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全中国運動会・速報2013

 今回の全中国運動会を取材していて驚いたのが、各チームのウェアが想像以上にバラエティに富んでいること。男子団体優勝の解放軍はアンドロ、女子団体優勝の山東省はスティガのウェアを着ていたし、北京市・天津市・江蘇省などニッタクのウェアを着用するチームも多い。さらに四川省はTSP、福建省はドニック、河北省はヨーラと、まるでウェアの展示会。地元の遼寧省や黒龍江省は、アディダスのウェアだ。
 また、河南省女子チームが「ARAG」や「LIEBHERR」のロゴが入ったバタフライのウェアを着ていたのにはビックリした。ドイツに帰化した中国系選手のようだった。

 中国のスポーツブランドのウェアが少ないのは意外で、唯一広東省だけが男女チームとも地元ブランドの「奥奇(OUKEI)」を着ている。あとは各省の選手たちが、ときおり「李寧(LINING)」を着ているくらいか。

 ただし、ショーツは各選手とも高い確率で、李寧の黒いショーツを履いている。あるいは超級リーグで着用している「361°」のショーツだ。日本ならば、チームとのウェア契約でショーツだけ別のブランドを履くのは、コンプライアンスの問題から許されないところだが、中国ではなかなか守られないのだそうだ。ウェアの「契約」というよりも、「着るからウェア100枚ちょうだい」くらいの感覚かもしれない。
 昨日、郭躍と李佳イのダブルスが上下をアディダスで統一していたが、やはりそのほうが映えますね。
  • 上海市はニッタクのウェア

  • 解放軍とアンドロの組み合わせに意表を突かれた

  • 四川省チームはTSPでキメます

  • 河南省女子チームはヨーロッパ風

  • ヨーラを着る河北省の崔慶磊

  • スカイブルーのスティガのウェア、山東省

  • 山西女子は上はアディダス、下は李寧ですが…

  • やはり上下ともアディダスのほうがキレイかも

 今回の全中国運動会で、卓球・水球・サッカー(U-20)の会場である鞍山オリンピックセンターに入るには、報道陣・観客ともに「安検」のゲートを通過しなければならない。安検は安全検査の略。先日、速報担当が日本酒を没収されたところです。その後、多数の人の手を渡り、無事戻ってきましたが…。

 毎回、手荷物はすべてX線の検査を通し、金属探知機のゲートをくぐった上で、ふたたび「ハイ両手を上げて」「ハイ後ろ向いて」と金属探知機の棒でなで回されます。

 日本酒の瓶をちゃんと見抜くあたり、全くザルというわけでもなさそうですが、日を追うにつれて検査が雑になっている感あり。ポケットに入った携帯電話に金属探知機が反応しても、出させて確認しようともしないのは不思議です。
 女子団体予選リーグで首の故障を再発させ、残りの団体戦とシングルスは棄権となった郭躍。しかし、今日行われた女子ダブルス1回戦には出場。李佳イ(火×4)とのペアで、カットペアの胡麗梅/張文静(河北省)をストレートで破ったが、さすがに全力のフォア強打は難しい様子。大会の顔として、個人戦をすべて棄権するわけにはいかなかったのだろうか。

 卓球のトップ選手で、首の故障というのはあまり聞かないが、郭躍はこの首の故障を患ってから、めまいや吐き気に悩まされていると聞く。パートナーの李佳イがパワードライブを連発して、先輩の負担を軽くしているが、ダブルスの準々決勝・準決勝が行われる明日が少々不安だ。

下段写真は、郭躍が首を傷めた時の様子。悔し涙を流した郭躍、この後に救急車で病院に搬送された。速報担当はまだ鞍山に到着していなかったので、中国の卓球雑誌「ピンパン世界」のカメラマン、辺玉翔くんに写真を提供してもらいました。謝謝。
●混合ダブルス決勝
馬龍/丁寧(北京市) 9、-7、-8、9、5、8 張超/劉詩ウェン(広東省)

両ペアとも気合い満点、1点取るごとにガッツポーズの応酬となった混合ダブルス決勝。馬龍/丁寧が競り勝った。ともに全中国の個人戦ではうれしい初タイトル、表彰台では久々に「丁寧スマイル」が戻った。今大会は渋い表情、苦い表情が多い丁寧だが、やはり彼女には笑顔が似合う。

張超/劉詩ウェンもゲームカウント2-1とリードし、押し気味に試合を進めていたが、中・後陣に下げられた時の対応力に少し差があったか。劉詩ウェンは馬龍のパワードライブに対しても、果敢にカウンターを狙っていったが、終盤ではさすがに受け切れなくなった感あり。57分の熱戦の末に敗れた。
  • 混合ダブルス初優勝の馬龍/丁寧

  • 張超/劉詩ウェン、惜敗

  • 表彰でも満面の丁寧スマイル

●男子シングルス3回戦
閻安(北京市) -10、3、-6、14、9、6 周雨(解放軍)
許シン(上海市) 6、6、2、8 ハオ帥(天津市)
樊振東(解放軍) -13、2、6、6、9 劉イ(河北省)
張継科(山東省) 9、-8、-4、8、7、5 張超(広東省)

今大会、ここまで不調の許シンがようやく目覚めたか、フォアドライブが一気に加速してハオ帥を完封。後陣からの裏面ドライブでの逆襲もよく決まった。
右肩に故障を抱える張継科は、手の内をよく知る張超に2-1とゲームをリードされたが、逆転勝ちでベスト8入り。明後日の準々決勝では、パリ大会で完勝している樊振東との対戦だが、パリ大会のように簡単にはいかないだろう。
  • 許シン、ハオ帥をノックアウト

  • 張継科はひそかに優勝を狙っている気配だが…

●男子シングルス3回戦
閻安(北京市) -10、3、-6、14、9、6 周雨(解放軍)

解放軍チームの男子団体優勝の立役者、周雨が閻安に敗れた。
閻安のフォアドライブと周雨のバックドライブが激突したこの試合。ゲームカウント2-1とリードした第4ゲーム、周雨はゲームポイントを奪ってタイムアウトを取るも、ここで決め切れず。終盤からは、得意の台上バックドライブを閻安に狙われ、レシーブがストップ中心になったことも、ペースをつかめなかった一因か。

試合後、ベンチに入った解放軍の王涛総監督から、長い間アドバイスを受けていた周雨。さすがに勢いだけでは勝てない大会だ。
  • 閻安、周雨に競り勝つ

  • 周雨の快進撃はここでストップ

 今日は、試合の途中で負傷する選手が増えている。その多くは、トップ選手に挑んだ若手選手や、格下の選手たち。全中国運動会という大舞台で、自らの限界を超えたプレーに身体が悲鳴を上げたのか。
 下写真左の梁靖崑は、馬龍戦の第6ゲーム終盤で、回り込んでパワードライブを打とうとした時に転倒し、しばらく起き上がれなかった。会場には医療スタッフが常駐しているが、選手生命にかかわるようなケガだけはしてほしくない。
  • 絵に描いたような看護婦の孫さんです

●男子シングルス3回戦
馬龍(北京市) 9、10、-6、-3、7、10 梁靖崑(河北省)
王皓(解放軍) -10、-7、-9、12、7、9、5 程靖チィ(河北省)
王励勤(上海市) 3、6、9、-5、6 陳杞(解放軍)
崔慶磊(河北省) 10、9、10、8 馬琳(広東省)

男子シングルス3回戦は、まず4試合が先に行われた。残り4試合は現地時間の19時(日本時間20時)から行われる。

このラウンドで目を引いたのが、河北省の選手たちだ。まず「何のスポーツの選手?」と思うほどガッチリした体躯で、全身を使った豪快なフォアドライブを打ちまくった程靖チィ(チョン・ジンチィ)。王皓から3ゲームを連取し、第4ゲーム10-9でマッチポイントを奪って、王皓ファンに悲鳴を上げさせた。この人が08年世界ジュニア選手権の中国代表だったことを覚えている人は、かなりのマニア。

速報担当の注目株は、馬龍と互角の打撃戦を繰り広げた梁靖崑。9月3日まで行われていたアジアジュニア選手権で優勝した選手。超級リーグで張継科に勝つほどの実力はダテではなかった。
アジアジュニアの疲れもあってか、馬龍戦の終盤で左太ももを傷めて敗れたが、この選手も馬力がある。馬龍のパワードライブを前陣で正確にブロックし、フォア対フォアでは優位に立ってさえいた。馬龍に全く力負けしていなかった。

そして、なんと馬琳をストレートで破った崔慶磊(ツイ・チンレイ)。超級リーグではかなりの実績を誇る選手で、今年6月のジャパンオープンでのプレーは期待はずれだったが、今大会の個人戦に入ってから、気合いの入ったプレーを見せている。ひょうひょうとしたプレースタイルなのだが、馬琳の変化サービスを苦にせず、コースのわかりにくい台上プレーから、突然のパワードライブ。あの馬琳が、最後までペースをつかめないまま敗れた。

河北省の男子選手というと、「中国女子チームの練習パートナー」というイメージがつきまとっていたが、どっこい侮れないのだ。
  • 程靖チィ、ちょっと勝利を意識した感あり

  • 日本にとっても怖い存在になる梁靖崑

  • 馬琳に完勝した崔慶磊

  • 馬琳、最後の全中国はベスト16止まり

●女子シングルス3回戦
武楊(山西省) -7、6、-9、4、7、4 趙岩(江蘇省)
李暁霞(山東省) 4、3、7、3 薛絲雨(上海市)
劉詩ウェン(広東省) 4、-8、3、-10、6、8 顧若辰(山東省)
郭炎(北京市) -10、6、6、-10、4、-10、3 顧玉ティン(山東省)
陳夢(山東省) -9、7、6、5、-8、-9、7 劉斐(江蘇省)
丁寧(北京市) 5、-8、13、-10、6、9 車暁曦(黒龍江省)
周シントン(解放軍) 7、9、8、9 胡麗梅(河北省)
文佳(遼寧省) 5、7、6、9 熊欣芸(広西壮族自治区)

 李暁霞、劉詩ウェン、郭炎、丁寧らは順当にベスト8に勝ち上がった。しかし、劉詩ウェンは小柄ながらパワーのある顧若辰と激しい打撃戦。国際大会では対戦相手を圧倒する劉詩ウェンのピッチの早さも、全中国運動会ではそれほど目立たない。
 
 丁寧は自分のプレーに納得がいかないのか、試合中に顔をゆがめる場面が目立つ。以前はこれほど苦しそうにプレーする選手ではなかったはずだ。ラリーのコース取りを見ても、単調な力攻め、中陣からの粘りが多く、ストレートへの攻めが少ないのが気になる。そして、左ひざのテーピングは、試合を重ねるごとに大きくなってきたようだ。
●女子シングルス3回戦
周シントン(解放軍) 7、9、8、9 胡麗梅(河北省)

 昨日、朱雨玲を破る金星を挙げた胡麗梅を、右ペン粒高攻守型の周シントンが完璧に料理した。胡のカットをものともしない、粒高面でのフォア軽打の安定感は驚異的。大昔の一枚ラバーの選手を見ているようだ。

 攻撃力のある胡麗梅としては、周の軽打をフォアで狙っていきたいのだが、バックに打ったボールはバックショートできっちり止められ、回り込んでバックストレート(周のフォア)へ打つと、ガラ空きのフォアサイドをフォアショートで抜かれる。闘争心旺盛な胡麗梅も、最後はさすがに諦め顔。中国女子卓球の男性化が進む中で、ペン粒・周の快進撃には驚かされる。
  • とにかくカット打ちにミスのない周シントン

  • 胡麗梅はベスト16止まり