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 何ともユニークな選手がドイツのオクセンハウゼンにいる。
 名前はウーゴ・カルデラノ。21歳。ブラジルのリオ出身の選手だ。
 何がすごいかは、彼の選手としてのバックグラウンドを見ればわかる。8歳にピンポンを始めた。卓球ではなく、まさに遊びのピンポンで、11歳くらいまでは週3回しかやっていない。同時にバレーボールも週3回ほどやっていて、陸上の走り幅跳びの選手も兼ねていた。その後、週4回か5回かは練習をするようになったが、1回が2時間くらいだった。14歳の時に卓球の伝統のあるサンパウロに移り、急激に頭角を現す。

 カルデラノの名前を最初に聞いたのは4年前のジャパンオープンのU21(21歳以下)での優勝の時だった気がする。ということは、本格的に卓球を初めて、まだ3、4年しか経っていなかった。
 18歳でドイツのオクセンハウゼンに移り、LMC(マスターカレッジ)で練習するようになり、グングンと力をつけた。2015年の蘇州での世界選手権では日本のエース水谷隼と対戦。ほとんど試合を支配し、勝ちかけた。
 そして2016年リオ五輪でも再び水谷と対戦し、大接戦を演じた。

 インタビューしていても彼のクレバーな頭脳を感じる。21歳ながら、質問への反応は早い。穏やかで冷静に自分のことを語れる。母国語のポルトガル語以外に、英語は完璧に話すし、フランス語も操る。
 精神的に安定し、育ちの良さを感じるのは、両親の教育のせいだろうか。父は学校の体育の教師で、母親は英語の教師だという。
 
 音速の貴公子と言われたフランスのガシアン(元世界チャンピオン)の名前を挙げながら、「自分だけの卓球スタイルを創造したい。両ハンドで強いボールを打てることがぼくのストロングポイントだ」と言う。
 彼を13歳の時から指導するジャン-ロネ・モーニーコーチ(フランス)は「精神的に強い選手で、非常に賢い選手でもある。体の不安もあるので大事に育てたい」と語り、同じくLMCでスポーツ・ディレクターとしてカルデラノを見守るミッシェル・ブロンデル氏は「両ハンドが強い。今まで周りの人はあんなに強く打たなくても良いのにと言うけど、強く打つことが彼にとって特別なことではない。その確率を高めていけばいいんだ」と言う。

 本格的に卓球を始めるのが遅かったために強度のある練習をすると、故障が発生する。昨シーズンは足の故障で満足に連続できなかったので、LMCでは注意深く彼を世話している。
「中国に勝って、世界選手権や五輪でメダルを獲りたい」と語ったウーゴ・カルデラノ。ひょっとすると南米から初のメダリストが将来生まれるかもしれない。
 ダイヤモンドの原石は母国を離れ、ドイツで少しずつ磨かれ、光り始めている。 (今野)

*近く卓球王国ではカルデラノの特集を組む予定です

  • 両ハンド、とりわけバックハンドの威力はすさまじい

  • ウーゴの甘いマスクは日本でも人気が出そうだ