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平成28年度全日本選手権速報

 開会式後、女子ディフェンディングチャンピオンの石川佳純とともに記者会見に臨んだ水谷隼。現在、男子シングルスで3連覇中だが「過去に5連覇しているので、連覇へのプレッシャーはない。9回目の優勝という新記録に対しては少しプレッシャーがあるけど、この1カ月、やるべきことはすべてやってきたし、悔いのない大会にしたい」とコメントした。「この大会が始まって、他の選手のみんなとも会って、改めて自分が一番になりたいと思ったし、一番であるべきだと思います」という言葉に王者の自負がにじむ。

 そんな水谷がわずかに不安をのぞかせたのは統一球。「今回初の統一球の開催になったのはうれしいけど、ぼくは『スリースターボールG40+』(バタフライ)で試合をしたことが一度もない。日本リーグではずっと使っているし、初戦や次のラウンドでやられるかもという危機感はあります。逆にそこを乗り越えれば、波に乗っていける」(水谷)。全日本がブラボール使用になった初めての大会、平成26年度大会で水谷は、笠原弘光(協和発酵キリン)に敗戦の瀬戸際まで追い詰められている。しかし、同じ失敗を繰り返すようなことはないだろう。
 全日本卓球が開幕し、まずスタートしたのは混合ダブルス1回戦。

 その第2コートで、今年度の全日本学生で準優勝を遂げた「長野の英雄」こと滝澤拓真(明治大)と、姉の芹菜(篠ノ井総合病院)のペアが快勝した。

 

 今回が初出場というこの姉弟ペア。過去に5回、長野県予選に出場しながら、通過できなかったそうだが、今年度は「6度目の正直」で念願の舞台に立ったそうだ。

拓真「ペアでの練習をあまりやっていなかったわりには、今日はまあまあ良い試合ができました。第1シードの近くにいるので、是非そこまで行きたいですね」

芹菜「直前の練習は多くなかったけど、過去にずっと組んでたので、慣れてはいます。喧嘩しながらやってます(笑)」



 笑顔で1回戦を終えた姉弟ペア。大喧嘩することなく、昨年覇者の田添/前田(専修大/日本生命)との3回戦まで勝ち進みたい。





●混合ダブルス1回戦

滝澤拓真/滝澤芹菜(明治大/篠ノ井総合病院)

12,-10,5,10
 成田湧介/馬場佳菜子(高知工科大/永卓会)
 平成28年度の全日本卓球が開幕した。2時から行われた開会式は星野一朗大会委員長の開会宣言でスタート。国旗掲揚に続き昨年度の男女シングルスチャンピオンの水谷隼(beacon.LAB)と石川佳純(全農)より天皇杯、皇后杯の返還と続いた。
 今年の選手宣誓は石川佳純。「日頃の練習の成果を発揮し、最後まで堂々と戦います」と選手を代表して力強い宣誓を行った。


  • 選手宣誓の石川

  • 天皇杯を返還する水谷

 全日本選手権の会場で、リオ五輪卓球競技のメダルが展示される。これは水谷隼選手と石川佳純選手の厚意で実現した特別企画で、水谷選手の個人戦銅メダル、団体戦銀メダル、そして石川選手の団体銅メダルを間近に見ることができる貴重なチャンス! 会場に行ったら、試合はもちろん、両選手のメダルもぜひ目に焼き付けておこう。

展示予定
・水谷選手が獲得した銀メダルおよび銅メダル
・石川選手が獲得した銅メダル
・日程・・・2017年1月16日(月)~22日(日)
・時間・・・9:00~17:00 ※16日は15:00~
・場所・・・東京体育館メインアリーナ 2F東コンコース
 現在、日本卓球協会は「スポーツ・フォー・トゥモロー※」を通じて、開発途上国の卓球仲間へラケット&ラバーを届ける活動を行っており、今回の全日本の会場内でも、不要になったラケットとラバーの寄付を募集している。昨年開催されたITTFワールドツアー・ジャパンオープンの際にも会場内で寄付のためのブースが設けられ、多くの卓球用具が集まった。
 寄付されたラケット&ラバーは、日本卓球協会、スポーツ・フォー・トゥモローを通じて、開発途上国の卓球協会に送付される予定。お手元に使わないラケットやラバーがある方は、観戦の際に会場に持参されてはいかがだろうか。

※スポーツ・フォー・トゥモロー:2014年から2020年までの7年間で開発途上国をはじめとする100カ国以上・1000万人以上を対象に、日本国政府が推進するスポーツを通じた国際貢献事業
http://www.sport4tomorrow.jp/jp/
  • 昨年のジャパンオープン会場内での寄付ブース

 今年度の全日本選手権では大きなルール変更が2つある。ひとつはITTF主催試合では、昨年10月から採用されているアドバイス機会の自由化の国内ビッグゲームでの初採用。そしてもうひとつは初の統一球での開催だ。

 平成29年1月1日から、試合中のアドバイスに関する新ルールが施行され、今回の全日本でジュニアの部を除く一般種目において国内大会初適用となる。これまで試合中のアドバイスは、ゲーム間、タイムアウト時に限定されていたが、今回のルール変更により、競技の遅延につながらない限りは、ラリー中を除きいつでもベンチからのアドバイスを受けることができるようになる。この新ルールは16年の10月からITTF主催試合ではすでに適用されている。 新ルールでアドバイスが可能になるタイミングとしては、ラリーをしていない間、例をあげると、6本ごとのタオル使用時やボールを拾いに行ったタイミングでのアドバイスが認められる。
 ルール変更の目的は、ベンチも一体となり試合を盛り上げ、大会を活性化させることだという。しかし国内大会では初適用ということもあり、多くの選手、アドバイザー、そして審判にとってまだ未知のルール。試合結果に大きく関わってくるであろうルール変更だけに、今大会での運用に注目が集まる。選手だけでなく、コーチ間の攻防にも注目してみよう。

 そして今大会から、使用するボールが1球に統一される。昨年度大会まで、試合での使用球は選手間のジャンケンによって決められていたが、今年度は初の統一球での開催となる。9月に行われた使用球の入札にはタマス(バタフライ)、日本卓球(ニッタク)、ヤマト卓球(TSP)の3社が参加。抽選の結果、タマスがオフィシャルボールサプライヤーとなり、『バタフライ スリースターボールG40+』が今大会の統一使用球に決まった。
 プラスチックボール移行後、メーカー間のボールの性質差が大きくなり、ボールごとの調整、対応に苦しめられる選手も多く、「統一球での開催」を望む声があがっていた。そんな中で、今回の決定は選手のボールに対するストレスを軽減し、パフォーマンス向上につながる大きな決定と言えるだろう。
  • タオル使用時のアドバイスもOK

  • ラリーの間のボール拾い時もアドバイス可能に

 続いて女子の見どころを紹介していく。福原愛(ANA)が今大会の欠場を発表し、女子シングルスの優勝戦線は3連覇中の女王・石川佳純(全農)VS 伊藤美誠(スターツSC)、平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園)をはじめとしたジュニア世代の構図となる。

 優勝候補の大本命は石川。リオ五輪ではシングルス初戦敗退も、団体戦では全勝で銅メダル獲得に貢献。昨年度の全日本以降、日本選手に対して10勝1敗と圧倒的な勝率を残している。五輪後もワールドツアー・スウェーデンオープン優勝、グランドファイナルベスト4と安定した成績を残しており、連覇に向けてスキはない。圧巻の勝負強さを見せる女王が4連覇に向けて邁進する。

 石川を追うのは、タレント揃いの若手勢。その中で対抗馬1番手は史上最年少優勝を狙う伊藤、平野の2人だ。伊藤はリオ五輪で史上最年少メダリスト、平野は史上最年少でワールドカップ女王に輝き、世界ランキングも伊藤が8位、平野が9位と実力は世界トップ。両者が順当に勝ち上がると、昨年度大会同様に準決勝での対戦となる。この1年間の両者の直接対決は平野が3勝0敗と勝ち越しているが、注目の一戦となりそうだ。

 早田ひな(希望が丘高)、加藤美優(吉祥寺卓球倶楽部)、浜本由惟(JOCエリートアカデミー/大原学園)らも同世代の伊藤、平野に負けじと上位進出を目論む。
 早田はグランドファイナルU-21、ダブルスで優勝するなど、昨年は飛躍の1年となった。昨年度大会ではベスト8まで進出しており、磨きのかかった豪快な両ハンドドライブでさらなる高みを目指す。勝ち上がると準々決勝で伊藤と対戦するドローだが、結果はいかに。世界ジュニアでシングルス3位に入賞するなど、3つのメダルを獲得し、12月の世界選手権選考会で優勝した加藤も急成長を見せている。ベスト8をかけた平野との6回戦は注目のカードだ。昨年初の世界選手権代表となった浜本は石川と同ブロックに入り、勝ち上がると準々決勝で対戦。着実に力をつけており、試合運びにも安定感が出てきた。ジュニアとして臨む最後の全日本で結果を残したい。

 また、昨年度大会で福原を破り3位に入賞した加藤杏華(十六銀行)、後期日本リーグで石川に土をつけた宋恵佳(中国電力)、社会人女王の森薗美月(サンリツ)、平成26年度大会準優勝の森薗美咲(日立化成)ら日本リーガーも意地を見せたい。世界ランキングを53位まで上げ、世界選手権選考会でも好調なプレーを見せた芝田沙季(ミキハウス)、全日学優勝の成本綾海(同志社大)、全日学選抜優勝の山本怜(中央大)らも、ジュニア世代に負けず躍進を期す。
  • 現在3連覇中の石川

  • 昨年度大会では圧倒的な強さを見せた

  • 伊藤は史上最年少Vを目指す

  • 前回準Vの平野も最年少Vを狙う

 1月16日より東京・東京体育館で開催される平成28年度全日本選手権。速報スタートに先駆けて、大会の展望・注目選手を紹介していく。

 まずは男子シングルス。優勝に最も近い位置にいるのは水谷隼(beacon.LAB)、この男だ。1月の世界ランキングは5位で、昨年夏のリオ五輪ではシングルス銅メダル、団体銀メダルを獲得。全日本でも現在3連覇中と、他の選手を頭ひとつリードしている。今大会では男女通じて歴代1位となる9度目の優勝を狙う。昨年度大会まで10年連続決勝進出と、全日本での強さは圧巻。リオ五輪での戦いをとおして、さらに高いレベルに達した感もあり、水谷を倒すことは容易ではない。全日本では毎年新たなテクニックを披露しており、今年はどのような進化を見せてくれるのかにも注目だ。

 その水谷を追うのが、リオ五輪シングルスベスト8の丹羽孝希(明治大)。五輪後は全日学、全日学選抜と学生タイトルを連取。以前にくらべ取りこぼしが減り、安定感が増した感がある。神がかったドライブ速攻で、平成24年度大会以来の優勝を狙う。

 吉村真晴(名古屋ダイハツ)、松平健太(ホリプロ)、大島祐哉(ファースト)らも上位候補。リオ五輪で団体銀メダル獲得に貢献した吉村は2度目の優勝、松平、大島は初優勝を目指す。
 五輪後のワールドツアーではいまひとつ調子の上がらなかった吉村だが、12月に行われた世界選手権日本代表選考会では優勝した松平にフルゲームまで迫り、復調の気配を見せており、全日本では本来の鋭いプレーが期待できそうだ。選考会を制し、今年5月の世界選手権代表に内定している松平は11月のワールドツアー・オーストリアオープン優勝など、秋から好調をキープし、世界ランキングを17位まで上げている。初戦となる4回戦で岸川聖也(ファースト)、勝ち上がると準々決勝で水谷というハードな組み合わせだが、パワーが増した両ハンドで上位進出なるか。大島もワールドツアー・スウェーデンオープン優勝、選考会2位と調子を上げている。こちらも5回戦で村松雄斗(東京アート)、6回戦で昨年敗れた笠原弘光(協和発酵キリン)と対戦する厳しい組み合わせだが、世界レベルのフォアドライブが火を噴くか。

 そして注目は史上最年少で世界ジュニア王者に輝いた注目は張本智和(JOCエリートアカデミー)。1月の世界ランキングでは64位にランクインしており、そのポテンシャルは計り知れない。この1年間好調をキープしている平野友樹(協和発酵キリン)のシード下に入ったが、どこまで勝ち上がるか注目だ。もし張本がランク(ベスト16)入りすると、男子史上最年少の全日本ランカーとなる。

 水谷の史上最多9度目の優勝か、丹羽、吉村の王座奪還か、はたまた新王者誕生か。男たちの熱い戦いから目が離せない。
  • 9度目の優勝を目指す水谷隼

  • 今年はどのようなプレーを見せてくれる注目

  • 五輪ベスト8の丹羽。4年ぶりの優勝なるか

  • 中学1年・張本に注目が集まる