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2013世界ジュニア選手権速報

 大会初日の夕方に行われる開会式を前に、なにやら落ち着きがない森薗政崇選手。開会式のイベントのひとつとして、観客席に一列に座った選手たちが「私たちはひとつの家族です!」というメッセージを各国の言葉でつないでいったのだが、チーム最年長の森薗くんが日本チーム代表でマイクを握ることになったのだ。さすがの闘将も少々緊張ぎみだったが、キッチリこなして日本選手団の拍手を浴びた。これで心おきなく明日からの戦いに臨めるでしょう。

 
  • ドッシリ構えているのか、いないのか…

  • 本番ではバッチリこなしました

  • 大きなフラッグによるパフォーマンスも

  • チアガールたちの演技。少々即席の感もあり

 小さなメディアシートを分け合った、ナイジェリアの新聞「ザ・ガーディアン」紙のヘルカン・オカサンさん(下写真左)。アフリカの卓球選手や大会の記事を、ITTFをはじめ各方面に提供している。

 「アフリカの選手のインタビューや写真をいつでも提供するよ。ぜひ日本にも紹介してほしい。アフリカの大会はただ開催するだけで、世界の人たちはそのことを何も知らない。それじゃ選手たちがかわいそうだ。卓球は素晴らしいスポーツだし、このアフリカでもっともっと発展する可能性があるんだ」。流暢な英語を操り、とてもクレバーな印象だが、話し出したら止まらない情熱の持ち主。自身もかつてはプレーヤーだったそうだ。まだ20代かと思ったら、37歳で2人の子どもがいるとか。

 下写真右は第1ステージのナイジェリア対チュニジア戦で、ラストを締めたアジーズ・オグンラデ選手。ナイジェリアといえば、古くは80年代に活躍したアタンダ・ムサ、最近では北京五輪でベスト32に入ったセグン・トリオラなどを輩出し、アフリカ卓球界をリードしてきた伝統国。最近は急成長中のエジプトに押されているが、まだまだ健在だ。
 今大会の会場となるプリンス・モウレイ・アブディラ・スタジアムは、なかなか年季の入った建物。オフィシャルのホテルからはシャトルバスが30分おきに出ているので便利だ。

 昨年のインドでは、メディアシートが一般の観客に占領されていたが、今回のモロッコではそもそもメディアシートが4席くらいしかない。しかも机の脚が邪魔になって、横を向かないと座れないほどの狭さ。……まあ、Wi-Fiで速報をアップできれば文句は言いません!
 シャルル・ドゴール空港の時限付きWIFIをか細く綱渡りしている速報担当。パリは7時を過ぎてもまだ真っ暗。天気予報は「霧」とのこと。

 大会初日の12月1日は男女団体の第1ステージが行われる。日本は男女とも第2ステージから出場するため、今日は試合がない。そして、明日の第2ステージの組み合わせでは、日本男子は香港、日本女子はチャイニーズタイペイと同じ組になった。第2ステージは1グループ3チームのリーグ戦で、残る1チームは今日の第1ステージの結果によって決定。第2ステージの上位2チームまでが準々決勝に進出する。
 
 昨年度大会の香港男子には、メガネの天才プレーヤー・趙頌熙がいたが、今回のチームにはそれほど名のある選手はおらず、オーソドックスな右シェークドライブ型が多い。もちろん油断は禁物なのだが、むしろ怖いのは女子のチャイニーズタイペイ。エースがカットの崔宝文、2番手が右シェーク・バック粒高の池徳容という変則チームだ。タイペイとは昨年も第2ステージで対戦し、勝利は収めたものの相当苦しめられた。出足からエンジン全開で、一気に仕留めたい相手だ。
 定刻の21時55分に成田空港を離陸したエールフランス0277便は、12時間と少しのフライトを経て、パリのシャルル・ドゴール空港に到着です。

 離陸して間もなく機内食が出てから、着陸の2時間前まで眠ってしまったので、どうもパリまで来たという実感が沸きません。
 「ひとりの男が空港で、青ざめた表情でスーツケースに腰掛けている。どうしたんだと尋ねたら、こう答えた。『オレの体はここに着いたけど、オレの魂がまだ着かない。だからこうして待ってるんだ』」。…たしか、こんな小話がありました。ううむ、分かる気がします。

 パリの現在の時刻は3時54分。到着から1時間半ほど経ちましたが、次のラバトへのフライトまでまだ6時間。同じ便で到着した人たちが、パリの夜明けを待っています。ブランドショップは全部シャッターを下ろしているのに、そのウインドウ巡りではしゃいでいるオバサマのバイタリティに脱帽です。
 女子で日本が注意すべき相手は5チーム。まずは中国。そして香港とインド、ルーマニアとアメリカ。中国以外は日本が地力で上回るが、どのチームも侮れない。

 中国は昨年度準優勝の顧玉ティン、ベスト8の劉高陽というふたりのサウスポーに加え、男勝りの強打を放つ劉㬢がいる。今年の全中国運動会で、山東省チームの三番手として優勝に貢献した顧玉ティンは、力任せのプレーが減り、高い身体能力を活かしたしなやかな両ハンド攻撃を見せるようになった。日本女子にとって最大のライバルであることは間違いない。
 香港には、昨年度大会で日本が2失点を喫したパワーヒッター、杜凱栞がいる。林依諾や蘇慧音など2番手以下の選手も国際経験は豊富で、総力戦に持ち込まれると危険な相手だ。

 そして昨年度大会の開催地・インドも怖い相手。長身の右シェークバック粒高攻守型・バトラ、鉄壁のブロックを誇るS.ムケルジなど、ひとクセもふたクセもある選手たちが揃う。
 ヨーロッパの中で若手の育成に定評のあるルーマニアは、エースのスッチが最後の世界ジュニアに燃える。09年度大会から5大会連続の出場は男女を通じて今大会最多。勝ち気な両ハンド強打が持ち味だが、ループドライブで巧みに相手のミスを誘うテクニシャンの一面もある。

 そしてアメリカは、昨年度シングルスベスト8のエリカ・ウーに加え、エースのアリエル・シンが2大会ぶりの世界ジュニア出場。すでに世界選手権5大会、ワールドカップ3大会に出場したキャリアは出場選手の中でも群を抜く。日本選手にとってはオーソドックスで与(くみ)しやすい相手だが、油断は禁物だ。
  • 顧玉ティンは抜群の身体能力を誇る

  • しなやかなサウスポー劉高陽

  • ルーマニアの若き女傑・スッチ

  • 杜凱栞は驚異のパワー

  • アメリカの天才少女、アリエル・シン

 今回の世界ジュニアに出場する海外選手たちは、2020年の東京五輪で各国の主力になり得る、いわば「東京五輪世代」。果たして日本勢の前に立ちはだかるのはどの選手なのか? 男子選手からチェックしてみよう。

 まずは中国。今年もきっちりジュニアの主力級を揃えてきた。エースの梁靖崑は昨年度優勝の樊振東に続き、中国男子の主力になり得るパワーヒッター。左シェークドライブ型の孔令軒、全中国青年選手権優勝の周凱と強力なメンバーで日本の前に立ちふさがる。
 韓国はサウスポーのイム・ジュンフン、昨年度大会の団体準決勝で村松をゲームオールジュースまで追い詰めた右シェークドライブ型、ジャン・ウジンらが出場。対日本となると実力以上のものを出すだけでに注意が必要。
 ヨーロッパの盟主ドイツは、兄のチウ・リァンと弟のチウ・ダンの「邱兄弟」がエントリー。ふたりの父親はドイツ・ブンデスリーガのフリッケンハウゼンでコーチを務め、水谷隼のプライベートコーチでもある邱建新さんだ。兄はオーソドックスな右シェークドライブ型、弟は裏面打法を巧みに使う右ペンドライブ型。

 その他の国は団体戦では脅威になる国は少ないが、ブラジルの強打者カルデラノ、イタリアの天才児ムッティなど油断のできない実力者がいる。モロッコのエース・メルサードは、世界選手権パリ大会にも出場した右シェークドライブ型。日本の海外青年協力隊員として、今年7月までモロッコに赴任していた坂本卓也さんが二人三脚で指導した選手だ。地元開催だけに相当気合いが入っているだろう。
  • 恐るべき強打者・梁靖崑

  • フォアドライブの変化が激しい孔令軒

  • ドイツの親子鷹、チウ・リァン

  • カルデラノはブラジルの新星

  • 地元モロッコのホープ、ザカリア

 12月1〜8日、モロッコの首都ラバトで開催される世界ジュニア選手権。王国取材班はもちろんモロッコへ飛びます。日本からの直通便はなく、パリ経由で片道約20時間。ちなみに日本選手団は、すでに今週月曜日に日本を出発し、パリでの調整合宿を経てまもなく現地に入る。

 アフリカ大陸での世界ジュニア開催は06年カイロ(エジプト)大会以来、7年ぶり。06年大会では松平健太選手が日本人選手として初の世界ジュニア優勝を果たしています。アフリカ開催は縁起が良い!間違いない!
 ……日本選手団の顔ぶれは下記のとおり。

★男子 ※WR=2013年11月発表の世界ランキング
渡邊隆司監督(日本卓球協会)
村松雄斗(エリートアカデミー/帝京高・17歳・右シェークカット型・WR78)
森薗政崇(青森山田高・18歳・左シェークドライブ型・WR98)
三部航平(青森山田高・16歳・右シェークドライブ型・WR194)
酒井明日翔(エリートアカデミー/帝京高・17歳・右シェークドライブ型・WR208)

☆女子
呉光憲監督(淑徳大学)
加藤美優(JOCエリートアカデミー・14歳・右シェークドライブ型・WR77)
伊藤美誠(スターツSC・13歳・右シェーク異質攻撃型・WR87)
平野美宇(JOCエリートアカデミー・13歳・右シェークドライブ型・WR110)
森さくら(昇陽高・17歳・右シェークドライブ型・WR214)

 日本チームはシーディングで男女とも中国に次ぐ第2シードを確保。男子は世界ジュニア3回目の出場となる村松と酒井に、昨年度の全日本ジュニア決勝を戦った森薗・三部という布陣。団体戦では精神的支柱となる森薗がチームをグイグイ引っ張ってくれるはず。シングルスでは森薗とともに、カットの村松も有力な優勝候補だ。

 女子は美優・美誠・美宇の「黄金世代」に強打者・森を加え、10年度大会以来となる団体優勝を狙う。伊藤・平野のダブルスも優勝のチャンスは十分にありそう。今年も世界ジュニアから目が離せない!
  • 森薗政崇、モロッコに燃える!

  • 中国を斬り倒せ!村松雄斗

  • 初の世界ジュニア代表、平野美宇

  • ハードパンチャー伊藤美誠の快進撃に期待!