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 プロリーグを作ることが卓球のステイタスを上げていくことも事実だろう。 一方、世間一般の人も「卓球はプロとして稼げるの?」と疑問を持っている。
 「スポンサー料、入場料、賛助会費、リーグからの分配金、クラブとしてのプロ活動(卓球教室、グッズ販売)などで十分やれます。プロリーグ全体でもサッカーのJ2の1クラブの運営費とたいした変わりはない。卓球にはそれだけの力があるはず」とプロリーグ設立検討準備室の松下浩二室長はきっぱり言い、プロリーグはトップ選手のセカンドキャリア(引退後の生活)とコーチの質の向上につながると明言する。
 
「1983年以降、世界選手権に出場をした男子選手で引退をした選手は51人。その内の3分の2が卓球にたずさわっています。残りの3分の1は卓球と関係ない仕事をしています。卓球にたずさわっている人の半分は指導者です。世界で戦うほどの実績を残した人が卓球界から離れるのは卓球界の損失です。プロリーグはそういう選手たちの受け皿でもあります。選手のセカンドキャリアを考えた時に日本代表になった人がフルタイムでコーチできる環境、それがプロリーグでもあり、そこで経験を積んでナショナルチームのコーチになる人が出てくる。逆に、ナショナルチームでコーチしていた人が、やめた後にプロリーグのコーチになるケースもあるでしょう。
 プロリーグによって、経験を積むことでコーチ能力が高まり、プロコーチが働く場を提供できる。コーチのレベルが上がっていけば、日本の競技力も上がるのは必然でしょう。つまりコーチが育っていけばよい選手も生まれていくのです。
 現時点で、水谷、丹羽、松平健太、吉村、大島、岸川という日本のトップクラスも(来シーズン)日本リーグではプレーしません。プロ選手、もしくはこれからプロになろうとする選手がそこを目指していない。大阪でやった日本リーグのファイナル4でも観客は300人足らずだった。最盛期に58チームあった加盟チームも28チーム(実業団チーム)になっています」

 松下室長はやや攻撃的になっているが、日本リーグは日本卓球界になくてはならない組織であることも事実だ。
 日本リーグがアマチュアリーグとして発足して38年が経っている。今まで果たしてきた役割は大きい。チームを持つ会社の都合で卓球部がなくなることがあっても、プロリーグが設立されて日本リーグそのものがなくなることはないだろう。
 なぜなら学生選手はすべてがプロを目指すわけではないし、将来卓球をやめた後も企業に残り、仕事に従事し、安定した生活を求める人のほうが圧倒的に多く、そういう人は日本リーグに加盟する企業スポーツを選ぶはずだ。
 そう考えると、プロリーグ設立に向けてのプロリーグ設立検討準備室と日本リーグの関係をもう一度考えてみたほうが良い。プロリーグができても男女の日本リーグ加盟チームのいくつプロリーグに移るのか? あっても一つか二つだろう。場合によってはゼロかもしれない。

 ただし、選手は何人かプロリーグへ流れるだろう。それでもそれは男女それぞれ10名を超えるか超えないか程度の数だ。日本リーグの2部チームで言えば、ほぼ全員がアマチュア選手で普通に仕事に従事している社員だ。一時的に1部リーグの選手の減少が発生するとしても、日本リーグは最高峰のアマチュアリーグとして学生選手の貴重な受け皿であることに変わりはない。
 佐藤真二・日本リーグ専務理事と松下浩二・準備室室長のやりとりを読むとバチバチとした険悪なやりとりに読み取れるかもしれないが、そこの流出する選手の数やチーム数を考えれば日本リーグは毅然とすれば良いのではないか。日本リーグとプロリーグは対抗勢力ではなく、卓球選手の貴重な受け皿として共存できる。 (続く/今野)
 日本リーグとプロリーグ設立検討準備室の両者の意見と説明を聞くと確かに平行線のようにも思うが、これはまさにプロリーグの産みの苦しみだろう。
 日本リーグ側はまず「プロリーグができたとしても日本リーグが共存できる絵(構想)を示してもらいたい」と思っている。ところが、準備室のほうは、「まずプロリーグが必要、進めるという前提のもと絵を描いてスタートさせたい。日本リーグが最初の段階で賛成でなくても途中からその絵の中に組み込むことができるはずだ」と思っている。この両者の考えの溝はなかなか埋まらない。
 もちろん関係者の中には、「なぜプロリーグが必要なのか。今でも卓球界は盛んだし、世界で強いではないか」という声もある。そこで松下氏に「プロリーグ設立の大義」を語ってもらう。

——松下室長はなぜそこまでプロリーグ設立にこだわるのですか?
「プロリーグを作る大義があるからです。日本にはプロリーグが絶対必要です。世界の強国で自国にプロリーグがないのは日本だけです。選手が卓球に専念して生活できる環境を作ることが競技力向上にもつながります。またプロリーグは卓球を愛する子どもたちに夢を与えるものだし、それは同時に卓球というスポーツのステイタスを上げていきます。
 日本のトップ選手を国内で観れるのもごくわずかです。大量の選手が海外でプレーしている現状もあります。なぜプロリーグが必要なのかという大義があるから、私は全くぶれていません。胸を張ってプロリーグ設立を推し進めていきます」

 確かに協会が「世界チャンピオンを目指す。打倒中国だ」とお題目のように発する言葉と、「プロリーグが設立できない日本の卓球界で選手はどのようにプロとして稼げばいいのだろう」という現実とのジレンマ。
 また今でも子どもたちは「将来、愛ちゃんのようになりたい、佳純ちゃんのようになりたい、水谷さんのようにチャンピオンになりたい」という夢を抱いていても、プロとして活躍したいとは思わないだろう。プロリーグの場がないのだから。(続く/今野)
  • ロシアリーグで活躍する水谷選手。日本のファンは彼を見る機会が少ない

 日本リーグ側から資料は不十分と指摘されたプロリーグ設立検討準備室(以下準備室)。学連はおおむねプロリーグ設立には賛成していると聞いているが、プロリーグからの大きな影響を受ける日本リーグに関して松下浩二室長に聞いてみた。

——日本リーグとしては、準備室からの資料が不十分なので、何かを決める段階ではないと言っています。
「設立検討委員会で3年間、準備室が立ち上がってから6カ月経っています。今まで何度も話し合っているし、その設立検討委員会のメンバーに佐藤真二・日本リーグ専務理事も入っています。何度も会議をやってきて、ここに来て『企画書として整っていない、これは日本リーグ用ではない、共存共栄できる日本リーグの立場になった案じゃないといけない』言われています。佐藤専務理事が一番わかっているはずですが、本当に今までの経緯や話し合いを日本リーグの方たちに説明しているのかどうか疑問です」

——今までの資料は状況説明だけで具体性に欠けるものだった、というのがリーグ側の見解ですが。
「今までリーグのほうから具体的にどの部分が不足しているのかという要望は一度も出ていない。今ままでの資料にはプロリーグの収支、スポンサー問題、分配金、運営費などのことも書いています。これ以上何を望んでいるのか具体的な指摘がなく、『もっと良いものを』と言われています。過去に出した資料でも何が足りないのかを言わないまま、『もっと具体的なもの』を出してくれと言われても作りようがないのが現状です」

 松下浩二室長が日本リーグの対応に業を煮やしているのはコメントを見てもわかる。スタディチームで2年間、設立検討委員会で3年間という時間を費やしてきて、それでも日本リーグからの意見が出ないことに苛立ちを隠せない。
 しかし、日本リーグの他の関係者も「松下室長との打ち合わせが少なすぎる。今年の春に準備室ができてから日本リーグとの打ち合わせがなく、やっと会議を持ったのが10月だった。松下室長は本気にプロリーグをやるつもりなのか。しかもその時に出てきた資料は1年前のものとたいした変わりはなかった。もっと具体的なプラン示すべき。熱意が感じられない」と指摘する。

 この日本リーグ関係者の指摘に対して松下室長はこう答える。
「10月まで日本リーグとの複数による会議を持てなかったのは謝罪したいし、その会議でも謝罪させて頂きました。設立検討準備室が3月にできて、ある程度の素案が6月にできてからは、毎月のように佐藤専務理事とは会って話はしていたし、それが他の日本リーグの方にも伝わっていると思っていた。ところがフタを開けてみたら伝わっていなかった。資料はブラッシュアップはさせたが基本部分は変える必要がないと思っています。その資料の何が問題なのかを日本リーグから指摘してほしいと思っています」

 「資料は十分だ」「いや、あんな資料では不十分だ」というお互いの見解は平行線のままだ。本来は、協会の上層部に強いリーダーシップを発揮してもらい、うまくまとめてほしかった。
 日本リーグ関係者の立場からすれば、プロリーグができて自分たちの居場所がなくなるような錯覚に陥るのも理解できる。しかし、プロリーグの構想は日本リーグの上部団体を作ろうとしているわけではない。アマチュアリーグとは全く違うプロリーグという組織の創設なのだ。
 仮に日本リーグが反対しても、日本卓球協会がプロリーグをスタートさせると決定し、実行することもできるが、現時点では日本リーグに最大限の配慮をしようとしている。日本リーグができて38年が経ち、日本リーグは長く日本卓球界の競技力を支え、学生選手の重要な就職先にもなってきた。協会としては、その日本リーグに最大の敬意を払い、共存できる道を模索している。  (続く/今野)
  • プロリーグ設立検討準備室の松下浩二室長

 12日の理事会後の前原正浩専務理事の会見では「プロリーグ設立がなかなか進まない」という印象を多くの記者は持ったはずだ。
 かねてから、日本リーグがプロリーグのネックになる、日本リーグが反対しているから進んでいないという印象を持っている関係者は多い。
 そこで日本リーグ・佐藤専務理事ととプロリーグ設立検討準備室・松下室長の説明をほぼ同時に聞くことができた。お互いの考えの違いは鮮明だ。

 日本リーグとしては、まだプロリーグの全容が見えてこない段階でありながらも、もしプロリーグができたら日本リーグが存続できない、企業スポーツとして終わってしまうという危機感を持っている。
 当然だろう。現状が各チームにとってベストだとすれば、プロリーグができて日本リーグが格下に扱われたり、選手が流出してしまうとチームがなくなってしまうという危機感だ。日本リーグのチームの中に何人かのプロ選手がいるとしても、リーグ自体はアマチュアリーグだ。勝っても負けてもチームは存続できるが、会社が経済状況などで突然廃部を決めることは過去にもあった。会社あっての卓球部なので、会社が日本リーグに意義を感じなくなった時点で卓球部は消滅する。

佐藤真二・日本実業団リーグ連盟専務理事のコメント
――日本卓球協会理事会では、プロリーグ設立に向けた賛否を12月にはっきりさせると言っていたことが先延ばしになりました。日本リーグとの話し合い、ヒアリングがもっと必要と言うことでした。
「私も12月の理事会でそうなる(賛否の決定)と思っていました。日本リーグサイドは8月28日のプロリーグ設立検討準備室(以下準備室)との話し合いで、日本リーグ用のプレゼン資料を用意してくださいと要望しました。ところが10月5日の話し合いで出てきたものは従来の企画書であり、プロリーグを作るうえでのメリット、デメリットの説明がない。明らかに資料として不足していると思っています。
 今までの資料は海外リーグの説明であったり、企業チームがプロリーグに参画できるかどうかを決断するのに必要な具体的資料、プレゼンではないと日本リーグサイドは判断をしています。もし示される企画書が理解できるものであり、加盟チームから理解を得られるものであれば手順を追って各チームのヒアリングをしてもらっていいと思っています。
 ただ現実的にはそれが不十分で、もし資料があがってきて日本リーグ内のプロリーグ対応委員会でその資料をもんで、準備室との理解のできる資料になれば手順を追って各チームにプロリーグの説明をする。その後、準備室が各チームと具体的なヒヤリングを行えばいいと考えています。
 だから理解・満足できる資料が出ていない今の時点で日本リーグは賛成も反対もない。プロリーグのほうは日本リーグを大事にしていくと言ってくれているので、互いが共存共栄できるように今後、現実的な問題を検証していけばいいと思います」  (続く/今野)
  • 日本リーグ専務理事の佐藤真二氏

 2020年東京パラリンピックに向けて、障害者スポーツの推進と健常者との交流を目的とした『オンリーワン卓球選手権大会』が、来年2月20日に東京・中央区総合スポーツセンターで開催される。参加費の一部を、日本肢体不自由者卓球協会の強化費に充てるチャリティー大会。会場には同協会のナショナルチームメンバーも来場し、パラスポーツの体験型イベントなどが開催される。また、特別招待選手として、学生や社会人のトップ選手も来場予定だ。

 イベントとしても十分に魅力的なこのオンリーワン卓球選手権。さらに魅力を増すのがビッグな賞金だ。試合は2単1複で、予選リーグ後に決勝トーナメントが行われるが、1・2位トーナメントの優勝チームにはなんと優勝賞金15万円。2位チームには5万円、3位チームにも3万円の賞金が出る。3・4位トーナメントの上位チームにも、優勝チーム2万円をはじめ、賞金が出るのは何ともうれしい。

 この大会の「仕掛け人」は、専修大時代に全日本男子複ベスト8などの実績を持つ立石イオタ良二さん。兄の立石アルファ裕一さんは、立位クラス8の日本代表として、パラの国際大会で好成績を収め、イオタさんもコーチとしてパラの国際大会にたびたび帯同している。パラの選手との交流の場を設け、そして卓球界を盛り上げるために、スポンサー集めにも奔走して開催にこぎつけた。今後も、卓球を元気にする様々なプロジェクトを打ち出していく予定だ。

 大会要項および申し込み用紙は、下記のリンクからダウンロードできるほか、大会のfacebookページでもダウンロード可能。大会に関する様々な情報もフェイスブック上にアップされる。申し込みが130チーム程度に達したところで締め切りとのことなので、早めの申し込みがオススメだ。また、2020年東京五輪・東京パラに向けたボランティア育成も見据え、大会の運営をサポートするボランティアスタッフも募集中とのこと。興味のある方はぜひ連絡を!

オンリーワン卓球選手権【東京大会】・大会要項&申し込み登録シート

●facebook オンリーワン卓球選手権大会【Vol.1東京大会】
https://www.facebook.com/events/186783011667022/
 国内で着用する競技ウエアにつけるスポンサーロゴ(広告)が従来よりも数が増えることが日本卓球協会の理事会で承認された。
 これは協会のアスリート委員会から提案されていたものだ。今までは半袖ウエアの前面と側面につけるスポンサーロゴは合計は600cm²以内に6カ所(前面は4カ所)、背面には400cm²以内に2カ所、ショーツは120cm²以内に2カ所という規定があったが、同じ合計面積でウエア前面、側面で6から8カ所に、背面は2から3カ所に、ショーツは2から3カ所に増やしてもよい。

 これ近年増えているプロ選手にとってはスポンサー獲得と収入の面でのプラスとなり、企業チームの選手にとっては自社の宣伝にとってプラスとなる改定だろう。
 2015ITTFワールドツアー・グランドファイナルは12月13日に男女シングルス決勝が行われ、男子シングルスは馬龍(中国)、女子シングルスは丁寧(中国)が優勝した。準決勝・決勝の記録は下記のとおり。

〈男子シングルス〉●準決勝
馬龍(中国) 5、5、ー8、ー12、7、8 張継科(中国)
樊振東(中国) ー6、4、8、ー7、8、15 許シン(中国)
●決勝
馬龍 10、10、ー11、ー7、ー7、8、9 樊振東

〈女子シングルス〉●準決勝
陳夢(中国) 3、ー7、ー8、7、6、6 田志希(韓国)
丁寧(中国) ー10、11、12、5、6 朱雨玲(中国)
●決勝
丁寧 11、ー10、7、2、ー9、7 陳夢

 馬龍は今大会、チキータでのレシーブをほとんど使わず、フォアの威力あるフリックとストップで完璧に相手のサービスをさばいた。フォアのパワードライブという最大の持ち味を生かすため、プレーをさらにモデルチェンジしてきた印象だ。決勝の樊振東戦は好ラリーが続出する一進一退の攻防だったが、最終ゲーム2ー6から8点連取で10ー6と逆転し、追いすがる樊振東を11ー9で振り切った。これで2015年は世界選手権・ワールドカップ・グランドファイナルの3冠。強豪が集うクウェートオープンや中国オープンでも優勝し、無敵の強さを誇った2015年を見事に締めくくった。

 女子優勝の丁寧は、今年後半は体調不良や故障に苦しんだ。グランドファイナルでも体のキレは落ちていたが、クロス・ストレートとコースを多彩に打ち分けながら、より合理的に打球点を選択していくプレーを見せた。決勝での陳夢との大型プレーヤー対決は、テニスのように華やかなラリー戦で観客を沸かせた。
  • やはり強かった! 表彰での馬龍と丁寧 【写真提供:ITTF】

 昨日の日本卓球協会理事会で「プロリーグ設立に向けてのスピード感のなさ」が露呈した。というかそもそも「プロリーグを設立します!」というアドバルーンも揚がっていないし、それに向けて準備するしないの結論も出ていない。
 理事会後の前原正浩専務理事の会見でも、歯切れは良くないし、残念ながら「日本卓球界のためにプロリーグは絶対必要!やらなければいけない」という熱いものは感じられなかった。

 当然ながら、既存の学連(日本学生連盟)、日本リーグ(実業団)への配慮や話し合いは不可欠だが、協会として「プロリーグは絶対必要」という情熱や機運が高まっていないことが何とももどかしい。
 例えば、学連にとって何の問題があるのだろうか。学生が進む、新たなひとつの道になるのがプロリーグではないのか。日本リーグは反対なのか。プロリーグの構想の中で、日本リーグとは共存していくという話も聞いている。しかも、日本リーグは既存のプロリーグではなくアマチュアリーグなのだから、プロリーグができても消滅するわけではない。

 協会側(もしくは上層部)が日本卓球界の将来を案じ、子どもたちに夢を与えたい、卓球をよりメジャーなスポーツにしたいという理想や哲学があるならば、学連や日本リーグを説得できるだけの大きな絵を描けるはずだ。
 端から見ていて「検討・検討・また検討」というようなプロリーグに向けての進まない現状に苛立ちを感じる。「スタートしてすぐにつぶれるのではないか」と心配する向きもある。新規事業を始めるのにリスク回避は当然だが、最初からダメになることばかりを心配しては何も始まらない。

 協会はのんびりやっても理事の人たちに何のマイナスもないだろうが、日本のトップ選手にとっては「時間のロス(損失)」でしかない。
 プロ選手として、プレーできるのは数年間か10年程度だろう。それなのに、遅々として進まないプロリーグ。「日本は世界チャンピオンになる、打倒中国だ」と口では強化本部の方もナショナルチームも言うけれども、中国でもヨーロッパでもどこにもプロリーグはある。プロリーグも作れない協会が世界チャンピオンになれるとは思えない。
 選手としてのプロ生活が確立され、目標があり、切磋琢磨できる環境があってこそ世界の頂点を狙える。子どもたちにも夢を与えることができない卓球界に将来はあるのか。
 唯一の希望の光は、プロリーグ検討準備室の松下浩二室長の情熱だけだ。「絶対プロリーグを作る。そのためには何でもやる」と言い切る松下氏。彼の情熱を支える本気の人たちの出現を期待したい。 (今野)
 12月12日、2015ITTFワールドツアー・グランドファイナルの男女ダブルス決勝が行われ、森薗政崇/大島祐哉(明治大/早稲田大)が優勝。大声援を受けた地元ペアのアポローニャ/モンテイロ(ポルトガル)を4ー1で下し、中国ペア不在の大会で改めてその強さを証明した。1996年にスタートしたグランドファイナルで、男子ダブルスで日本選手が優勝するのは史上初。また、女子ダブルスで2連覇を狙った平野美宇/伊藤美誠(JOCエリートアカデミー/スターツSC)は決勝で丁寧/朱雨玲(中国)に0ー4で敗れ、準優勝となった。

 男女シングルスは準々決勝が行われ、女子の田志希(韓国)以外はすべて中国勢が勝ち上がった。結果は下記のとおり。

●男子シングルス準々決勝
馬龍(中国) 9、5、10、4 オフチャロフ(ドイツ)
張継科(中国) 15、9、8、ー15、5 大島
樊振東(中国) 10、4、12、3 荘智淵(チャイニーズタイペイ)
許シン(中国) ー10、12、3、ー10、8、10 サムソノフ(ベラルーシ)
●女子シングルス準々決勝
田志希(韓国) ー8、8、6、ー9、10、8 若宮
陳夢(中国) 3、ー8、7、2、5 劉詩ウェン(中国)
丁寧(中国) ー8、7、3、7、ー9、3 ハン・イン(ドイツ)
朱雨玲(中国) 10、5、6、7 石川

 男子の大島、女子の若宮と石川はベスト8。大島は第4ゲーム、張継科にマッチポイントを奪われながらも逆転し、望みをつないだが、第5ゲームは張継科のフォアの前陣カウンターをさばき切れず。それでも、U-21とダブルスの2冠を獲得し、充実の大会を終えた。若宮はジャパンオープンで勝利している田志希から快調に1ゲームを先取し、第2ゲームも6ー2とリードしたが、ここから逆転を許したのが響いた。

 石川は同世代のライバル・朱雨玲との対戦。3球目からバックドライブを多用し、前陣で両ハンドの打ち合いを挑んだが、朱の攻守は崩れず。2連覇はならなかった。故障や不調も経験し、アップダウンの激しい2015年だったが、大舞台での勝負強さと「歴史を変える力」は実証済み。8カ月後のリオ五輪で、さらに進化した姿を見せてくれるに違いない。
  • ポルトガルペアを破り、優勝を決めた森薗/大島

  • 平野/伊藤、準決勝で勝利後の笑顔。決勝では中国ペアの強さも体感

  • 森薗/大島、表彰式で最高の笑顔【すべて写真提供:ITTF】

 12日に日本卓球協会理事会が行われ、冒頭の第1号議案で「プロリーグ設立検討準備室からの報告」ということで松下浩二室長(プロリーグ設立検討準備室)が経過説明や今後の検討課題を理事のメンバーに説明した。
 6月の理事会の後には、前原正浩専務理事の口からは「12月の理事会でプロリーグの準備をスタートさせるかどうかを12月の理事会で決めたい」という主旨のコメントがあったが、今回の理事会でも結論は出なかった。

以下は前原専務理事のコメント。
「日本リーグ、学連ともさらに議論を重ね、十分なヒアリングができていないので、ヒアリングを通して課題を抽出していくために、来年度も継続して検討していく。まだ準備をスタートするまでにたどり着いていません」

——6月の段階では12月にある程度結論を出すというコメントをしています。それに検討と言ってももう何年も前から検討委員会をやっているのにもかかわらず、これだけ検討、検討と言われると、協会は非常に動きが遅い、というように選手や一般の人、メディアから見えてしまいます。
「まだ検討準備室が満足できる構想を作り込めていないのも事実です。日本リーグ、学連とのヒアリングもまだ少ないし、今日も(日本リーグの)佐藤真二専務理事とも話をしてコミュニケーション、会議をもっと増やそうという話をしました」
——日本リーグが反対をしているのですか?
「それはないです。まだ十分な(満足させる)構想がない」
——プロリーグのメリットは?
「卓球ファンの拡大や卓球ならではの健康寿命の促進などをプロリーグを通して仕掛けていきたい。これは卓球ならではの良い部分だと思う。選手への報酬面でも最低金額はこのくらいだというのがあるけど、それだとやっていけないという意見もあります。松下室長のプレゼンはブラッシュアップしている段階。プロリーグは初めてのことだから見えてこない課題もあるし、大きなプロジェクトなので、エイヤーッ、という感じではできない」
「日本のトップ選手が観れるのは、全日本選手権とジャパンオープンくらいしかない。一般の愛好者が観れる機会を増やすべき。中国でもプロリーグが確立されている。日本も強化を考えても、産業として成り立たせてプロリーグができないのかと模索している。(プロリーグ設立は)遠いです。日本リーグ関係者とも合意しなければいけない。日本リーグはアマチュアリーグなので、より厳しい環境で選手が切磋卓球できる環境が必要。打倒中国と言ってもその壁を破れない」

 専務理事のコメントからは、難しい、(設立は)遠い、というコメントと、日本のために必要、という言葉が出てくるように、迷っている様子が見えた。プロリーグは一体どうなるのか。 (今野)