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中国リポート

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 4月21日、香港・クイーンエリザベススタジアムで行われたロンドン五輪・卓球競技のアジア大陸予選で、丹羽孝希(青森山田高)が馬龍(中国)を4-2で撃破し、五輪出場権を獲得した。馬龍はDトーナメントでアチャンタ(インド)に4-0で完勝し、五輪出場権を獲得できたが、世界ランキング1位の思わぬ敗戦が波紋を呼んでいる。

 「丹羽との試合で、馬龍は決して試合前の準備は不十分ではなかったし、丹羽を軽く見ていたわけでもない。むしろ、丹羽のことを過大評価しすぎていたようだ」と試合後に述べた劉国梁監督。馬龍にはふたつの課題があると指摘した。
 「馬龍のふたつの課題のうち、ひとつ目の課題は精神面。これから五輪に向け、馬龍はもっとメンタルに関する指導を増やしていく必要がある。そしてふたつ目の課題は対サウスポーだ。サウスポーが相手だと戦術も打法も単調になりやすい。我々のライバルである日本には水谷と丹羽がいて、ドイツにはボル、そしてバウムがいる。今回の丹羽戦の敗戦で、馬龍は貴重な経験を得ただろう」(劉国梁)。

  CCTV(中国中央電視台)で生中継された、馬龍と丹羽の一戦。予選会での馬龍の代表一番乗りを伝えるはずが、丹羽の大金星を中国全土へ伝える結果となってしまった。中国女子チームの陳彬コーチがゲスト解説に呼ばれていたが、試合が進むにつれて、実況のアナウンサーも陳彬コーチも口数が少なくなってしまった。丁寧の担当コーチである陳彬コーチは、「馬龍は対上回転には非常に強いが、対下回転のボールに対してはまだ不満が残る。スイングが少し大きすぎるのではないか」とコメントしている。

 試合後、「次やったらボコボコにされると思うけど、一回勝ったことに意味がある」とコメントした丹羽。五輪予選というプレッシャーのかかる舞台での大金星は、彼のポテンシャルを改めて示すものだが、これで中国はさらに警戒の度合いを強めてくる。「馬龍のこの敗戦は、すべての選手とコーチ陣に警鐘を鳴らすものだ。最近最も調子が良く、プレーも安定していた馬龍でさえ、17歳の若手に負けることがあるんだからね」(劉国梁)。

 五輪本番では馬龍も、今回苦しめられた丹羽のチキータや台上バックドライブにきっちり対応してくるはず。勝利で得た自信を胸に、ロンドンの大舞台では、今回のさらに一歩先を行く技術と戦術を期待したい。

Photo:丹羽孝希(上)と馬龍(下)。アジア選手権では2大会連続で馬龍が勝利していたが(ともに4-1)、五輪予選で丹羽が歴史的勝利