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2014世界ジュニア選手権大会速報

 12月1日の上海はビシッと冷えたが、会場では日本チームが練習に汗を流している。

 日本チームは11月20〜27日までNTCで大会前の合宿を行い、11月28日に現地入りしている。男子チームの田中礼人トレーナーは「選手たちの体の状態は良いですね」と頼もしいコメント。ワールドツアーやジュニアサーキットなど試合が続いたため、合宿では序盤はフットワーク中心のハードな基礎練習をやり込み、後は練習量を調整しながら合宿を終えた。疲労が抜けてきて、良いコンディションで大会に臨めているようだ。また、海外の大会でもフィットネスルームなどで、しっかりトレーニングを積んでいる。 

 女子チームは前田美優、佐藤瞳、伊藤美誠、平野美宇というメンバー。練習に厳しい眼差しを送る呉光憲監督は「選手たちはまだ若いですから。一度壁にぶつかって、それを乗り越えられるか、そして乗り越えてからが勝負。ミーティングでも『楽勝』というのはないと伝えている」と微塵の油断もない。

 どの選手も表情は明るい。さあニッポン、出陣だ!
  • インハイ3冠の坪井は日本男子のキーマン

  • 正確な両ハンドのストローク、平野

  • 日本が試合を行うコートの上で、中国がビデオ撮影の準備

[男子団体]●第2ステージ
A:中国、ハンガリー、デンマーク
B:日本、スウェーデン、チェコ
C:韓国、フランス、ポーランド
D:チャイニーズタイペイ、香港、クロアチア

[女子団体]●第2ステージ
A:中国、ルーマニア、タイ
B:日本、フランス、チャイニーズタイペイ
C:香港、韓国、プエルトリコ
D:ドイツ、ロシア、アメリカ

★大会第2日目・12月1日の日本チームのタイムテーブル
※試合時間はすべて日本時間

10:30〜 日本男子 vs. チェコ
10:30〜 日本女子 vs. チャイニーズタイペイ
16:00〜 日本男子 vs. スウェーデン
16:00〜 日本女子 vs. フランス 

 男女団体の第1ステージが終了し、第2ステージを戦う男女各12チームが出揃った(各グループの一番最後のチームが、第1ステージを1位通過したチーム)。日本チームは明日の第2ステージから登場し、第2ステージで2位以上なら準々決勝進出が決まる。
 まず日本男子の相手はスウェーデンとチェコ。スウェーデンには先月のスウェーデンオープンU-21で坪井と酒井を破ったケルベリがおり、ユース五輪代表のラーネフールも切れ味鋭いバックサービスからパワードライブを打ち込む強打者。決して油断できない相手だ。午前中のチェコ戦で、しっかりストレート勝ちを収め、大会の雰囲気にも慣れておきたい。田㔟監督の選手起用に注目しよう。

 一方、女子は対照的に戦いやすいグループに入ったという印象。フランスとは地力の差があり、チャイニーズタイペイも今大会は例年のレベルを維持できておらず、ユース五輪代表のバック粒高攻守型・邱嗣樺もいない。第2ステージは2試合ともストレート勝ちで終えたい。
 日本にとって少々気になるのは、グループCで香港と韓国が同組になっていること。どちらかが2位になり、1位通過したチームと準々決勝で当たることになる。戦力的には香港有利なので、香港が1位通過、韓国が2位通過になると、準々決勝で1位通過の日本と韓国が対戦……。近年、世界団体選手権でよく見られる展開が、今大会でも再現される可能性も。ただし、ジュニアクラスでは日本のほうが実力は上だ。
 大会初日の11月30日、今日のラストマッチとなったのは、センターコートで行われた女子団体第1ステージのチェコ対プエルトリコ。

 男子顔負けの豪快なパワードライブを放つエース・ステフツォバを擁するチェコに対し、プエルトリコは0ー2とリードを許す苦しい展開。しかし、3番でディアス姉妹の姉・メラニーがカポウノバをゲームオール8点で破ると、4番では先ほどお伝えした「天才少女」アドリアナ・ディアスが、変幻自在のサービスでステフツォバに快勝。ラストではリオスが、鉄壁のバックブロックとフォアスマッシュで勝利をおさめた。これでプエルトリコは、明日行われる第2ステージへの進出が決定。歴史的な1勝となった。
  • ラストで抜群の集中力を見せたリオス

  • 逆転勝利に笑顔!

 プラスチックボールで開催される、初めての世界ジュニアとなった今大会。バタフライの『スリースターボール 40+』。8月に行われたユース五輪はセルロイドボールだったが、その後ほとんどの大会はプラスチックボールに切り替わり、どの選手もプラスチックボールに大きなストレスは抱えていないようだ。
 ボールの回転量の減少、それに伴うバウンド時の変化の減少、中・後陣に下がった時の失速などは多少感じるものの、思ったほど大きくない。ただ、長く切れたツッツキに対するドライブのコントロールは、どの選手もまだ安定感を欠く印象がある。

 プラスチックボールは割れやすいという評価もあるが、大会初日の試合を見ていく限り、ボールが割れて交換する場面は数回しか目にしていない。

 下写真左はチェコのクチェラ、右はポーランドのフォルワルスキ。ヨーロッパ男子の若手では数少ないカットマンだが、ともに守備的なスタイル。以前よりも回転量の落ちたカットを広角に打ち分けられ、ともに競り負けた。守備主体のスタイルだと、相手のドライブの回転量が落ちたことより、カットの回転量が落ちたことのほうが、よりマイナスに働いてしまう。アジア競技大会の時、韓国の朱世爀が「プラスチックボール時代は、守備的なカットマンはノーチャンスだ」と語っていたが、そのとおりだ。
 昨年の世界ジュニアで、すでにその才能の片鱗(へんりん)を見せていたプエルトリコの天才少女、アドリアナ・ディアス。多彩な球さばきと抜群の予測能力、変化にあふれるサービスを操る。プレーに天才ゆえの「遊び」が入るところもあり、まだ攻めの厳しさを欠いているが、ボールセンスはずば抜けている。

 プエルトリコチームのベンチに入るのは、チームの監督でもあり、彼女の父親でもあるブラディミル・ディアスさん。ディアスが苦戦しながらも2勝をあげたニュージーランド戦の後で、娘さんのプレーについて感想を聞いてみた。

「彼女の今日のプレーはあまり良くなかった。疲れていたからね。プエルトリコから飛行機での長旅で、昨日の夜着いたばかり。でも戦術が良かったから、2勝することができた。状態が良くない時、勝利をつかむためには重要なことだ。
 ディアスはプレーの中で打球に様々なバリエーションをつけられるし、サービスも上手だ。才能に恵まれているし、メンタルもとても強い。今年は中国で2カ月練習することができたけど、将来的にはもっとアジアで練習を積みたい。中国で、もちろん日本でもね」
  • 七色のサービスを操るディアス

  • 写真左がお父さんのブラディミルさん

 羽田空港から上海・虹橋空港に飛び、無事ホテルに入った王国速報班(ひとり)。前に卓球王国でアルバイトをしていた上海娘・謝静さんのご友人夫妻に空港から送っていただきました。組織委員会に紹介された会場そばのホテルは「外国の人は泊まらないだろうな、ここには」という外観。食堂も何もなく、「お食事の際は隣のショッピングセンターへどうぞ」とのこと。
 冬の上海は曇り空、風が強く、かなり肌寒い。明日は最低気温が零下くらいまで下がるとか。

 会場となる閔行(中国語ではミンハン)体育館は、照明も明るく、フロアの雰囲気は8月のユース五輪さながら。ここで8日間の熱戦が展開される。
 今回の世界ジュニアの女子種目は「日中対決」の様相を呈している。それに割って入るのが、ユース五輪銀メダルの杜凱琹(香港)、同銅メダルのリリー・チャン(アメリカ)だ。

 中国はユース五輪女王の劉高陽、前回大会3位の王曼昱、9月のアジアジュニア選手権を制した陳幸同の3人が団体戦の主力か。プラスチックボールが導入される初めての世界ジュニアで、パワフルな中国女子のスタイルは変わらぬ強さを誇るだろう。女子シングルスでは第1回大会から、中国勢が11大会連続で優勝しており、地元開催の今大会でもその記録を伸ばすのか。

 香港の杜凱琹は今大会の第1シード。鉄壁のバックハンドと、一発のフォアのパワードライブで、前回の女子団体準決勝でも日本から2点を奪った。この杜凱琹がいる限り、日本も香港戦はラストまでもつれることを覚悟しなければならない。
 他のアジア勢では、韓国の李ジオンと金智淏、そして注目すべきはタイのタモルワン。オーストリアのWSA(ヴェルナー・シュラガー・アカデミー)を拠点に練習を積み、クレバーでバランスの良いシェークの両ハンド攻撃で、急激に頭角を現しつつある。

 ヨーロッパでは、ドイツのミッテルハムとクロアチアのラコバチ、そしてルーマニアのディアコヌが上位を狙う。前回大会を病気で欠場したミッテルハムは、俊敏な動きでキレのある両ハンドドライブを放つ。長身のラコバチは中陣での打ちあいに強く、ディアコヌは抜群の運動能力が光っている。

 その他の海外勢では、アメリカのリリー・チャンがユース五輪に続いて表彰台を狙う。プエルトリコの天才少女・ディアス、猛烈なファイトを見せるイスラエルのトロスマンなども注目株だ。
  • しなやかで強い左腕の劉高陽

  • バック対バックに引きずり込む杜凱琹

  • タモルワンはタイから現れた期待の新星

  • クールな女闘士、ディアコヌ(写真はすべて14年ユース五輪)

 中国で初めての開催となる世界ジュニア選手権。中国は開催協会枠で男女シングルスにそれぞれ6名をエントリーし、上位独占を狙っている。
 男子チームのツインエースは、右シェークドライブの梁靖崑(13年アジアジュニア優勝)、左シェークドライブの于子洋(14年ジャパンオープン優勝)。梁靖崑は今年5月に右ひじを手術したが、超級リーグでは王皓、閻安、方博らを破り、馬龍とゲームオールジュースの激戦を演じるなど実力は超ジュニア級。逆三角形の体躯から放つパワードライブが武器で、日本勢の手ごわいライバルだ。

 前回大会では張禹珍が男子シングルスを制した韓国勢は、今年の韓国オープンで丹羽孝希を破った左シェークドライブ型・趙勝敏、俊敏でキレのある動きを見せる右シェークドライブ型の金民赫が主軸。しかし、今大会に限っていえば、韓国よりも若手が成長著しい香港のほうが面白い存在だろう。中国ジュニアチームで練習を積んだ左シェークドライブ型・何鈞傑は、猛烈な回転量を誇るフォアドライブが武器。ユース五輪で樊振東をゲームオールまで追い詰めた孔嘉徳もあなどれない。

 ヨーロッパ勢で上位進出の可能性を感じるのは、パワーを買うならポーランドのザトフカ、スウェーデンのラネフル、センスを買うならフランスのアキュズとカシン、カザフスタンのゲラシメンコ、メンタルの強さを買うならドイツのオルトというところか。プレースタイルはいずれも右シェークドライブ型。アジアの壁を突き破るのは少々厳しいか。

 そういう意味で、今大会の注目選手のひとりに数えられるのが、ブラジルのカルデラノだ。ドイツ・ブンデスリーガ1部のオクセンハウゼンでプレーし、欧州の帝王・ボル(ドイツ)にストレート勝ちして欧州に衝撃を与えた。競技歴は短く、まだ荒削りなのだが、天性のボディバランスとボールセンスの持ち主。対アジアの一番手となるのは、この男だ。
  • 前回ベスト16に終わった雪辱なるか、梁靖崑(写真は14年荻村杯)

  • リーチの長い左腕、何鈞傑(写真は14年荻村杯)

  • オルトはラリー戦での集中力が抜群(写真は14年ユース五輪)

  • 未完の大器、カルデラノに注目だ(写真は14年ユース五輪)

 11月30日から12月7日まで、中国・上海の閔行体育館で開催される『Wisdom 2014世界ジュニア選手権』。世界ジュニアは3年連続の取材となる編集部タローが、今大会の見どころをご紹介しましょう。まず、今大会に出場する日本選手団は下記のとおり。

★日本男子チーム
田㔟邦史監督
村松雄斗(JOCエリートアカデミー/帝京高・WR29)
酒井明日翔(JOCエリートアカデミー/帝京高・WR130)
坪井勇磨(青森山田高・WR186)
吉村和弘(野田学園高・WR255)

☆日本女子チーム
呉光憲監督
伊藤美誠(スターツSC・WR43)
平野美宇(JOCエリートアカデミー・WR44)
佐藤瞳(札幌大谷高・WR53)
前田美優(希望が丘高・WR65)

 男子チームは全員が高校3年生で、最後の世界ジュニア。4大会連続の出場となる村松・酒井に、インターハイ3冠王の坪井、昨年の全日本ジュニア王者・吉村の布陣で「中国越え」を狙う。
 団体戦では村松を軸に、団体決勝で2大会続けて中国選手を破っている酒井、安定感抜群の坪井と爆発力のある吉村でどうオーダーを組むか、田㔟監督の選手起用にも注目したい。シングルスでは2大会連続ベスト8の村松が有力な優勝候補。中国の包囲網を破り、男子では史上初となるカット主戦型のチャンピオン誕生なるか。

 闘将・呉光憲監督率いる女子チームは、選考会1・2位の伊藤と前田に加え、強化本部推薦で平野とカットの佐藤を選出。世界卓球東京大会代表の森さくら(昇陽高)、ユース五輪代表の加藤美優(JOCエリートアカデミー)をはじめ、早田ひな(石田卓球クラブ)や浜本由惟(JOCエリートアカデミー/大原学園)が代表入りを逃すという、熾烈を極めた選考レースに終止符が打たれた。
 前田は今回が2年ぶり4回目の出場。伊藤と平野も3大会連続出場で、団体戦では何度も修羅場を経験してきた。前田は9月のアジアジュニア選手権・団体でユース五輪女王の劉高陽(中国)を破っており、今大会も中国戦では頼りになる存在。そして、秘密兵器であるカットの佐藤を、呉監督はどこで起用するのか?

 下記は過去の世界ジュニアでの、日本選手の優勝者一覧。今大会で、日本から新たなチャンピオンの誕生を期待したい。

・2003 第1回サンティアゴ大会
[男子複]岸川聖也・村守実
・2004 第2回神戸大会
[男子複]岸川聖也・水谷隼
・2005 第3回リンツ大会
[男子団体]日本
・2006 第4回カイロ大会
[男子単]松平健太
・2010 第8回ブラティスラバ大会
[女子団体]日本 [男子複]丹羽孝希/町飛鳥
・2011 第9回マナーマ大会
[男子単]丹羽孝希
  • 村松雄斗、4年間の集大成を見せる!(写真は14年荻村杯)

  • 中国を上回るほどの速攻、酒井明日翔(写真は13年世界ジュニア)

  • 試合巧者ぶりが光る平野美宇(写真は14年アジア競技)

  • ファイター・伊藤美誠が日本チームを引っ張る!(写真は14年荻村杯)