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平成28年度全日本選手権速報

 塩野真人(東京アート)がダブルスで宇田・張本組に敗れ、全日本選手権での最後の試合を終えた。これで現役引退となった。

 ミックスゾーンで涙を浮かべながら、塩野は語った。
「勝負所で強気でやれなかったけど、誇れる引退試合でした。試合に集中することしか考えてなくて、負けそうになったり、点数が離れるとこみあげてくるものがあった。
 本当に幸せな卓球生活でした。これからは家庭を第一にしたいし、奥さんを大事にしたい。これからは裏で選手を支えるような仕事をしたい」
 シチズンのベテラン、31歳の久保田隆三がラケットを置く。中学3年でジュニアに初出場をして、16年間、全日本という舞台で必死に頑張ってきた。
 シングルスは一昨日敗れたが、軽部と組んだダブルスはベスト8決定戦で愛知工大の藤村・吉村組に敗れ、久保田の「最後の全日本」が終わった。

「ホッとした気持ちと寂しい気持ちが半々です。最後ダブルスで軽部が声を出してくプレーしてくれて、感じるものがありました。シングルスももう少しいけるかと思ったけど、ゲームの終盤になるとこれで終わりかなという思いがこみ上げてきた。
 中学3年から毎年出て、その中でも下山に勝ってランク入りした試合が一番印象に残っています。これから仕事に戻って、普通のサラリーマンをやっていきます。会社に恩返しをするために仕事で頑張ります」(久保田)
●男子シングルス5回戦(ランク決定戦)
水谷隼(beacon.LAB) 8、4、7、7 及川瑞基(専修大)
緒方遼太郎(JOCエリートアカデミー/帝京高) 8、6、4、-4、5 高木和卓(東京アート)
坪井勇磨(筑波大) 10、-9、-4、-3、9、9、7 松平健太(ホリプロ)
木造勇人(愛工大名電高) 8、9、-6、4、-5、7 大矢英俊(東京アート)
硴塚将人(早稲田大) -5、6、8、-5、10、8 厚谷武志(信号器材) 
平野友樹(協和発酵キリン) 5、-5、-5、5、-9、11、7 町飛鳥(明治大)
神巧也(シチズン時計) 8、7、4、-9、-8、13 松下海輝(日鉄住金物流) 
吉村真晴(名古屋ダイハツ) -7、4、5、8、8 宮川昌大(野田学園中)
笠原弘光(協和発酵キリン) -5、-8、7、9、-8、7、7 高見真己(愛工大名電高)
吉村和弘(愛知工業大) 6、-8、4、-6、9、-14、7 宇田幸矢(JOCエリートアカデミー) 
上田仁(協和発酵キリン) 6、-11、8、4、4 塩野真人(東京アート)
丹羽孝希(明治大) -8、5、10、5、8 軽部隆介(シチズン時計) 
吉田海偉(Global Athlete Project) 8、7、-8、6、6 徳永大輝(鹿児島相互信用金庫) 
御内健太郎(シチズン時計) -9、6、-9、5、12、-8、5 上村慶哉(早稲田大)
松平賢二(協和発酵キリン) 6、10、11、11 吉田雅己(愛知工業大)  
龍崎東寅(JOCエリートアカデミー/帝京) 5、-5、9、4、4 張一博(東京アート)
  • 軽部に勝利した丹羽

  • 平野は大学の後輩、町に勝利しランク入り

●男子シングルス5回戦
龍崎(JOCエリートアカデミー/帝京高) 5、ー5、9、4、4 張一博(東京アート)

男子シングルス5回戦、ノーシードで1回戦から勝ち上がってきた龍崎東寅が、昨年2位の張一博(東京アート)を4ー1で破った。今や「怪物」といえば中1の張本だが、この龍崎も小学生時代には全日本ホープス・カブ・バンビの各年代で優勝した元祖「怪物」だ。
初の代表入りを果たした昨年12月の世界ジュニアでは、団体戦で1試合のみの起用にとどまり、シングルスでは2回戦敗退。ダブルスでは準優勝したものの、不本意な成績に終わったが、その悔しさをこの全日本にぶつけ、3回戦で田添健(専修大)、4回戦では全日学2位の滝澤(明治大)を撃破。チキータからの強烈なフォアドライブが火を噴いた。JNT関係者からの呼び名は「龍ちゃん」、続く6回戦では松平賢二(協和発酵キリン)と対戦する。見応えある打撃戦になりそうだ。

「ランク入りは目標にしていたんですけど、一戦一戦全力で戦っていく意識がランクにつながったのかなと思います。張さんとは中3の時に全日本でやっていて、1ー4で全然かなわなかったけど、今回はチャンスがあると思っていました。挑戦者として、1球目から声を出して、チキータで先手を取る攻めのプレーができました。世界ジュニアではシングルスですごい悔しい思いをしたので、そのぶん全日本でしっかり勝ちたかった。ここまで来たからには、シングルスでメダルを獲れるように頑張りたい」(龍崎)。
  • ランク入りを決めコーチと喜ぶ龍崎

 女子ダブルスで3つ、混合ダブルスで2つのメダルを獲得した阿部恵(サンリツ)が引退を宣言。3月の東京選手権をもって現役生活を終えるため、全日本は今大会で最後となる。バックの変化攻守からのフォアスマッシュという独自の卓球を追求し、数々の大物食いを見せてきた。ビッグトーナメント、全日本社会人などシングルスのタイトルも獲得し、変化攻守型に多くの希望を与えてきた。

 「引退を決めたのは遅かったんです。12月のファイナル4が終わってからです。すごく悔しかった。全日本まではやることはやってきました。混合ダブルス、シングルスはやりきりました。でも最後のダブルスはもう少しできたんじゃないかなと。
 体の調子が悪いわけでもないし、まだまだできると思います。でも自分が強い時に終わりたかった。体が動かなくなってモチベーションが落ちてからやめるのは嫌でした。卓球を好きなままで終わりたいと思っていました。
 今月で31歳になります。ジュニアがどんどん出てくる時代でこの年齢までやれたことは幸せだと思います。最後に平野美宇ちゃんとも試合ができました。すごいなと思いますね。ボールが煙を噴いているんじゃないかと思うくらい回転がかかっていました。あんな世界があるんですね。楽しかったです。
 2月に大阪オープン、3月に東京オープンがあります。勝ちに行きますよ。一番強い私で終わりたいですね」(阿部)

卓球と真剣に向き合い、精緻に研究し続けた阿部。
卓球が大好きだからこそ、最高の敬意を表し、モチベーションが高いままラケットを置く。
お疲れ様でした。
 昨日、村松雄斗(東京アート)を倒した吉村和弘(愛知工大)が、大島祐哉(ファースト)を破り勝ち上がってきた宇田幸矢(JOCエリートアカデミー)に辛勝し、ランク入りを決めた。
 吉村真晴(名古屋ダイハツ)も勝ち進んでいるので、兄弟でランク入りを果たした。

「宇田選手も大島さんに勝って上がってきているので、簡単に勝てるとは最初から思ってなかったけど、それを乗り越えられて良かった。1-0、2-1とゲームをリードしたのに、6ゲーム目は戦術が単純になってしまって落とした。その戦術を最終ゲームで大きく変えました。
 ベスト16というランクは高い壁だと思っていたけど、卓球選手として上を目指す時にはベスト16には当然入らなければいけないと思っていたので、プレッシャーはありました」と試合後の吉村に笑顔はなかった。

●男子シングルス5回戦(ランク決定戦)
吉村和弘(愛知工業大) 6、-8、4、-6、9、-14、7 宇田幸矢(JOCエリートアカデミー) 

  • ゲームオールの接戦を制し初ランク入りした吉村和弘

 昨年はヨーロッパでの試合と重なり、この大会を欠場した吉田海偉(Global Athlete Project)が、ランク決定戦で徳永大輝(鹿児島相互信用金庫)に快勝し、ランク入りを決めた。

「楽しかったですね。広くて、2年ぶりだし、楽しかった。良い試合ができた。調子もいいです。10日前にポーランドから帰ってきて、正月も向こうでした。向こうで試合もできて、練習でも全日本に向けて良いイメージを持てた。組み合わせも良かったし、チャンスだと思ってましたし、1年間頑張ってきて神様がちゃんと見てくれていると思いますよ。
 全日本だから何があるかわからない。大島だって初戦で負けるし、ぼくの相手もノープレッシャーで来るからね。自分との戦いですね。楽しいけど緊張はあります。今35歳だし、あと何年できるかわからないけど、後悔しないように楽しくやりたい。ベスト16に入ったら、あとは上に行くしかない。ぼくのパフォーマンスはお客さんに見せますよ」
 吉田節も絶好調。次は得意とするカットマンの御内。すさまじいラリー戦になる気がする。

●男子シングルス5回戦(ランク決定戦)
吉田海偉(Global Athlete Project) 8、7、-8、6、6 徳永大輝(鹿児島相互信用金庫)
 2014年の世界選手権日本代表の塩野真人(東京アート)が最後のシングルスを終えた。相手はカット打ちに定評のある上田仁(協和発酵キリン)。4-1で上田が勝ち、二人は握手しながら涙した。
 
 試合後は上田が塩野以上に感涙にむせんだ。
 塩野は父がベンチに入り、最後の試合を見守ってもらった。
「ダブルスがまだあるので気持ちを切らさずにやっていきます。今は本当にやりきった感じです。今のぼくの力は出せたかなと思います。相手が一枚も二枚も上でした。終わった瞬間、(ウルウル)来ましたね。勝つことが選手の仕事だけど、過去を振り返る自分もいて、複雑でしたね。
 (お父さんがベンチに入った)結婚式のスピーチで全日本のベンチに入ってほしいと言ったので(笑)、ずっと見てもらった父なので、最後は近くで見てほしかった」

●男子シングルス5回戦(ランク決定戦)
上田仁(協和発酵キリン) 6、-11、8、4、4 塩野真人(東京アート)


 ジンタク、こと神巧也(シチズン)が帰ってきた。
 一昨年、初ランクでいきなり決勝まで進んだ。ところが昨年は初戦負け。昨年ランク入りを果たした松下海輝(日鉄住金物流)を倒し、2年ぶりのランク入りでもジンタクは満足していない。

「久しぶりですね。2年ぶり(のランク入り)ですね。一昨年、大島に0-3から逆転したけど、今回、逆に3-0から3-2になって、相手は力が抜けているし、こっちはあの1ゲームがほしいから受け身になってしまった。
 全日本はランクはひとつの基準になっていますが、ぼくは初ランクで決勝まで行っているのであまり意識はしていない。準決勝、決勝まで行くのが目標なので満足はしてないですね。そんなこと言いながらあんなに吠えて、満足しているのかなと思われるかもしれないけど(笑)、また頑張ります」
 満足はしていないが、ミックスゾーンで会心の笑顔を見せたジンタク。やはりこの男が吠えると会場が熱くなる。

  • 同じ大学の後輩に勝利してランク入りした神

 シチズンの御内健太郎が大学の後輩、上村慶哉(早稲田大)に勝ち、3年ぶり2度目のランク入りを果たした。

 「この1年間で今回が一番調子が良いかもしれない。仕事も休ませてもらって練習をやらせていただいているので調子は最高にいい。手の内はわかっている相手でした。一度ランク入りをしてから、それでは物足りなくなっているのでもっと上を目指して頑張ります」と御内。
 前回の初ランク入りの時には号泣した御内が爽やかな笑顔を見せ、さらに上を目指すコメントを残した。
 
●男子シングルス5回戦(ランク決定戦)
御内健太郎(シチズン時計) -9、6、-9、5、12、-8、5 上村慶哉(早稲田大)
  • ゲームオールの接戦を制した御内