まさにT2の試合方式はテレビ向けの卓球の演出と言えるだろう。時間が決まっているので放送時間も組みやすいし、キルゾーンやジュースなしのやり方が連続的に試合を盛り上げていく。
また選手たちのウエアはアンダーアーマー、ナイキ、アディダスなどのシンプルでスタイリッシュなものを纏っている。これはある意味、既存の卓球ウエアが「ダサイ」ことを意味している。女子選手のウエアはやや露出が多いので、これもテレビを意識している。
ブカブカの卓球ウエアよりも、フィット感の強いスポーツウエアのほうがアスリート感を演出できる。
これらのアイデアや演出は卓球出身でない、代表のフランク・ジー、CEOのジェフ・チューと、卓球出身のミカエル・アンダーソン(元ITTF)が作っていったものだし、ビジュアルの作り方もテレビ的で秀逸だ。団体戦の一部を1時間切り出して、そのまま放送しても面白いだろう。
T2を色モノ扱いするのは間違いだ。今まで卓球が考えてこなかった革新的な新しいやり方を作り出しているのだ。卓球というスポーツがドゥスポーツの枠ではなく、見ても面白い、エンターテイメントなものであることを証明したのだ。
あとの問題は、継続可能なスキーム(計画)なのかどうかだ。代表のフランク・ジーが社長を務めるシーマスター(seamaster)という海運会社がメインスポンサーとして出資をしているが、今のところティバー(TIBHAR)のみがスポンサーとなっている。
シーマスターはITTFのワールドツアーのスポンサーとなり、このT2の前に、しっかりと地ならしをして、スケジュールなどで円滑に進めようとしていた。
今後、メインスポンサーやテレビ放映権、インターネットでの配信権が売れないことには、継続ができないのではと心配する向きは多い。
これだけのものを作り上げたT2が発展していくことは卓球にとっても歓迎すべきだろう。何より、卓球の人たちの凝り固まったアイデアによる大会運営ではなく、プロフェッショナルなエンターテインメントが卓球の面白さを引き出してくれる。
と同時に、観る人を楽しませるような卓球のルールは通常の試合に応用されることが期待される。
来年から始まる日本のTプレミアでも観客やテレビを意識した試合方式が採用されるのだろうか。チーム集め、スポンサー集めに奔走するのもわかるが、肝心の試合のやり方、観客への見せ方の工夫の話は全く聞こえてこない。現地で観た人はT2が面白いものと感じているし、選手たちも集中し、勝ちたいと強く思っている。T2にはたくさんのヒントが詰まっている。 (今野)