「青年は荒野をざす」とは五木寛之の小説で、歌にもなったフレーズだ。下が歌詞の一節。
「ひとりで行くんだ 幸せに背を向けて
さらば恋人よ なつかしい歌よ友よ
いま 青春の 河を越え
青年は 青年は荒野をめざす」
*フォーク クルセダーズ「青年は荒野をめざす」
今から17年前。日本卓球界のパイオニアとも言える松下浩二選手(現ヤマト卓球社長)がプロ第1号としてブンデスリーガに挑戦した。しかも、日本にいたほうが条件がよいのに、全日本チャンピオンは2部リーグからスタートした。1997年からのシーズンだった。まさに青年(若干歳は食っていたが・・)はドイツという荒野を目指した。なぜならそこに世界最強のプロリーグがあったからだ。
そして翌年、見事に1部の名門『ボルシア・デュッセルドルフ』に入り、活躍した。彼がヨーロッパへの扉を開け、その後、10年間くらいで田﨑俊雄、鬼頭明、坂本竜介、岸川聖也、水谷隼、高木和卓、女子では内藤和子、梅村礼という選手が続いた。日本の学校や企業では満足できないという青年たちだった。
ところが、最近、異変が生じている。トップ選手では水谷(ロシア・UMMC)吉田雅己(グレンツァオ)や森薗政崇(フリッケンハウゼン)、松平賢二(フランス・アンジュ)がヨーロッパでプレーするものの、丹羽孝希は『フリッケンハウゼン』から戻り、来シーズン(8月末〜)は数試合に出るのみ。岸川聖也、松平健太は国内にとどまる見込みだ。
トップクラスの3人が行くから多いという見方もできるが、日本でプレーする所属を持たない、もしくは先方(欧州クラブ)からオファーが来るような選手は日本を離れない。
先日、サッカーのワールドカップの日本代表が発表されたが、その多くがヨーロッパでプレーしている選手だった。世界標準のタフな環境で腕を磨いている選手が力をつけ、「世界で戦う」サッカー界と、外にあまり出なくなってきた日本卓球界の青年たち。
しかし、その背景には実は様々な理由がありそうだ。 <続く>