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ウエーブドライブZ/ウエーブメダルZ[ミズノ]

シューズ対談 卓球王国 佐藤祐 × ミズノ 中谷俊貴
中谷俊貴さん

中谷俊貴さん ミズノグローバルフットウエアプロダクト本部 企画デザイン部 インドア・ラケット企画課 ラケットスポーツシューズ担当

今回はミズノの新シューズの秘密を探るため、対談を行いました!

卓球王国ゆう(以下ゆう):『ウエーブドライブZ』、そして『ウエーブメダルZ』。ふたつの新シューズが登場しました。前作が「A(エース)」という名前でしたが、今作はいきなり「Z」なんですね。

中谷:「ドライブ」も「メダル」も長年続いているコンセプトがあり、それをより進化させていくことに取り組んでいました。最初は「A(エース)」が切り札的な形で発売しましたが、さらに突き抜けたところまでいこうとアルファベットの最後の「Z」をつけました。

ゆう:突き抜けたぜ! という「Z」なんですね。自信がうかがえますが、それだと次作が出しづらそうです。

中谷:そうなんですよ。でもまだまだ工夫するところがありますよ。

ゆう:では現行では最高モデルということで、2つのZシリーズの性能を教えてください。

ゆう:ウエーブドライブZ のコンセプトは何でしょう?

中谷:軽量・柔軟・素足感覚です。その中でも「Z」は軽量と柔軟を突き詰めたモデル。自分のプレーのスピードを上げたいと考えている選手向けのシューズです。また、「Z」では新しいコンセプトとして、「加速」というものを掲げました。

ゆう:加速って、シューズでどうこうなるものなんでしょうか? 車の加速の場合でも積んでいるエンジン次第ですし、プレーヤーの筋力の部分が大きいのでは?

中谷:選手の動きを計測した結果、足で踏ん張ったり、切り替えしたりする時には、足の裏の拇指球が使われています。拇指球に効率的に力が入るような新ソールを開発しました。ポイントは「D − FLEX GROOVE」という裏の中央部にある溝です。この斜めに入った溝のおかげで、シューズが内側に曲がやすく、そして外側には曲がりにくくなりました。踏ん張った時に自然に親指側に体重が乗り、拇指球に力が集約されるのです。その結果、一歩目の踏み出しやすさを向上させました。

ゆう:それがいわゆる「加速」になったということですね。

ゆう:アッパー(前足部)は前作の「A」から引き継いでいますね。

中谷:屈曲性、つまり柔らかさは前作の「プライムスキン」という素材を踏襲しています。繊維が細かくて、足あたりがいいんです。でもそれだけではなくて、進化した部分もあります。内側にメッシュの窓が空いており、伸びる素材になっています。内ねじりした時に伸縮して足に沿うようになっているんです。余分なシワを軽減させて、効率的に力を加えられるようになりました。

ゆう:工夫してますね。メッシュにすることで、軽量化も図れるし、通気性も良さそうです。よく見ないとわからない部分ですね。
アウトソール(靴底)のゴム質も前回と同じものですか?

中谷:そうです。琥珀色のゴムは摩擦力が強くて止まるゴム質、そして黄色のゴムは少し摩擦力を抑えたものです。卓球は回り込みや前後の動きにすり足も使います。その時に効率よく動けるようにしています。

ゆう:2足目、『ウエーブメダルZ』は12月に発売されたばかり。「ドライブ」と同じくらい人気の「メダル」シリーズです。こちらは見た目からも結構変わったように感じます。

中谷:「メダルZ」はアッパーを大きく変えました。今までは人工皮革とメッシュのコンビネーションが主流でした。「Z」ではベースはメッシュにしていますが、表面にウレタン素材を使っています。これにより軽量でありながら、上からカチっと抑える安定性が加わりました。もともと『ウエーブメダル』のコンセプトは安定性とクッション性です。アッパーの変更により、特に安定性を伸ばしました。

佐藤祐

佐藤祐・卓球王国編集部 用具ページ担当

ゆう:よくシューズで「安定性」と表現されることがありますよね。ラケットやラバーだったら弾みすぎないとか、スポンジがソフトで台に入れやすいとか、想像できるんですが……シューズの安定性とは具体的にどんなものなのですか?

中谷:シューズの安定性とは、たとえばサイドに振られた時に踏ん張った際に、足が横にブレないことです。「メダル」は「ドライブ」よりも小指部分が張り出しているのです。そうすることで、踏ん張った時に小指に力が入りやすく、すぐ次の動きに移ることができます。これがソールの安定性です。
そしてアッパーは柔らかすぎるとそれだけで横に流れてしまうので、ウレタンで補強し、小指部分に人工皮革を当てることで横方向へのブレを抑えています。これがアッパーの安定性です。

ゆう:動いた時に足がブレない、ということですね。柔らかさはほしいけど、柔らかすぎるとシューズがぐにゃ~と動きすぎてしまう。シューズはそのバランスが大事で、良いシューズの条件とも言えます。

中谷:特にトップレベルの選手は安定性がほしいと言います。柔らかくてブレないものをコンセプトにして開発しました。適度なサポート性を持ちながら、足馴染みも良いですよ。これまでのシューズとはワンランク上の安定性になっています。

ゆう:両方ともそれぞれの性能を突き詰めた自信作だということはわかりました。ではここからはいろいろ突っ込んだ話を聞きますね。「ウエーブドライブZ」を履いて思ったんですが、結構厚みがありますよね。今までの「ウエーブドライブ」はかかと部分がもう少し薄い気がします。これはなぜですか?

中谷:数年くらい前からトップ選手に聞くと、「ドライブでももう少しサポート感がほしい」という声が多くありました。薄いと頼りない感じがあるということです。「Z」はかかと部を厚めに設計して、よりサポート感がアップさせています。

ゆう:でもそれだと重量が重くなりませんか? 「ドライブ」は軽量もコンセプトのはずです。

中谷:それはアウトソールのゴムで調整しています。シューズの裏を見てもらえばわかりますが、「ドライブ」はゴムが上下で分かれていて、「メダル」はゴムがほぼ全体に敷き詰められています。

ゆう:シューズの中で重い素材はゴムなんですか。

中谷:そうです。ゴムが一番重いので、軽量化を図るスピードモデルはゴムを減らしています。その際にゴムを前足部とかかと部で分けることで、ポーンと弾むバネのような感覚にもなります。前作と重量は変わらずにパワーアップしています。

ゆう:止まるゴムは柔らかさが大事。でも柔らかすぎると耐久性が落ちてしまうと聞きます。

中谷:止まるということは、その分だけゴムに負担がかかっているので、すり減りやすくなります。いかに選手が良いというグリップ感を残しつつ、ゴムがあまり減らないようにするのかが大事です。ゴムの配合とか硬さですね。「ドライブZ」も「メダルZ」も一見すると違うゴムに見えますが、配合としては同じXGラバーを使っています。

ゆう:良いゴムを開発しないと止まってくれない。それはラバーと同じですね。私たちのような一般選手はトップ選手のように良い環境では練習できない。フロアマットならどんなシューズでも止まるけど、ホコリっぽい体育館で止まるシューズがほしいんです。

中谷:それはミズノのウリだと思います。そこでも滑らないという話が、ありがたいことに耳に入ってきますね。開発段階で水では濡らした時にしっかり止まるかなども検証します。

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ゆう:今作から中央にあるベロも新しくなっていました。これはどういう効果があるのですか?

中谷:今までのベロはメッシュで覆うものでしたが、薄くて足の甲に沿うようにしています。よりフィット感を感じられて動きやすさが高まります。選手のレベルが高くなれば、プレー中にベロがズレてしまう。動いてもズレないように、気にせずに動いてもらうための新タイプです。

ゆう:ベロの役割って大きいですよね。私もシューズを履く時にはベロで調整します。最後にベロをキュッと引っ張ると中の調和が取れる気がします。

中谷:「Z」ではプレミア感を出すためにも細かい部分まで仕様を見直しています。

ゆう:個人的な見解ですが、シューズを知れば知るほど、卓球を始めた時に卓球シューズを履いていれば良かったのにと思います。ずっと学校指定の体育館シューズを履いていて、何の疑問もなく練習していました。滑ってしまうシューズで練習すると、踏ん張れないので、体が使えない。だから手打ちが身についてしまう。
シューズに詳しくない人はどのようにシューズ選びをしたら良いのでしょう?

中谷:特にフットワークが固まってくるとシューズに求めるものが変わってきます。もう少し大きく踏み出した時に止まってほしい、細かい動きにスピード感を出したい、という要望が出てくると思うので、ミズノの中ではコンセプトと機能で選んでいただいています。

ゆう:動くことに不満を感じたら、シューズを見直したほうがいいですね。踏ん張れないシューズ、滑るシューズは上達を妨げてしまいます。それに選手の方も自分が手打ちになっていることにも気づいていないケースがあります。私も最初に自分の映像を見たら絶望しました(笑)

中谷:あとは履き方ですね。自分に合ったサイズ、幅のシューズを履けているかどうかが大事です。若い人はシューズの紐を解かずにそのままズボッと履いてしまったりしてますよね。細かいようですが、それではシューズのパフォーマンスは引き出せません。動けていない原因のひとつかもしれません。

ゆう:突き抜けた性能の「Z」が発売されました。ここからさらに性能を突き詰めていくためには、どこを改良していく予定ですか?

中谷:「ドライブZ」は柔軟と素足感覚というのをもっと高めていきたいと思っています。柔らかさもいろいろあり、曲げやすさなのか、足に当たる柔らかさなのか。もう少し深く掘り下げていこうと進めています。

ゆう:素足感覚はソールが薄ければ薄いほど素足感覚になりますが、それだけでは足が痛くなってしまいそうです。

中谷:究極的には「履いていない感覚」です。それなのにパフォーマンスが高いというのが、「ドライブ」が目指すところです。素足感覚をもっと実現していきます。
「メダル」は安定性とクッション性をもっと高めながら、コンセプトである軽さをキープするという挑戦をこれからもやっていくつもりです。

ゆう:次作も期待ですね。今日はありがとうございました。

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