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 あの頃を思い出してほしい。
 2008年にスピードグルー、およびスピード補助剤に対して、国際卓球連盟(ITTF)は、出荷時のラバーに対して、後加工(あとかこう)を禁止にした。
 それまでは、20年以上もスピードグルーが使用されていた。部室もシンナー臭が立ちこめ、卓球選手が泊まるホテルでも部屋を突き抜けて臭いが拡散し、ほかの宿泊客から苦情が出るほどだった。
 大会に行けば、フロアや観客席など、そこかしこでグルーを塗る光景があり、後に問題が発生すると大会主催者はグルーイングルームやグルー所なる場所を準備しなければならなかった。

 日本ではスピードグルーが禁止される前から「スピード補助剤」なるオイル系の膨潤剤が売られ、その塗り方や相性の良い接着剤も売られた。卓球部の部室では、さながら儀式のように選手たちはグルーや補助剤を塗っていた。よくもそういうことに選手たちは時間をかけていたものだなと思う。
 後加工禁止のルールが施行されてから、しばらくは選手は儀式をやめて、練習することや試合に集中できていたはずだ。

 もしITTFが「ブースターを塗って物理的、化学的に変化しない後加工はOK」と受け止められるようなルールを認めたら、間違いなく選手はブースターを塗り始める。それはトップ選手だけでなく、小学生選手にも及ぶのは明らかだ。

 もともと日本卓球協会(JTTA)は過去にも、ブースターが裏で使用されることに反対し、大会での抜き打ち検査や上位選手の検査を義務付けるとか、ブースターが実質的に検出できないのであれば、ラバーの反発力を検査し、ラバー、ラケットの反発力に制限を掛けるべきだという、ラバー後加工禁止の原理主義的な行動をITTFの総会で取ってきた。
 今度のITTFの総会でJTTAはどういう態度を表明するのだろうか。今まで、JTTAの代表として後加工禁止や反発力制限の旗振り役だった木村興治氏(現名誉副会長)の意思を継承するのだろうか。

 ブースター解禁になった時に卓球界がどういう状況に陥るのかを想像したうえで、ITTFでこの問題が話し合われることを期待したい。ITTFが公認しているラバーに対して、後加工を加え、試合前にせっせと選手がオイルを塗り込むようなスポーツが健全な五輪競技と言えるのだろうか。 (今野)
  • 2015年のITTFのAGM(総会)