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中国リポート

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 アジア選手権の閉幕直後から行われた、湖北省黄石市での31日間の集合訓練を終えた中国女子チーム。完全に休みになるのは、4月28日と5月8日の2日だけというハードなスケジュールで、中国では「魔鬼訓練」と大々的に報道された。地獄の特訓みたいな感じですね。

 5月1日と5月13〜14日には、2回の「熱身賽(エキシビションマッチ)」を開催。その対戦カードは、明確に「対平野美宇」を意識したものとなった。日本でも報道されているので今さらではありますが、世界代表以外の国家1・2軍チームの選手たちに与えられる「対手模倣(ライバル選手のコピー)」という役割について、資料として紹介しておきたい。最近ではすっかり国家チームの「スポークスマン」となった中国・CCTVのナイスガイ・李武軍さんが、黄石市の国家卓球訓練基地に貼り出された「主要対手模倣名単(主要なライバルのコピー選手リスト)」を微博(マイクロブログ)に掲載している。

平野美宇  孫穎莎・王曼昱・陳幸同・劉銘(2軍)
伊藤美誠  張瑞
石川佳純  陳可・顧玉ティン
早田ひな  劉高陽・文佳

キム・ソンイ/徐孝元/金璟娥   胡麗梅(2軍)・劉斐(2軍)
リー・ジエ/リー・チェン     武楊
ゾルヤ/サマラ          文佳・劉高陽・顧玉ティン
馮天薇              馮亜蘭・顧若辰・王芸迪
ユ・モンユ            袁雪ジャオ・郭艶(2軍)
フー・メレク           孫銘陽・張瑞
李皓晴/杜凱琹/鄭怡静      顧若辰・王芸迪・李暁丹・李佳イ・車暁㬢・劉㬢・郭艶(2軍)

 平野美宇の「コピー選手」として、4名もの若手選手をあてているあたり、中国も最大級の警戒をしていることが伺える。小柄で前陣でのプレーを主体とする孫穎莎・陳幸同・劉銘に比べ、身長176cmでプレー領域も中陣寄りの王曼昱は「どこが美宇ちゃんに似ているの?」と感じるが、同じ巻き込みサービスの使い手であることが考慮されたのだろう。プレーを見てきた感覚としては、両ハンドでガンガン攻めてストレートを突くのもうまい陳幸同が、一番再現率が高いかもしれない。ただ、打球点の早さとコースの厳しさでは、今の平野のほうが上だと感じる。……冷静に考えてみれば凄いことだ。

 伊藤のコピー選手は、国家チームでも数少ないシェーク異質型の張瑞。昨年のリオ五輪前から伊藤のコピー選手は木子と張瑞が務め、若手の張瑞はバック面の表ソフトも伊藤と同じものに貼り替えて「模倣」に務めてきたが、今大会シングルスに出場する木子はお役御免。1軍チームのもうひとりのシェーク異質型・孫銘陽はフー・メレクの担当で、張瑞がフー・メレクの役に回ることもある。2軍チームにも14年世界ジュニア代表の何卓佳というシェーク異質型がいて、リオ五輪前にはこちらもバック面のラバーを変えて福原愛のコピー選手を担当していたのだが、今回はメンバーに加わっていない。

 石川のコピー選手は同じ左シェークドライブ型の陳可と顧玉ティン。サービスから打球点の高い連続攻撃を放つ陳可は石川のコピー選手、両ハンドから回転量の多いドライブを放つ文佳はゾルヤ・サマラのコピー選手と、同じ左シェークドライブでもタイプに応じて選手を選んでいる。また、今大会シングルスに出場しない早田に、他の選手との共有とはいえ2名のコピー選手がついているのも目を引く。高い攻撃力を備えた早田の評価は中国でも高い。

 「誰のプレーがより対象となる選手に近いか、コーチ陣が対象選手のプレー映像を見ながら、技術や戦術、コース取りなどをチェックして決定していく。このようなコピー選手による強化は数十年来の伝統であり、確かに犠牲を払う選手もいる。しかし、ラバーを変えたり、他の打法を研究することは選手たちにとって学びの機会でもあり、一概に悪いこととは言えない」(出典:『新浪体育』)。昨年のリオ五輪の前、中国女子チームの孔令輝監督はそう語っている。
 集合訓練でのエキシビションマッチは、このようなコピー選手を相手にした強化の成果を発表する場なのだが、どのような結果になったかは明日お伝えします。
  • 成長株・陳幸同は平野美宇のコピー選手のひとり