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 2009年、オーストリアでヨーロッパ卓球再生を誓い鳴り物入りでスタートしたのが『シュラガー・アカデミー』。
 元世界チャンピオンのシュラガーの名前を冠し、自治体からの肝いりで豪華な設備と多彩なスタッフで、世界中からの卓球選手を受け入れつつも、ヨーロッパ卓球の強化のために立ち上がったプロジェクトだった。しかし、その後、財政的に立ちいかなくなり、閉鎖。器を大きくしすぎて、身の丈以上のものをやろうとした結果で、実務能力のある人がいなかった。
 
 時を同じくして、ドイツのオクセンハウゼンという小さな町で、シュラガー・アカデミーのカウンターアイデアとしてひとつのプロジェクトが動き出した。重機で有名な『リープヘル』をメインスポンサーにした『リープヘル・マスターカレッジ』(LMC)だ。
 シュラガー・アカデミーのように大きく風呂敷を広げずに、少数精鋭主義を貫き、世界中から有望な選手を集めてきた。

 現在、LMCのCEO(最高経営責任者)を務めるのがクリスチャン・ペジノビッチ氏だ。今年の1月にはLMCに所属する村松雄斗(東京アート)の試合の視察をかねて。全日本選手権の観戦にも訪れている。
「最初の3年間は少人数のスタッフでいろいろなことをこなしたのでとても大変だった」と彼は振り返る。現在は、選手20人がこのLMCで練習をして、ブンデスリーガの1部、2部リーグや、フランスリーグなどで選手はプレーする。
 LMCはクラブチームではなく、あくまでも「成功を夢見、心身ともに鍛える選手養成機関」なのだ。20人の選手に対して、7人のコーチ(そのうち2人はフィジカルコーチ)を抱え、事務スタッフは13人(そのうち社員は10人)。
 LMCは営利企業ではなく、卓球メーカーを含む複数の企業からのスポンサー料で運営されている。ヨーロッパ、アジア、ブラジルなどから選手が集まり、選手たちには練習だけでなく、生活する場を与え、言語教育(英語など)も施している。
 村松以外に、カルデラノ(ブラジル)、ゴーズィ(フランス)、ディアス(ポーランド)、ジェラルド(ポルトガル)。彼らは同時にクラブチームの『オクセンハウゼン』にも所属し、プレーしている。

「選手が成功し、いつかチャンピオンとなり、世界の卓球レベルが上がっていくことがこのプロジェクトの目的」とペジノビッチ氏は語る。
 ヨーロッパ卓球の地盤沈下は激しい。そこには子どもたちの生活様式の変化や、1990年代以降の政治的な大きな変化も密接に関係している。
 卓球がアジアだけのスポーツになったら、それが世界の卓球界にとって良いことなのだろうか。スウェーデンを筆頭に、 かつての強いヨーロッパと強いアジアの対決はワクワクするものだった。世界の卓球界をエキサイティングなものにするかどうか、その鍵はこのLMCにあるのかもしれない。  (今野)

*詳しくは11月発売の卓球王国で紹介


  • LMCのCEOであり、『オクセンハウゼン』の会長も務めるペジノビッチ氏