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中国リポート

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 3月3〜8日にカタール・ドーハで行われたITTFワールドツアープラチナ・カタールオープンで、樊振東が男子シングルス優勝、陳夢が女子シングルス優勝など、5種目中4種目を制した中国チーム。男子シングルスで許シンがピッチフォード(イングランド)、林高遠(中国)がサムソノフ(ベラルーシ)に敗れ、女子シングルスでは丁寧が伊藤美誠(スターツ)に完敗を喫するなど、主力選手の敗戦もあったものの、25回目を迎えたカタールオープンで男女シングルスのタイトルは死守した。

 2月上旬からスタートしたドーハでの集合訓練は1カ月に及び、卓球用品も不足。当初は多球練習用のボールさえ地元のクラブから借りたほどだ。もともとドイツオープン後に帰国する予定だった選手たちも、中国から持ってきた用具が少なく、悪戦苦闘。樊振東は卓球シューズを2足しか持ってきておらず、1足は大会用にキープして残り1足を穴が空いても履き続けたと報道されている。

 中国チームはカタールオープンの開幕直前、「カタールオープンでの獲得賞金は、すべて湖北省武漢市での防疫活動に寄付する」と発表。その言葉どおり、男女シングルスの優勝賞金44000ドル(約460万円)をはじめとするすべての獲得賞金を寄付。さらに右ひじの故障により、カタールオープンを欠場した劉詩ウェンも、女子シングルスの優勝賞金と同じ額を寄付したという。寄付金の総額は24万6900ドル、日本円にして約2570万円に達した。

 カタールオープンの終了後、帰国してもともと2月に集合訓練を行う予定だった海南島に入るという報道もあった中国チーム。しかし、実際には今もまだカタールに滞在している。中国卓球協会の機関紙である『ピンパン世界』に今後の見通しを聞いてみたところ、「集合訓練を行う場所はまだ未定で、全力を尽くして要件を満たす場所を探している。帰国するのはまだ難しいかもしれない」という。

 彼らが滞在しているカタールでさえ感染が広がりつつある中、総勢40名を超える中国チームの受け入れ先を見つけるのは容易ではない。帰国できない選手たちのストレスはいかばかりか……。
  • カタールオープンの男子シングルスを制した樊振東(提供:ITTF)

 1月28日〜2月2日に行われたITTFワールドツアー・ドイツオープンで、男子ダブルスを除く5種目中4種目で優勝した中国。
 本来なら大会後、帰国して世界選手権団体戦・釜山大会に向けた集合訓練に入る予定だったが、現在中国では新型コロナウイルスの感染症が猛威を振るっており、首都・北京でも住民の移動制限などの措置が取られている。そのため、国家男女チームの主力選手29名は帰国せず、カタール・ドーハに移動。3月3〜8日に行われるITTFワールドツアー・カタールオープンまで、同大会の会場となるアスパイアドームで集合訓練を行っている。

 今回のドーハでの集合訓練が決まった経緯について、ITTFのスティーブ・デイントンCEOは以下のようにコメントしている(youtubeの『オフィシャルITTFチャンネル』より)。

 「現在、中国がコロナウイルスの感染拡大で難しい状況にあることは、誰もが認めるところだ。そして先週、中国オリンピック委員会は各競技のナショナルチームに対し、一時的に国外に練習拠点を置くなどの解決策を模索するよう、通達を出した。そのニュースを聞いて我々は中国卓球協会の劉国梁会長とともに、解決策を見出すために話し合いの場を持った。

 非常に短い期間ではあったが、我々は世界中の多くの人々と、問題解決のために全力を尽くした。そして来月上旬に行われるカタールオープンを前に、ITTFのカリル・アル-モハンナディ副会長と話し合った際、『1日以内に解決策を見つけることができるだろう』と言われた。その素晴らしいニュースを我々は中国卓球協会に伝え、中国側も非常に喜んでくれた。多くの条件をチェックしたが、中国チームにとっても滞在に適した場所だろうと感じている。加盟協会が困難な状況にある時、ITTFはいつでも手を差し伸べる用意ができている」


 監督やコーチ、トレーナーも含めると40名ほどの中国選手団だが、カタール卓球協会はドイツオープンの閉幕からわずか1日で、15台の卓球台を並べたトレーニングホールとホテルなどの住環境を用意した。国家チームはカタールオープンの閉幕後、韓国に飛び、韓国チームと合同合宿を行って世界選手権に備えるという。結果的に、中国には2カ月以上帰国できないことになる。

 「中国でのコロナウイルスの感染症発生のニュースを聞いて、私が心配したのは中国チームが国際大会に出場できないことだ。今年のカタールオープンは25回目の節目となる大会。私にとって、中国のいないカタールオープンや世界選手権など考えられない。私は友人である劉国梁氏に連絡し、必要とあらばいつでもカタールに来てもらって良いと伝えた」。
 カタール卓球協会会長でもあるITTFのカリル・アル-モハンナディ副会長は、そう語っている(『オフィシャルITTFチャンネル』より)。

 これまでも昨年6月のジャパンオープンや、11月のチームワールドカップの前に日本で1週間程度の合宿を行ったことがある国家チーム。しかし、これほど長期の集合訓練を海外で行うのは異例だ。中国卓球協会の劉国梁会長は、こんなコメントを発表している。
 「我々はずっと国内の(感染症の)状況を気にかけている。こんな時に我々にできることは、さらに練習への努力を重ねることだけだ。そして大会のフロアに中国国旗を掲げ、国歌を響かせて、国民の我々に対する期待に応えたい」。


 2月28日〜3月1日に海南省で行われる予定だったアジアカップは延期となり、2〜3月に中国卓球協会が開催予定だった大会もすべて延期となった中国。今回のドーハでの集合訓練は、いわば世界選手権団体戦に出場するための大掛かりな「隔離」措置だ。このまま事態が好転しなければ、釜山大会が厳戒態勢の中で行われる大会になることは間違いない。4月のジャパンオープン、5月の香港オープンや中国オープンにも影響を与えるのは必至の情勢だ。
  •  中国卓球協会の劉国梁会長(右)とITTFのカリル・アル-モハンナディ副会長

 少しお伝えするのが遅くなってしまいましたが、1月20日、中国卓球協会は世界選手権団体戦(3月22〜29日/韓国・釜山)にエントリーする中国男女チームのメンバー、各5名を発表した。メンバーは下記のとおり。

■中国男子チーム
◎秦志戩監督
馬龍・許シン・樊振東・梁靖崑・王楚欽
■中国女子チーム
◎李隼監督
劉詩ウェン・陳夢・孫穎莎・丁寧・朱雨玲

 中国男子は林高遠をエントリーから外し、オーストリアオープンでの「ラケット投げ事件」で昨年11月13日〜今年2月13日まで3カ月の出場停止処分を受けていた王楚欽をエントリー。団体の5番手、出場機会は恐らく1回という立場だが、このエントリー変更は意外だ。

 中国男子の秦志戩監督は王楚欽の選出に関して、こうコメントしている。「昨年、王楚欽は初めて世界選手権個人戦に出場し、馬龍とともに男子ダブルスで優勝。昨年の後半もシングルスで活躍を見せた。その技術は先進的で、シングルス・ダブルスとも能力が高く、我々としては彼の将来性を重視した」。

 一方、エントリーから外れた林高遠に対しては「昨年の世界選手権以降、林高遠は技術面、またビッグゲームでのメンタル面においてひとつの壁にぶつかっており、我々はずっと彼をサポートしてきた。ITTFの規定では、(開幕直前の)3月21日までメンバーの変更は可能だ。それまでの期間内に、すべての選手たちに世界選手権出場を目標として努力してもらいたい」。

 それにしても、今回の「落選」は林高遠にとってショックが大きいだろう。世界ジュニアでは3大会連続で失意の銀メダル。その後、雌伏の時を経て世界代表の座をつかみ、馬龍・許シンの引退後は主力選手のひとりになると目されてきた林高遠。3月に25歳という年齢を迎え、まさにこれからという時に代表落ちを味わうとは……。

 ともに左腕の林高遠と王楚欽を比較すると、フォアハンドでの攻めの速さと破壊力は、やはり王楚欽が上。そして感じずにはいられないのは、長く中国のライバルとなるであろう、ひとりの男の存在。「どちらがより張本智和に対抗できるプレースタイルか」ということだ。

 一方、中国女子は落選確実と見られた朱雨玲が『地表最強12人』を制し、一発逆転の代表入り。押し出される形で王曼昱が代表から外れ、孫穎莎は初の代表入りを果たした。五輪と世界選手権団体戦では試合方式が異なり、世界選手権団体戦はダブルスが行われないが、東京五輪を見据えた今大会の中国女子のオーダーは要注目だ。中国チームは1月12〜18日まで、北京郊外で恒例の軍事訓練を行い、春節(旧正月)返上でフィジカル強化に主眼を置いた集合訓練に入っている。
  • 林高遠、代表入りは確実と見られていたが……

  • 初の世界団体出場となる王楚欽、出場停止期間は「本当に孤独だった」そうです

 1月1〜4日、中国・深センで行われた世界選手権団体戦・釜山大会(3月22〜29日)の中国代表選考会『地表最強12人』。混合ダブルス、男子シングルス、女子シングルスの3種目の結果は下記のとおりだ。

〈混合ダブルス〉●ベスト3決定戦
馬龍/丁寧 4−0 林高遠/王曼昱
樊振東/顧玉ティン 4−0 于子洋/朱雨玲
許シン/孫穎莎 4−2 梁靖崑/陳夢
●到底血戦(2連勝したペアが優勝)
樊振東/顧玉ティン 12、7、−5、5 馬龍/丁寧
許シン/孫穎莎 8、8、−6、9 樊振東/顧玉ティン
許シン/孫穎莎 9、8、8 馬龍/丁寧

〈男子シングルス〉●ベスト6決定戦
樊振東 4−0 張煜東
周啓豪 4−1 趙子豪
林高遠 4−0 馬特
馬龍 4−3 薛飛
梁靖崑 4−1 周愷
許シン 4−3 徐晨皓
●ベスト3決定戦
樊振東 −9、9、8、6、−9、2 林高遠
周啓豪 7、−7、−7、8、9、−2、6 馬龍
許シン −7、−11、6、4、−10、8、11 梁靖崑
●到底血戦(2連勝した選手が優勝)
周啓豪 8、9、−6、5、9 許シン
樊振東 9、9、8、−3、8 周啓豪
樊振東 9、−9、−5、16、7、5 許シン

〈女子シングルス〉●ベスト6決定戦
陳幸同 4−1 何卓佳
孫穎莎 4−1 顧玉ティン
丁寧 4−0 張瑞
朱雨玲 4−0 銭天一
陳夢 4−1 劉斐
王曼昱 4−1 王芸迪
●ベスト3決定戦
陳夢 −3、6、−8、9、7、−5、6 陳幸同
朱雨玲 6、9、1、−8、−7、−9、7 丁寧
孫穎莎 9、−3、6、8、−6、−8、9 王曼昱
●到底血戦(2連勝した選手が優勝)
朱雨玲 9、9、7、−4、−8、9 陳夢
朱雨玲 −9、8、−6、7、9、5 孫穎莎

 大会前、海南省海口で集合訓練を行っていた劉詩ウェンが、車を降りる時に足首を捻挫したため、『地表最強12人』を欠場することが伝えられた。混合ダブルスの許シンのパートナーは、孫穎莎にスイッチし、即席ペアの許シン/孫穎莎が大会初日の混合ダブルスを制した。世界選手権団体戦ではもちろん混合ダブルスは行われず、今回の結果はあくまで、東京五輪でのペアリングの参考。しかし、間違いなく混合ダブルスに出場するであろう許シンのパートナーに、陳夢や王曼昱ではなく孫穎莎が選ばれたのは注目に値する。

 そして続く男女シングルス。まず男子シングルスでは、思わぬダークホースが飛び出した。第一次選考となる選抜リーグ3位で『地表最強12人』の出場権を得た周啓豪が、趙子豪と馬龍を連破し、3人で行う「到底血戦」で許シンをも破ったのだ。もし続く樊振東戦に勝利し、世界団体戦の代表切符を手にしていたら、中国の卓球史に残るサプライズだっただろう。初戦の薛飛戦もゲームオールまで粘られ、「今の自分はとにかく一戦一戦に全力を尽くすことを考えている」と語った馬龍だが、オーソドックスな右シェークドライブの周啓豪に敗れたのは意外だ。

 ここで存在感を見せたのが樊振東。周啓豪を4−1で破って進撃を食い止めると、許シンにも4−2で勝利して2連勝。見事に1枚目の世界代表の切符を手にした。
 12月のITTFワールドツアー・グランドファイナルを現地で取材して、驚かされたのが樊振東の前陣でのフォアへの飛びつき。「瞬間移動」と言いたくなるほどの速さで、馬龍のフォアサイドへの厳しいフォアドライブをカウンターで打ち返した。バックサイドは強引に回り込むよりも、打球点の早いバックドライブでストレートを攻め、どちらのサイドにボールが来ても高速カウンターで仕留める。樊振東は明らかにひとつ上のステージに立った。絶不調からの劇的な復活劇を、中国のメディアは「触底反弾」(V字回復)と表現する。

 そして女子シングルスでも「触底反弾」は起きた。19年世界選手権個人戦ではシングルスの代表から外れ、不振にあえいでいた朱雨玲が丁寧・陳夢・孫穎莎を連破して堂々の優勝。3−0から3−3に追いつかれながらも振り切った丁寧戦がひとつのヤマ場だった。「この優勝で周りの方々にも、自分に対しても顔向けできるという気持ちです」と優勝後に率直な心情を語った。

 これで中国女子の世界代表選考は難しくなった。世界団体の代表落ちも十分に有り得た朱雨玲が優勝したことで、中国女子は「丁寧・劉詩ウェン・陳夢・孫穎莎・王曼昱」の5人から、誰かひとりが落選する。そして世界団体からの落選は、東京五輪からの落選をも意味する。現時点では、王曼昱の立場がやや厳しいか……?
 明けて2020年の1月1日から4日まで、中国・深セン(土+川)では3月に行われる世界選手権団体戦の中国代表選考会『地表最強12人』が開催される。開催種目は男女シングルスと、今回初めて行われる混合ダブルスの3種目。男女シングルスの優勝者が世界選手権団体戦の代表第1号となる。男女チームの出場選手・各12名と混合ダブルスの6ペアは下記のとおりだ。

[男子シングルス]
馬龍、許シン、樊振東、林高遠、梁靖崑、趙子豪、薛飛、周啓豪、周愷、徐晨皓、馬特、張煜東
[女子シングルス]
丁寧、劉詩ウェン、陳夢、王曼昱、孫穎莎、朱雨玲、陳幸同、王芸迪、何卓佳、顧玉ティン、劉斐、張瑞
[混合ダブルス]
許シン/劉詩ウェン、馬龍/丁寧、樊振東/顧玉ティン、林高遠/王曼昱、梁靖崑/陳夢、于子洋/孫穎莎

 男子シングルスの出場選手は、ITTFワールドツアー・グランドファイナルに出場した馬龍・許シン・樊振東・林高遠・梁靖崑・趙子豪の6名に、1・2軍チームによる選抜リーグを勝ち抜いた6名を加えた12名。女子は選抜リーグは行わず、チーム内のランキング上位12名が出場する。男子の選抜リーグでは王楚欽が20勝2敗の好成績を残し、総合1位になったのだが、オーストリアオープンでの「ラケット投げ事件」で3カ月の出場停止処分が下ったため、総合6位の張煜東が代替出場。総合2位の薛飛、3位の周啓豪、4位の周愷、5位の徐晨皓、7位の馬特まで『地表最強12人』の出場権を勝ち取った。

 一方で、15年世界選手権2位の方博(総合8位)、13年世界選手権ベスト8の閻安(総合10位)、周雨(総合12位)といったベテラン勢は出場権を獲得できず。世界ジュニアチャンピオンの向鵬は総合9位と健闘したが、こちらも出場権獲得には至らなかった。14年世界ジュニアチャンピオンの于子洋は総合15位に沈むも、ダブルスでの戦績が評価され、孫穎莎との混合ダブルスのみ出場する。混合ダブルスについては選考会というより「エキシビション」だが、許シン/劉詩ウェンや馬龍/丁寧など五輪出場の可能性があるペアにとっては負けられない戦いになる。

 ちなみに3種目の試合方式は「血戦到底(シュエジャンダオディ)」というユニークなものだ。混合ダブルスは1回戦、男女シングルスは1・2回戦を行った後、勝ち残った3ペアあるいは3名が総当たりで試合を行い、2連勝したら優勝(混合ダブルスは5ゲームズマッチ/男女シングルスは7ゲームズマッチ)。1勝1敗で「3すくみ」になった場合は獲得ゲーム数の計算ではなく、1ゲームマッチ(11点制)で再び総当たりの試合を行い、また「3すくみ」になったら5−5からスタートする1ゲームマッチで総当たり、また「3すくみ」になったら8−8からスタートする1ゲームマッチで総当たり、それでも決まらなければ10−10からスタートする1ゲームマッチで総当たり……という具合に、2連勝する選手やペアが現れるまで試合を続ける方式だ。

 世界選手権団体戦の中国代表メンバーは、11月のチームワールドカップに出場した男女各5名が選ばれる可能性が高い。男子の馬龍・許シン・樊振東・林高遠・梁靖崑、女子の丁寧・劉詩ウェン・陳夢・王曼昱・孫穎莎という顔ぶれだ。今回の『地表最強12人』の男女チャンピオンも、恐らくこの5名の中から生まれるだろう。女子はその他にも朱雨玲・陳幸同・王芸迪・何卓佳などの実力者が揃うが、気にかかるのが朱雨玲だ。グランドファイナルで王曼昱にストレートで敗れた一戦はまるで「無気力試合」だった。東京五輪への道はほぼ閉ざされ、2024年パリ五輪の時には29歳という年齢。この当たりでもう一度、健在ぶりをアピールしてほしい。

 馬龍・許シン・樊振東の3名が東京五輪代表にほぼ「当確」の男子に対し、中国女子は丁寧がピークを過ぎつつある。世界女王の劉詩ウェンと世界ランキング1位の陳夢は代表入りが濃厚だが、残るひとりは実績と経験の丁寧か、あるいは日本勢に分の良い孫穎莎か。団体戦でのオーダーの柔軟性も加味して、キャプテン丁寧に引退の花道を用意するのが既定路線だが……。この『地表最強12人』も、選手たちにとっては1試合1試合が首脳陣にアピールする舞台だ。
 今日11月24日、タイ・コラートで開幕した世界ジュニア選手権。17回大会の開幕を記念して、2003年の第1回サンチアゴ大会から今大会までの中国の世界ジュニア代表メンバー、男女各4名をひたすら掲載します。それでは、どうぞ!

2003 第1回 チリ・サンチアゴ
[男子]李虎・鄭長弓・張継科・馬龍
[女子]李茜・彭陸洋・曹臻・李暁霞

2004 第2回 日本・神戸
[男子]馬龍・李虎・周斌・林晨
[女子]常晨晨・劉詩ウェン・范瑛・王シュアン

2005 第3回 オーストリア・リンツ
[男子]楊策・劉ミャオ・方力・石磊
[女子]丁寧・彭雪・曹麗思・劉凱倫
※北京市ジュニアチームを派遣

2006 第4回 エジプト・カイロ
[男子]徐克・呉ハオ・姜海洋・許鋭鋒
[女子]馮亜蘭・文佳・木子・武楊

2007 第5回 アメリカ・パロアルト
[男子]許鋭鋒・宋時超・閻安・張聖伍男
[女子]楊揚・文佳・木子・李暁丹

2008 第6回 スペイン・マドリッド
[男子]閻安・宋鴻遠・程靖チィ・方博
[女子]曹麗思・王大琴・陳夢・熊欣芸

2009 第7回 コロンビア・カルタヘナ
[男子]方博・閻安・林高遠・宋鴻遠
[女子]武楊・顧玉ティン・陳夢・曹麗思

2010 第8回 スロバキア・ブラチスラバ
[男子]宋鴻遠・林高遠・周雨・呉家驥
[女子]朱雨玲・易芳賢・趙岩・顧玉ティン

2011 第9回 バーレーン・マナーマ
[男子]林高遠・鄭培峰・宋鴻遠・呉家驥
[女子]陳夢・朱雨玲・顧玉ティン・顧若辰

2012 第10回 インド・ハイデラバード
[男子]樊振東・林高遠・范勝鵬・徐晨皓
[女子]朱雨玲・顧玉ティン・顧若辰・劉高陽

2013 第11回 モロッコ・ラバト
[男子]周愷・孔令軒・周啓豪・梁靖崑
[女子]顧玉ティン・劉高陽・王曼昱・劉㬢

2014 第12回 中国・上海
[男子]于子洋・薛飛・劉丁碩・呂翔
[女子]王曼昱・朱朝暉・何卓佳・陳可

2015 第13回 フランス・ヴァンデ県
[男子]劉丁碩・薛飛・朱誠・王楚欽
[女子]王曼昱・王芸迪・陳可・陳幸同

2016 第14回 南アフリカ・ケープタウン
[男子]楊碩・徐海東・于何一・徐英彬
[女子]石洵瑤・孫芸禎・劉ウェイ珊・袁媛

2017 第15回 イタリア・リーヴァデルガルダ
[男子]薛飛・王楚欽・牛冠凱・徐海東
[女子]孫穎莎・王曼昱・石洵瑤・銭天一

2018 第16回 オーストラリア・ベンディゴ
[男子]徐海東・向鵬・徐英彬・于何一
[女子]銭天一・石洵瑤・郭雨涵・黄凡真

2019 第17回 タイ・コラート
[男子]徐英彬・向鵬・曾蓓勲・劉夜泊
[女子]蒯曼・陳熠・石洵瑤・呉洋晨

 ……こうして振り返ってみると、現在の中国代表の主力選手は、必ずといっていいほど世界ジュニアを経験している。唯一と言っていい例外が許シンで、2006年に北九州で行われたアジアジュニアには出場したが、世界ジュニアに出場することはなかった。

 2006年大会のジュニア男子シングルス決勝で、松平健太に敗れた「モヒカン少年」徐克。2007年大会のジュニア男子団体決勝で、勝利を決めた後に台に乗って物議をかもした宋時超などは懐かしい名前。宋時超は腰を傷め、20歳でラケットを置いて学業の道に戻った。2008年マドリッド大会で、シェークフォア表ソフトの攻守で4冠に輝いた女王・曹麗思は、シニアではほとんど活躍できず。チャンピオンクラスでも、決して将来が約束されているわけではないのが中国代表の厳しさだ。
 11月14日、中国卓球協会は『中国卓球協会による国家チーム選手・王楚欽、及び担当コーチ・劉国正に対する処罰に関する決定』を発表。王楚欽を11月13日〜2020年2月13日まで3カ月間の「停賽(大会出場停止)」処分とし、担当コーチである劉国正も11月13日〜12月13日までの1カ月間、大会への帯同を禁ずることを明らかにした。王楚欽と劉国正コーチは大会期間中に中国へ帰国した。

 「事件」は前日の11月13日、ITTFワールドツアープラチナ・オーストリアオープンの決勝トーナメント進出決定戦で発生。チームメイトの趙子豪と対戦した王楚欽が、ゲームカウント0ー2の3ゲーム目、6ー10から失点。苛立ちを抑えきれず、ラケットを放り投げてしまった。趙子豪サイドのコートで弾み、フロアに落ちたラケットは趙子豪が拾い上げた。試合は結局、王楚欽が0ー3から3ー3まで追い上げたものの、趙子豪が4ー3で勝利。趙子豪はそこから決勝まで勝ち上がり、樊振東に敗れたものの、準優勝という好成績を残している。

 プレーにはまだ粗さが残る王楚欽だが、試合では決して「キレやすい」タイプではなく、むしろ粘り強く戦う印象があった。今回の一件はチームメイトとの対戦ということで、精神面のあまさが出てしまったのだろう。

 選手の問題行動に迅速な対応を見せた中国卓球協会は、今年1月のハンガリーオープンでも、ラケットを交換しようとしてラバーを故意に剥がした周雨に3カ月の出場停止処分、コーチの馬俊峰に国際大会への帯同禁止1カ月の処分を下した。2018年1月には、中国卓球クラブスーパーリーグの試合中に対戦相手の張煜東を罵(ののし)ったハオ帥がリーグ戦で2試合出場停止。さらにさかのぼれば、2006年の神戸でのアジアカップで、王皓に敗れた陳チィ(王+己)がラケットを放り投げ、フェンスを蹴り上げ、農村へ1週間の「下放」処分を受けた。畑の草取りをしている陳チィの画像を、当時はよく目にしたものだ。左利きの選手が多いのは、偶然かそれとも必然か……。

 王楚欽はITTFワールドツアーのスタンディング(獲得ポイントのランキング)で7位。今週行われるT2ダイヤモンドの出場選手リストにも入っており、中国卓球協会の処分が実行されれば、両大会の出場はキャンセルになる。ワールドツアーのスタンディングでは、日本の丹羽孝希が18番目に名を連ねており、故障などで出場をキャンセルする選手が出れば、繰り上がりでグランドファイナルに出場できるチャンスも出てくる。最終盤に入った日本の五輪選考レースに、思わぬ影響を及ぼすかもしれない。
 11月6〜10日に東京・東京体育館で行われた『JA全農 ITTFチームワールドカップ』。中国は男子が8連覇、女子が9連覇を達成した。
 最終日の女子団体の表彰が行われたあと、中国選手団が表彰式で集合写真を撮っているのを見て、改めて驚かされたが、総勢40名を超える大選手団。開幕の10日前に来日して調整合宿を行い、男女ともライバルチームの主力選手と同じプレースタイルの若手選手を、スパーリングパートナーとして何人も連れてきていた。調整からベストを尽くしてつかんだタイトルだった。

 そんなチームワールドカップで撮影した中国選手の写真を、お蔵入りになる前に「中国選手写真館」としてご紹介。スマートフォンではちょっと見にくいかもしれませんが、どうぞご覧ください。来週末からタイで開催される世界ジュニア選手権を取材する中国リポート担当。世界ジュニアの中国代表選手なども紹介していきます。
 10月3〜6日、遼寧省卓球協会が主催する『2019 大国体育杯 遼寧卓球チームU7−U17公開選抜大会』が、遼寧体育館卓球場で行われる。昨年からスタートしたこの大会は、ホープス以下とジュニアの年代の選手たちを年齢別に男子8・女子9のクラスに分け、総当たりでシングルスの試合を行うもの。昨年は10の省と市から400名余りの選手たちが出場した。

 各クラスの成績優秀者には遼寧省チームの一員となる資格が与えられ、男子の2007〜2009年生まれのクラス、女子の2008〜2009年生まれのクラスで1位になった選手には、毎月1700元(約2万6千円)の手当に加え、生活費が免除となる。会場には遼寧省チームのコーチたちも来場し、高い潜在能力が認められた選手は、集合訓練への参加が認められる。

 ジュニア以下の遼寧省チームの「公開オーディション」とも言うべきこの大会。遼寧省と言えば、かつては卓球界に多くの人材を供給してきた「世界王者の揺りかご」。近年だけでも男子の馬琳・馬龍、女子の王楠・郭躍・李暁霞・劉詩ウェンなど錚々(そうそう)たる顔ぶれで、現在も女子の陳幸同・李佳イが国家チームでプレーしている。

 一方で人材の流出による「空洞化」も顕著で、馬龍は北京市、李暁霞は山東省、馬琳と劉詩ウェンは広東省の所属選手。中国スーパーリーグでも2000年代までは男子の錦州銀行、女子の遼寧鞍鋼が地元選手を揃えて活躍していたが、両チームともすでにスーパーリーグから撤退している。

 遼寧省卓球協会の王萍会長は、昨年の公開選抜大会の開催に際し、「地域に制限を設けることなく、遼寧省チームにより多くの『新鮮な血液』を注入したい。大会期間中は、チームのすべてのコーチが会場に足を運び、人材の発掘に当たる」(出典:『新華網』)とコメントしている。昨年創立60周年を迎えた遼寧省卓球協会による、名門再建の新たな試み。第二の王楠や郭躍は現れるだろうか。
 天津市・武清体育センターで開催中の『2019 中体産業杯 全国卓球選手権』。大会前半は男女シングルスと混合ダブルス、後半は団体戦が行われる「ミニ・オリンピック」方式。前回の記事で「トップ選手も欠場するわけにはいかない」とお伝えしましたが、直後に馬龍・樊振東・許シン・丁寧・劉詩ウェンが大会を欠場。……失礼致しました。五輪代表の本命が不在で、五輪と同じタイムテーブルの大会をやる意味があるのかと思わないでもないが、若手選手たちの予行演習というところか。

 大会の最大のサプライズは、昨シーズンのTリーグで、木下マイスター東京の秘密兵器として活躍した侯英超の男子シングルス優勝。20歳で優勝した2000年大会以来、実に19年ぶりの優勝だ。バック表ソフトの変化カットと強烈な攻撃を武器に、準々決勝で梁靖崑、準決勝で周啓豪をともに4ー1で破り、決勝では王楚欽にストレート勝ち。「運が良かったということだね。王楚欽は準決勝の(カットの)馬特戦で肩を傷めていた。もし彼が故障を抱えていなかったら、ぼくにとってはもっと厳しい戦いになっていただろう」と試合後に語った。

 「19年前に優勝した時はプレーもメンタルもまだまだ未熟で、全力を尽くすことで良いプレーができた。今はよりリラックスして、試合を楽しむことができている。勝敗はそれほど重要なことではないからね」(侯英超)。
 筋骨隆々とした体つき、迫力ある風貌の侯英超だが、その語り口は実に知的で理路整然。さながら「大学教授」という感じで、Tリーグ取材でもそのギャップに少々驚かされた(失礼)。中国のインターネットでの試合解説も好評で、最強解説員の異名を取るほど。若手にとっては貴重なレッスンとなった。

 女子シングルス優勝は孫穎莎。陳幸同、陳夢、朱雨玲というライバルたちを完璧にねじ伏せて頂点に立った。体格的なハンデから、国家チーム内での評価は低いと言われてきたが、「最近は大会が多いけれど、毎日必ずトレーニングを行っているし、試合が続いても疲れたという感覚はない」とタフさを見せる。経験重視の五輪代表選考レースで、逆風を切り裂いて代表権を手にできるか。
 大会前半の個人戦3種目の主な結果は、下記のとおり。

〈男子シングルス〉●決勝トーナメント1回戦
王楚欽(北京市) 7、3、5、ー8、10 趙子豪(上海地産集団)
侯英超(陝西体彩) ー10、9、7、7、ー10、9 劉丁碩(山東魯能)
●準々決勝
王楚欽 9、ー9、6、8、9 林高遠(広東省)
馬特(湖北省) 12、ー11、8、3、8 方博(山東省)
周啓豪(広東省) 9、ー7、ー7、ー4、13、4、9 薛飛(湖北省)
侯英超 7、10、ー7、2、8 梁靖崑(八一南昌)
●準決勝
王楚欽 9、ー8、ー6、3、6、13 馬特
侯英超 6、7、11、ー7、10 周啓豪
●決勝 侯英超 11、7、9、2 王楚欽

〈女子シングルス〉●決勝トーナメント1回戦
孫銘陽(八一南昌) 9、ー7、ー9、ー8、4、6、6 武楊(山西省投資集団)
王曼昱(黒龍江省) 9、8、9、3 顧玉ティン(山東省)
王芸迪(遼寧省) 10、9、7、8 馮亜蘭(湖北省)
●準々決勝
陳夢(山東省) 6、5、ー10、5、7
孫穎莎(河北省) 8、10、6、8 陳幸同(遼寧省)
何卓佳(河北省) 8、ー7、8、9、ー7、9 王曼昱(黒龍江省)
朱雨玲(八一南昌) ー7、8、ー7、4、6、7 王芸迪
●準決勝
孫穎莎 8、ー7、6、6、3 陳夢
朱雨玲 2、7、8、ー9、5 何卓佳
●決勝 孫穎莎 9、4、8、8 朱雨玲

〈混合ダブルス〉●決勝トーナメント1回戦
夏易正/車暁㬢(河南民生薬業/黒龍江省) 6、ー10、ー8、9、4、7 王楚欽/孫穎莎(北京市/河北省)
薛飛/張瑞(湖北省) 9、0、5、7 于子洋/陳夢(山東魯能/山東省)
●準々決勝
鄭培峰/顧玉ティン(福建省/山東省) 12、9、6、4 夏易正/車暁㬢
周啓豪/陳幸同(広東省/遼寧省) ー8、9、12、4、ー5、7 梁靖崑/朱雨玲(八一南昌)
周雨/木子(八一南昌) 5、11、ー5、ー8、8、4 薛飛/張瑞
林高遠/王曼昱(広東省/黒龍江省) 4、ー5、8、5、ー6、9 趙剣彦/黄凡真(八一南昌)
●準決勝
周啓豪/陳幸同 9、ー10、1、8、2 鄭培峰/顧玉ティン
林高遠/王曼昱 ー5、10、2、9、2 周雨/木子
●決勝 林高遠/王曼昱 ー17、8、9、9、6 周啓豪/陳幸同

※写真提供:『ピンパン世界』(中国)