速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

平成28年度全日本選手権速報

 ジュニアチャンピオンの木造勇人(愛工大名電高)が常勝の水谷隼(beacon.LAB)に挑む。2ゲーム目をジュースで取ったものの、ラリー戦での水谷の強さは際立っていた。

「思ったよりも相手が良いプレーをしてきたので苦しい試合でした。自分を信じて、次(準決勝)が決勝のつもりで1戦1戦、全力で戦いたい」と試合後の水谷のコメント。

●男子シングルス準々決勝
水谷隼(beacon.LAB) 8、-10、7、5、4 木造勇人(愛工大名電高) 
  • 水谷は余裕の勝利

  • 1ゲームを奪うにとどまった木造

3年連続で松澤を破り、準決勝に進出した平野美宇。平野のミドルへ食い込むようなバックサービスから、バックハンドの緩急とフォアのカウンターで勝負した松澤は平野を大いに苦しめたが、勝負所での平野のフォアクロスのフォアドライブは非常に厳しかった。

「松澤さんのバックサービスは他の人とは違うけど、去年もあまり取りづらくはなかった。ミスが出たのはこちらが原因。最後はしっかり調整できました。私のミスを待っていたので、こちらはまずミスをせず、その上でしっかり変化をつけていきました。
 (最年少優勝という)記録のためにやっているわけじゃないけど、最年少で優勝できたらうれしいし、今年は絶対に優勝したい。東京五輪までに自分が一番になりたい」(平野)

明日の準決勝は、昨年のジュニアで敗れたカットの橋本との対戦。「対攻撃はすごく良いプレーができている。対カットの準決勝が勝負だと思います。決勝まで進めれば優勝できるんじゃないかと思えるくらいのプレーができている。石川さんにも勝てる可能性はあると思う」。ゆったりした口調の中にも強気なコメント。優勝への意志を感じさせた。
 30年ぶりの快挙である。1986年度の内山京子以来の高校生カットマンのベスト4となった橋本帆乃香(四天王寺高3年)。
 同じクラブ(愛知・卓伸ジュニア)の出身の石垣優香(日本生命)と橋本。大先輩の石垣を高校生の橋本が破った。スタートから試合の流れをつかんだのは橋本だった。その流れを終始、離すことなく橋本は石垣に快勝した。

 試合後のミックスゾーンで、はにかみながら質問に答える橋本。
「去年の6月のワールドツアーで0-4で完敗した相手で、卓球策を練ってきたし、失うものがないので今日の試合では思い切って作戦を変えたし、出せるものを全部出した。前回はまったく相手の変化がわからなかったけど、今回はだいたいの変化がわかっていたので、相手に打たさずに、自分からいけるところはどんどん攻めていこうと思った。
 石垣さんはクラブ(卓伸ジュニア)の先輩だけど少ししかかぶっていない。今は実感がないし、ついて得点できたので申し訳ない。ただ目標にしていた選手なのでそこを超えたのはうれしいです。
 準決勝の平野さんは年下ですけど格上の選手なので、自分の持っているものを出すだけです」

●女子シングルス準々決勝
橋本帆乃香(四天王寺高)5、10、-8、7、8 石垣優香(日本生命) 
  • ベスト4進出を果たした橋本

  • 促進ルールとなったカット対決に敗れた石垣

●女子シングルス準々決勝
平野美宇(JOCエリートアカデミー/大原学園) 7、9、-10、-10、9、6 松澤茉里奈(十六銀行)
橋本帆乃香(四天王寺高) 5、10、-8、7、8 石垣優香(日本生命)

 平野と松澤は好ラリーが展開された。松澤が第3、4ゲームを奪い、第5ゲームも9-9となったが、平野が冷静なプレーで押し切った。
 同時進行のもう1試合はカット対決。促進ルールに入ったが、攻撃力に上回る橋本が競り勝った。


★松澤コメント
 3年連続、全日本で平野さんと対戦し、どの試合も4-3や4-2になっていたので、思い切って自分の卓球をするだけだった。私自身はそんなに悪くなく、技術変更なども冷静にできた。平野さんは一昨年、去年よりどんどん力をつけていて、まさかこんなに競れるとは思わなかった。平野さんは力がついて回転量が増し、1、2ゲーム目は対応できなかったが、3ゲーム目からそれを狙いにいったり、緩急をつけて、苦し紛れではあったがゲームを取れた。自分も攻める卓球なので、どんどん行こうと思った。5ゲーム目は競って9-9の時に迷ってしまったが、平野さんはその時も戦術がしっかりしていた。
 今大会、あまり調子は良くなく、ここまで来れるとは思っていなかった。監督やスタッフが調子が悪いなりにアドバイスをしくれたおかげで、自分の力だけでは来れなかった。

★石垣コメント
 相手のほうがサービス、3球目やツッツキの変化でチャンスを作るのがうまかった。私がやろうとしてもさせてくれなかった。促進ルールの時は相手の時に取れてしまった。
 今大会、調子は良かった。トレーニングをやってきて体もいい状態だった。ベスト8になれてうれしいが、もう1回勝てたり、決勝にいけるたりするチャンスがあったかもしれないので悔しい。
 (橋本さんとは同じ卓伸クラブ出身という意識は)少しはあった。悔しいが、後輩とこういう舞台でやれたことは嬉しいし、刺激になった。
  • 明日はカットの橋本との対戦となる平野

  • 3年連続平野に敗れた松澤

●女子シングルス準々決勝
佐藤瞳(ミキハウス) -9、5、-6、8、8、9 鈴木李茄(専修大)


 女子シングルス準々決勝で、佐藤瞳(ミキハウス)が序盤の劣勢をくつがえして勝利、初の準決勝進出を果たした。
 初のランク入り、そしてベスト8入りを果たし、好調の鈴木が序盤はリード。リラックスしたフォームから安定したカット打ちとストップで佐藤を翻弄。佐藤の攻撃も的確にブロックした。
 しかし第4ゲーム以降は佐藤が鈴木のプレーに対応、逆に鈴木にミスが出始めた。点数的には競ったが、佐藤の粘りが上回った。

★鈴木李茄 準々決勝後コメント
 佐藤さんとは去年のラン決で0-4で負けていたので思い切っていくだけでした。去年の反省を生かして1ゲーム先取し、いい試合ができてチャンスがあっただけに悔しい。去年は一方的に打ち過ぎていたので、攻守のバランスを考えた。
 これまでラン決には何度か来たがランクに入ったことがなく、今回ランク入りしベスト8にも入れたことで満足していた部分はあるが、今の試合は内容がもう少しで悔しい。
 全日本はどの選手も勝ちたいという気持ちが強い。私も3種目に出場し、接戦が多かったが、勝ちたいという気持ちは強かった。
●女子シングルス準々決勝
石川佳純(全農) 7、9、5、6 三宅菜津美(中国電力)

女子シングルス準々決勝、石川佳純は1歳年下の三宅をストレートで退けた。序盤はサービスもレシーブもコントロール重視、レシーブからの展開では無理に仕掛けずにラリー戦で得点を重ね、3ゲーム目からはエンジン全開。「まず三宅さんのスピードについていって、それから変化をつけていく戦い方だった。今日は4ゲーム目、挽回されて9ー6になった場面でサービスを出す位置を変えて、3球目攻撃で得点できたのが一番良いプレー。ラリーの中でも打球のタイミングを変えていくことを意識しました。試合の中での戦術転換と体の切れ、そして読みがよくなっている」(石川)。序盤で受け止め、中盤で押し込み、終盤でダメ押し。隙のない戦いぶりだった。

★三宅菜津美の準々決勝後のコメント

「去年ベスト64で今年はベスト8に入れたので、すごい自信になったが、まだまだやるべきことが多く、サービス、レシーブなど、もう少しつめてやっていく必要がある。
 (石川戦は)相手が強いので、戦術よりも雰囲気に呑まれないよう、自分のプレーをすることを心がけた。(6回戦で勝った)小道野さんは同級生で昔からよく知っている相手。接戦にはなったが落ち着いてプレーできた。
 今回、ノーシードから勝ち上がってきたが、3回戦の出雲さんとの試合で1-2の0-3から逆転できて、そこから自分のプレーをすることができた。今大会、いつもと変わらず、落ち着いて自分のペースでプレーできたのが良かった」
★大会第6日目・1月21日のタイムテーブル

10:00〜/11:00〜 ●女子シングルス準々決勝
石川佳純(全農) vs. 三宅菜津美(中国電力)
佐藤瞳(ミキハウス) vs. 鈴木李茄(専修大)

橋本帆乃香(四天王寺高) vs. 石垣優香(日本生命)
松澤茉里奈(十六銀行) vs. 平野美宇(JOCエリートアカデミー)

12:00〜/13:00〜 ●男子シングルス準々決勝
水谷隼(beacon.LAB) vs. 木造勇人(愛工大名電高)
平野友樹(協和発酵キリン) vs. 神巧也(シチズン時計)

吉田海偉(Global Athlete Project) vs. 龍崎東寅(JOCエリートアカデミー/帝京高)
吉村和弘(愛知工業大) vs. 上田仁(協和発酵キリン)


14:00〜 ●女子ダブルス準決勝
山本怜/明神佑実(中央大) vs. 土田美佳/宋恵佳(中国電力)
若宮三紗子/森さくら(日本生命) vs. 平田有貴/永尾尭子(アスモ)

14:35〜 ●男子ダブルス準決勝
水谷隼/吉田雅己(beacon.LAB/愛知工業大) vs. 丹羽孝希/酒井明日翔(明治大)
木造勇人/松山祐季(愛工大名電高) vs. 藤村友也/吉村和弘(愛知工業大)

15:40〜 ●女子ダブルス決勝
16:15〜 ●男子ダブルス決勝

週末を迎え、会場である東京体育館の外には長蛇の列ができた大会第6日目。今日は男女シングルス準々決勝と男女ダブルス準決勝・決勝が行われる。

石川佳純は右シェークバック表の三宅菜津美と対戦。三宅のバックサービスからの連続バックハンドが、どこまで石川に通じるか。平野美宇は松澤茉里奈との速攻対決。一昨年の6回戦では4ー3で、昨年の準々決勝では4-2で平野が勝利しており平野が優位だが、松澤の踏ん張りに期待したい。
男子シングルスは水谷隼と木造勇人の左腕対決。そして熱戦になりそうなのが平野友樹と神巧也の明治大同期対決だ。1ゲーム目のラブオールから両者の気合いが炸裂するだろう。会場を沸かせること必至だ。
  • 順調に勝利を重ねている石川

 男子ダブルス準々決勝で、激戦の末に敗れ、今回の全日本すべての種目が終了した張本智和(JOCエリートアカデミー)。ダブルス敗戦後に記者会見に臨んだが、表情からはやや疲労の色が見えた。

●張本智和会見
 「今日はダブルスしかなかったのでベスト4に入りたかったが、本当に悔しい。ジュニアは一番優勝したかったのに負けてしまって、今までの全日本で一番悔しかった全日本。試合に負けたあと『負けて得るものもある』と声をかけてくれた人もいて、今回勝てなかった理由をしっかり探して、次の大会につなげていきたい。一日一日を大事に、しっかり練習して、大きな舞台で絶対に負けない実力を持てるようにしたい。
 (今大会での課題は)大会前からわかっていたけど、フォアの威力がまだまだ他の選手に比べて弱い。世界ジュニアはプレッシャーもなく、思い切ったプレーができたけど、今回は自分のプレーもできてはいたけど、気持ちで相手に押されていたと思う。まわりから『プレッシャーがあったんじゃないの』と言われたけど、それのせいにしていたら絶対に強くなれない。自分の実力が足りなかったと認めて頑張っていきたい」


 男子シングルス4回戦進出、男子ダブルス・男子ジュニアでベスト8という成績は中学1年生ということを考えれば、とてつもない成績だが「一番悔しい全日本」と今大会を語った張本。もしかすると張本の卓球人生において、今回の全日本は初めての挫折だったのかもしれない。この敗戦を糧に、さらなる成長を遂げた“怪物”の姿を1年後の全日本で見せてほしい。
●男子ダブルス準々決勝
水谷/吉田(beacon.LAB/愛知工業大) 7、5、4 森薗/渡辺(明治大) 
丹羽/酒井(明治大) -5、10、9、-9、6 張/高木和(東京アート) 
木造/松山(愛工大名電高) -9、-10、9、10、4 宇田/張本(JOCエリートアカデミー) 
藤村/吉村(愛知工業大) 8、-10、-10、8、9 松生/鹿屋(リコー)

男子ダブルス準々決勝の結果は上記のとおり。水谷/吉田はここでもストレート勝ち。対戦相手がラリーで主導権を握っても、水谷が中陣からの威力あるバックドライブで形成を逆転し、吉田が正確なフォアドライブで仕留める。死角の見当たらない強さを見せている。

この男子ダブルスにメダルへの最後の望みをかけた宇田/張本は、木造/松山を2ー0とリードしながら逆転で敗れた。3ゲーム目以降にミスが増えたのは勝利への焦りなのか、押し切れそうで押し切れない宇田/張本。逆に愛工大名電ペアは木造が要所で驚異的なカウンターを連発。最終ゲーム10ー4のマッチポイントで見せたフォアクロスのカウンタードライブは、観客があっけにとられるほど鮮やかなものだった。
  • 逆転勝利を収めた愛工大名電ペア

  • 宇田/張本、懸命の攻撃も及ばず…

丹羽、吉村というリオ五輪メダリストたちが次々に姿を消す中、順当にベスト8に入った水谷が会見でコメントをした。
 「若手の活躍が目立っていますね。ボールが変わって、ある程度の波乱は想定していました。今日のシングルスは100点です。ダブルスはまだ競ってないので、このままオール3ー0で優勝したい。明日のシングルス準々決勝は木造ですが、正直上がってくるとは思っていませんでした。ジュニアチャンピオンだし、前回対戦した時はぼくも良いプレーをしたけど、競り合いになったので気が抜けない。伸びてきている選手なので決勝戦のつもりで戦いたい。彼はすごく向かってくると思うので、それに負けないようにしたい」

 また、ボールが違う海外と国内の試合の両立についての質問には
「ぼくは引き出しがすごく多いので、いろんな選手に対応できる。対応能力が他の選手とは違うかな。いろんなリーグでやってきた経験値も違うと思う。大逆転負けも何度も経験しているから、リードしてからの戦い方などもわかっている。負けてても勝つために自分がどうやればいいのかを考えられるので、経験が生きているのかなと思います」(水谷)

他の選手が接戦を苦しみながら勝ち上がる中、ひとり余裕のスコアの水谷。史上初となる9度目の優勝に待ったをかける選手はいるのか。