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速報・現地リポート

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全日本卓球選手権大会

●男子シングルス
優勝:宇田幸矢(EA/大原学園)、準優勝:張本智和(木下グループ)
3位:吉田雅己(FPC)、戸上隼輔(野田学園高)

●女子シングルス
優勝:早田ひな(日本生命)、準優勝:石川佳純(全農)
3位:橋本帆乃香(ミキハウス)、伊藤美誠(スターツ)

●男子ダブルス
優勝:三部航平/及川瑞基(専修大)、準優勝:戸上隼輔/宮川昌大(野田学園高)
3位:江藤慧/松下大星(クローバー歯科カスピッズ)、笠原弘光/上村慶哉(シチズン時計)

●女子ダブルス
優勝:伊藤美誠/早田ひな(スターツ/日本生命)、準優勝:芝田沙季/大藤沙月(ミキハウス/ミキハウスJSC)
3位:塩見真希/梅村優香(ミキハウス/中央大)、長崎美柚/木原美悠(EA/大原学園/EA)


●混合ダブルス
優勝:森薗政崇/伊藤美誠(BOBSON/スターツ)、準優勝:張本智和/長崎美柚(木下グループ/EA/大原学園)
3位:軽部隆介/松本優希(鹿児島相互信用金庫/サンリツ)、上村慶哉/阿部愛莉(シチズン時計/デンソー)

●ジュニア男子
優勝:吉山僚一(愛工大名電中)、準優勝:松島輝空(木下グループ)
3位:手塚崚馬(明徳義塾高)、横谷晟(愛工大名電高)

●ジュニア女子
優勝:大藤沙月(ミキハウスJSC)、準優勝:小塩遥菜(EA)
3位:横井咲桜(ミキハウスJSC)、杉田陽南(香ヶ丘リベルテ高)

※EA=JOCエリートアカデミー


「天皇杯・皇后杯 2020年全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部)」の模様は、卓球王国2020年4月号(2/21発売)で掲載します。
 2年ぶりの優勝にあと一歩まで迫りながら、宇田幸矢に敗れて準優勝となった張本智和。表彰を待つ選手の控え席で、頭を抱えたまま微動だにしない姿に、落胆の大きさを感じさせた。

 昨年12月のITTFワールドツアーグランドファイナルでは、「天敵」許シン(中国)を相手に堂々たるフォアドライブの連打を繰り出し、互角以上に戦った張本。今大会も4回戦から4戦連続のストレート勝ちという圧巻の強さを見せていたが、準決勝の戸上戦の第2ゲームを落とし、初めてゲームを失ってから、かつての「ブロッキングスタイル」に近いフォアハンドに戻ってしまった。

 しかし、張本は他のどの選手よりも敗戦に学び、そこから這い上がることで急成長を遂げてきた選手だ。失意の敗戦を喫した直後に、あえて失礼な言い方をさせてもらえば、16歳の彼はまだまだ「負け足りない」。今大会で得た教訓は、夏の東京五輪に向けての妙薬となるだろう。以下は会見でのコメント。

「準決勝と決勝、どちらの試合も相手が高校生で、思い切り来るのはわかっていたけど、危ない試合を続けているとどこかで負けてしまう。出足が悪かったと思います。準決勝は相手のプレーにやられてしょうがないけど、決勝は大事なところで凡ミスやネットインがあり、流れをつかみきれなかった。
 決勝の5ゲーム目の8ー10では、やるしかないと思っていたので相手のサービスは読めた。そこは良かったです。最終ゲームは9ー8での3球目のミスがもったいなかったのと、レシーブがずっと手こずっていたので、最後もコースが絞りきれなかった。

 今大会は2位なので、(収穫は)特に何もなかった大会です。学んだことは特にない。やっぱり次は負けないように頑張りたい。初戦だったり、2回戦や3回戦くらいはまだあまり緊張もなくて、良いプレーができたんですけど、準決勝・決勝ではそういうプレーができなかった。自分が年下なのに先に攻めることができなかった。プレースタイルは少しずつ良い方向に向かっていると思うので、最後の大事なところでも出せればいいなと思います。

 全日本選手権は全員が向かってくるので、試合ではどれだけリードされるかわからない。だから、いつでも逆転できるよう準備はしていたし、よい盛り返しができたけど、最後は足りなかった。全日本もオリンピックや世界選手権の次に大きな大会、盛り返せても取り切れなかったのは自信にはつながらない。準決勝まではとても良い試合だったんですけど、決勝1試合でここまで戦った自信が一気になくなった感じはある。またイチからやるしかないかなと思います。

 決勝は年が近いほうが相手は向かってくるし、相手には注意していた。全日本だからこそできるプレーをさせてしまった。そこを耐えて勝っていれば優勝できた、という悔しさはあります」(張本)
  • 表彰式後の会見でも落胆を隠せなかった張本

 男子チャンピオンの宇田に続いて優勝会見に臨んだ早田ひな。選手のコメントにはそれぞれ個性があるが、誰が聞いても内容がわかりやすく、理路整然と語る早田の「コメント力」は卓球界でも際立っている。
 
 「平野(美宇)選手が優勝して、伊藤(美誠)選手が優勝して、私もこれに続きたいなという気持ちはやっぱりあった。準決勝で伊藤選手、決勝で石川選手に勝って優勝できたのはすごく自信になりました」と率直に思いを語った早田。
 激戦となった伊藤美誠戦の7ゲーム目について感想を尋ねられ、「伊藤選手はすごく戦術の幅も広いし、すぐ対応してくるので簡単には勝てない。7ゲーム目はやっぱり緊張するので、気持ちで負けないことを意識して、最後までしっかり攻めていくことを考えました」とコメントした。そして、続いて語ったのは伊藤への感謝の言葉だった。

「伊藤選手は中国選手にも勝つし、ワールドツアーでも優勝したり、ワールドツアーの途中で五輪代表を決めたり、中国選手でもなかなか勝てない選手になっている。ダブルスパートナーとして、お手本として間近で彼女のプレーを見ることが多く、彼女のプレーから学ぶことも多い。自分の卓球人生の中で、彼女のプレーを見てこういうこともできるかな、やってみようと思える存在です」(早田)。

 以下は優勝会見でのコメント。平野・伊藤に続いて早田が全日本のタイトルを獲得したことで、「黄金世代」はさらに互いを刺激し、切磋琢磨していくだろう。速さの平野、技の伊藤、そして力の早田。3人のさらなる化学変化が楽しみだ。「同い年の『黄金世代』に少しでも追いつけるよう頑張りたい」と語る社会人女王の野村萌(デンソー)のように、この世代は他にも才能あふれる選手がいる。来年の女子シングルスが今から楽しみだ。

 「東京五輪に出たかった気持ちももちろんあります。でも逆に東京五輪に選ばれなかったことで、発表されてからのちょっとした期間でも自分を追い込んで、追い込んで、納得してからももうちょっとやったり、逃げてきたところから逃げずに最後まで練習をやり遂げた。短い期間ですけど、その練習の成果が、気持ちの面や技術面で出たと思います。

 ワールドツアーで一緒に帯同してもらっていて、ベンチに入っている石田大輔先生とか、私を4歳から教えてくれている石田眞行さん、お母さんだったり、石田卓球クラブの皆さんにずっとお世話になってきた。東京五輪の選考レースの間も激励の電話を何度もいただいて、それでも選ばれなくて、結果で恩返しができなかった。だから今回は絶対優勝しようという気持ちでした。石田卓球クラブへの思いだったり、家族や身近でサポートしていただいてる方への感謝の気持ちが、涙になって現れたのかなと思います。

  同世代に3人いて、私からしたら「みうみま」ふたりから学ぶことはたくさんある。負けて成長すると思うので、今回は私が伊藤選手に勝ったことで伊藤選手はもっと強くなるし、それを追い越そうと平野選手や私が練習に取り組む。良いライバルでもあります。今の伊藤選手に勝てたのは自信を持っていいですけど、まだまだ足りない部分はあるし、次は0ー4で負けてしまうかもしれない。確実に強くなって、絶対に負けない選手になりたい」(早田)
  • 表彰式では「ひなスマイル」全開!

  • 会見では抜群の「コメント力」を発揮

 2歳年下の張本智和を決勝で破り、新たに全日本チャンピオンの称号を得た宇田幸矢。打ち始めたら相手に反撃を許さないフォアドライブ連打、多彩になったサービス・レシーブからの戦術でついに頂点に立った。5回戦で高見真己(愛知工業大)にあわやというところまで追い詰められたが、そこから吉田海偉(東京アート)、吉村和弘(東京アート)、吉田雅己(FPC)という強者たちを連破。経験豊富な吉田の駆け引き、吉村の両ハンド豪打も打ち破り、決勝でも張本を防戦一方に追い込んだ。以下は優勝後の会見でのコメント。


 「決勝は3ー1の10ー8とマッチポイントを握りながら逆転されて、苦しい試合でしたけど、最後まで我慢できた。最後まで冷静に戦えました。6ゲーム目も7ゲーム目もフォアへのハーフロングのサービスからの展開が良かったので、9ー9からはそれを2本出そうと思っていました。張本には2年前も全日本ジュニアの決勝で負けていて、今までは彼は世界でも勝っているし、少し上の存在だったんですけど、勝つことができて自分の中で自信になりました。少し休んでから、しっかり練習してまた世界で活躍できるよう頑張っていきたい。今後はワールドツアーで格上の選手に勝って世界ランキングを上げていくことが目標です。

 張本に対して、試合に入る前は正直そこまで勝つ自信はなかったんですけど、自分が守っているようでは勝てないのはわかっていた。自分から攻めることだけを意識していました。最終ゲーム9ー9で2本獲れたサービスも含め、サービス・レシーブが良かったです。ベストプレーは7ゲーム目の中盤での回り込みバックストレートへのカウンターです。自分の読みが完璧でした。どんなに強いボールを打っても決めさせてくれないので、冷静にコースを突かないとダメだと思っていました。

 今までは大事な試合やプレッシャーがかかる試合になると出足で空回りしていた。今回は勝ちも意識していたんですけど、最後まで自分のプレーができるよう意識して戦いました」

 世界選手権団体戦への意気込みを聞かれると、「今回の世界選手権は団体戦なので、優勝してもまだ自分の実力では試合に出られるかわからない。試合に出ない時は、しっかりチームのサポートをしていきたい」と語った宇田。「今回はギリギリで張本に勝てましたけど、今後も変わらず上で当たる相手なので、次も勝っていきたい」とコメントし、会見を締めくくった。
  • 表彰式での宇田。天皇杯をその手に収めた

  • 優勝会見では少し初々しく、しかし堂々と質問に答えた

●男子シングルス決勝
宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園) 11、9、ー8、10、ー11、ー6、9 張本智和(木下グループ)

令和初の全日本、最後の最後にニューヒーロー誕生!
男子シングルス優勝は宇田幸矢!

準決勝の戸上戦を乗り越えた張本。決勝は手の内を知っている宇田が相手だけに有利かと思われた。1ゲーム目は6ー3、8ー6のリードから9ー9に追いつかれるが、10ー9でゲームポイント。ここでフォアのサイドを切って台から出るサービスを、サポートを迂回して「横入れ」しようとしてミス。勝負のポイントとなる1ゲーム目のゲームポイントで、それはあまりにリスキーなプレーに思えた。結局、この1ゲーム目は13ー11で宇田が先取する。

2ゲーム目以降も、張本のプレーはいつもの鋭さがなく、やや緩慢に見えた。宇田の打球点の高いフォアドライブは切れ味鋭く、フォアサイドに打たれると張本はドライブやカウンターの返球より、当てるだけのブロックが多くなる。強化してきたはずのフォアハンドが元の形に戻ってしまう。張本は2ゲーム目も落として0ー2のビハインド。3ゲーム目は中盤で突き放して11ー8で奪うが、4ゲーム目も張本7ー3のリードから宇田が8ー7と5点連取で逆転、12ー10で宇田が制す。

そして張本が絶体絶命の窮地に追い込まれたのが5ゲーム目。張本8ー7から張本のフォアドライブを宇田が鮮やかなバックカウンターで打ち抜き、そのまま10ー8でチャンピオンシップポイントを握る。

ここはフォアクロスのドライブの打ち合いからフォアストレートに打ち抜き、さらに10ー9でフォアドライブでレシーブエース。体を折り曲げて吠える張本。会場は大歓声に包まれ、13ー11で張本が逆転。6ゲーム目も宇田に何度も連続ドライブを決められながら、しぶとく得点を重ねて11ー6で奪う。

最終ゲームは張本が4ー1でリード。しかし宇田が目の覚めるような両ハンド強打を連発。張本のフォアが当てるだけになってしまい、何本でも打たれてしまう。そして中盤では張本がリードを保ちながら、フォアサイドへのハーフロングのサービスをドライブでレシーブしたところを、宇田に回り込んで何本も打ち抜かれる。張本9ー8のリードから、張本が3球目バックドライブをミス。そして最後は、宇田のフォアへのハーフロングサービスを張本が2本続けてレシーブミス。二度のマッチポイントを跳ね返した張本だが、ついに勝負あった。

昨年11月の世界ジュニアでそのプレーを見て、技術・戦術の幅が広がり、冷静なプレーができるようになったと感じた宇田。しかし、この優勝までは予想できなかった。小学生時代から全国タイトルを獲得してきた実績を考えれば「新星」とは言えないが、左腕の強豪ひしめく日本男子に、またひとりすごい男が現れた。

※現在、全日本選手権速報は過去の記事も含め、画像が表示されない状態になっております。復旧まで今しばらくお待ちください
  • 宇田幸矢、「下克上」のサプライズV!

  • フォアドライブのスイングスピードは抜群だった

  • 張本は強化してきたフォアサイドで、守備的なプレーが多くなった

  • 決勝の舞台で、ショックの大きな敗戦となった

 3年ぶりに決勝へ進み、5度目の優勝を目指した石川だったが、早田のパワーの前に1-4で敗れ準優勝に終わった。試合後は「サービス・レシーブでうまく対応できなかった」と試合を振り返った。

★石川佳純決勝後コメント
 「(早田は)準決勝で伊藤選手に勝っていて、調子も良さそうだし、実力も上がっているので1ゲーム目から良い入りをされて、苦しかった。サービス・レシーブがうまくいかなくて、良いラリーに持っていけず、ずっと押されたままだった。2ゲーム目5-1から挽回されてしまって、少し残念だったかなと思います。自分の攻めのプレーができなかった。サービスは色々な回転があってわかりにくく、レシーブがうまくいかず、そこから攻められてしまって、自分でそこを変えていけなかったです。左同士だと、バック対バックの展開が多くなるけど、待ちが悪くて、先にストレートを突けなかった。
 サービス・レシーブは大会を通して手応えがあったけど、決勝は左利きというのもあって、敗因はそこかなと思います。負けてしまったけど、去年の大会よりも成長した部分はあるので、これから異質だったり、左利きだったり、色々なタイプに勝てるようにして、オリンピックまでレベルアップしていきたい。
 去年1年大変だったので、今年は楽しまなきゃいけないなと思っています。この10年くらいの中では一番緊張せずに試合ができましたし、こんなにたくさんの人の前で試合ができるというのがうれしくて、まだまだ頑張らないといけないなと感じました」
  • 「サービス・レシーブが敗因」と語った石川

●女子シングルス決勝
早田ひな(日本生命) 7、9、4、ー9、8 石川佳純(全農)

最後まで迷わず左腕を振り抜いた早田ひなが、石川を4ー1で下して全日本選手権初優勝!

 1ゲーム目のラブオールで、石川が「挨拶代わり」とばかりに出したバッククロスのロングサービスを、早田が鮮やかにストレートにカウンターで打ち抜き、幕を開けた女子シングルス決勝。早田が一気に6ー1とリードを広げ、10ー7のゲームポイントでは逆チキータから石川のフォアサイドを切るバックハンドを決める。

 2ゲーム目は逆に石川が4ー0でスタートダッシュ。しかし、早田は3ー5から6点連取で9ー5と逆転。10ー9での早田の2回目のゲームポイントで、石川のループドライブをブロックでフォアに抜く。天を仰ぎながらベンチに戻る石川。3ゲーム目も早田は前陣でのバックドライブ、そして中陣からは強烈なフォアストレートのフォアドライブを放ち、11ー4で3ゲームを連取する。

 石川が意地を見せたのは4ゲーム目。出足で早田に0ー3とされながら6ー5と逆転し、競り合いの中で9ー9から3球目バックドライブで得点。10ー9でバック対バックのラリーを制し、1ゲームを奪い返す。

 しかし、5ゲーム目も流れは変わらず。早田が3ー0のスタートから4ー2、6ー3、7ー5とリードを保ち、10ー6でついにチャンピオンシップポイント。石川も早田のループドライブをフォアクロスに打ち抜くなど、最後までベストのプレーを見せたが、10ー8で早田のバックハンドを返球できず。感極まってその場にうずくまり、涙を流した早田。準決勝で伊藤、決勝で石川という五輪代表を連破し、圧巻の優勝だ!

★早田ひなの優勝インタビュー
「 これまで苦しいことだったりとか、頑張っても頑張っても結果が出ない時がすごく多くて、でも常にたくさんの方が『ひなちゃん頑張れ』と応援してくれた。シングルスで去年準決勝で伊藤選手に負けてしまって、今年は最低ベスト4が目標。でも伊藤選手に勝たないと決勝、優勝はなかった。しっかり勝つことができて、2冠達成できてよかったです。
 伊藤選手とは常にダブルスを組んでいたり、普段の練習からも一緒にいる仲間ですけど、試合の時はしっかりライバルとして、美誠の存在があったからこそ私はここまで来られた。この優勝を糧にまた頑張りたい。

 石川選手はこれまで何度も全日本の決勝を経験して優勝しているけど、私は決勝が初めての舞台だったのでしっかり楽しむこと、そして石川選手と初めて対戦するくらいのつもりで向かっていきました。めちゃくちゃ楽しかったです。3ー0でリードして4ゲーム目も3ー0リードだったけど、簡単に勝たせてくれないなというのは感じた。そこからギアを上げて、1本取ることに専念できたのが良かったと思います。もともと後陣でもプレーできるのが私の強みでもあるし、そこが生かされた試合だったかなと思います。オリンピックには選ばれていないですけど、2020年のこの1年、自分の中で挑戦をテーマに、いろいろなことに向かっていって、逃げていたことにもしっかり向き合っていきたいと思います」(早田)
●男子シングルス準決勝
宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園) -8、6、8、-9、10、9 吉田雅己(FPC)

男子シングルス、もうひとりのファイナリストは高校3年生の宇田幸矢!!

以前から両ハンドのカウンタードライブのスピードは国内トップクラスだったが、プレーが攻撃に偏りやすく、崩れはじめると止まらない印象もあった宇田。しかし、爆発力はそのままに、ループドライブなどの緩急を駆使して、落ち着いて試合が組み立てられるようになった。序盤で吉田にロングサービスをバックに集められ、逆を突かれて苦しい展開になることも多かったが、最後まで迷わず打ち切った。

敗れた吉田は初の準決勝の舞台だったが、左利きに対して持ち味のフォアドライブを十分に生かせず。バックロビングで何本も粘って観客を沸かせる場面もあったが、8歳年下の宇田の軍門に下った。しかし、久々に万全の体調で臨んだ全日本で豪快なフォアドライブ連打を見せ、「吉田雅己ここにあり」をアピールした。

★試合後の吉田雅己のコメント
「今大会、全部右利きの選手と当たっていて、初めて左利きの選手と試合をした。昔から左は苦手、やりにくいです。普段あまり左と練習していないのと、ぼくはフォアハンドのほうが強いので、左とやるとバックをつぶされてしまう。今日の試合はサービス・レシーブで自分のパターンに持ち込めず、試合をしていて頭が真っ白な状態だった。最低目標だったベスト4を達成できたし、初めてのベスト4ですが、最後に情けない試合をしてしまって観客の皆さんに申し訳ない。

 トップ選手になるにはどの戦型にも勝てないといけない。世界には強い左の選手が多いし、どのタイプと試合をしても対応できるようにしていきたい」
 張本戦、あとわずかのところで勝利を逃した戸上隼輔。それにしても凄まじい一戦だった。ベンチに入った野田学園高の橋津文彦監督は「悔しいです、本気で勝ちにいきました。今日1日で10年分くらい寿命が縮まってもいい、それくらいの気持ちで頑張ろうと言って試合に入りました」と涙を見せながら語った。

 「作戦は待ちを絞ってリスクを負っても攻める作戦。かなり強引になってもそのくらいのプレーをしなきゃいけない。フォア前はチキータにいってもいいけど、両サイドは取られるからミドルを狙いました。それも最後は対応されてしまった」(橋津監督)

 試合後の戸上のコメントは下記のとおり。ショックの大きな敗戦だったが、ミックスゾーンでも落ち着いて取材に対応し、しっかり声を出す姿に成長を感じた。

★試合後の戸上隼輔のコメント
「2ゲーム目から自分のプレーをしよう、攻めようと心に決めていたけど、3ー1になって勝ちを意識した。今までもそういう展開はあったけど、同じ課題が出てしまった。

 張本選手は世界で活躍している選手だし、どんな場面でもあきらめずに立ち向かってきた。ぼくが積極的に攻めても屈することなく、台から下がらずに戦っていた。頭が真っ白にならずに戦えるのはすごいと思うし、試合の中で戦術を変えていく早さがある。今まで張本選手とは何回かやってきて、勝ちが目の前というところで何度も負けている。今日は勝てると思ったけど自分が焦ってしまった。最後の6ー6からの張本選手のフォアストップ(2本続けて戸上がストップミス)は、今までにない回転量で予想外でした。

 大会前にラケットを硬いものから軟らかいものに変え、ラバーは逆に硬くした。ラバーを硬くすることでパワーと回転量を上げたかった。用具を変えて初めての大会でしたが、用具変更はひとつの財産になりました。今大会は調子が良かったし、丹羽選手のように普段勝てなかった人にも勝てた。この調子が普通になるくらい、もっと強くなりたい」
 激しくも素晴らしい打撃戦で大阪の会場を熱くさせた準決勝の張本対戸上。ゲームカウント1−3という劣勢から張本が執念を見せた。「1−3になっても焦りはなかった。平常心で戦おうと思ってました」と試合後の張本は冷静にテレビインタビューに答えていた。

「去年と同じ展開で、また負けるのかなと思った。耐えて耐えて戦った。内容は相手のほうが上でした。でも、ここでは負けられないと強い気持ちを持っていた。相手の両ハンドのドライブはすごかった。相手より1本でも多く返すことを心がけた。試合が終わって、本当に良い内容だったので、『ありがとう』という思いになりました」と死闘を振り返った張本。
 「決勝はこの試合より難しい試合になると想定して臨みます」と笑顔を見せずに、厳しい表情で締めた。
  • 死闘を終え、戸上に感謝の意を表した張本