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卓球ワールドカップ団体戦

 「自分のことをしっかり考えていくのが大事。団体戦の時は自分のことを考えている選手は少ないと思うけれど、それは自分の持ち味じゃないかなと思います」。
 昨日の女子団体準々決勝でルーマニアを3−0で破り、メダルを確定させた日本女子チームの伊藤美誠は、ミックスゾーンでそんなコメントを残した。

 「団体戦なのでもちろんチームのことは考えてますけど、やっぱり個の力が大事。(試合方式は)1試合だけダブルスで、残り4試合はシングルスじゃないですか。戦うのは選手一人ひとりなので、どうやって勝ちにいくか、勝てるようにするかが大事だと思います。そして勝ったうえで、他の選手の応援もあるし、次に回ってくる試合の準備もある」(伊藤)

 サッカーやラグビーのようなチームスポーツと違い、卓球の団体戦はあくまで個人競技の「集合体」。それでも試合になれば選手たちは、ことさら「チームワーク」を強調するものだ。「一番の強みはチームワーク」「チーム一丸となって」……ただし、そんな言葉が聞かれるのは、決まって勝った試合の後なのだ。負けた後に「チームワークだけは良かったんですけど」と言う選手は誰もいない。

 試合である以上、個人戦でも団体戦でも目指すものは勝利。最善の準備をして勝利を挙げることが、チームに対する最大の貢献であり、最良のチームワークだ。日本では今まで、個人の勝利にこだわる姿勢を見せることがはばかられる空気があったが、冒頭での伊藤のコメントは見事に核心を突いている。今大会の日本女子は、石川佳純と平野美宇をダブルスとシングルス1回、伊藤をシングルス2回で起用して1ダブルス4シングルスのオーダーを組んでおり、伊藤はシングルスのみに集中できる強みもある。

 もちろん、「自分のことを考える」と言っても、伊藤は決して自分勝手に振る舞っているわけではない。ベンチに座っている時にはしっかり応援するし、チームメイトの勝利は笑顔で祝福する。勝利を決めてミックスゾーンに引き上げてきた時の「三人娘」は、三者三様の絶妙な掛け合いで、記者やアナウンサーを何度も笑いの渦に巻き込んでいる。

 今、石川・伊藤・平野の3選手は、東京五輪の選考レースのまっただ中にある。それでも、試合になれば勝利を目指して、まさに「チーム一丸」になれる。チームジャパンは、やはり強い。