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弱気な水谷の根底には、彼の「目の問題」があった

 前人未到の全日本選手権V10を達成した水谷隼。優勝直後の優勝インタビューで「今回の優勝で全日本選手権は最後にします」と衝撃の発言。
 記者会見でもその本当の理由を語らなかったが、優勝から2日目の卓球王国のインタビューでそのすべてを語った。3時間以上のロングインタビュー。卓球王国最新号では9ページにわたって、チャンピオンの胸の内を紹介する。

 不世出のチャンピオン、水谷隼。決して豪快な男ではない。一緒に行動をともにした田添健汰(木下グループ)は「水谷さんはとにかくネガティブ」と言い、それさえも「本当にネガティブかどうか疑っている」と語った。ネガティブな人間があれほど勝負強いわけがないと。

 水谷は繊細、かつ用心深い選手だ。ワールドツアーやTリーグとボールが違うために、大会3日前まで用具を決められなかったと言う。そして、大会が近づくと「つらくて逃げだしたくなった」とも。そのピークは、丹羽孝希との準々決勝を控えた土曜日の朝にあった。その時に、「今回を最後の全日本にしよう」と決めたと言う。
 そして五輪レースで争う丹羽に対しては、「周りのみんなは世界ランキングが高い丹羽が自分より強いと思っている。ここで実力を示したかった」という強いプライドを見せ、弱い水谷と強い水谷が行ったり来たりする。
 その弱気な水谷の根底には、彼の「目の問題」があった。ボールが見えない、と言うのだ。なぜ、それを彼は会見でも語らなかったのか。視力の問題ではなく、緊張状態にある時にボールが見づらくなるという。本人しかわからない、やっかいな問題を抱えていた。

「張本の力じゃないですか。試合をしてないのに
圧をかけてくる存在感ですかね」

 前年度、決勝で敗れた張本智和と戦うことなく、全日本の舞台から去る水谷。「それは勝ち逃げでしょ?」と言うと、「なんと言われても構わない。ぼくは待っていた。張本が来なかっただけ」と言った。
 水谷自身、追い詰められ、苦しみ抜いた全日本。なぜ今まで何度も優勝している王者がそこまでの状態になったのだろう。「やっぱり張本の力じゃないですか。試合をしてないのに圧をかけてくる存在感ですかね」(水谷)。
「全日本は重みがあるんです。全日本で優勝することはそこを乗り越えなければならない。乗り越えられたのは、身を投げる覚悟を持ったからで、その時に、来年はこの苦しみは乗り越えられないと思った。ここで優勝したら、これで全日本は終わりにしようと最後に決めたのは土曜日です。そこで吹っ切れました」と水谷は語っている。

「去年、張本に負けたことで,自分が何かを変えたいと思ったことはない。でも、周りが変えようとしたからそれを振り払っていた。前陣で戦えないと勝てないとたくさん言われたけど、そこで自分を見失わないようにすることを意識していた。自分は自分らしくやるだけだと」
 張本に対する水谷自身の特別な感情を吐露しているインタビューでもある。チャンピオンになりながらも、張本の存在を認め、日本のエースの座を15歳の若者に託そうとする水谷。彼はネガティブではなかった。水谷隼は正直な思いと真実を語っただけなのだ。
  • アグレッシブな卓球を見せてV10を達成した水谷

  • 「今回が最後の全日本」という理由を会見では明確に語らなかった水谷