驚異のロングセラーラバー、『マーク V』 を探る

Yasaka『マーク V』

キング・オブ・高弾性ラバー
『マーク V 』 とはどんなラバーなのか

 もうすぐ発売から50年を迎える、卓球界でも指折りのロングセラー 『マーク V 』 。裏ソフトラバーの定番として、年代を問わず今なお多くのプレーヤーに愛され続けるアイテムである。
 テンション系ラバーが一般的とも言われる卓球ラバー市場で、高弾性高摩擦の裏ソフトラバー 『マーク V 』 がなぜこれほど売れるのか。実は卓球関係者も不思議に感じているのだ。今回はその「売れる理由」に迫ってみよう。

 今でこそ、初・中級者向きの“基本”という扱いの 『マーク V 』 だが、発売当初は、その高い性能により「弾みすぎて使えない」と言われるほど画期的なラバーだった。
 いわゆる「裏ソフトラバー」が誕生したのは1951年で、ヤサカが発売した 『ソフトラバー 』 (現在の 『オリジナル 』 )が第一号。当時の主流だった一枚ラバーにはない強い回転力が評判となり、それにともないループドライブという新技術が流行したことで、裏ソフト使用者は日本を中心に世界中で増えていった。そして、1969年にさらなる高性能をひっさげて発売されたのが高弾性高摩擦裏ソフトの 『マーク V 』 。

マーク Vの初代パッケージ

マーク Vの初代パッケージ

右がラバーの材料となる天然ゴム。自然界のゴムの木の樹液である。左が人工の薬品で作った合成ゴム

右がラバーの材料となる天然ゴム。自然界のゴムの木の樹液である。左が人工の薬品で作った合成ゴム

 それまでは天然ゴムで作っていた卓球のラバーに合成ゴムを混入することでスピード性能とスピン性能を大幅にアップさせており、当時のトップ選手でさえも使うのを敬遠するほど革新的な一枚だった。
 それまでの天然ゴムの裏ソフトラバーと比較にならないほど反発弾性にすぐれ、グリップ力にもすぐれていたために、あえて従来の「天然ゴム裏ソフト」と区別するために「高弾性高摩擦裏ソフト」というカテゴリーを作ったほどだ。

マーク Vのスペック マーク Vのスペック

第2 回に続く
文=今野昇、渡辺友