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ユース五輪・卓球競技

 日本から南京までは、東京や大阪から南京・禄口国際空港まで直行便も飛んでいるが、本数が少なく曜日も限られている。開幕前日の土曜日は直行便がないので、上海から南京へ、中国版の新幹線である中国高速鉄道で移動した。

 上海側の始発駅である上海虹橋駅は、超がつくほどの巨大ターミナル。見渡す限り、人、人、人……。あまりの人の多さに、中国の人たちまで写真を撮っていたほど。切符を買うのに30分待ったあげく、一番早い号が満席で、さらに2時間近く待つことに……。
 トランクとカメラバッグを引きずりながら乗り込んだ「和諧号」は、日本の新幹線をベースに作っているだけあって、車内の雰囲気や車内アナウンスの音楽、先頭車両のルックスも新幹線そのもの。ただし、ちょっと車体が軽いのか、時速200キロくらいまでは快適な乗り心地なのに、250キロを超えてくると小刻みに揺れ出す。ううむ、ちょっと怖い。3年前の衝突事故から来る不信感も、多少あります。

 来年の世界選手権個人戦の開催地・蘇州、今をときめく中国卓球協会の蔡振華会長の故郷・無錫、黒酢で有名な鎮江(何のこっちゃ)などを経由して、1時間50分ほどで南京駅に到着。
  • 上海虹橋駅の超巨大なロビー。もう何が何だか

  • ホームに降りる前にも、また行列…

  • 無錫駅のホームの風景

  • ちょっと目つきの悪いCRH2C型くん

 王国取材班は無事に南京に到着。中国の中でも指折りの「暑い街」と言われる南京だが、気温は30℃に届くかどうか、というところ。そして夜が更けてから雨が降り出した。明日もあいにくの雨のようだ。

 日本選手団はすでに13日に日本を出発して現地入り。大会は男女シングルスの予選グループからスタートし、日本の村松雄斗、加藤美優の両選手も初日から登場する。ふたりが出場する試合のタイムテーブル、および対戦相手は下記のとおり。

★8月17日の日本選手のタイムテーブル
●村松雄斗
12:00〜 MS予選グループ第1試合 vs. アレグロ(ベルギー)
18:00〜 MS予選グループ第2試合 vs. オルト(ドイツ)
●加藤美優
10:30〜 WS予選グループ第1試合 vs. イムレ(ハンガリー)
16:30〜 WS予選グループ第2試合 vs. ルン・リサ(ベルギー)

 村松は2戦目で戦うオルトが侮れない。ブンデスリーガ2部で腕を磨いてきた選手で、まだそれほどパワーはないものの、ラリー戦に強く、守りに回ってもなかなか粘り強い。カット打ちの実力は未知数だが、村松としても力攻めは避けたいところ。
 加藤は2戦目で中国系の選手と当たるが、まず問題はなさそう。先月は体調を崩した時期もあるが、この大会にきっちり照準を合わせることができていれば、確実に予選グループは1位通過できるはずだ。両選手とも、予選グループの第3戦は18日(月)の午前中に行われ、18日の夜に決勝トーナメントの初戦となるベスト8決定戦まで進む。
 ユース五輪に出場する女子選手で、シングルスの第1シードを獲得したのは香港の杜凱琹(ドゥ・ホイカン)。JA全農世界卓球では女子団体メンバーに抜擢された期待の選手で、両ハンド攻守の安定感は特筆モノ。一発のパワードライブの破壊力は中国に勝るとも劣らない。第2シードが昨年の世界ジュニア2位の劉高陽(中国)だが、実力的にはほぼ互角か。左シェークドライブ型の劉高陽は身体能力が高く、しなるようなスイングから回転量の多いパワードライブを放つ。

 ユース五輪の女子シングルスは、この2人に第3シードの加藤を加えた3名からチャンピオンが誕生する可能性が高い。第4シードのリリー・チャン(アメリカ)はオーソドックスな両ハンドの攻撃型で、頂点を目指すにはやや突破力不足。堂々たる体格を誇るラコバチ(クロアチア)、ヨーロッパユース選手権カデット優勝のディアコヌ(ルーマニア)、投げ上げバックサービスのワン・ユアン(ドイツ)というヨーロッパの選手たちも、アジアの緻密な卓球には及ばないだろう。

 チャイニーズタイペイは右シェーク・バック粒高の邱嗣樺、韓国からは左シェークドライブ型の朴セリがエントリー。日本の加藤にとっては、長身でラリー戦に強い朴セリのほうが要注意か。バックのブロックが非常に堅いインドのS.ムケルジなども、波乱を起こす可能性を秘めた選手だ。

 速報担当は明日、上海から中国高速鉄道で南京に入り、17日からスタートする大会を取材予定。中国でも暑さで知られる南京ですが、速報も負けない熱量で頑張ります。若手主体で有名選手は少ないですが、大会速報に乞うご期待です!
  • 守備力も抜群に高い杜凱琹

  • しなやかな身のこなしから強打を放つ劉高陽

  • 一昨年の世界ジュニアベスト8、リリー・チャン

  • 長身を誇るクロアチアのラコバチ

 第2回ユース五輪・卓球競技に出場するのは男女各32名。その中から注目選手をご紹介しましょう。

 まず男子は、なんといっても世界ランキング3位の樊振東(中国)。今年行われたJA全農世界卓球の団体優勝メンバー。前回大会はエントリーした尹航が故障のために欠場し、金メダルは女子シングルスの顧玉ティンの1個のみに留まった中国。さすがに今大会は本気で金メダルを獲りに来た。8月7日に行われた中国超級リーグ・プレーオフの準決勝で敗れた後、樊振東は次のようにコメントしている。「ユース五輪に対してはすべての試合に対して細かく準備をしないといけない。(団体の)世界チャンピオンであることをプレッシャーに感じるのではなく、自分の能力の証明だと考えたい」(出典『捜狐体育』)。
 超級のプレーオフはプラスチックボールの2色ボールで行われ、ユース五輪はセルロイドの白色ボールで行われるが、大きな影響はなさそう。日本の村松にとって、最大の強敵となるのは間違いないが、中国にとっても村松はもっともマークすべき存在。序盤でリードを奪って、メンタルに揺さぶりをかけたい。

 男子シングルスの第3シードは、ブラジルのカルデラノ。ジャパンオープンのU-21男子決勝で、世界ジュニアチャンプの張禹珍(韓国)に快勝した天才児は、長身でプレー領域が広く、卓越したボールセンスを誇る。ルービックキューブをものの15秒で完成させてしまうという特技も持っている。

 金民爀(キム・ミンヒョク/韓国)と楊恒韋(ヤン・ヘンウェイ/チャイニーズタイペイ)もメダル候補。韓国国内で年代別のタイトルを総ナメにし、将来を期待されている金民爀は、2歳の時に心臓病の手術を受け、病気がちでありながら、卓球を通じて心身を鍛えてきた選手。ジャパンオープンで松平健太を破った楊恒韋は、カット打ちは苦手だが、対攻撃型では相当に強い。

 ヨーロッパに目を向けると、やはり強豪国は若手が育ってきている。フランスジュニアチャンピオンで、今年のヨーロッパユースでもフランスのジュニア団体優勝に貢献したアックズ、長身でバックサービスも使いこなすオルト(ドイツ)、ヨーロッパユース選手権で2位と健闘したラネフル(スウェーデン)、チェコのパワーヒッター・レイツパイズなどが上位を狙う。
 中南米からは、アルゼンチンの天才少年・テンティと、正統派の両ハンドドライブを操るアファナドル(プエルトリコ)も紹介しておきたい。テンティは小柄ながら抜群のボールタッチ。アファナドルは元欧州チャンピオンであるP.カールソン(スウェーデン)の愛弟子だ。
  • 樊振東が受けるプレッシャーは相当なものだ

  • スケールの大きさが魅力のカルデラノ

  • タイペイのハードパンチャー・楊恒韋

  • ドイツのオルトは昨年の世界ジュニアでも活躍

 8月17〜23日まで、中国・南京の五台山体育館で行われる第2回ユース五輪・卓球競技。IOC(国際オリンピック委員会)が主催する、14〜18歳のアスリートを対象にしたユース世代のオリンピックだ。日本からは、男子は村松雄斗(JOCエリートアカデミー/帝京)、女子は加藤美優(JOCエリートアカデミー)の2人が参戦。金メダルを懸けた熱い戦いが始まる。

 出場選手中、唯一のカット主戦型である村松は、日本代表選手団の主将にも選出。8月12日に行われた結団式では、「チームジャパンとして一つになれるように一致団結していきたい」と抱負を述べた。今年6月のジャパンオープンでは3位入賞を果たし、世界ランキングは42位まで上昇。切れ味抜群の両ハンドのカットに加え、相手のストップを一発で打ち抜くバックドライブは世界に類を見ない。カットマンの概念を変えるそのプレーに、中国の観客も驚嘆すること必至だ。

 今年1月の全日本選手権ジュニアで優勝した加藤も、独創的な両ハンドプレーで国内外から注目を集める選手。回転と緩急を自由自在に使い分け、相手が強攻してくれば柔らかいボールタッチでしのぎ、相手が打ちあぐめば、意外性のフォア強打で打ち抜く。苦手な戦型もなく、格下の選手に取りこぼすことも少ないので、きっちり上位に勝ち上がってくれるはず。ゆるやかなタイムテーブルで、体力的に負担がかからないのもプラス材料だ。

 ふたりのベンチに入る田㔟邦史監督は、男子JNT(ジュニアナショナルチーム)監督として迎える最初の大舞台。選手たちとともに世界中を転戦し、普段の柔和な表情とは裏腹に、ベンチで選手たちを見据える眼光は鋭い。大会に出場する村松と加藤を、「ふたりとも卓球に対してとてもまじめ。勝ったら心から喜び、負けたら非常に悔しがる。そういうアスリートに必要な気持ちを持っている選手」と評する田㔟監督。地元でのタイトル独占を狙う中国の壁を突き破ってほしい。
  • カットの村松、バックドライブも強烈

  • 加藤、大舞台でその天性を見せつけたい

  • 田㔟監督、その手腕に期待がかかる