瞬間、劉は涙に暮れた。涙が乾かないまま、直後のインタビュー。あなたは長い間、この瞬間を待ってましたね?と質問されると劉は言葉に詰まった。

 「感動しています。6回目の世界選手権で、3回目の決勝だった。この瞬間を長く待っていた。私は優勝するに値する選手だと思っていましたが、それが少し遅かっただけ。夢のような瞬間ですね。私にチャンスを与えてくれたチームに感謝してます。私は5番目に選ばれた選手だった。私を応援してくれた人たち、ファンに感謝したい。くじけそうになった時でも、私をサポートしてくれてありがとう」

 ちょっぴり垂れ目の、大きな瞳から涙があふれていた。劉詩ウェンは本人が言うように、優勝に値する選手だった。6回目の世界選手権。卓球の神様がこの女性に優勝をプレゼントした。
  • 最後の一本、フォアクロスへ渾身のカウンターを決めた!

  • ベンチに戻る途中も涙、涙……

  • 長年応援し続けたファンも、涙が止まらなかった

  • 初の決勝を戦った陳夢、タイトル獲得はならず