●用具のこだわり by ゆう

【用具のこだわり】根性カット・北岡エリ子

2016/01/17

ゆっくりと飛ぶ誘い球のような変化カット、そして機を見てスマッシュを叩き込む北岡エリ子選手(日立化成)。今大会は初のランク入りと大活躍した。

ラケットは松下浩二(FL)
フォアラバーはウォーリー(厚)
バックラバーは閃霊(薄)

「ラケットは松下浩二さんが好きなので、使っています。そのまえは松下プロスペシャルを使っていましたがVICTASからこれが発売されたらすぐに変えました。カットも攻撃も、バランスが良いですね。
 フォアのラバーはウォーリーです。テナジーを3〜4カ月試してみました。テナジーは良いラバーですが、カットの球足が早くて相手の返球も早くなってしまう。戻れないんです。たまに浮いてしまうし、私には合わなかったです。しかも打っても取られるんです。私の飛ばないラバーで打つから相手が取りにくいんでしょうね。早いキレイなボールでは取られちゃいます。
 カットは球足が遅い方がいいんです。ゆっくりとんでくれるほうがいい。私らしい。いろいろ試したけど、自分の良さを引き出すのはウォーリーでした。
 どんどん使うラバーの弾みを落としていきました。テナジー→ラクザX→マークVHPS。そして最後にウォーリー。厚みは中の感覚がいいけど、攻撃力を考えて厚。
 バックのラバーの閃霊はかなり昔から使っています。硬くていいんです。ミートでパンと打てる感覚も好き。なによりスマッシュに対してのカットが良いんです。上から弾くようにカットすると直線的で突き刺さるナックルになる。これがすごく効きます」

カットマンは守りが命。
ウォーリーというクラシックラバーを使いこなし、見事にランク入りした北岡は最新ラバーを使う傾向に一石を投じるのではないか。
  • フォア面

  • バック面

【用具のこだわり】魅せるパワードライブ・森田侑樹

2016/01/16

初の準々決勝に進出し、笠原弘光選手とのドライブ戦は見応え十分だった。惜しくも敗れたが、吉田雅己(愛知工業大)や村松雄斗(東京アート)らの日本代表クラスを下した試合は見事だった。

ラケットはSK7(FL)
フォアラバーとバックラバーはテナジー05(特厚)

「ぼくは木材ラケットがいいんです。グッとつかんで、食い込む感じがほしい。木材ならボールを持てるし、その中でも柔らかくて弾むのが良い。カーボンラケットはスピードは出るけど、レシーブができない。木材はレシーブの時に飛ばないからしっかりストップができるんです。それでいて、ラリーではボールを飛ばせる。これが木材の良いところです。
 木材もいろいろ使いました。スティガ系、キョウヒョウ系など。社会人になってからはSK7です。今使っているのは一番最初に使ったSK7。全部で7本くらい持っていますが、一番最初のラケットが一番良くて、なかなか当たりが見つからないです。上板が少しはがれてしまい、自分で補強したので、ちょっと汚いですが・・・。
 あと木材ラケットは自分の力次第で出せるボールが多種多様。フィジカルによって威力を操作できるから良いです。だからラリーではボールが走り、レシーブは止まってくれる。グリップをフレアにしているのは先端に重心がいくからです。フルスイングの威力が上がります。

 ラバーは両面テナジー05です。ベスト重量は69g! 切る前の四角の状態で69gのものを使います。05は特に威力が出ますね。フォアは威力重視だから05を使いたい。
 バックも05です。前陣でキュッと伸ばせるから好きです。とっさのブロックもぼくはラバーが硬いほうがやりやすいんですよ。下回転に対してバックでかけたときにすごくかかるし、変化がある。中陣からも打てる。自分のパワーに応えてくれるんです。64も使ったことがありますが、バックで仕掛けるのは難しい。05でかけていくほうがぼくにとってはやりやすいです」

コントロールと自分のパワーを活かせる木材ラケット。
男子では使い手は少なくなってきているが、操作性の良さを知る人はなかなか変えられないだろう。
今回の森田の力強いプレーは木材ラケットの魅力を十分に伝えただろう。
  • フルスイングのフォアは重い

  • 昨年結婚し、私生活も充実している

  • フォア面

  • バック面。はがれた上板を補強したせいで、少々波ができている

  • スペアラケット「1本目にはかなわないのであくまでスペア」

  • 足を使ったプレーで沸かせた

【用具のこだわり】ジュニア2位の緒方遼太郎

2016/01/16

全日本ジュニアで準優勝。準決勝では注目の張本智和をストレートで破った緒方遼太郎(JOCエリートアカデミー/帝京)。
彼は意外に用具の経験値が高い。

ラケットはバタフライ特注(FL)
フォアラバーはテナジー05(特厚)
バックラバーはテナジー64(特厚)

「ラケットはインナーフォースZLCのブレード、ビスカリアのグリップにしています。プラボールになってラケットを変えようと思って、インナーフォースZLCにしたんですが、グリップが細くてしっくりこなかった。ぼくは太いグリップが好きなので、グリップだけ変えました。
 インナーフォースを使うまではビスカリアを使っていたので、それが慣れていたのかもしれません。でもプラになって本当にボールをつかめなくなって、ラケットを探しました。
 ラケットは中学生の時はめちゃくちゃ変えてましたね。いろいろ使いました。基本的には球持ち重視のラケットが好きです。前にスティガのインフィニティVPSVを使っていました。でもプラボールになるとスピードが物足りなかった。逆にビスカリアは球を持たずに弾みすぎてしまう。その中間がインナーフォースZLCでした。

 ラバーはバックを05にしたり、05FXにしたり、80にしたり……変えましたねー。64にした理由はひとつです。それはチキータのやりやすさです。05の場合、質の高いチキータは出せますが、ラバーが引っかかりすぎるので相手の回転の影響をもろに受けてしまう。64はいなすようなチキータもいける。今大会はやりやすさを重視して64で挑みました。

 用具はたくさん試すほうだと思います。だいたいは大会が終わって一区切りしたら変えます。でも中学の時は感覚がおかしくなった(笑)。ラケットによって、やりやすいやりにくい技術があることは勉強になります」

技術力が上がった時に、あの時は使えなかったけど、今なら使えそうだと使った用具の感覚を頭に呼び戻すこともある。用具は使っただけ経験になる。多くの用具を使う経験はのちのち必ず役に立つはずだ。
  • 武器のチキータのやりやすさを重視

  • フォア面

  • バック面

【用具のこだわり】シニアでの躍動を誓う高校3年のふたり

2016/01/16

高校3年生には全日本ジュニアの出場資格はない。今大会は一般のみの出場だった青山昇太(野田学園高)と高橋徹(青森山田高)。
今後はシニアを相手にどこまで戦えるか。ふたりに用具を聞いた。

青山選手
ラケットは水谷隼ZLC(ST)
フォア面ラバーはテナジー05(特厚)
バック面ラバーはテナジー64(特厚)

「もともとインナーフォースZLCを使っていて、プラボールになってスピードで打ち抜けなくなった。ぼくは回転よりも打球点の早さ、そしてスピードを重視するタイプだから水谷隼ZLCに変えました。今はセルボールの時のようなスピードが出せています。
 ラバーはバックは05を試しましたが、やっぱり64が良い。両面05にしてしまうと、重量が重くなってしまう。またぼくの場合、バックは弾いたりするので、64のほうがいいですね」

高橋選手
ラケットはインナーフォースZLC(FL)
フォア面バック面ラバーはどちらもテナジー05(特厚)

「いろいろラケットを試してインナーフォースになりました。回転はかかるし、スピードも出る。前はティモボルALCを使っていたけど、回転がほしいからインナー系。
 ぼくは両面05です。バックは回転を強く打っていきたいし、05は一番回転がかかる。そしてスピードを出したいときは出るので05が良い。ぼくは中学2年の時から両面05を使っているので、慣れの部分も大きいです」

弾く64とかける05。同じ両ハンドドライブ型でも自分の打法で変わっていく。
そしてボールの変更でスピードとスピンのどちらを補助するのか、ふたりはラケットで調整している。
  • 青山選手(左)と高橋選手を会場でつかまえました!

【用具のこだわり】ペンドラ最高位・宋恵佳

2016/01/15

今大会ランク入りし、石川佳純とも好勝負を演じた宋恵佳選手(中国電力)。男女通じてランク入り唯一のペンホルダーだ。

ラケットはインナーフォースZLC(中国式)
表面ラバーはラクザ7(特厚)
裏面ラバーはテナジー05(特厚)

「表面のラバーは何度か変えてもこれに戻ります。ラクザXも使いましたが、私には合わなかった。一時期、テナジー05を使っていましたが、大岡先生が『テナジーはみんなが使っている。だからこそみんなと違う弾道が出るラバーにしたほうが良い』と言われたのでラクザ7にしています。正直、私にとってフォアにテナジー05は弾みすぎました。だからこれでいいんです。

 裏面のラバーは05がいいです。64にもしましたが、05のほうが引っかかりがいいし、自分から振っていくので良いボールがでる。裏面は回転重視です。

 ラケットは旧バージョンのインナーフォース。新しいのはまだ使ったことがないです。面の大きさが変わっていると聞いたので、こっちでいいかなと。前はギャラクシャを使っていましたが、ギャラクシャは重いんです。全体で185〜190gくらいになってしまって、手首が痛くなります。今は175gです。負担も少ないし、インナーフォースのほうが中陣に下がった時に飛んでくれます」

他の人とは違う弾道を出す。
神巧也選手が全日学を制した時、同じくラクザ7を使い、対戦相手が「ボールが全然合わない」とコメントしたことを思い出した。
ラクザシリーズも最新版のXにだけにとらわれず、7もまだまだトップ選手の支持があるのだ。
  • 威力のあるフォア。台上のフリックもうまい

  • バックは打球点が早く、バック対バックにも強い

  • 表面

  • 裏面

  • 「結構てきとーですよ」というグリップの削り

  • 持ち方は人差し指がグッと入る。フォアとバックでグリップは変えない

【用具のこだわり】愛媛国体に向けて力を見せた柴田直人

2016/01/15

自己最高位のランク決定戦まで勝ち上がり、来年の愛媛国体に向けて良いスタートが切れたという柴田直人選手((株)フジ)
普段は朝8〜17時まで仕事をし、その後に練習。少ない練習時間の中でキッチリとやりこんで、4回戦では昨年2位の神巧也選手に勝利した。

ラケットは水谷隼(FL)
フォアラバーはテナジー05(特厚)
バックラバーはテナジー80(特厚)

「ラケットはずっと使っています。だから旧モデルです。ラバーは高校を卒業するまでテナジーを使ったことがなくて、高校2年まではオメガ2、3年はヘキサーを使ってました。大学に入った時に鬼頭監督の薦めでテナジーに変えました。高校3年の最後くらいに今枝監督にも『ラバーを考えたほうがいいんじゃないか』と言われていたので、大学入学と同時に変えたのは良いきっかけだと思います。

 一番シックリ来ますね。この組み合わせが長いので用具に合ったプレースタイルにもなってきています。バックは昔は64を使っていましたが、80が出た瞬間に変えました。64は軟らかいし、05は難しい。一度05にもしましたが、バックに自信がないので、05よりも80が良い。05は自分からかけないと良いボールはいかない。でも80はブロックしたり、伸ばしたり、攻守に強いんです。フォアの05は変えられないです。64や80だとネットミスが多くなってしまいます。フォアで打っていくスタイルなのでフォアの質は譲れない。会社が購入してくれているので、負担をかけてしまってます(汗)」

力の05、攻守の80、
自分のフォアバックの打法に適する用具選びの基本を忘れてはならない。
  • 笑顔がはじける好青年だ

  • フォアドライブが武器

  • フォア面

  • バック面

  • 長く使っているのでグリップの「ZL」の文字が消えている

  • スペアはインナーALC。「もっと弾むと思ったけど弾まなかった」とのこと

【用具のこだわり】さらなる飛躍を使う坪井勇磨

2016/01/15

代名詞のチキータ、そして前陣でのドライブ速攻で相手を圧倒する坪井勇磨(筑波大)。
一昨年のインターハイでは3冠王に輝いたホープは今大会でもランク入りして存在感を見せている。

ラケットはインナーフォースレイヤーZLC(FL)
フォア&バックラバーはテナジー05(特厚)

「本当は旧モデルのほうが良いんですが、新しいのが来たので使ってみました。
前のモデルのほうが面が大きいので好きなんです。重量は重い方が良い。
ラケットはこの1〜2年はかなり悩みました。色々使いました。もともと張継科ZLCを使って、水谷隼ZLCにもしたし、ようやく見つかったのがこのラケットです。
プラスチックボールになって全然打てなくなった。その原因は回転だと気づいた。
やはり回転がかからないとぼくは打てない。プラボールになってそれが顕著になりました。

以前にもインナーフォースは使ったことがあったんですが、それはセルボールの時だったので、飛ばないというイメージしかなかった。
でもプラになってからはすごく良い。ようやくちゃんと打てるようになりました」

プラボールで悩む人は多い。その多くは回転量の悩みだ。
セルではだめだった用具がプラだと全く違う感覚になることもある。プラに悩んでいる人は、以前ダメだった用具を発掘するのもいいかもしれない。
  • フォア面

  • バック面

【用具のこだわり】ペンホルダー・松村夏海

2016/01/14

女子のペンドラは数少なくなっている。
それでも全国クラスには必ずおり、何かやってくれるという期待感を持たせてくれるのもペンドラだ。全日学のダブルスを制し、全国チャンピオンにも輝いている松村夏海選手(アスモ)。近年は日本リーグでも活躍、全日本でも4回戦のスーパーシードまで勝ち上がった。

ラケットはインテンシティNCT(中国式)
表面ラバーは翔龍(特厚)
裏面ラバーはテナジー64(特厚)

「前までクリッパーウッドにフォアはテナジー05を貼っていました。強いボールを打ちたい時にあまりボールが走らなくて、特にプラボールになってからダメでした。その時に翔龍を勧めてもらったらすごく良かったんです。ボールがつなぐときは弧線で、決める時は直線になってくれる。相手も嫌がっていました。これを使おうと思い、今度は翔龍に合うラケットを探したんです。

 スティガのラケットをたくさん試して、一番インテンシティNCTが翔龍に良かった。自分でボールをつかむ感覚があり、弾むし、コントロールもしやすい。本当は用具を変えるのは好きじゃないんですが、その時はあまりうまくいってなかったから気分転換で変えました。そこから良いプレーができています。翔龍は回転がすごいですね。テナジー05よりもかかる気がします。

 裏面のラバーは05を使っていたけど、64にしました。05は自分から振っていかないと飛ばないし落ちてしまう。あわせるだけだと全然ボールが飛ばない。私の裏面はフォアに比べて力を入れないで打つので、ボールが食い込んで自動的に飛んでくれるほうが良い。相手の強いボールに対しても合わせて打てるし、緩いボールに対しても伸ばしていけるところが良いです。
 ラケットは全体で181g。結構重いですね。手首が痛いです」

翔龍を勧めてもらった時、それは本人が言うようにうまくいっていない時だった。
誰かが心配になり、手をさしのべた。アドバイスは技術だけではなく、用具にもあるのが卓球だ。
用具を変えることで松村のプレーに新しい風を入れることが目的だったのかもしれない。その風は意外にも彼女と波長が合ったようだ。
  • バックはオール裏面で戦うスタイル

  • フォアドライブは鋭い!

  • 表面

  • 裏面

【用具のこだわり】実力者・張一博のこだわり

2016/01/14

芸術的なブロックと前陣カウンターで数々のタイトルを獲得した張一博選手。
彼は少々用具にはうるさい男です。試合になるとたいてい用具を変えています。

ラケットはキョウヒョウ皓3(FL)
フォアのラバーはテナジー05(特厚)
バックのラバーはテナジー05FX(特厚)

「以前使っていたキョウヒョウ皓3に戻しました。威力があるのが一番気に入っています。劉詩ウェンとかインナーフォースZLCも使っていたけど、なんか違うんですよね。練習では素晴らしく良くて、引き合いも全然ミスしないんです。でも試合になるとボールの伸びが足りない。ボールが台についてから伸びる。
あと変なボールも出ますね。クセ球というか当て方次第で色々出せるのも良い。もう年齢が上がってきて力だけで勝つことができなくなりました。前のラケットだと一生懸命振ってキレイなボールを打っていた。クセ球を混ぜることができれば良いところで点数も取れる」

年齢ともにプレーのモデルチェンジが必要になってくる。
「一生懸命振ってキレイなボールを打つ」
小さい頃はこれが理想だった選手も多いだろう。しかし、張一博はその無駄さに気づいた
  • 今日もダンディ・張一博

  • 正確無比な両ハンドは芸術

  • フォア面

  • バック面

【用具のこだわり】今大会、大活躍のカットマン・後藤奈津美

2016/01/14

第1ゲーム3-1から促進ルールに持ち込み、橋本帆乃香を下したカットマン・後藤奈津美。
「攻撃よりも守るほうが得意だから相手に打たせたかった」というが、橋本戦も最後まで粘り切り、フィッシュで打ちミスを誘った。彼女は今や珍しい裏裏のカットマンだ。

ラケットは剛力(FL)
フォアのラバーはファスタークG-1(厚)
バックのラバーはキョウヒョウプロ2(中厚)

「私の用具は勧められたものが多いです。もともとはKVUを使っていましたが、勧めてもらって剛力にしました。剛力にしたら飛ばなくなりましたが、そのぶん思い切って振っていけます。
 ラバーもそうです。テナジー05でしたが、アドバイスをもらってファスタークに変えました。切れ味も攻撃力も変わらずにプレーできます。バックのキョウヒョウは抑えやすいです。粘着なので回転もかかります」

ラバーは厚と中厚だが、硬いラバーのせいか総重量は200グラム。
用具選びは周りの人のアドバイスが全てという後藤。迷わず使い、今日は4回戦でも勝利した。
信じれば用具は応えてくれる。
  • 裏裏の変化カット

  • 3回戦で橋本、4回戦で森薗美月に勝利

  • フォア面

  • バック面