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 大型の台風19号が迫る中での開催となっている今年のクラブ選手権。台風接近に伴い、大会直前の10月9日には大会の開催可否も含め、日本卓球協会のホームページ上で告知があった。告知がリリースされる10月9日の夕方には、日本卓球協会のホームページにアクセスが集中し、なかなかページにつながらない状況が続くなど、参加選手はじめ関係者(我々取材班も)は気が気でなかったはずだ。

 台風の接近がなくとも、今回のクラブ選手権はいくつかの変更点がある大会だった。試合方式は昨年と同じ「4単1複」だが、今年からダブルスを3番から1番に変更し、2〜5番がシングルス(ダブルスに出場の選手は2番には出場不可)という試合方式での開催。ダブルスは予選リーグから決勝まですべての試合で2ゲーム先取の3ゲームズマッチ。シングルスも予選リーグでは2ゲーム先取の3ゲームズマッチ、決勝トーナメントから3ゲーム先取の5ゲームズマッチの予定だった。
 また、全日本選手権・一般の部や全日学、全日本社会人などの該当大会に過去3年間出場のない選手のみが出場可能である「一般2部」は今年が最後の開催。一般2部に代わり、来年からは「30代」が行われる予定となっていた。

 当初からそのようなトピックスがある中での開催だったが、10月9日夕方に日本卓球協会は台風の上陸・通過が予想される10月12・13日に行われる試合のタイムテーブルと試合方式の変更を発表。当初12日に行われる予定だった男女一般2部、小・中の部の決勝トーナメント1回戦の試合を翌日に順延、13日の一般2部と小・中の部は決勝トーナメント以降もシングルス、ダブルスともに2ゲーム先取の3ゲームズマッチでの開催と発表された。

 しかし、猛威を増す台風を懸念し、大会がスタートした昨日、10月11日に再度タイムテーブルと試合方式の変更を発表。まず、13日の試合開始時刻を8時30分から10時に変更し、13日に行われる予定だった一般1部の決勝トーナメント1回戦の試合を翌14日に移動。さらに12日に行われる一般2部と小・中の部は全試合を6-6からの2ゲーム先取の3ゲームズマッチで開催となった(ダブルスのみ打球順序の関係もあり、3ゲーム目に突入した場合は0-0からのスタート。12日に行われる50代・60代の準決勝、決勝はダブルスが3ゲームズマッチ、シングルスは5ゲームズマッチ)。昨日行われた一般2部、小・中の部の監督会議では、これらの発表に対して様々な意見が上がり、予定した時間を大幅にオーバーした。
 こうした変更は台風の進行状況、公共交通機関のストップに関係して決定されたとのこと。当初のタイムテーブルでは12日の最終試合は17時30分からだったものを、14時30分終了の目標で大会運営を行うとなった。また、今日12日から地元の高校生120名が運営のサポートに当たるはずだったが、教育委員会の判断で、高校生が運営に参加できず。その影響で審判も主審、副審とも両チームからの相互審判で行われた。

 Tリーグや日本リーグでは「最終ゲームのみ6-6からスタート」というルールは採用されているが、「すべてのゲームを6-6からスタート」というルールは前代未聞。選手や監督に話を聞くと「戦い方がわからない」といった意見はもちろん「タイムアウトの取り時がわからない、というかいらないかも」、「(試合前2分間の)練習のほうが長かった」、「無茶でも良いから1本目取って流れに乗るしかない」、「ジャンケンで勝って、サービス勝負」などの意見が聞かれた。中には「ウチは弱いんで、こっちのルール(6-6スタート)のほうが格上にはチャンスがあるかなと。下克上期待してください!」と逆にチャンスととらえるチームも。ちなみに、6-6からサービスミスで6-7、3球目ミスで6-8、レシーブミス×2で6-10、再びサービスミスで6-11でゲームが終わり、1分ちょっとで1ゲームが終了、という試合もあった。取材者の立場からすると、6-6スタートはあっという間で、写真を撮りたくても撮りに行けないというのが現状。集合写真を撮れなかったチームの皆さん、すみません。

 以上のようにバタバタと進んでいる今年のクラブ選手権。タイムテーブル、試合方式を変更して行われた今日の試合は、大きなトラブルもなく、予定していた14時30分からわずか2分オーバーの14時32分に全試合が終了。明日からスタートする一般1部の監督会議が15時より行われて幕を閉じた。高校生スタッフ120名を欠く中、福島県卓球協会の皆さんはインカムを着用し、各コートの進行状況を見て連絡を取り合い、コート変更や2台進行をスピーディーに行うなど見事な運営だった。昨日、会場で星野一朗日本卓球協会専務理事にお話を伺ったが、まさに「苦渋の決断」とのこと(卓球王国1月号に掲載予定)。各種イベントが中止される中での開催とあって、日本卓球協会にテレビ局から話が聞きたいとの電話もあったそうだ。
 
 交通手段の断絶による棄権も多いのでは、と思っていたが、50代、60代、一般2部、小・中の部を見た限りでは予想より少ない印象。明日から始まる一般1部のチームは、今日移動予定だったものの交通手段がなくなって棄権が目立つ可能性はあるが、ドタバタの変更続きの中でも、本気とエンジョイ、クラブ選手権の雰囲気は変わらない。

 今年が最後の開催となる一般2部、今日の試合で敗退してしまったチームの選手がこんなことを話していた。「まあ、ちゃんとした試合方式でやれたら一番でしたけど、どこのチームも条件は同じですからね。仕方がないですし、2部でやれるのも今年が最後だから、開催してくれたこと自体に感謝しないと。
 ウチのチームは、僕ら20代とかから60代、それ以上までいるチームで、先輩方が全国大会に出た時の『あの時のあの大会はひどくて〜、とかあの大会はこんなトラブルがあって〜』っていう話を飲み会の時にいつも聞くんです。もう何回聞いたか(笑)。でも、そういうのを同じようにチームメイトと共有できるのってめちゃくちゃ良いなって思うんですよ。それで、僕ら若いメンバーも、毎年全国大会に出て、そういう思い出たくさん作れたら良いなって。この前の台風の被害を見たら、あんまり簡単には言えないですけど、『台風で6-6からスタートして、アップしてたら本気出す前に試合終わってた』っていう武勇伝ができたんで後輩に語り継ぎます(笑)。
 そんな勝てるわけでもないし、個人で全国大会行っても、1、2人じゃあんまり面白くないじゃないですか。だから、みんなで行けるクラブ選手権ってめっちゃ楽しみなんですよ」

 また、別のチームの選手の話。「いや、勝てると思ってないですから。勝ったら勝ったで、『明日試合あるから今夜飲みに行けへんやん!』って困りますし(笑)。昔はチームメイトもみんな独身だったのが、家庭持って出歩くも難しくなったんで、『クラブ選手権って名目で飲みに行くぞ!』ってモチベーションで予選前だけ頑張ってる節もあります。でも卓球は楽しいですよ。クラブ選手権来て『あの人の○○エグいなあ〜、卓球がんばろ!』みたいな話もしますし。ま、予選前までやらなくなるんですけど(笑)。みんなそれが年間のルーティーン。出られなくなったら、みんなちょっと落ち着いた頃に、『クラブの50代目指すか!』ってなるのも面白いですよね」

 やっぱり、団体戦、チームでの遠征は楽しい。本気で優勝を狙ってやってくるチームもあれば、惨敗して「反省会や!」と言って夜の街に繰り出すチームもいる。そして、大抵の場合、試合時間より反省会のほうが長い。50代の選手がかつて言っていたのが「クラブ選手権は、おっさんのインターハイだから。この歳で、こんな熱くなれる試合、他にないよ」。名言だと思う。小、中学生であれば、クラブ選手権で苦い敗戦を経験し、そこから成長して、大人になってまたこの大会に帰ってくる選手もいる。

 ここ数年、クラブ選手権の取材に訪れているが、個人的には大好きな大会だ。大人から子どもまでが一堂に集まり、チームによってバックグラウンドも多種多様で、良い意味でのゴチャゴチャ感も心地いい。卓球に対する向き合い方も重さも、みんな違うけど、卓球を通して仲間と楽しめるなら何でも良いと思う。目標が違ってもみんな自分のチームが大好き。そんな雰囲気がたまらない。

 毎年、多くの方に「集合写真撮ってください!」や「今年も頑張ってるね」、「卓球王国、毎月楽しみにしてます」と声をかけていただいて、楽しいと同時に、曲がりがちな背筋を伸ばしてもらえる大会でもある。開催された街に卓球人があふれて、試合後には出場チームの方々と一杯ご一緒させていただくことも。そうしているうちに、また会場でたくさんの方に会えるのが楽しみになる。だからこそ、スケジュール、試合方式の変更で「どうかな?」と思っていた中での変わらない雰囲気に少しホッとすると同時に、改めて素晴らしい大会だと思わせてくれた一日だった。
 
 昼頃からは雨脚も強まってきた郡山。この原稿を書いている今、ホテルの窓には横降りの雨が打ちつけ、外を見ても歩いている人は少ない。明日、明後日と大会は続くが、まずは安全に、参加者、関係者にとって今大会が素晴らしい思い出となることを願う。

 最後に、明日、明後日と会場にお越しのチームの皆さん、ぜひ集合写真撮影させてください! もれなく、卓球王国1月号クラブ選手権ページに掲載させていただきます!

(編集部・浅野)