スマホ版に
戻る

中国リポート

トップニュース中国リポート
 9月15~17日、インド・アーメダバードで行われたアジアカップの男子シングルス決勝で、林高遠が樊振東を4ー2で退け、同大会で初優勝を飾った。

 このふたりの決勝での対戦というと、2012年に同じくインド・ハイデラバードで行われた世界ジュニア選手権を思い出さずにはいられない。世界ジュニアでは09年大会3位、10・11年大会2位の林高遠が「優勝の最後のチャンス」と臨んだ男子シングルス決勝。林高遠は2ー0とゲームをリードしながら逆転を許し、15歳の樊振東に名を成さしめた。
 さながら力強く昇り来る太陽と、その陰に隠れ行く月。コートサイドで樊振東のセンスあふれるプレーに魅了されながら、「林高遠がシニアでトップに行くことはないだろう」と感じていた。残酷なほど鮮やかな両者のコントラストだった。

 しかし、長い雌伏の時を経て、林高遠は再び表舞台へと返り咲く。今年3月に行われた中国代表選考会「地表最強12人」で、予選リーグで尚坤と閻安、決勝リーグで許昕と周雨を下し、樊振東に次ぐ2枚目の代表切符を獲得。馬龍が予選リーグで棄権したのも大きかったが、集合訓練で林高遠のルームメイトになっているのが馬龍だ。「もっとリズムをゆっくりにして、あわてずに戦ったほうがいい」と林高遠にアドバイスし、林は「そのアドバイスがとても大きかった」と語った。

 林高遠がシニアでも結果を残すようになったのは、プラスチックボールの導入が大きいように思う。彼のフォアドライブは、打球面をクローズにした巻き込むようなスイング。上回転のラリーになれば、カウンターや引き合いでの安定感は抜群だが、先輩の周雨、あるいは陳杞のように下回転のボールを面を開いて強打できない。台からギリギリで出るボールを打つのも、それほど得意ではない。

 セルロイドボール時代は頼りなく、勝ち味の薄いプレーに見えたが、回転量とスピードが落ちるプラボールは「攻めた者勝ち」とは限らない。最近の林のプレーを見ていると、プレーの設計図は非常に明確だ。基本的には「バックハンドで仕掛けて、両ハンド待ち」。台から出そうなボールでも、フォアサイドはストップで相手が仕掛けてくるのを待ち、両ハンドのカウンターを狙う。台上のあまいボールはチキータや台上バックドライブで攻め、同じく両ハンドで攻めていく。バックハンドの技術の多彩さと守備力、キレのあるフォアのカウンターが最大限に生かされている。(後編に続く)
  • 12年世界ジュニアの決勝後のベンチ。3大会連続の準優勝だった

  • アジアカップ優勝で、ワールドカップへの切符を手にした ※写真提供:ITTF