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世界卓球 パリからジュテーム速報
~伊藤条太のお前にトリコロール!~

朝食のときに、TSPの仲村さんからとっても含蓄のある面白い話を聞いた。こんなに面白い話を聞いたのは久しぶりだ。

それは、卓球選手にはサービスの回転がわかる人はごく希にしかいないということだ。仲村さんは上手な相手のサービスの回転はまったくわからなかったそうだ。わからないので、入ったときに点が取れそうなリスクの高い打ち方をするしかなかったという。また、回転がわかったときに上手に打てるように台上の練習を沢山したという。回転がわかったときには上手くレシーブできるので、それを見て他人からはレシーブが上手いと評価されていたが、それはそのように装っていただけであり、基本的に切れたボールとナックルの見分けはまったくつかないのだそうだ。もちろんこれは上手な人のサービスについての話だ。それで、実際の試合では、ボール自体を見るのではなく、「次はナックルだろう」というようなギャンブル的な山勘でレシーブをしていたという。多くの卓球関係者は台上技術が上手いのを見てレシーブが上手いと勘違いするが、レシーブは回転がわかるかどうかがカギなので、両者は根本的に違うものだという。

同じように、サービスの回転がわからない人は沢山いて、実名をあげてくれた。同じTSPの小野誠治さん(1979年世界チャンピオン)も「全然わからない」と言っているそうだ。というか、ほとんどの選手がボールの回転はわからないのだという。意外なことにワルドナーもそうで、仲村さんのサービスの回転をまったく見えていなかったという。ボールの回転がわかるかどうかは天性のもので、練習しても見えるようにはならないそうだ。

それで、そういう人は勝つためにサービスに力を入れる。ワルドナーが劉国梁に分が悪かったのは、劉のサービスがまったくわからなかったからだ。ところがワルドナーはそれを補って余りあるほどサービスが世界一上手いので、強い。ワルドナーのサービスがどれだけ凄いか。仲村さんがワルドナーを試合をしたとき、横回転の左右すらわかず、初心者のように審判の方に吹っ飛ばしたという。しかも左右両方にである。

それではサービスの回転がわかる人は誰かというと、たとえば水谷と福原は完全に見えているという。回転が見えている人はあまりトリッキーなレシーブはせず、安全にストップなどで置きに行くという。回転がわからない人があんなに弱いタッチで当てたら回転の影響をモロに受けてチャンスポールになってしまう。だからどれだけハイリスクなレシーブをするかでその人が回転を「見える」のかどうかわかるという。水谷はサービスも上手くレシーブも上手い本当に希なケースで、だからこれだけ安定して強い。

回転が見えるのが天性のものだとすると、当然、弱い選手の中に回転だけは見えている人というのがあり得る。そしてそういう人は実際にいるという。仲村さんが講習会などで高校生と試合をすることがあるのだが、仲村さんのサービスを完全に見切ってレシーブをする選手がときどきいるらしい。それでそのチームの指導者に「強いでしょう」と聞くと全然補欠だったりするのだそうだ。

朝食のクロワッサンとハムを食べながら、あらためて卓球の神秘の世界に目が開かれた得難い朝となった。なお、同席していた星野美香さんは回転が見えるのが当たり前だと思っていて「意味わからない。回転わからなくてどうやってレシーブするの」と言っていた。そういうことか・・・。