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世界選手権ロッテルダム大会(個人戦)

ロッテルダムは1940年のナチス・ドイツの空爆で、市街地が甚大な被害を受けた。戦争がようやく終わった後、この街の人々は、ほとんど真っ白になったカンバスに薄く残った線を丁寧になぞろうとはせず、大胆に直線を引いていった。元の街並みを復元するのではなく、より近代的な街並みを打ち立てようとしたのだ。

街を歩いていると、その幾何学的な建築群には目を奪われる。住宅街に入ると、ごく普通のマンションが並んでいるが、表通りに面している建物はなかなか前衛的。下写真右のビルは30階建て以上の高さがあるのに、前半分を細いつっかい棒で支えている。地震がほとんどないというオランダならでは。ハンマーでつっかい棒を叩いてやりたくなりますね(?)。
★男子シングルス・ドロー
http://www.ittf.com/competitions/test/_draws_singles.asp?Competition_ID=1962&Rnd=128&s_Event_Type=MS

☆女子シングルス・ドロー
http://www.ittf.com/competitions/test/_draws_singles.asp?Competition_ID=1962&Rnd=128&s_Event_Type=WS

開会式では、残っていた男女シングルス第1~16シードのドローも行われた。ふたつのプラスチックの半球の片方に選手の名前、もう片方に選手が入るシードの番号が入ったボールがあり、そのふたつを順番に引いていくシステム。サッカーのワールドカップなどのドローでよく見る光景だ。

日本男子では、水谷隼がベスト8決定戦でガオ・ニン(シンガポール)、そして準々決勝で第1シードの王皓(中国)と当たる組み合わせ。ガオ・ニンには昨年のアジア競技大会でゲームオールで勝っている。王皓にはそのアジア競技大会の準決勝で敗れているが、世界の舞台でリベンジを決めたい。また、順当に勝ち進めば、松平健太が3回戦でボル(ドイツ)、丹羽孝希が2回戦で馬琳(中国)と当たる組み合わせになっている。さすがに世界選手権は楽なブロックというものはない。

日本女子は、福原愛と平野早矢香がベスト8決定戦で当たる非情のドロー。しかし、福原はその前の3回戦で范瑛(中国)の挑戦を受ける。3月のポーランドオープンではストレートで敗れている相手。世界ランキングが低いために、この位置に入ってきてしまった。大きな難関を乗り越え、平野との好勝負を期待したい。

下写真:女子のドローで選手たちの名前を引いたのは、元ヨーロッパチャンピオンで今大会のPR大使に任命されているベティーネ・フリセコープ(オランダ)
 アホイ・ロッテルダムの3階にあるコンベンションホールで行われた開会式。てっきりメインアリーナでやるのかと思っていたら、意表を突かれた。一般の観客は入場できず、開幕前日とあって選手の姿もまばらだったが、観客は最初のうちは少ないのだから、割り切った演出の工夫という感じもした。

 ひとりの少女が、弾むピンポン球を追いかけながら世界を回り、6つの大陸でひとりずつ友だちを増やしながら、アホイ・ロッテルダムに戻ってきて再びピンポン球を手にする…というストーリーに沿って演出は進行。アフリカの「ライオンキング」調のダンスや南米のサンバなど、それぞれの大陸を象徴する音楽やダンスが次々と披露されていったが、北米大陸で太めの「にせマイケル(・ジャクソン)」と「にせエルビス(・プレスリー)」が登場したのには参った。こう書かれてもストーリーがよくわからないかもしれませんが、現場で見ていてもあまりわからなかったので、ご容赦ください。

 最後に登場した国際卓球連盟のシャララ会長は、スピーチの中で日本についても触れた。「あのような未曾有の大災害(東日本大震災)を乗り越え、日本チームが世界選手権に参加されたことは非常に嬉しい。しかし、この世界選手権は我々卓球のファミリーにとって、第二の故郷のようなもの。旧交を温めながら、すばらしい時間を過ごす必要があるのです」。そしてスピーチの最後に、大会の開幕を力強く宣言した。

下写真中央が、件のにせエルビス(もう亡くなっているので、偽物しかいませんが)。どの国にもひとりはこういう人がいるのだろうが、なかなかの熱唱ぶりだった(口パクですが)。 
 アホイ・ロッテルダム2階のラウンジでは、タマス社が選手や関係者を招待してパーティーを開催。会場にはボル、プリモラッツ、コルベル、ガルドス、帖雅娜、姜華君など、多くのトップ選手が来場。タマス自慢のミニピン台では、一足先に熱戦が展開されていた。明日から厳しい戦いを控えた選手たちも、ひと時の休息を楽しんだ。
 首の神経痛で大会を欠場したシュラガーも姿を見せた。WSA(ヴェルナー・シュラガー・アカデミー)は、パートナークラブであるニーダー・オーストリアとともに、4月6日に行われたヨーロッパチャンピオンズリーグ準決勝での収益の一部を、東日本大震災の被災地に義援金として寄付している。
 まず40台収容の第2会場で、そして4台しかないメインアリーナで開幕前日の練習に励んだ日本チーム。台やコートの感触を確かめるように練習に励んでいた。
ロッテルダム大会の使用卓球台は紅双喜、ボールはティバーの日本製の3スターだ。写真はちょっと暗い第2会場で練習する水谷隼と石川佳純。
 発売されたばかりの卓球王国6月号別冊「TTF6」に、モスクワ大会の敬礼した写真が大きく掲載されたロシアのキリル・スカチコフ。写真集を見せられて会心のスマイル。一冊もらおうとしたら、ロシア男子の監督が「ダメだ、これは俺のだ」と持って行ってしまったそうな…。モスクワ大会では王皓にゲームオールまで迫ったスカチコフ、ロッテルダムでも活躍を一発、期待してます!
 メインアリーナには1万人を収容する今大会の会場、アホイ・ロッテルダム。速報担当は朝ホテルから走ってみたが、街の中心部からは地下鉄で数駅と、少し離れている。それだけに緑も多く、空が広い。…帰りに道に迷って、10km以上走る羽目になりましたが。
 日本選手団も会場入り。過去最高のエントリー数を集め、ロッテルダム大会は開幕を今や遅しと待ち受けている。明日の競技開始に先立ち、今日は現地時間19時30分から開会式が行われ、シングルスの第1~16シードのドローも開会式の中で行われる予定だ。
 成田空港10時45分発のKL862便(KLMオランダ航空)で、日本を出発した王国取材班。約11時間半のフライトで、現地時間の6日午後15時過ぎにオランダ・スキポール空港に到着しました。
 入国審査でお姉さんに入国の理由を聞かれ、「卓球の雑誌のクルーだ、世界選手権の取材に来たんだ」と言うと、「世界選手権ってどこでやってるの?」と逆に質問されてしまいました。「オイオイ、知らないの…?」とちょっとガックリ。しかし、空港からロッテルダムへ向かう鉄道の席に放ってあったスポーツ新聞には、オランダ女子チームのリー・ジャオとリー・ジエの姿が! ちょっと元気復活です。

 ロッテルダムは暑すぎず、寒すぎずの爽やかな天気。第二次対戦中にドイツの空爆を受け、オランダの中では近代的な街並みが続くと聞いていましたが、宿泊するマリタイムホテルのある運河沿いはなかなか洒落た雰囲気。

 日本選手団は飛行機の到着が遅れたそうですが、王国取材班とほぼ同じ時刻にスキポール空港に到着。現地時間の17時から、各種目のシード選手のドローが行われました。シングルスの第1~16シードのドローだけは、明日19時30分にスタートする開会式の中で行われる予定です。ドローの結果などは、また後ほどお伝えします。

下写真左はスキポール空港から乗り込んだ鉄道「インターシティ」、中央はオランダ卓球チームを特集していたスポーツ新聞、右はホテル近くのハーバーの風景
 中国の上位独占が続く女子種目。ロンドン五輪を控え、各選手とも気合いが入る中国の壁を破るのはますます困難になっているが、ロッテルダム大会は日本女子も強い。世界ランキング7位の福原愛(ANA)、10位の石川佳純(IMG)、11位の平野早矢香(ミキハウス)が形成するトップ3で、ワールドチームランキングを過去最高の2位まで押し上げた。これは中国への挑戦状となる。

 3月11日の東日本大震災で、未曾有の甚大な被害を被った日本。女子代表選手の中には宮城・仙台育英学園高のOGが多く、さらにエース福原は仙台市の出身。福原は4月の日本リーグビッグトーナメントで、1月の全日本選手権準決勝で敗れた石川を破って優勝。「中学・高校時代を過ごした仙台に良い報告ができるよう頑張る」と記者会見で語った平野は、スペインオープンで優勝を果たした。被災地に思いを馳せ、「WASURENAI3.11」のワッペンを胸に戦う日本女子には、過去の大会にはないプラスαがある。それは決して無視できない力になる。日本女子はシングルスでは全員が本戦からの登場だ。

 優勝戦線を占う上で、もちろん中国は避けて通れない。しかし、今大会ほど優勝候補が絞りにくい大会もない。世界ランキングのトップ5を独占する中国女子の5選手、李暁霞、郭炎、丁寧、郭躍、劉詩ウェンは、いずれも大会での勝敗に大きな偏りはない。李暁霞がやや丁寧を苦手とし、郭躍が調子を落としているという点を差し引いても、女王候補の予想は極めて難しい。大きな大きなドングリが背比べをしている。
 一方、アジアの強豪を見てみると、シンガポール、香港、韓国といずれも頭打ちの感がある。シンガポールのエース馮天薇は、本来なら中国の対抗馬として最も期待できる存在だが、モスクワ大会決勝での2得点で中国に目をつけられてしまった。その後は対中国選手はかなり分が悪く、今大会も厳しい戦いになりそう。韓国もカットの2枚看板、金キョン娥と朴美英がややピークを過ぎてきた感あり。元中国選手の石賀浄は対中国に強いが、対カットに弱いという落とし穴がある。若手の梁夏銀がどこまで戦えるのか、注目してみたい。

 ヨーロッパ女子はなかなかスター候補生がいないが、93年イエテボリ大会3位のバデスク(ルーマニア)、03年パリ大会3位のボロス(クロアチア)と、欧州開催の世界選手権には思わぬ伏兵が飛び出すこともある。07年ザグレブ大会では、日本の福原・平野・福岡が、ルーマニアのドデアンとサマラに苦杯を喫している。一発勝負のトーナメント、特に今大会のように、ロンドン五輪の推薦出場枠などが絡むと、どんな番狂わせがあるかわからない。

 ロッテルダムと言えば、ロッテルダムマラソン。世界屈指の高速レースに備え(?)、速報担当もランニングシューズを新調しました。緩んだ体に活を入れながら朝もやのロッテルダムを駆け抜け、速報もさらにパワーアップさせたいと思います!
 いよいよ開幕が間近に迫った世界選手権ロッテルダム大会。

 どこかで聞いたことがあるような、やっぱり聞き違いだったようなロッテルダムという地名。世界選手権の開催地ということになれば、急に親近感が湧いてくるから不思議なもの。速報担当が先日髪を切ってもらった美容師さん曰く「あの、宮殿があるところですよネ?」。…バッキンガムと間違えてたみたいです。
 ロッテルダム大会の見どころについては、本誌5・6月号に掲載された「ロッテルダムへの道」に詳しいですが、少しおさらいしておきましょう。

 まず男子シングルス。世界ランキング7位の水谷隼(明治大・スヴェンソン)が、世界の頂点にググッと近づいてきた。日本代表の記者会見で自ら「自分が負けるところはイメージできない」と語ったとおり、日本の卓球ファンの多くが、彼が簡単に負けるところは想像できないはず。世界ランキング7位の第7シードとなり、順当にいけば、準々決勝でメダルをかけて対戦するのは、第1~4シードの王皓(中国)、ボル(ドイツ)、張継科(中国)、馬琳(中国)の4人。いずれも厳しい相手だが、勝ったことのない相手はひとりもいない。それだけに期待は高まる。
 水谷が明かした最も対戦したい相手は、2年前の横浜大会で完敗した陳杞(中国)。ストレートで完敗したあの一戦のリベンジを狙っている。馬龍(中国)も必ず倒したい相手だが、その「楽しみ」はロンドン五輪までとっておく。

 日本男子はロンドン五輪の2番目の推薦出場枠を巡る戦いも、ロッテルダム大会のひとつの焦点になる。ドイツ・DTTL(男子1部)のオクセンハオゼンで1番手を張る岸川聖也(スヴェンソン)と、ようやく復調の兆しが見える松平健太(早稲田大)。今大会は代表から外れた吉田海偉(個人)を含めた3名が、世界ランキングポイントでわずか3ポイント差の中にひしめき合う。格上相手よりも、むしろ序盤の格下相手の戦いのほうがプレッシャーが大きいだろう。日本男子では松平賢二(青森大)だけが、予選トーナメントからの出場になる。

 世界に目を向けると、やはり優勝候補は中国に固まっている。中国男子の劉国梁監督は「若手はまだビッグゲームでは結果を残していない。彼らには確固たる結果が求められる」と発言。馬琳と王励勤というふたりのベテランを代表に加えながらも、チームの世代交代を促した。若手で最も勢いがあるのは張継科だが、まだメンタルが不安定。やはり技術と経験のバランスが最も取れている、王皓と馬龍が優勝争いの中心になりそうだ。
 アジアでは韓国も世代交代の時期を迎えている。最後の世界選手権個人戦になることも考えられる柳承敏と呉尚垠、そして中国が警戒している朱世赫。3選手は世界ランキングが接近し、ロンドン五輪への推薦出場枠を巡るライバル関係でもある。まだまだ若手には負けられない。

 一方、ヨーロッパはなかなかイキの良い若手が出てこない。欧州の皇帝・ボルに期待が集まるが、中国に徹底的に研究されているのと、故障続きで体力面に不安があるのがマイナス材料。それを差し引いてもボルの存在感には絶対のものがあるが、ロンドン五輪を前に中国の包囲網を破ることができるか。層の厚いドイツを除くと、残念ながらベスト8まで勝ちあがってくるようなヨーロッパの男子選手は見当たらないが、フランスの若手からは新たなスターの誕生に期待したい。

 続いて、女子の見どころもお伝えします!