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世界卓球クアラルンプール大会速報

 今日の16時頃(現地時間)から、会場の外では激しい雨が降り出した。場内には次々に雷鳴が轟く。毎日のようにある熱帯のスコールなのだが、今日のそれは特に激しく、ついに会場の天井からポタポタと雨漏りが……。フロアのあちこちに染みができて、あわててスタッフがモップで拭いたりしている。
 
 1台きりのメインコートの中にも雨漏りがあるようで、16時半スタート予定の女子団体準決勝、中国対チャイニーズタイペイは17時に近づいてもまだ始まらない。今年の世界卓球、いろんなことがあります……。
  • 会場の外は土砂降り

  • 滝のように水が噴き出し、道路も水浸しに

  • こんな染みがフロアのあちこちに

  • 今日はよく降るねえ……

●男子団体準決勝
 〈中国 3ー0 韓国〉
○許シン ー8、2、7、5 李尚洙
○馬龍 7、5、8 鄭栄植
○張継科 ー7、4、9、10 張禹珍

 男子団体準決勝の第1試合、中国対韓国は、中国がストレート勝ち。
 トップ許シン対李尚洙戦の第1ゲーム、李尚洙が10ー8で倒れ込みながらバックストレートへパワードライブを決め、11ー8で先取。今大会の中国は攻守ともややミスが多く、「これは韓国にもチャンスがあるか?」と思わせたが、第2ゲーム以降はノーチャンス。許シンのループドライブを李尚洙はカウンターで狙い打てず、あまいブロックは連打で確実に決められる。フォアサイドは絶対に抜けない。

 このループドライブこそ、中国選手の強さを支える重要なテクニック。日本選手は回転をすべて自分でコントロールしようとするが、中国選手はループドライブでのナチュラルな変化で、相手のミスを誘うことを重視する。「非合理性の合理性」と言うべきか。

 2番の鄭栄植もブロックからのカウンタードライブなど、随所に見せ場は作ったが、今の韓国選手には中国を脅かす爆発力、強力なフォアハンドがない。競ることはできても、勝利には遠い。
 
 3番張継科対張禹珍は、2015年アジア選手権で張禹珍が2連勝。シングルスではボールが服に当たったかどうかでトラブルになり、遺恨を残した。第1ゲーム、張禹珍が0ー3から一気の9点連取でゲームを先取し、張継科キラーぶりを見せたが、張継科は張禹珍のチキータを次々とバックドライブで狙い打つ。張禹珍もロングサービスからのバックハンドなどで対抗するが、やや硬さも見られた。第4ゲーム11ー10で、張継科のバックドライブがネットをかすめて入り、中国の勝利が決まった。
  • 許シン、ループドライブから強烈な連打

  • 馬龍はまだまだ余力を残している?

  • 準決勝で抜擢された張禹珍、惜しい試合だった

  • 張継科のコンディションは万全ではないか…

 何かとトラブル続きのクアラルンプール大会。昨日はテレビ東京の実況席のところが雨漏りで大変だったらしい。電光ポイントボードの不備などあれやこれやといろいろハプニングがある。しかし、1週間もいると慣れてしまうから不思議だ。
 2日前には試合前に「卓球台が水平になっていない」と、水平を維持するために試合開始が遅れるハプニングもあった。しかし、関係者に話を聞くと、このフロアマットの下は、コンクリートの床で、その上に最初板を引いていたのだが、あまりにひどくてカーペットにしたらしい。いずれにしても床がボコボコの状態なので、卓球台を水平にセッティングするのに相当苦労しているとのこと。下がコンクリートなので選手の体の負担も大きいに違いない。
 選手から「エアコンで風が舞う」というクレームが多いために、昨日からエアコンを少し弱めた。そのために会場は湿度が高まっている。昨日、日本の吉村が「湿気で指がラバーに引っかからず、すべって下回転が出せなかった」というのはそのせいかもしれない。

 一方、卓球台に目を移してみよう。卓球台はオフィシャルスポンサーのタマス製「トラスピード」。脚部は鉄骨にグラスファイバーの板を張ったもので、中のLEDライトを入れている。色はブラックとマゼンタ(ピンクレッド)を使い、中から照明で光らせている。天板の四隅にもワンポイントでマゼンタを置き、アクセントにしているのだが、そこにもライトを仕込み、光らせている。
 遠くから見てもスタイリッシュである。卓球台のデザインやコート周りのコーディネイトをしたタマスの山崎剛志さんはこう語る。「構想から完成まで1年半かかりました。デザインのコンセプトはバタフライのロゴとカンパニーカラーの視認性を高めること。そして一番気を遣ったのは、テレビに映った時の訴求効果でした。テレビカメラが上から映す時でも脚部のデザインが見えるように設計しました」
 正直、今までの国内で見てきた卓球台よりも洗練された印象がある。すでにテレビでの評判も良く、卓球台の引き合いが来ているとのことだ。
  • バタフライ製の卓球台。ブラックとマゼンタのキーカラーが光る

●男子団体準々決勝

 〈中国 3ー0 スウェーデン〉
○馬龍 6、9、7 M.カールソン
○樊振東 10、11、5 K.カールソン
○許シン 6、9、7 Jon.パーソン

 日本対北朝鮮の激闘、その隣のコートで行われていたのが男子団体準々決勝の中国対スウェーデン。2000年大会の男子団体決勝、スウェーデンのワルドナーとパーソン、中国の孔令輝と劉国梁という4人の新旧世界チャンピオンが顔を揃えた一戦が懐かしい。ラストでパーソンが劉国梁を破り、スウェーデンが7年ぶりの優勝を果たした。中国男子が世界団体で敗れたのは、現在のところこれが最後だ。

 今回の対戦、実力差は歴然としていた。スウェーデン男子はベスト8に残っただけでも大健闘。1ゲームも奪うことなく敗れた。2番で左シェークドライブ型のクリスチャン・カールソンが樊振東に迫ったが、試合後に樊振東が「K.カールソンとは初めての対戦で、試合前にはかなりナーバスになっていたし、1・2ゲーム目には受け身になってしまった」と語ったように、どちらかというと樊のプレーが良くなかった。

 それでも、スウェーデンは団体になると不思議と強い。チームスピリッツを持っている。観客席からはアペルグレンやパーソン、女子監督のトーマス・フォン・シェーレら、91年千葉大会を知るファンには懐かしい顔ぶれが並ぶ。大先輩たちも、選手が一本取るたびに拍手し、声援を送る。

 「チームは素晴らしいパフォーマンスを見せたし、最後までよく戦ってくれた。2018年の世界団体選手権(スウェーデン・ハルムスタッドで開催)、そして来るべきリオ五輪に向けても意義あることだ」(スウェーデン・ショーベリ監督)。
  • 中国戦トップで馬龍に挑んだM.カールソン

  • 左腕のK.カールソン

  • 3番のヨン・パーソン対許シン戦

 これはあくまでも現地からのリポートだ。
 現地にいると日本での反応はわからない。日本の試合は熱い。会場で目の前でみていたらそれを肌で感じる。ところが、日本での熱気は全くわからない。
 現地でのテレビ東京の関係者から情報がわずかに漏れ伝わってくる。「どうも日本が盛り上がってるらしい」。また現地でのメディア関係者、スタッフ、卓球関係者が日本の家族とSNSでつながり、その盛り上がりがわかることがある。

 ということで、気になって試合後にテレビ東京のディレクターにLINEをしたところ、「祝!○%」という局内に貼られた紙を写真撮って送ってくれた。なんと二桁の視聴率を超えたとのこと。他局の人気番組を抜いたらしい。快挙だ。
 野球シーズンでなかったのも幸いしたのか。なでしこジャパンが敗れたニュースを、卓球が払拭したためか。
 今ではSNSやBSジャパンも加わり、日本全国の人が卓球のニュースをいち早く知ることもできる。世界卓球に強い追い風が吹いていて、好成績がその風をさらに強くしているのは確かだろう。
 またテレビ東京のホームページのアクセスも過去最高の数字をたたき出していると言う。テレビ東京でカバーできていない地域の人たちはBSジャパンで観戦したり、テレビ東京のホームページで映像を見ることもできる。
 
 今夜は日本女子の試合はないが、日本男子の準決勝が放映予定となっている。今まで知名度で落ちる日本男子の試合放送は正直おざなりにされていた。しかし、卓球愛好者は男子の試合のおもしろさ、醍醐味を知っている。しかし、一般の視聴者が、知名度の高い愛ちゃん、佳純ちゃん、美誠ちゃんに興味がいくのは致し方ない。
 今晩、男子が放映され、10%近い視聴率を取ることになれば、一気に男子卓球への興味が高まるだろう。卓球界を取り巻くイメージが劇的に変わる可能性を感じる。卓球に足を運び続けるメディア関係者も「正直、男子の卓球がおもしろい」と口にする。
 今晩、卓球という「卓上の格闘技」を、日本の勝利とともに日本全国に届ける好機が訪れる。(今野)
  • 会場で選手にインタビューする、テレビ東京の秋元玲奈アナウンサー

 日本を決勝進出へと導き、4番で勝利した後、なかなか涙が止まらなかった伊藤美誠。日本選手が笑顔で応援団の声援に応える中、ひとりタオルに顔を埋めた。
 日本対北朝鮮のコートのすぐ上には北朝鮮の大応援団が陣取り、ネットインや伊藤のサービスミスにもお構いなしで大歓声を浴びせてくる。その雰囲気の中で、よく最後まで耐え抜いた。福原は試合後、「美誠の試合を観ながら、ずうっと鳥肌が立ってました」と語った。

 「最後、やっと終わったという思いと、勝ってホッとした気持ちもありました。こんなに苦しい試合はなかった」と語った伊藤。
 「1試合目(キム・ソンイ戦)はあまりの自分の調子の悪さにビックリしたので、2試合目は思い切っていくしかない、思い切ってミスするのはしょうがないと思いました。リ・ミョンスンはフォアのカットがいやらしいカットだけど、2ゲーム目からはそれを狙うようにしました。ミスしてもスマッシュで決めるところはしっかり決めたかった。18-20のゲームはもちろん取りたかったけど、勝つこともあれば負けることもあるから割り切ってました。」(伊藤)

 日本女子の村上恭和監督は「1番で美誠が負けて、よく4番で勝ちましたね。それに美誠は3ゲーム目を18-20で落としたけど、そのあと勝った選手は見たことがない」と伊藤を賞賛した。耐えて耐えて、耐えてつかんだ決勝進出の切符。伊藤美誠は絶対にあきらめなかった。15歳の少女にこれだけの試合ができるのだ。「自分ももっと頑張ろう」「もっとやれるはずだ」。そういう勇気を観る者に与える一戦だった。

 石川、福原、伊藤が1勝ずつ挙げて決勝進出。日本女子は本当に強くなった。苦戦の連続を乗り越え、ここにきてガッチリ歯車がかみ合ってきた。明日は日本男子の準決勝、イングランド戦のみで、日本女子は試合がない。臨むは3月6日の女子団体決勝。十分に休養を取って大会最終日に臨みたい。
●男子団体準々決勝
 〈イングランド 3ー2 フランス〉
 ドリンコール ー9、ー8、ー8 ゴーズィ○
○ピチフォード 8、6、9 ルベッソン
 ウォーカー ー8、ー5、7、ー7 フロール○
○ピチフォード 10、ー19、9、9 ゴーズィ
○ドリンコール 13、ー8、ー9、9、11 ルベッソン

 日本男子の相手はなんとイングランド。83年大会以来、33年ぶりのベスト4!
 ラストのドリンコール対ルベッソン戦は、最終ゲーム10ー6のドリンコールのマッチポイントからルベッソンが10ー11と逆転したが、再びドリンコールが逆転し、13ー11で試合を決めた!
  • フランスを破り、コートになだれ込んだイングランド男子チーム

  • 失意のフランス男子…

  • ダークホースが驚きの4強。左から2番目は監督兼選手のアラン・クック

●女子団体準決勝
 〈日本 3ー1 北朝鮮〉
 伊藤 ー4、ー6、ー7 キム・ソンイ○
○石川 6、8、5 リ・ミョンスン
○福原 5、6、ー2、6 リ・ミギョン
○伊藤 ー4、8、ー18、7、7 リ・ミョンスン

 壮絶! 4番伊藤がリ・ミョンスンとの大激戦を制し、日本が2大会連続の決勝進出!

 中盤から、トップのキム・ソンイ戦のような正攻法でのカット打ちではなく、バック表ソフトのストップとツッツキ、両ハンドのループドライブでリ・ミョンスンをかく乱。満足にカットをさせないのが伊藤美誠のカット打ち、そのスタイルが戻ってきた。
 しかし、第3ゲームは9ー10からリ・ミョンスンが6回、伊藤が3回のマッチポイントを取り合い、18ー18まで競り合う。伊藤の勝負を賭けたスマッシュがわずかにオーバーし、あと一本が遠い。結局、このゲームは18ー20でリ・ミョンスンが奪う。

 並の15歳なら、ここで気落ちしてガタガタ崩れてしまうところ。しかし、第4ゲームの出足から、疲労感も見せず、気落ちもせず、フォアスマッシュをたたき込んだ伊藤はやはり常人ではなかった。第4ゲームを取り返し、最終ゲームは3ー1のリードから3ー3。ここから7ー7まで、まったくスコアが離れない。息を止め合うような究極のシーソーゲーム。先にギブアップしたのはリ・ミョンスンだった。連戦の疲労も相当あっただろう。7ー7から精密なカットにミスが続き、10ー7。

 最後、リのボールがコートをオーバーした瞬間、大きくガッツポーズをしてしゃがみ込んだ伊藤。あとは涙、涙。本当に、本当によく頑張った!
  • ミスに伊藤の表情がゆがむ。それでも攻撃の手は緩めない

  • 勝利の瞬間、もう涙、涙…

  • ベンチの福原と涙の抱擁

 〈日本 2ー1 北朝鮮〉
 伊藤 ー4、ー6、ー7 キム・ソンイ○
○石川 6、8、5 リ・ミョンスン
○福原 5、6、ー2、6 リ・ミギョン
 伊藤 vs. リ・ミョンスン
 石川 vs. キム・ソンイ

 日本、3番福原が出足から攻撃的なプレー。あまいサービスはレシーブからフォアドライブで攻め、フォア前の台上強打を決め、第1ゲーム6ー0のスタートダッシュ。リ・ミギョンはやはり福原の変化系表ソフトのボールに慣れておらず、バックフリックからの連続バックハンドにネットミスやオーバーミスが続く。第3ゲームに見せたカウンターのシュートドライブは抜群の決定力だったが、最後まで福原のペースを崩せなかった。

 4番伊藤。トップに続いてカットとの対戦。ここで決めたい!
 〈日本 1ー1 北朝鮮〉
 伊藤 ー4、ー6、ー7 キム・ソンイ○
○石川 6、8、5 リ・ミョンスン
 福原 vs. リ・ミギョン
 伊藤 vs. リ・ミョンスン
 石川 vs. キム・ソンイ

 日本男子に続いてスタートした女子団体準決勝。日本は北朝鮮と前半を終え、1ー1。3番福原がゲームカウント2ー0とリードしている!

 トップのキム・ソンイは、先ほどのシンガポール戦で激戦を2回こなした疲れも見せず、鉄壁のバックカットと回り込んでのパワードライブで、伊藤を圧倒。予選リーグではまだ手の内を見せていなかったかとさえ思える、完璧な攻守を見せた。若いキムにとっては体力的にも問題なく、どんどん調子を上げている。

 しかし、日本は2番石川が素晴らしいカット打ち。無理な強打はせず、ほぼノーミスとさえ言える連続ループドライブ。しっかり腕が振れて、リのカットを見事に打ちこなした。変化を完全に読まれたリは為す術なし。

 3番福原、予選リーグではバック表の変化が全く読めていなかったリ・ミギョンを、一気に押し切りたい!
  • トップ伊藤、キム・ソンイの堅陣を打ち抜けず

  • なんというタフネス、疲れ知らずのキム・ソンイ

  • 石川は素晴らしいカット打ちを披露

  • 村上監督のアドバイスにも熱がこもる