ファイナル進出をかけた男達の戦い。ドラマチックなエンディングで琉球が彩たまに逆転勝ち!!

T.T彩たま 2-3 琉球アスティーダ
10勝11敗 11勝10敗
1 黄鎮廷 11-10 11-6 李平
神巧也 吉村真晴
2 松平健太 9−11 11-10 6-11 11-5 12-10 荘智淵
3 ピッチフォード 11-4 6-11 9-11 11-6 10-12 有延大夢
4 神巧也 3-11 8-11 4-11 吉村真晴
5 松平健太 7-11 荘智淵

 

ノジマTリーグ2019−2020レギュラーシーズン最終戦。ここまで20試合を戦いながら、T.T彩たまと琉球アスティーダの勝点差はわずか1点。この最終戦の勝者がプレーオフファイナルに進出するという、ドラマのような展開になった。

ホームのT.T彩たまスタンドには、“爆援(ばくえん)”でチームを奮い立たせるサポーターが集結。ファイナル進出を信じ、試合前から大声援をおくる。

T.T彩たまのサポーターたち

 

注目のオーダー。動きを見せたのはアウェーの琉球だ。これまで起用し続けてきたエース格の朱世赫を外し、有延を抜擢。この人選は彩たまも読めなかったのではないだろうか。そして、結果的にその有延がチームの窮地を救うことになるとは、オーダー交換を見た時点では予想することができなかった。

 

第1マッチのダブルス、彩たまは前日に絶不調だった黄鎮廷を使う。黄鎮廷/神ペアと琉球は李平/吉村ペア。1ゲーム目、ラブオールから両ペアともエンジン全開だ。消極的なプレーでは得点できず、チキータやフルスイングのフォアドライブといった攻撃的なプレーと、精度の高いストップやラリーでのコース取りなど、ハイレベルなプレーで一進一退の攻防が続く。出だしで不調になることが多い黄鎮廷だが、この日はミスがなく、フォアドライブも振り切れている。

点差は大きく離れず、9−9から先にゲームポイントを奪ったのは琉球ペア。だが、ここから彩たまペアが会心のプレーを見せて逆転で1ゲーム目を取ると、2ゲーム目は3−5から7連続得点で10−5とし、11−6で彩ペアが勝利。前日の汚名を覆すような黄鎮廷の好プレー、そしてアグレッシブなプレーでぐいぐい押しまくった神が、大きな、大きな先取点を上げた。

仕上がりは決して悪くなった琉球ペア

頼れるダブルスが戻ってきた。彩たまが先取点!!

 

第2マッチは松平と荘智淵。過去の対戦成績では荘智淵が松平を圧倒している。また、荘智淵はここにきてワールドツアーとTリーグで張本(木下マイスター東京)を連破するなどベテランながら全盛期の強さが戻りつつある。だが、松平に気負いの雰囲気はなく、試合はスタートからワールドレベルのプレーが続出。

荘智淵の下回転と横回転を混ぜたサービスに対し、松平はサービスの回転を殺してネット際に落とす得意の「ゼロストップ」で先手を封じると、居合い抜きのバックドライブを見せる。ベンチの坂本監督が「健太、振り抜け!」と連呼する。しかし、試合をリードするのは荘智淵だ。荘智淵が先にゲームを取り、松平が追いつくという展開で最終ゲームへ。

6オールスタートから松平が2得点して8−6。荘智淵が1点取って8−7となったところで彩たまベンチがタイムアウト。タイムアウト明けに松平が得点して9−7。最終ゲームの流れは松平が握っている。だが、百戦錬磨の荘智淵は諦めない。9−9と追いつき、10−9とされながらも意地のプレーで10−10。流れは追いついた荘智淵に傾いたかに思えたが、松平は強気のプレーで攻め続けて、最後は中陣から放ったフォアドライブがネットにかかり、得点。最後のドライブがネットミスではなく、ネットに当たってから上に飛んだのは松平の気持ちがボールに乗り移っていたためだろう。

松平が最後まで攻め続けて、荘智淵を押し切った

 

ファイナル進出に王手をかけた彩たま。あとがなくなった琉球。ここで登場したのがピッチフォードと有延。世界トップレベルのピッチフォードに対して、有延は日本代表の経験もない。加えて、2−0で彩たまがリードという場面。ピッチフォードが圧倒的有利という状況で試合がスタートした。

1ゲーム目、ピッチフォードはサービスで先手を取ると、緊張のためプレーが硬い有延を11−4で下す。1ゲーム目の内容を見るとこのままピッチフォードが押し切ると思えた。だが、2ゲーム目から有延のYGサービスが効き始めるとピッチフォードの様子がおかしくなる。フォア前とバックに深い有延のYGサービスをバックにツッツキレシーブしかできなくなったピッチフォードに対して、有延は回り込んで回転量のあるフォアドライブで得点を重ねる。

第2、第3ゲームを有延が奪い、ようやくツッツキではなくドライブでレシーブできるようになったピッチフォードが第4ゲームを取り、最終ゲームへ。6−8から10−9と逆転してマッチポイントを握ったのはピッチフォード。ここで有延はミドル前にハーフロングのYGサービスを出し、ピッチフォードのフォアドライブのレシーブがネットにかかる。「あの場面で考えたことは、ピッチフォードにバックハンドで打たれたくなかったということでした。ミドル前のハーフロングサービスがバックハンドで攻撃されることが一番少ないサービスだと思ったので、そのサービスを使いました」と有延。

10−10からピッチフォードはロングサービスから両ハンド攻撃の戦術を取ったがミス。マッチポイントを奪った有延もロングサービスを出し、3球目を攻めて得点。2月8日の木下マイスターの水谷戦の勝利に続いて、最終戦でも有延が格上選手を下す「ジャイアントキリング」を果たした。

ピッチフォードはマッチポイントを握ったが…

有延はYGサービスから勝機をつかむ

 

第4マッチはここまでシングルス13勝とリーグトップの成績を上げている神と吉村。「神さんには分が悪く、あまり勝てるイメージはないけれど、この試合でのぼくは非常に冷静に試合をすることができた」と吉村が言うように、サービス、レシーブで優位に立った吉村は、ラリー戦でも負けずに神に圧勝。土壇場で琉球が追いついた。

神は必死にもがいたが勝機を見いだせずに終わる

冷静なプレーで神を完封した吉村

 

ファイナル進出をかけた大一番は、ビクトリーマッチに。ビクトリーマッチは第2マッチの再戦になり、松平対荘智淵。

お互いに一歩も譲らない展開が続く中、先に一歩抜け出したのは松平だった。強気の両ハンドドライブで荘智淵を攻めて7−5と松平がリード。だが、ここから荘智淵が驚異的なプレーで6連続得点し、11−7で勝利。強靱なメンタルで劣勢のゲームをひっくり返した。そしてこの結果、ファイナル進出は琉球が手にした。

これほどまで気迫を込めた松平を見たのはいつ以来だろうか

琉球のエースが、最後の最後で奮起した

 

両チームの戦いは、まさに死闘だった。試合の中で流れが行き来し、瞬きするのも惜しいほど熱いプレーが続出していた。

誤解を恐れずに言おう。

2019−2020レギュラーシーズン、男女86試合を通じて、この試合がもっとも白熱し、ドラマチックなエンディングになった。取材をしていて、どちらもファイナルに行かせてあげたいと思ってしまった。本当にそう思えるほど、両チームの選手とベンチ、そしてサポーターは力を出し尽くして、正々堂々と戦っていた。

最後に、試合後の囲みで吉村が放った言葉で終わらせたい。「(3月14日の)ファイナルはぼくらだけのものではないと思っている。(今日戦った)彩たまの分もある」

 

T.T彩たま、琉球アスティーダ、感動をありがとう。

 

3月14日、両国国技館でのプレーオフファイナルは、木下マイスター東京と琉球アスティーダが激突する。