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2016世界ジュニア選手権大会速報

ムードメイカーであるだけでなく、そのプレーでも日本女子チームを引っ張る伊藤美誠。香港戦トップの麥子詠戦では2ゲームを先取され、4番蘇慧音戦でも第1ゲームを落とすという苦しい立ち上がりながら、最後には勝ち切る頼もしさ。やはりリオ五輪での経験はダテではない。以下は伊藤の準決勝後のコメント。

「1試合目(麥子詠戦)は自分のプレーがまったくできなかった。慣れる間もないまま、なんとか勝って終われた。守った時に足が棒立ちになってしまって、動けない状態になっていたのが反省点。でも悪いなりに勝てた。今回は勝敗が大事だと思っているので、達成できてよかったです。
 蘇慧音選手や麥子詠選手とは、東アジアホープスの時代からずっと対戦してきた仲間でありライバル。これからもずっと一緒に戦っていく相手だと思っているけど、今ジュニアの世代でもしっかり勝っていって、これからも勝っていける選手になりたい。仲は良いので、これからも友達として、ライバルとして頑張っていきたい。

 明日はしっかり優勝という目標を達成して、次のシングルス、ダブルスに向かっていきたい。でも決勝前にミックスが2試合あるので、しっかり勝って決勝に臨みたいです
」(伊藤)。
女子団体準決勝で香港を破った日本。しかし、前半の1・2番は非常に苦しかった。トップ伊藤が麥子詠に対してイージーミスが続き、いきなり2ゲームを落とす展開。ここから粘り強く戦い、要所でサービスエースを連発して逆転したが、2番では早田が蘇慧音に敗れた。持ち味の3球目攻撃がなかなか出せず、前陣の低いブロックで粘る蘇慧音のペースにつきあってしまった。

3番はこれが世界ジュニア初戦となる加藤。右シェークフォア表の劉麒に対し、中盤からは安定したバックハンドの攻守で相手を封じた。「劉麒とは過去2回やって2回とも勝っていた。3ゲーム目から相手のフォア前にアップサービスを出したり、バックにロングサービスを出して崩していけました」と試合後の加藤。
「平野のコンディションがもうひとつで、ひとつプレーが崩れると全部崩れてしまうところがある。香港の選手は一発の怖さはないけど粘りがあるので、平野と加藤で悩みましたが、加藤でいこうと決めました」(呉光憲監督)

4番伊藤は第1ゲームを落としたが、蘇慧音に対してサービスを効かせながら、バック表ソフトの切れたストップ、ナックル性のブロックなど、多彩な技術で多彩な得点パターンを見せた。第3ゲームには、ネットインしたボールをダイビングしながら、サポートの横を通す横入れで返球するスーパープレーも飛び出し、エース対決を制した。

さあ日本女子、いよいよ明日は中国戦。優勝まであとひとつだ。呉光憲監督は「すごく良い試合ができると思うし、面白くなりますよ。我慢すべき時は我慢強く、攻める時は思い切って戦っていきたい。頑張ります」と語った。
  • 不調ながらもしっかり2勝。エースとしての存在感を見せた伊藤

  • 加藤、3大会ぶりの世界ジュニアの初戦は貴重な白星

  • 早田を下した蘇慧音。実に粘り強い選手

  • 日本女子、明日は金メダルを掛けて決勝だ

●女子団体準決勝
 〈日本 3ー1 香港〉
○伊藤 ー6、ー3、9、6、4 麥子詠
 早田 ー5、10、ー6、ー9 蘇慧音○
○加藤 ー9、8、7、3 劉麒
○伊藤 ー9、9、11、10 蘇慧音

 〈中国 3ー0 韓国〉
○石洵瑶 4、ー7、5、9 金裕珍
○劉煒珊 4、7、14 金智淏
○孫芸禎 6、ー6、7、5 許美麗

日本、香港を破って決勝へ!
いよいよ明日、中国との決戦だ!

日本は深夜……いや早朝ですか。詳報は後ほど!
男子団体準々決勝の熱戦が終わった後、なぜか会場に続々と集結する各国の選手たち。ITTF(国際卓球連盟)がfecebookなどに載せている「マネキンチャレンジ」を録画するために集まったのだ。

「3、2、1、start!」のかけ声とともに、試合での勝利の瞬間、ネットインを拾う瞬間など、コートに立つ選手もベンチの選手たちもフリーズ(固まったんです)。時間が止まったようなフロアを、カメラマンのレミー・グロスがビデオを回しながら歩いていく。リオ五輪での馬龍のハートマーク、ITTFのインタビューでの「みうみま」のビックリポーズなどの「名場面」もありました。

「練習に行きたいんだけど!」(byフランスのミゴ)という声も上がりつつ、どの選手も楽しんでやっていた様子。行きのバスの中で「フォトグラファーもマネキンとして協力してね」と言われ、カメラを構えたままでしばらくじっとしていた編集部タロー。でも、撮影後の映像を見たら、我慢できなくてちょっと動いてました。ゴメンナサイ。

やがて、ITTFのfacebookとかにアップされるのかな?
  • 私、ミウちゃんになろうかしら?

  • じゃあ私たちは、ベンチでこんな感じね!

  • ジャンケンで勝ったほうが勝ったチームをやろうよ

  • なに負けてんだ!コラ!

  • 来るぞ、カメラマンが来るぞ!ガマンしろ!

  • 審判もちゃんと協力していました

●男子団体準々決勝・日本戦以外の3試合

 〈チャイニーズタイペイ 3ー0 フランス〉
○林昀儒 9、4、8 セイフリード
○黄建都 6、6、5 カサン
○馮翊新 ー6、12、ー9、8、5 ベルトラン

 〈韓国 3ー0 ルーマニア〉
○安宰賢 8、7、ー6、7 プレテア
○趙勝敏 9、7、4 シポシュ
○金大宇 9、ー9、10、ー20、4 マノレ

 〈中国 3ー0 ベルギー〉
○徐海東 3、6、5 クヌーデ
○于何一 6、7、6 ドヴォス
○徐英彬 4、5、ー7、6 ダルシス

男子団体準決勝、日本戦以外の結果は上記のとおり。男女とも、団体はベスト4をアジア勢が独占。日本、中国、韓国が男女ともベスト4に入り、男子はチャイニーズタイペイ、女子は香港がベスト4という結果になっている。

フランスはトップで敗れ、2番カサンに巻き返しの期待がかかったが、試合の序盤から「トスする前、ボールが手のひらの中央に乗っていない」とフォルトを取られ、審判に食ってかかるひと幕も。世界ジュニアでのサービスの判定が厳しいのは例年のことながら、審判によってその基準がまちまちなのは、選手としては何とも対応が難しい。試合をずっと観ていると、判定が特に厳しい審判が何人かいる。カサンは完全に集中力が切れ、試合後はゼッケンを投げ捨てた。

韓国はやはりエースの趙勝敏が強く、ルーマニア戦もシポシュに快勝。中国男子はベルギーを完封。2番于何一、3番徐英彬はともに右シェークドライブ型で、チキータからの高速バック連打、ストップから一発のパワードライブという、「馬龍タイプ」のプレーヤーだ。準決勝の韓国戦、中国といえども楽な戦いではないだろう。
  • 安定重視のスタイルだが、馬力もある于何一

  • 手首の柔らかさを見せたベルギーの左腕、ドヴォス

  • フランスのカサンは試合後、怒り心頭

  • 黄建都はちょっと太ったかな……。しかし、前陣での一発は相当速い

●男子団体準々決勝
 〈日本 3ー0 北朝鮮〉
○松山 11、ー8、6、ー4、8 ハム・ユソン
○張本 7、10、6 キム・ソングン
○木造 5、8、12 キム・ソンイル

男子団体準々決勝、日本は難敵と思われた北朝鮮にストレート勝ち!

トップ松山がハム・ユソンをゲームオールで下し、チームに流れを呼び込んだこの試合。試合後、田㔟監督が「3ー2が好きなのかわからないですが(笑)」と語ったとおり、これで4試合連続でゲームオールの接戦を制している。対戦相手のハム・ユソンはチキータも時折使うが、基本的にストップからフットワークを使ってフォアドライブというクラシックなスタイル。フォアドライブには安定感があったが、最後はこちらもフォア主戦の松山がチキータや前陣でのバックハンドをうまく使い、競り勝った。

2番張本は、ペンドライブ型のキム・ソングンにストレート勝ち。長身のキム・ソングンは一発の威力はあるが、試合運びやサービスのコース配分などはまだまだ未熟な印象。張本の連続ブロックを打ち抜けなかった。

そして3番には、昨日のチェコ戦で2点を落とし、ルーマニア戦ではオーダーから外れた木造。ゲームカウント2ー0の第3ゲーム、8ー10から10ー10に追いついた時点で、状況は逆転負けを喫したチェコ戦トップのクロス戦と同じ。「ここで乗り切らなかったらいつ乗り切るんだ、ここで3ー0で勝つしかないと思っていました」と試合後に語った。
チームメイトが声を出して戦う中、ベンチでの表情は硬く、まだ緊張の色が隠せなかった木造。「昨日の試合が終わって、もう忘れたくても忘れられなくて、こうやって3番で3ー0で勝つことができたけど、本当に試合前は緊張しました。不安しかなかったんですけど、3ー0で勝てたことで次からもっと楽にできると思います」とコメント。ボールになかなか慣れられないでいたが、昨夜と今朝、ボールに慣れることだけを意識して練習し、調整したという。「台やボールにナーバスになってしまうところは、もっと直していかないといけない」(木造)。

さあニッポン、男子もこれでようやく勢いがついてきた。日本男子は今夜、現地時間20時(日本時間12月3日午前3時)からチャイニーズタイペイと対戦する。もうちょっと早くやってもらえないですかね……。
  • 木造、ここから大爆発、お願いします!

  • 自分の力を出し切っている松山。トップを制してこのガッツポーズ

  • 張本に敗れたキム・ソングン

  • 木造、安堵をにじませた勝利の瞬間

●女子団体準々決勝・残りの3試合
 〈香港 3ー0 ロシア〉
○麥子詠 6、5、14 マラニナ
○蘇慧音 6、9、6 タイラコワ
○劉麒 7、ー6、12、7 シェルバチク

 〈韓国 3ー1 フランス〉
○金裕珍 7、7、5 ザリフ
○金智淏 7、ー6、10、9 ミゴ
 姜多衍 ー9、ー6、5、ー5 ギネル○
○金裕珍 8、8、ー9、9 ミゴ

 〈中国 3ー1 チャイニーズタイペイ〉
○石洵瑶 6、4、5 陳映蓁
 劉煒珊 5、ー8、6、ー5、ー9 蔡育勤○
○孫芸禎 7、2、10 温睿玲
○劉煒珊 9、9、ー8、5 陳映蓁

女子団体準々決勝、日本対ルーマニア以外の3試合は、いずれもアジア勢が勝ち上がった。
ルーマニアに1点落とした日本と同様、中国もチャイニーズタイペイに初めての失点を喫した。2番で劉煒珊が、蔡育勤のカットを打ちあぐみ、ゲームオール9ー11での敗戦。今大会の中国女子、技術の完成度もパワーも、例年と比べるとかなり落ちる印象。タイペイ戦で2点起用された石洵瑶も、昨日のブラジル戦2番でタカハシにゲームオール5ー10でマッチポイントを握られてから、からくも逆転勝ちしている。

フランスは4番ミゴが、決して得意ではなさそうなカットを相手によく健闘したが、一歩及ばず。勝機のあった2番金智淏戦を落としたのが悔やまれる。日本と対戦する香港は、エースの蘇慧音が堅実なプレー。どちらかというと中国系というより、韓国系というイメージの両ハンド攻守型だ。
  • 香港のエース、最後の世界ジュニアとなる蘇慧音

  • フォア・バックのしゃがみ込みサービスを使う劉煒珊

  • カットの蔡育勤が劉煒珊に勝利した瞬間

●女子団体準々決勝
〈日本 3ー1 ルーマニア〉
○伊藤 4、9、6 ドラゴマン
 平野 6、ー8、ー8、ー9 ディアコヌ○
○早田 2、4、7 クラパ
○伊藤 ー9、12、8、ー7、8 ディアコヌ

昨日、アメリカとチャイニーズタイペイに快勝した日本女子。準々決勝のルーマニア戦は、さすがに簡単にはいかなかった。2番平野がルーマニアのエース、ディアコヌに敗れた。長身で懐が深いディアコヌに対し、ミドル攻めからフォアサイドを切る展開でリードを奪ったが、中盤からうまく緩急をつけられ、フォアに回転量の多いボールで攻められた。

それでも日本は3番早田が、サービス・レシーブとループドライブからの強打でクラパとの左腕対決に完勝。4番伊藤につなぐ。伊藤はディアコヌのバックサービス、想像以上の守備力の高さに苦しんだが、最後は思い切って出すフォアのアップサービス、そして軽打のレシーブから次を狙い打つプレーで押し切った。

日本女子、続く準決勝の相手は、ロシアに勝利した香港だ。
  • 美誠ちゃん、惜しいミスにこの表情。しかし最後はきっちり締めた

  • 強かったディアコヌ。14年ユース五輪時より、プレーの幅と緩急が向上していた

  • 2番平野の敗戦で気合い満点だった早田。クラパを寄せつけず

昨日まで、朝7時45分にホテルから会場へ出ていたシャトルバス(ワゴンみたいなヤツですけど)が、今日から9時に変更。昨夜の会場で「9時半に試合が始まるから9時のバスでは遅い。せめて8時にして」と言ってもダメ。今朝はITTFのタッパーさんが、親切にも臨時のバスを出してくれるよう、ホテルで頼んでくれたが、結局ダメでした。

朝イチのバスに乗るのがITTFのカメラマンであるレミー・グロス、卓球レポート取材班の佐藤さん、そして編集部タローの3人だけなので、足切りされたようです(笑)。試合開始は9時半、会場までバスで20分なので、会場に着いたら大急ぎで取材の準備。ということで、ホテルのロビーから昨日のハイライト。

上写真の2枚は、昨日の第2ステージでの韓国対北朝鮮戦。北朝鮮のハム・ユソンがトップで安宰賢を破り、1勝を挙げたが、韓国はエースの左腕・趙勝敏がパワフルなプレーで2勝し、チームを勝利に導いた。この試合、ベンチが過度にエキサイトすることもなく、試合後は監督も選手も笑顔で握手。韓国の安宰賢と北朝鮮のキム・ソングンはよくお喋りをしている。

中写真左はルーマニア戦でディアコヌとのエース対決を制したミゴ。2年ほど前に日本に卓球留学し、NTCで練習を積んでいた。当時、NTCの卓球場のホワイトボードには、彼女の名前が漢字で書かれていたりしました。マリー・ミゴなので、マリーは「鞠」だった記憶が……。丁寧な球さばきで、グングン強くなるというより、着実に進歩しているという感じ。

中写真右はタイペイの林昀儒。タイペイの男子史上最年少で世界団体代表になったサウスポー。予測能力の高さとバックハンドのうまさは光るが、まだ線が細い。荘智淵の後を継ぐ選手になれるでしょうか。

そして下写真の3枚は、昨日アップダウンの多い1日を過ごしたルーマニアのプレテア。日本戦で張本を下し、おどけてポーズを決めたかと思えば、準々決勝進出がかかったチェコ戦ではサービスの判定に腹を立てて審判に喰ってかかったり、ベンチの後ろで観戦している地元の会場係が気にくわないと移動させたり……。一番下の写真は、会場係の人たちに「ごめんネ」と謝るチームメイトのマノレ。
しかし、ルーマニアはこのチェコ戦4番で、プレテアがポランスキーに0ー2から逆転勝ち。3ー2で接戦を制し、2位で準々決勝進出を決めた。日本、もしルーマニアに敗れていたら、このルーマニア対チェコ戦もヒヤヒヤしながら見守ることになっていた。松山の頑張りは大きかった。
ただ今、現地は12月2日の午前6時45分。現地は毎日良い天気。大会会場であるグランドウエストは、木でできた重い扉を開けて会場の外に出てみると、日本のショッピングモールのような賑やかな雰囲気。サンルーフから陽光が降り注ぎ、とても暖かい。アフリカに来ているんだな、という気分が少し沸いてくる。

しかし、会場の中はというと、冷房が効いていて意外なほど涼しい。用意してきた短パンはスーツケースの中に封印されました。外を歩く分には短パンのほうが良いんですけどね。

昨日の日本男子対ルーマニア戦4番、勝利が期待された張本が相手エースのプレテアに敗れた一戦。この試合について田㔟監督は「少し準備不足でしたね」と語った。「1・2ゲーム目はチキータも入らないし、全然動けなかった。3番の龍崎戦の時、ベンチでぼくの隣で応援していて、『早く次の準備をしろよ』と言っていたんですけど、『まだ大丈夫です』と言ってなかなか準備しなかった。1試合目をやって体は動いていると思うかもしれないけど、冷房で意外なくらい体が冷えているんですよ。明確に指示を出すべきだったし、本人ももう少し自覚を持つべき」(田㔟監督)。

張本選手は体がかなり硬く、田中礼人フィジカルコーチが試合前のアップのメニューをいろいろ工夫しているという。日本チームの試合前のウォーミングアップとクールダウンは、他の国と比べても非常に念入りに行っているが、それでも国際大会では予想外の事態が出てくる。
今大会、シングルス第1シードの張本。周りは年上の選手ばかりとはいえ、思い切ってぶつかってくる。スロースタートは命取りになる。勝利を収めたルーマニア戦で、ひとつ兜の緒を締めて、今後の試合に臨んでもらいたい。
  • 大会初日、会場の一角でクールダウンを行う日本チーム