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2017世界ジュニア選手権大会

●男子団体決勝
〈中国 3−0 日本〉
○薛飛 −9、3、8、9 木造
○王楚欽 6、−8、6、6 田中
○徐海東 6、9、4 高見

男子団体決勝は中国が3−0で日本に勝利、2大会ぶり13回目の優勝!

ともに決勝トーナメントに入ってからは不動のオーダー、真っ向勝負の一戦。日本はトップ木造がアジアジュニア選手権で勝利した薛飛をつかまえ、幸先良く1ゲームを先取したが、中国の牙城を崩すことはできなかった。詳報は後ほど!
●女子団体決勝
〈中国 3−1 日本〉
○孫穎莎 4、−11、6、9 加藤
○王曼昱 9、2、−8、5 木原
 石洵瑶 −9、−9、7、−6 長崎○
○王曼昱 5、7、12 加藤

日本、3番長崎が殊勲の1勝を挙げるも及ばず、準優勝…!
中国が女子団体の王座を奪い返した。詳報は後ほど!
練習会場の一角に設けられた、アンチ・ドーピングの啓蒙活動を行うブースで、ひとりの日本人を発見。日本卓球協会・ドーピングコントロール委員会委員の岡田拓朗さんだ。本職は薬剤師で、千葉県鴨川市にある亀田総合病院に勤務している岡田さんは、今年4月から休職。スイス・ローザンヌにあるITTF本部で、アンチ・ドーピングのマネージャーであるフランソワさんの下で研修を受けている。

岡田さんがアンチ・ドーピングについての活動を志したきっかけは、うれしいことに卓球王国巻頭の『Person』ページで、アンチ・ドーピングの活動を行う松尾史朗さん(日本卓球協会 スポーツ医・科学委員会担当理事)を紹介した記事を読んだことだという。
「当時はまだ薬学部の学生だったんですが、アンチドーピングにはもともと興味があって、取り組むなら自分の好きな競技でやりたいなと思いました。そして松尾先生にお会いして、亀田総合病院に就職した2012年に日本卓球協会のスポーツ医・科学委員会に呼んでいただきました」(岡田さん)。

「ITTFは今アンチ・ドーピングのスタッフがひとりしかいないので、検査計画を立てたり、大会で選手教育のためのブースを出したり、現場でドーピングの計画がしっかり行われているかをチェックしたり、ひとりで全部の仕事をやっている。WADA(世界アンチ・ドーピング機関)からはアンチ・ドーピングの取り組みができているかどうかの調査も行われるので、その改善などをサポートしています。アンチ・ドーピングについて実際に現場で動くのは、国内ではJADA(日本アンチ・ドーピング機関)、海外では各競技のIF(国際競技連盟)などで、WADAは監視機関としての役割を果たしています。

選手の皆さんにとって、ドーピング検査というのは非常に大きな負担になると思います。それでも、たとえばドーピング検査を全く行わないようなスポーツだったら、オリンピック競技からも除外されてしまうでしょう。ですから、卓球というスポーツが、根拠を持ってクリーンだということを示さなければいけない。

12月に日本に帰国しますが、帰国後は日本卓球協会のドーピングコントロール委員会で、選手の方を守る手助けをしたい。禁止薬物についての問い合わせに答えたり、禁止物質でも治療に必要なものを使いたい時は、書類を書いて提出しなければならないので、そのサポートをしていきたい。松尾先生がITTFのスポーツ医・科学委員会でアンチ・ドーピング委員会のチーフになっているので、引き続きITTFとの連係もしっかりやっていきたいと思います」(岡田さん)

中学・高校では公立高校で卓球に励み、卓球レポートや卓球王国を読みあさる「卓球小僧」だったという岡田さん。ローザンヌの地元の卓球クラブで、ラケットを握ることもあるという。今年でまだ30歳、若き卓球界の「番人」の益々の活躍を期待したい。
  • 岡田さんのプレースタイルはカットマン。「やっぱり『守る』ほうなので(笑)」

5番ラストの最終ゲームまでもつれ込んだ、昨日の男子団体準決勝の日韓戦。一夜明けて田勢邦史監督が熱戦を振り返り、「準々決勝と準決勝は、選手たちがよく頑張ってくれたなというのが素直な感想です。要所、要所で取らなければいけないポイントを選手たちが取ってくれた」と語った。

「準々決勝のフランス戦に関しては、試合後に選手に伝えたのは、自信がなさそうな表情、「負けたらどうしよう」という雰囲気が感じられたので、もっと自信をもってやっていいということ。オーダーを決めるのは監督であるぼくなので、思い切ってやっていいと。また、試合の終盤で3点、4点とリードした時にプレーがセーフティ(安定重視)になる印象があった。まずチキータをして、確実にラリーに持ち込もうという感じがあった。国際大会では自分から仕掛けていって、自分から点を取りに行く姿勢を最後まで貫くことが大切。少しでも相手に余裕を与えると、すぐに逆転されてしまいますから。

フランス戦の後で、オーダーについては少し考えましたが、韓国も日本も3番は必勝だと分かっていた。フランスの3番と韓国の3番が、同じ左腕で似たようなタイプだったので、フランス戦3番で髙見は負けましたが、少し戦術面を含めて修正すれば、カバーできると感じた。オーダーを変えずに戦うと決めました。

韓国戦はトップ田中が、2ゲーム目を1−11で落とす中、最終ゲームまで持ち込む頑張りを見せてくれた。チームとしては良い流れを作ってくれた。安宰賢はチキータが少なくて、フォアでレシーブをして、チャンスボールはすかさずフォアハンドで狙う。そのフォアの体勢に入るのが非常に速いんです。少しでもつないだボールは一発で盛り返してくるので、それは日本選手も見習うべき部分でしょう。田中には、得意のバックで強打よりもピッチの早いボールを送れば、安宰賢が回り込んだとしても詰まる。チャンスボールが来ればそこを狙うという作戦でした。フォア前はストップしかないので、サービスもレシーブもフォア前が中心でした。

ラストでの田中の試合については、3ゲーム目の9−10でのエッジかサイドか微妙なポイントは、最終的には審判の判断だから気にするなと言った。でもあの一本だけじゃなかったですからね。国際大会でずっとベンチに入ってますけど、これだけツキのないベンチは初めてじゃないかと思いました。ポイントがほしいところで6本、7本くらいネットインやエッジがあった。しかもゲームカウント1−2の4ゲーム目、5−7から田中はフォア前を2本連続でネットミスした。

正直、もうやることがなくなった状態からの逆転でした。「勝ちに不思議の勝ちあり」という言葉がありますが、あれだけツキがない中で逆転できたのは、本当に不思議です。あれだけアンラッキーな場面が続いても、表情にも態度にも出さず、我慢した田中の人間性が最後に出たのかな。最後は神様が味方してくれたのかなと思います。田中はどんな状況でも、どんな相手でもガッツを出して最後まで諦めない。そういうプレーはもちろん団体戦にも向いているし、強くなる要素のひとつだと後ろで見ていて思います」(田勢監督)

……少々長くなってしまいましたが、内容が面白いのでドーンと掲載。決勝の中国戦については「恐らく今までどおりの3人(王楚欽・薛飛・徐海東)で来るでしょう。アジアジュニアで木造が薛飛に勝っているので、それを前半に当てるか、後半に当てるかですが、こちらも真っ向勝負のオーダーでいきたい。田中はこれまでひとりも中国選手と戦ったことがないというので、彼がどんな戦い方をするのかも楽しみですね」と田勢監督。これまで苦戦らしい苦戦のない中国男子にひと泡吹かせて、浮き足立たせることができれば、チャンスは大きく広がるだろう。
世界ジュニアで撮影した写真の中から、ちょっと気になる何枚かをお届けしましょう。

上写真の2枚は、中国女子が行っていたナゾの訓練。背後から選手の頭越しにテニスボールを投げて、バウンドしたボールを急いでキャッチ。「背中にも目を持て」なんて言われているのか。石洵瑶は完全にビビってました。

続く2枚は、プエルトリコのディアス姉妹。左が姉のディアス、右が妹のファビオラ。……相当似てますが、妹さんのほうがよりお父さん似。お父さんはプエルトリコの監督であるブラディミルさん。

かなりの偏食だというディアスが、最近ちょっとぽっちゃりしてきているのは気になるところ。9月にカリブ海を襲ったハリケーンでほぼ全土が停電し、家族が一時アメリカに避難するほど大変な状況だったとか。その直後に来日して早稲田大などで練習を積み、今大会前にスウェーデン・ハルムスタッドで行われた日本女子の合宿にも参加した。まだまだ伸びてほしい逸材だ。

三段目の左は、ブラジルの日系選手、エドアルド・トモイケ。地球の裏側で、日ペンが生きていますよ。何となく、雰囲気が三重のペンドラの星・前出陸杜くんに似ているような気がするのは、ペンドラという先入観ゆえか……。
三段目の右もペンホルダー。左腕のベルトランと対戦している、左腕の木造選手にアドバイスする、左腕の田㔟監督。完全にペンホルダーグリップです。

一番下は、ITTFの依頼で、名物の「自撮り」に挑む日本女子チーム。テイク4か、テイク5でようやく決まりました。
  • 背後からテニスボールをポイ

  • あわてて取りに走る石洵瑶

  • プエルトリコのディアス、団体戦では孤軍奮闘

  • ちょっとドスコイ感が出ている妹さん

  • 麗しの日ペン、トモイケ選手

  • 対左のコースの説明……ですね

  • ITTFのイアンさんを、名前で混乱させている日本女子チーム

昨日の男子団体準決勝、日本対韓国戦。ラスト田中が喫したエッジボールやネットインの数は尋常ではなかった。3ゲーム目の9−10でのエッジ、サイドの微妙な判定を始め、「ここで1本」という大事な場面で、不運な失点があった。

並の若手選手、特にヨーロッパの選手だったら、ラケットを台の上に放り出して、集中力を切らしていたかもしれない。しかし、田中は決してくさることはなく、冷静にプレー。ナーバスになったパク・ホギュンから逆転勝利を収めた。

試合後、ITTFのイアン・マーシャルさんは「とても立派な試合態度だった」と田中を賞賛。昨日、現地に到着したITTFの前原正浩副会長からも、「普通だったら、若手があんなに堂々とはプレーできないよ。大したものだと思う。審判員の人たちも、みんな田中の試合態度をほめていた」と聞いた。

このような国際大会で、技術力だけでなく試合での態度で日本選手が賞賛されるというのは、とても誇らしいこと。決勝の中国戦でも、日本の若武者たちには、フェアで集中力の高いプレーを見せてもらいたい。
大会第4日目の11月29日、今日は午前・午後は混合ダブルスの予選ラウンドと1・2回戦(ベスト16決定戦)が行われる。日本からは田中佑汰/長﨑美柚と、髙見真己/木村光歩の2ペアが本戦の1回戦から出場する。

女子団体決勝は現地時間17時(日本時間30日午前1時)、男子団体決勝は現地時間19時(日本時間30日午前3時)に開始予定。……この時差だけはいかんともしがたい。昨日はホテルに深夜0時近くに戻り、「日本はもう朝だ!」と速報に取りかかったものの、男子団体準決勝を書く前に3時間ほど寝てしまいました。スミマセン。

会場のあるリーヴァ・デル・ガルダは周囲を断崖絶壁に囲まれ、「これがアルプス(の端っこ)か……」という感じ。気温は最低気温が氷点下まで下がり、夜にバスに乗り込むときは相当冷えますね。
  • 会場の裏にそびえ立つ断崖

  • ホテルのそばにはクラシックな教会も

  • 会場は展示場なので、スポーツ施設らしい雰囲気はナシ

  • トヨタが大会スポンサー。送迎などに使う車両を提供しています

日本と韓国が白熱の一戦を繰り広げる中、隣のコートでは中国がルーマニアに完勝し、労せずして男子団体決勝へと勝ち上がった。

左シェークドライブの王楚欽、右シェークドライブの牛冠凱に、右ペンドライブ型の薛飛と徐海東というのが今回の中国男子のメンバー。薛飛はプレテアに中陣で粘られたが、結局はストレート勝ち。2番王楚欽はサービスと小さく切れたストップだけで、シポシュにまったく卓球をさせなかった。これまで快進撃を続けてきたシポシュの神通力も、中国には通じなかった。

気鋭の若手・牛冠凱が完全に「ビデオ係」になっているのは不可解。秘密兵器として、決勝の日本戦でいきなり2点起用……という可能性もなくはないが、結果が求められる今の中国にその余裕があるかどうか。薛飛と王楚欽の2点起用、3番徐海東というオーダーが現実的だ。

この3人の中で、やはり王楚欽は頭ひとつ抜けている。中国でも「数年後、必ず王楚欽の時代が来る」という声はある。一方でそれは、他にあまり有望な若手がいないということ。
薛飛の教科書的なフォアドライブのフォームは美しいが、馬琳のような良い意味で狡猾(こうかつ)なプレーがもっとあってもいい。フォアクロスの打ち合いに素直に応じて、ベンチの劉志軍監督に怒られている。徐海東はフットワークを生かした連続ドライブで攻めるが、許シンのような超人的な身体能力はないし、裏面打法の攻撃力も物足りない。

7月のアジアジュニアでは、木造と髙見が王楚欽にストレートで敗れている。王楚欽に2点取られることはある程度覚悟しなければならないが、薛飛と徐海東から何とか1点をもぎ取り、大応援団の声援をバックに中国にプレッシャーをかけたい。快勝を続ける中国だが、今大会は王座奪還に向け、相当なプレッシャーがあることも確かだ。

また、今大会の卓球台は「すべる」という選手の声が多く、女子団体準決勝では王曼昱のサービスが次々に台から出て、ドラゴマンにレシーブから打たれていた。中国選手はインパクトから第1バウンドまでの時間が短い、低くすべるようなサービスを使うので、サービスへの影響がより大きいのではないか。台から出るサービスを判断よく狙っていき、プレッシャーをかけていきたい。
  • 王楚欽のパワードライブのスピードは大会随一

  • 徐海東、裏面ドライブは威力より安定重視

  • 薛飛……お殿様顔ですね

●男子団体準決勝
〈日本 3−2 韓国〉
 田中 −8、−1、8、10、−5 安宰賢○
○木造 7、5、6 パク・ホギュン
○髙見 8、9、12 クァク・ユビン
 木造 8、−6、−11、−7 安宰賢○
○田中 −12、12、−9、9、5 パク・ホギュン

〈中国 3−0 ルーマニア〉
○薛飛 8、9、13 プレテア
○王楚欽 5、4、3 シポシュ
○徐海東 −9、6、6、3 オプレア

日本男子、木造、髙見、田中の3人が1勝ずつを挙げて韓国を撃破! 決勝進出!

5番田中対パク・ホギュン戦、中盤でのパクのエッジボール、ネットインなどのラッキーポイントの多さは異常なほどだった。田中が6−10から9−10まで追い上げた3ゲーム目、パクが後陣で大きく飛びついたボールが、田中のコートをかすめる。「跳ねずにまっすぐ下に落ちた、エッジではなくサイド」と日本ベンチの田㔟監督は主張し、両チームの応援団からも「サイド!」「エッジ!」という声が飛び交ったが、判定はエッジ。4ゲーム目もパクのエッジボールが多く、5−9まで離される。

韓国の勝利は目前。しかし、田中が8−9まで追い上げて韓国ベンチがタイムアウトを取り、ベンチに戻ってきたパクの顔は蒼白(そうはく)だった。完全にビビっていた。次の1本、パクのサービスミスで田中が9−9に追いつき、6点連取で11−9と大逆転。

ベンチでしゃがみ込み、意気消沈のパク。試合の主導権は完全に田中に移った。5ゲーム目の0−0、強烈なバックドライブの連打で田中が先制すると、一気に5−0、9−4とリードを広げ、11−5で勝利。試合時間、3時間9分。フランス戦に続く3時間超えの熱戦を制して、日本が7大会連続(参加を見送った15年大会は除外)の決勝進出を果たした。決勝の対戦相手はルーマニアを完封した中国だ。

カウンターが難しいボールは回転量を増やしてうまく攻め、2番で勝利した木造。「フランス戦は自分から崩れてしまった。でも韓国戦に向けて切り替えることができて、練習の段階から良い準備をしようと、集中力を切らさずにやっていた」という髙見の、3番での勝利も見事だった。まさに総力戦での勝利だった。

★2試合続けてラストで勝利した田中のコメント
「勝てるとは思っていなかった。(ラストは)1−2の5−9までいっていたので……。素直に『うれしい』という言葉しか出てこないです。アンラッキーなポイントが多かったんですけど、なんとか我慢できた、耐えることができたのが一番良かったところです」
  • 2試合続けてチームの救世主となった田中

  • ラストで敗戦の瀬戸際から逆転勝利!

  • 2番で勝利を挙げた木造

  • 3番髙見はフランス戦から見事に切り替えていた

  • 中陣で強打をさばくセンスは抜群だった安宰賢

  • パク・ホギュン、4ゲーム目を逆転されて意気消沈

  • 日本ベンチも燃えた!

トップでカットの金裕珍を粉砕し、韓国戦の勝利の立役者となった加藤美優。試合後、ITTFのインタビューに答え、「今大会ではキャプテンなので、絶対に勝たないといけないと思って試合に臨みました」と語った。「明日の中国戦への抱負は?」という質問には、「相手はすごく強い選手だと思いますけど、絶対勝つんだという気持ちを持って、自信を持って頑張りたい」とコメントした。

ベンチに入った渡辺隆司監督は、加藤がこの1年ほど、長期的にカット打ちの強化に取り組んできたことを明かした。「加藤はこの1年くらいで飛躍的にカット打ちがうまくなりました。本人もカット打ちという課題を克服するために努力していましたし、NT合宿で馬場監督にアドバイスをもらったりして、非常にレベルが上がっている。金裕珍は去年伊藤(美誠)が負けている相手なので、油断はできなかったんですが、トップで良い流れを作ってくれました」(渡邊監督)。

ミドルを中心に、カット型の弱点を的確に突いていた加藤。スウェーデンオープンであのハン・イン(ドイツ)に勝つほどの実力は、やはりダテではなかった。明日の決勝も、闘志を前面に出して戦ってもらいたい。