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ユース五輪・卓球競技

 準々決勝・準決勝というハードなラウンドが行われた大会第3日目。村松の決勝進出の直後、田㔟監督はすでに明日の大一番を見据えていた。以下は試合後のコメント。

「加藤は明日もっと大事な試合が控えているので、細かい部分を少しでも修正していきたい。大きな大会になればなるほど、細かい部分が非常に大事だなと感じています。明日の大一番に向けて、彼女も気持ちを切り替えていると思うし、その準備を一緒に手伝いたい。メダルを獲らせてあげたい。
 リリー・チャン(3位決定戦の相手)も手強いけど、ここまで来たら精神的な部分が一番大きいです。「緊張するな」というほうが無理な話。少しでもポジティブな方向に向かえるようにしてあげたい。

 村松は、一番ナーバスになっていたのは準々決勝の金民爀戦。どれだけカット打ちができるか情報がなかったけど、韓国というイメージだけで「カットが打てる」と感じてしまう。サービス・レシーブで優位に立って、打球点の高いカットを送って、スキがあれば攻撃していこうと話していた。あとは明日、満足せずに金メダルに挑戦するだけです。
 バックドライブについては、今日は少しミスが出たけど、彼の良い部分なので、『ミスしてるから振らなくていいよ』とは言えない。相手の乗せるだけのストップだから、ボールが止まるんです。そこの距離感があっていない。でも、要所で良いボールは入っているし、気にせずにどんどん振っていけばいいと思う」

 田㔟監督もユース五輪というビッグゲームでの初采配。「ベンチでの緊張感は?」との質問には、「ぼくは全然ないです。大きい舞台が好きなので」。なんと頼もしい限り。明日の決勝も頼みますよ!
  • JAPANを背負う背中

  • 勝利した後も、「勝って兜の緒を締める」

●男子シングルス準決勝
樊振東(中国) 7、7、6、4 楊恒韋(チャイニーズタイペイ)
村松 1、4、ー10、6、8 カルデラノ(ブラジル)

村松、カルデラノを4ー1で破り、決勝進出!
今大会、日本勢初のメダルが確定した!

「カルデラノはジャパンオープンで韓国のカットマン、姜動洙にストレートで負けている。そのビデオは観てきました」と試合後に田㔟監督が語ったように、カット打ちはまだまだ経験不足のカルデラノ。村松の表ソフトのカットに対し、1球目は入っても、2球目はひたすらオーバーミス。第2ゲーム中盤から、観客から「巴西隊、加油!(ブラジル頑張れ!)」の声援が飛ぶほど。カットマンが打ち込まれて声援を集めることはあるが、カットが打てなくて声援を集めるというのも……珍しい話ではある。

 ただし、カルデラノもただでは負けない。第3ゲーム、最も入る可能性が高いバッククロスにひたすらボールを集める。一発の威力はさすがで、10ー10からの村松のバックドライブのミスもあり、12ー10でカルデラノが1ゲームを返す。
 しかし、第4ゲーム以降もやはりカットは打てないカルデラノ。一発の強打が決まることはあっても、村松が終始ペースを握り、そのまま勝利。勝利の瞬間、メダルを決めた歓喜よりも、安堵感をにじませた村松。第2シードとして、きっちり決勝まで勝ち上がった。「四年に一度しかない大会ですからね。村松も4年後はもう出られない。その大舞台で、こうして決勝まで勝ち上がったことは評価できると思います」(田㔟監督)

 タイペイの楊恒韋をノックアウトした樊振東との決勝は、明日12時15分(日本時間13時15分)スタート。白昼の大決闘。地元の重圧とカットの変化、ふたつの敵と戦う樊振東は普通の精神状態ではない。チャンスは十分にある。
  • 村松、バック表ソフトの変化が抜群に効いた

●女子シングルス準決勝
杜凱琹(香港) 1、ー5、8、9、6 リリー・チャン(アメリカ)
劉高陽(中国) ー10、5、4、3、6 加藤

 加藤は劉高陽に対し、第1ゲーム、ゲームポイントを奪われながら逆転で奪取。会場内は第1ゲームの出足から「中国隊、加油!(中国頑張れ!)」の大合唱。両選手がサービスの構えに入ってから、応援のかけ声を始める観客もいた。これには、どちらかというと相手の劉高陽のほうがナーバスになっていた。第2ゲームの出足も加藤が3ー0でリード。

 しかし、試合後に田㔟監督が「台上からうまく崩されて、ちょっと焦って先に仕掛けにいった時にミスが出た」と語ったように、得意の台上でなかなか先手が取れなかった加藤。ミユータ(逆回転チキータ)もすでに研究済みだったのか、フォア前でミユータの体勢に入ると、劉は慌てずにバックサイドで待ち構え、大きく空いた加藤のバックを3球目で突いてきた。

 ゲームカウント1ー3とされた第5ゲーム中盤には、しゃがみ込みサービスから3球目攻撃を連続で決める場面もあったが、やはり台上で崩され、劉の伸びのある両ハンドドライブを浴びた。最後は思い切って打った回り込み強打がネットにかかり、終戦。加藤は明日の3位決定戦でリリー・チャン(アメリカ)と、銅メダルを懸けて戦う。激しい打撃戦が予想されるが、日本にメダル第1号をもたらしてほしい。

 準決勝のもうひと試合は、両ハンドの激しいラリー戦。鉄壁を誇る杜凱琹のバックハンドにも、リリー・チャンはよく反応し、善戦した。杜の得意とする、相手に先に打たせてからカウンターを狙う作戦をうまく使っていた。しかし、精度とボールの威力で及ばず。決勝は第1シードと第2シードの対戦となった。
  • 加藤、1ゲーム先取するも及ばず

  • 苦しい試合展開に厳しい表情

  • ショートスイングのバックドライブでコースを突いた劉高陽

  • 第1シードの杜凱琹も決勝へ

 上写真2枚は、女子シングルスで劉高陽(中国)と大接戦を演じたチャイニーズタイペイの邱嗣樺。バック面に粒高ラバーを貼る異質型だが、台から出てくるサービスはしっかりフォアで攻撃。ショートからのフォアスマッシュも鋭く、相手に安心してショートを打たせない技術がある。横回転の入ったショートはえぐいほどよく曲がり、劉高陽が空振りするほどだった。

 下写真2枚は、男子シングルスの第1シード・樊振東をなんとゲームオールまで追い詰めた孔嘉徳(フン・カタク)。おとなしそうな顔立ちと細身の体つき、フォア打ちを見ていると何とも頼りないのだが、気持ちが受け身になった樊振東を、フォアの連続カウンタードライブとバックのカウンターブロックで押しまくった。最終ゲームで先に2−0とリードした時は「もしや?」と思わせたが、ここから樊振東が5点連取でチェンジコート。惜しくも及ばず。
 試合後、ベンチで涙を流し、張瑞監督になぐさめられていた孔嘉徳。大魚を逃した悔しさを滲ませた。
  • 邱嗣樺の粒高ショート!

  • 試合後は充実感と悔しさの混じった表情

  • プレーが抜群にキレていた孔嘉徳

  • 樊振東、笑顔なき勝利

●男子シングルス準々決勝
樊振東(中国) 5、ー9、6、ー7、3、ー7、5 孔嘉徳(香港)
楊恒韋(チャイニーズタイペイ) 5、9、8、8 オルト(ドイツ)
カルデラノ(ブラジル) 11、ー7、4、ー4、4、ー10、6 ザトウカ(ポーランド)
村松 7、ー10、8、ー7、7、4 金民爀(韓国)

 村松雄斗、韓国の金民爀を下してベスト4進出!

 第3ゲーム終了時に村松がウェアを着替えるほどの熱戦。金民爀のカット打ちのスタイルは、先輩の金ミン鉐や張禹珍(ジャン・ウジン)とよく似ている。非常に回転量の多いループドライブでチャンスを作り、高く浮いたボールをスマッシュ。スマッシュもミドルに叩いたり、バッククロスへシュートしていくボールを効果的に使ったりと多彩だ。
 この難敵相手に、村松はここまで絶好調のバックドライブが不発。オーバーミスが連続した。第2ゲームは9ー5のリードから、バックドライブのミス2本などもあって逆転され、接戦に持ち込まれたが、ここで村松はよく我慢した。台上に浮いたボールも、まずはバックの粒高で前に落とし、相手に主導権を渡さない「第二手段」をチョイス。ここまで攻守自在のプレーを見せてきた村松だったが、パワーのない金民爀には、このカットマンらしい戦い方がよく効いた。

 第6ゲームは中盤で一気にリードを広げ、決着をつけた村松。「彼とはカデットの時に一度やったことがあるくらい。ループドライブが思った以上に回転がかかっていた。自分の得意なバックドライブがこの試合はオーバーミスばかりだったので、5・6ゲームは粘っていった。それで取れたのが大きかったです」と試合後のコメント。会場を訪れていた日本卓球協会の前原正浩専務理事、星野一朗・強化本部長とも試合後にガッチリ握手。

 今日夜の準決勝はブラジルのカルデラノと、ファイナリストの座をかけて戦う。頼むぞ村松!!
  • 素晴らしいカットの冴えを見せた村松

  • 金民爀は健闘及ばず。まだまだ強くなりそう

  • 試合後はこの笑顔!このウェアがよく似合うんです、また

●女子シングルス準々決勝
杜凱琹(香港) ー6、9、7、3、6 ディアコヌ(ルーマニア)
リリー・チャン(アメリカ) 8、10、10、ー9、3 タモルワン(タイ)
加藤 10、ー7、8、6、8 ラコバチ(クロアチア)
劉高陽(中国) 9、10、ー7、12、ー16、7 邱嗣樺(チャイニーズタイペイ)

 日本の加藤美優がクロアチアのラコバチを下し、ベスト4へ勝ち進んだ!
 第1ゲーム、9ー9からラコバチがサービスミス、10−9で加藤の勝負をかけた回り込み強打がわずかにオーバー。両選手とも勝利への意識がヒシヒシと伝わってきた。加藤はラコバチの回転量の多い回り込みドライブ、そして下がっての粘り強いロビングに苦しんだが、第3ゲームを競り合いながらも奪って2−1とリード。ここから、深く切れたツッツキやハーフロングのサービスなど、長身のラコバチの泣き所をうまく突いて、試合を優位に進めた。

 本当に少しずつ、プレーの硬さが取れ、加藤本来のひらめきのあるコース取り、勝負師としての本能が蘇りつつある。続く準決勝の対戦相手は劉高陽(中国)。準々決勝では邱嗣樺のバック粒高の変化ショート、思い切りの良いフォアスマッシュに相当苦しめられた。プレッシャーが大きいのは間違いなく地元・中国の劉高陽。観衆の大歓声に負けず、冷静かつ大胆に戦ってほしい。
  • 加藤、勝利のガッツポーズ!

  • ラコバチはプレーの大味な部分を突かれた

 初日の日曜日だけでなく、昨日の月曜日も会場には小さな子どもの姿が目立つ。卓球そっちのけでおしゃべりやケンカに興じている子もいれば、意外なほど真剣な眼差しで見つめている子も。お兄さん、お姉さんのプレーを観て、卓球に興味を持ってくれるといいんですが。

 ちなみに観客の反応を見ていると、圧倒的にウケるのはロビング。片方の選手がロビングを上げて3球目くらいから「ウォ〜〜イ!」「ウォ〜〜〜イ!」という声が上がり、大変な騒ぎに。卓球を知らない人にも分かりやすいからかと思いきや、攻撃選手のカットでのしのぎやバックのカット性ショートなど、渋いプレーにどよめく人たちも。
 昨日の速報で取り上げて、日本でも熱い注目を集めている(はずの)スイスのシュミッドくん。コンソレーションマッチで改めてプレーを観察したところ、「まったくバック面を使わない」というのは誤りでした。下回転のボールに対してはバック面でツッツキをするし、時にはバックハンドの(なんと、バックハンドの)パワードライブまで打っていました。チャンスボールが来た時だけでの決め打ちですが……。

 ちなみにこのグリップのゆえか、シュミッドくんの最大の弱点はフォアミドル。ここを急に速いサービスで突かれると、ポコーンと信じられないようなオーバーミスをしていました。また、下がると必然的にオールフォアになります。

 そんなシュミッドくんですが、実はかなりのイケメン。端正なルックスとエキセントリックなプレースタイルのギャップにクラクラします。
  • なんと美しいフォアショート!

  • バック面を使う時は人差し指を仕舞います

  • このフォアミドルが…厳しい

  • ご覧のとおりの男前

 大会第3日目の8月19日。今日は午前中に男女シングルスの準々決勝、夜に準決勝が行われ、ファイナリスト2名が決定する。その合間には、予選グループで3・4位になった選手によるコンソレーションマッチ(敗者トーナメント)が行われているのだが、何ともゆるやかなタイムテーブルだ。今日行われる試合の予定は下記のとおり(メインドローのみ)。

11:00〜 ●女子シングルス準々決勝 
タモルワン(タイ) vs. リリー・チャン(アメリカ)
杜凱琹(香港) vs. ディアコヌ(ルーマニア)

11:45〜 ●女子シングルス準々決勝
邱嗣樺(チャイニーズタイペイ) vs. 劉高陽(中国)
加藤 vs. ラコバチ(クロアチア)

12:30〜 ●男子シングルス準々決勝
樊振東(中国) vs. 孔嘉徳(香港)
オルト(ドイツ) vs. 楊恒韋(チャイニーズタイペイ)

13:15〜 ●男子シングルス準々決勝
村松 vs. 金民爀(韓国)
カルデラノ(ブラジル) vs. ザトウカ(ポーランド)

16:15〜/17:00〜 ●女子シングルス準々決勝
17:45〜/18:30〜 ●男子シングルス準々決勝

 日本の加藤はラコバチ(クロアチア)、村松は金民爀(韓国)との対戦。どちらも厳しい相手だが、まず中国への挑戦権を得るためには、そして頂点に立つためには、ここで負けるわけにはいかない。速報担当もコートサイドで念を送ります。
★男子決勝トーナメント1回戦・その他の結果
樊振東(中国) 7、ー2、2、5、9 ゲラシメンコ(カザフスタン)
孔嘉徳(香港) ー9、6、8、7、7 テンティ(アルゼンチン)
オルト(ドイツ) ー9、ー6、9、ー10、12、8、6 ディオゴ・チェン(ポルトガル)
楊恒韋(チャイニーズタイペイ) ー6、7、9、9、5 レイツパイズ(チェコ)
カルデラノ(ブラジル) 8、ー6、3、11、ー10、ー9、10 パダサック(タイ)
ザトウカ(ポーランド) ー9、5、ー9、7、9、9 プツァル(クロアチア)
金民爀(韓国) 8、7、ー5、6、8 アックズ(フランス)

 第1シードの樊振東は、ゲラシメンコのバックハンドの速攻に押される場面もあったが、中盤からそのバックハンドをさらに両ハンドで狙い打った。フォアのカウンタードライブの打球点と精度は驚異的。対戦相手は次第に打つ手がなくなっていく。

 激戦になったのは、オルト対ディオゴ・チェン、カルデラノ対パダサックの2試合。ディオゴ・チェンは第5ゲームに何度もマッチポイントを握りながら決め切れず、痛恨の逆転負け。マッチポイントの場面ではセルフトークで冷静さを取り戻そうとしていたが、勝利への意識がプレーを硬くしてしまった。
 ブラジルの新星・カルデラノはタイの左シェークドライブ型・パダサックの切れ味鋭いフォアドライブに手を焼いたが、最終ゲームジュースで振り切った。長身で身体能力の高さとバランス感覚は申し分なく、「卓球を選んでくれてありがとう」と言いたくなる。台上で見せるボールセンスも抜群。精密な中国卓球を呑み込むスケールの大きさを感じさせる。
  • 樊振東、ゲームは落としても中盤から盤石

  • 逆転勝利に感極まるオルト

  • ブツ切りサービスをピタッとネット際に出せるカルデラノ

  • パダサック、敗れるもレベルの高さを見せた