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中国リポート

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 前評判どおり、丁寧と李暁霞という中国勢同士の対戦となった、ロンドン五輪・卓球競技の女子シングルス決勝。李暁霞が4−1で丁寧を破って、中国女子5人目の五輪単金メダリストに輝いた。昨年のロッテルダム大会決勝では、丁寧の粘り強い攻守の前にイージーミスも出ていた李暁霞だが、今回の決勝でのプレーは完璧。丁寧のフォアサイドを切るシュートドライブのコースの厳しさ、打球点の早さは息を呑むほどで、同士討ちでありながらノータッチの山を築いた。

 そして今大会の女子シングルス決勝では、丁寧が思わず涙を見せる場面があった。すでに世界中で話題になっているが、サービスが主審からたびたびフォールトを取られ、さらに試合の遅延行為でレッドカードを提示されるなど、決勝1試合で4点を失ったのだ。
 まず丁寧は、第1ゲーム6−8、第2ゲーム5−8の場面で、「サービスのトスが斜めに上がっている」として、一発でフォールトを取られた。丁寧は第2ゲームには追いついてゲームポイントも奪ったが、結局この出足の2ゲームを落とす。さらに第3ゲームの開始前には、すでに台についていた李暁霞に対し、遅れて台に着こうとした丁寧にイエローカードが提示される(試合の遅延行為)。

 そして問題のシーンは、第4ゲーム、丁寧 2−6 李暁霞の場面。この試合で初めてバックのしゃがみ込みサービスを出した丁寧、サービスはネットを弾いて相手コートに入ったが、主審は「レット」のコールに続いて、トスが低かったとして「フォールト」のコール。
 丁寧、この3回目のフォールトでさすがに感情が抑えきれなくなった。あふれ出てきた涙を拭くためにタオルを取ると、そこに追い打ちをかけるように、「正規のタオリングの時間以外にタオルを使った」として、審判からレッドカードに相当する、2枚目のイエローカードが出る。スコアは2−6から2−8となり、このゲームの行方はほぼ決まってしまった。

 中国国内では、ネットで主審を務めたイタリア人の女性審判パオラ・ボンジェリさんへの批判が相次いだ。さらに「試合後に丁寧をなぐさめる気配もなかった」として李暁霞を批判する丁寧のファンが現れたり、ふたりの不仲を疑う報道すら流れた。ボンジェリさんから丁寧へ私的な謝罪がなされたという報道もあったが、丁寧はこれを否定している。その後の団体戦で中国女子は金メダルを獲得したことで、女子シングルス決勝での判定を巡る報道は収束しつつある。

 「どこの誰であっても、私はあの人(主審)を忘れることはできません。今回は私が参加した初めてのオリンピック、この一件は絶対に忘れないでしょう」(丁寧/出典『北青網』)
 女子決勝を戦った丁寧と李暁霞は手の内を知り尽くしたチームメイト同士で、サービスエースやレシーブでのイージーミスは非常に少ない。あくまで個人的な意見ではあるが、丁寧の3本のサービスフォールトは、試合の流れを大きく左右するような、重大なルール違反ではなかったように思う。一生に一度上がれるかどうかの五輪決勝の舞台、主役を務めるのはあくまで選手であるべきだった。

photo上:審判の判定に涙を浮かべる丁寧(上)、表彰台でも笑顔なし(下)