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2018世界卓球ハルムスタッド大会速報

 昨日の電撃的な統一(合同)チーム結成のニュース。世界を駆け巡ったこのトピックスについて、賛否両論の声がわき起こっている。
 あくまでも現地にいての空気感を伝えよう。
 
 午前10時からの選手入場。その時点で和気あいあいとした雰囲気の中で、いきなり場内アナウンスで「北と南はお互いが戦うことを望んでいない。準々決勝で戦わずに、準決勝で統一チームで戦う。名称はコリア」と発表。

 それから5時間後には国際卓球連盟(ITTF)のトーマス・バイカート会長、IOCメンバーの柳承敏(韓国)が記者会見。「昨日のITTFでの新財団のレセプションで両チームと話し合いを決めた。アクシデント(偶然)のような出来事だった」と伝えた。

 今回の統一チーム結成のニュースには二つの側面があるだろう。
 ひとつは卓球を通しての平和への貢献。世界選手権という舞台で朝鮮半島の平和という強いメッセージを発信したこと。卓球がいわゆる「ピンポン外交」として過去に果たしてきた役割を三度演じたことになる。
 しかし、統一チームは1991年の世界選手権でのそれとは根本的に違う。あの時には、荻村伊智朗ITTF会長が20回以上南北朝鮮を訪れ、実現させた。そしてITTFの理事会にそれをかけ、承認を得て、統一チーム「コリア」として実現させた。ゼロから、というかマイナスからの地道な努力の成果だった。もちろんその歴史があったからこそ、今回の統一チームのアイデアが生まれたのだろう。

 一方で、世界選手権というチャンピオンシップでお互いが試合をせずに、いきなりチームが合体するという超法規的措置に首を傾げる人は少なくない。一般の人が「アンフェア」「何かおかしい」「スポーツの政治利用」と批判するのも理解できる。
 「これはルールを超えた出来事なのだ」とバイカート会長が語気を強めても、大会のルールを完全に無視して進められたことに受け入れがたいものがあるのも事実だ。
 名古屋大会のピンポン外交は偶然の産物、千葉大会は入念な準備の元でのスポーツ外交。今回のITTFの決定に無理矢理感、思いつきの決定という印象はぬぐえない。

 もうすぐ始まる日本対コリアに世界中の注目が集まる。韓国では急遽、ライブ放送が決まった。しかし、それは競技としての注目ではないかもしれない。そういう中で日本選手がいかに勝利することに集中できるのか。彼女たちが戦う相手は同じアスリート。彼女たちがスポーツを使った政治ショーのピエロにならないことを願っている。 (今野)
  • 女子団体準決勝の試合終了後、コリアの旗を掲げる両国の選手たち