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2018世界卓球ハルムスタッド大会速報

●男子予選グループ・第2戦
〈日本 3−0 ベラルーシ〉
○張本 −9、−9、6、10、8 サムソノフ
○丹羽 −7、−11、5、9、7 プラトノフ
○水谷 5、6、9 カニン

トップ張本がサムソノフに劇的勝利を収めた日本、ベラルーシを撃破!!

この試合はトップ張本対サムソノフの一戦が大きかった。出足から張本の緊張を見透かすかのように、長短の読みにくいフォアのフリックとストップで張本を揺さぶり、じっくりと構えたサムソノフ。張本は2ゲームを連取され、3ゲーム目に0−3とリードされてタイムアウト、このゲームは何とかしのいだものの、4ゲーム目には9−10でマッチポイントを取られるなど、何度も追いつめられた。このサムソノフのマッチポイントは、張本のチキータを狙ったサムソノフの渾身のフォアストレートがネットにかかり、張本が最終ゲームに持ち込む。

最終ゲームはサムソノフの強烈なバックストレートへのバックハンドが決まり、中盤でズルズルと離された張本。3−8までリードされ、万事休すかと思われたが、ここから張本の攻撃に全くミスが出ない。この試合、有効だったミドルへのパワードライブを叩き込み、9−8と逆転した場面ではサムソノフのロビングからの逆襲バックドライブを、フォアスマッシュで打ち抜く。最後もサムソノフのミドルへフォアドライブを決め、「信じられない!」と言わんばかりに天を仰いだ。

この流れに乗っていきたい日本。しかし、2番丹羽がベテラン・プラトノフに2ゲームを先取され、2試合続けて0−2のビハインドからのスタート。脇の締まった独特のスイングのプラトノフはミドル攻めに強く、打球のコースも読みにくかった。丹羽は中盤から1球で決めにいくのではなく、2球、3球という連打のコース取りで逆転勝ちを収めた。

3番は今大会初出場の水谷。出足は自分から強振するプレーはほとんどなく、前陣でのブロックから後陣でのロビングまで、打球感や台との距離感を確かめながらボールを打っていた。それでも実力差は歴然。この試合で唯一、安心して見ていられるプレーでカニンを下した。背中の張りの影響は、この試合に関してはそれほど感じられなかった。
  • トップ張本、神がかりの8点連取!

  • 敗れたとはいえ、今日のサムソノフは強かった

  • 2番で丹羽を苦しめたプラトノフ。ぺちょんと打つフォアハンドが意外に速い

  • スッキリしない試合を、3番でスッキリ締めた水谷

今日、大会2日目は平日の月曜日。例年、日曜日に開幕する世界卓球。開幕初日はそこそこ観客が入っても、翌日はガラガラになって「アレ??」と思うことが多いのだが、今日は朝10時からスウェーデン男子対香港男子という好カードが行われることもあり、想像以上に観客がよく入っている。
 試合に出場するヨン・パーソン、クリスチャン・カールソン、マティアス・カールソンが入場してくると、観客は総立ちになって拍手を送った。競った場面では足を踏みならし、選手たちを後押しする。選手たちへのリスペクト(敬意)の中に、スウェーデン栄光の時代はまだ薫っている。
  • 昨日のルーマニア戦で勝利したM.カールソン、声援に応える

  • クリサンとの激戦を制したヨン・パーソンは、拳を振り上げた

  • テレビのインタビューに答えるエクホルム

  • 回転量が非常に多いエクホルムのドライブ

  • 観客席の小さな応援者

  • マスコットのホルモーも、ベンチ裏で試合を見守っている

 今朝、会場について練習場をのぞくと水谷が練習をしていた。
 見る限りは、普段とそんなに変わらない様子だった。軽く流すとか、様子を探っているようなボールの打ち方ではなく、「さあ、これから試合」というような練習だった。

 そこから1時間後にオーダーが発表。そして水谷は3番で起用された。背中の張りの状態、そして今回から新しく身につけたメガネの様子を見るための起用かもしれない。

 日本 vs. ベラルーシ
張本  VS サムソノフ
丹羽  VS. プラトノフ
水谷  VS.  カニン

 いずれにしても、水谷はたった一日で帰ってきた。
 サムソノフとの試合はいまの水谷には負担が大きい。あえて3番に下げたオーダーにしたのか。ベラルーシは前回、日本戦では出なかったが、「水谷が出ないのか」という読みで、サムソノフを起用したのか。微妙な駆け引きがある。
 しかし、まだ水谷に負担をかけるわけには行かないだろう。丹羽と張本が確実に勝つことが何よりの「水谷への良薬」になるだろう。
  • 今日の朝、メガネ姿で練習する水谷

  • 試合前の気合いの入った練習をしていた

 これは緊急事態なのか、それとも日本の力が試されるときなのか。
 昨日、初戦のベルギー戦をストレート勝ちでクリアした日本男子。大会2日目の今日、午前10時にベラルーシと、夜の7時には前大会3位で、準決勝で日本と競り合ったイングランドと対戦する。

 昨日の試合後の会見では、「水谷はまだわからない。水谷が帰ってくるまでみんなで全勝を守ろうと選手には言いました」と倉嶋監督が言えば、丹羽は「水谷さんが戻ってくるまでチームの総合力で頑張りたい」とコメント。
 張本も「水谷さんというエースがいないのは寂しいけど、それでも勝てるチームだと思っています」と語った。

 その言葉の裏には、水谷はいつコートに戻ってくるかわからない、それまで堪え忍んで持ちこたえる、という思いが隠されている。一昨日の監督は「現地の練習で背中に張りを覚えた。日本での合宿では相当に練習をやっていたし、調子も良かった。その疲れもあったのでしょう。でも、大事(おおごと)ではない」と語っていた。
 それはマスコミを前にして、不安要素をことさら語ることをしなかっただけかもしれない。水谷は今晩のイングランド戦で復活するのか、それとも今日も休みを取り、明日、もしくは明後日あたりに照準を絞るのか。

 今日のイングランド戦が前半戦の大きなヤマになるかもしれない。相手チームのメンバーは、ピチフォード(世界65位)、ドリンコール(同52位)、ウォーカー(同96位)の3人。一見、世界ランキングは低いのだが、イングランドの選手は協会の予算が少なくツアーにはあまり参加できていない。彼らの実力はあなどれない。
 前回のクアラルンプール大会では、大島が起用され、ウォーカーに敗れ、水谷が2点取りした。また2月のワールドチームカップでは張本がピチフォードにストレートで敗れている。

 かつて水谷はリオ五輪後の自身のインタビューで「ぼくがいなかったら、日本は世界でもベスト8か16くらいの成績? それは事実でしょう。ぼくがいなかったらどうなるんだろうと思っても、ぼくはいるんですよ(笑)」と答えたことがある。 
 これは自分の強さを誇張して言ったわけじゃない。周りは日本男子チームの力を冷静に見ていない。簡単に銀メダルや銅メダルを取れるわけじゃないんだということを言いたかったのだろう。「ぼくはいるんですよ」と言っていた水谷が今日、いないかもしれない。

 現実的に、水谷というエースがいない中で、丹羽がどれだけ力を発揮できるのか、張本が全日本チャンピオンとしての強さを見せつけるのか、大島や松平がポイントゲッターとしての存在感を出せるのか。
 もし水谷欠場となった場合の今晩のイングランド戦が、日本男子の真価が問われる試合となるだろう。
●男子予選グループD・第1戦
〈フランス 3−2 インド〉
○ゴーズィ −11、7、−7、10、10 グナナセカラン
 ルベッソン 9、−5、−9、−11 アチャンタ○ 
○Q.ロビノ 7、−7、9、−5、6 アントニー
 ゴーズィ −8、−7、10、−12 アチャンタ○
○ルベッソン −11、4、9、3 グナナセカラン

男子チャンピオンシップディビジョンの「死の組」といえば、グループD。フランス、韓国、オーストリア、インド、クロアチア、ポーランドと強豪揃い。第1戦のフランス対インド戦から、ラストまでもつれる激戦となった。インドはエースのアチャンタがフランスから2点を奪った。もう35歳になるアチャンタ、一時ほどの強さはないように感じていたが、硬いプラボールの導入でまた息を吹き返してきた感じ。ラリー戦での強さが際立っていた。

そして2点を落としたとはいえ、グナナセカランも強かった。トップではゴーズィから何度もマッチポイントを奪った。細身の体型で、一発の破壊力はあまりないのだが、とにかくブロックがよく止まる。
「ブロックマンなんて、最近の卓球界ではいないですよね、もう」「いないね」
「誰を連想しますか、ブロックマンというと?」「古い人挙げていい? ドイツのリーク(69年世界団体2位・西ドイツ)」
「ぼくはベーム(元ドイツ代表)ですかね……」

プレストリュビューンの編集長・今野と編集部・タローはそんな話をしたのでした。グナナセカラン、フォアの攻撃力もあり、純粋なブロックマンというわけではないのだが、見ていて楽しいプレーヤー。ただ、ラストのルベッソンに対しては、ルベッソンの変則的なスイングとフォアストレートのコース取りに待ちを狂わされ、ゴーズィ相手にあれだけ止まっていたブロックが止まらなかった。
  • テニス選手のような雰囲気のアチャンタ

  • 止めまくるぜ、グナナセカラン

  • フランスのピンチを救ったルベッソン

●女子予選グループ・第2戦
〈日本 3−0 エジプト〉
○伊藤 4、6、12 アブデル−アジズ
○早田 9、8、6 メシュレフ
○石川 7、6、9 エル−エラキ

日本女子、エジプト戦も競り合いながらも1ゲームも落とすことなく、ストレート勝ち!
格下のエジプト相手にも伊藤、早田、石川と主力を揃えて臨んだ日本女子。そして、エジプトはやはり油断のならないチームだった。出場した3選手はいずれもバックハンドが強く、アブデル−アジズはコースの読みにくいバックドライブが武器。ともに左腕のメシュレフとエル-エラキはよく似たタイプで、前陣で回転量の多いバックドライブを連打し、バック対バックでは早田や石川が押される場面もあった。

しかし、サービス・レシーブではやはり日本が上。ゲーム終盤にグッと伸びる巻き込みサービスを連発した伊藤、早田も勝負所では思い切り切って出す巻き込みサービスで難敵メシュレフを下した。3番石川も競り合いながらも、安心して見ていられる内容だった。

試合後、馬場監督は「早田は、これから試合がどのようになっていくかわからないので起用しました。彼女は力んでいて緊張してましたが、これで肩の力が抜けてできると思います」とコメント。世界団体のデビュー戦を勝利で飾った早田は、「自分らしいプレーもあったし、最初だったので力んだ部分もあったけど、そこはしっかり反省したい。初戦としては良かった。最後まで攻めていくことはできた。1,2ゲーム目、ミドルを攻められたので、3ゲーム目はそれを狙いにいこうと思って回り込みを多くした」と語った。
  • 競った場面ほど積極的にフォアで攻めた早田

  • アフリカチャンピオンの意地を見せたメシュレフ

  • エジプトの3番エル-エラキもバックハンドが強かった

 日本男子の初戦の相手はベルギー。ベンチにはカムバックしたJ.セイブが座るが、オーダーには入ってこなかった。日本は初戦ではあるが、現地入りしてからの練習で背中に張りを訴えているエース・水谷をオーダーから外し、丹羽・張本・松平の布陣で臨んだ。
 丹羽、張本が相手を圧倒し、3番の松平は競ったものの要所でサービスを効かせ、緻密なプレーでデュボスを下し、日本は3-0でベルギーに完勝。幸先良いスタートを切った。

●男子団体予選グループ第1戦
 〈日本 3-0 ベルギー〉
○丹羽孝希 3、4、7   ニューティンク
○張本智和 8、8、4   ランビエ
○松平健太 5、-11、7、9 デュボス

倉嶋監督のコメント
「丹羽、張本は初戦にしては良い出来。健太も出足からサービス、レシーブは正確にできていたし、3選手とも凡ミスがない試合だった。丹羽にトップで1点取ってから張本につないだほうが良いと思ったし、張本はYで2番と4番でエース使いをするつもりだった。張本は1試合目は良くないけど、今回は良かった。かなり精度も高かった。丹羽も張本も100点だったし、健太も手応えをつかんだと思う。水谷はわからないです。今いるメンバーで水谷が帰ってくるまで全勝を守ろうと言ってました」

丹羽孝希のコメント
「初戦は大事だし、チームの勢いもつけなければいけないし、良いプレーができたと思う。1番なので良い流れを作りたかったし、相手もエースだったので集中してやれた。下がると厳しくなるのでリスクを負ってでも前で攻めようと思った。調子は良いので明日につながる。試合前は緊張したけど、1ゲーム目を取ってからは緊張せずに自分の流れでできた。水谷さんが戻ってくるまでチームの総合力で頑張りたい」

張本智和のコメント
「丹羽さんが3-0で勝ってくれて、自分も楽にプレーができて結構良いプレーができました。バックはいつも通りで、フォアも悪くはなかったけど、台上があまり良い感じではなかったので、明日までに修正したい。水谷さんというエースがいないのは寂しいけど、それでも勝てるチームだと思っています」

松平健太のコメント
「チームの流れは良かったけど、ぼく自身は内容としてあまり良くなかった。でも勝てて良かった」
  • 今日の孝希は強かった。水谷不在のチームを救うプレーだった

  • 徐々に硬さが取れ、デビュー戦をストレート勝ちで飾った張本

  • 松平はさすがのコース取りを見せた

  • 張本にアドバイスする倉嶋監督。水谷不在を総力戦で乗り切る構えだ

 世界選手権ではいつも初日の夕方に開会式が行われる。その前に試合はすでに行われている。
 ハルムスタッドでの開会式は、質素ではあるが、ハートフルな雰囲気の中で終わった。始球式はセンターコートにボ・パーソン(1973年世界団体優勝メンバー)、アンダース・ヨハンソン(元スウェーデン監督)、そして「ミスター・ハルムスタッド」のレジェンド、ヨルゲン・パーソン(1991年世界チャンピオン)の3人が揃った。

 その後、国際卓球連盟のトーマス・バイカート会長とスウェーデン卓球協会のペトラ・ゾーリング会長がスピーチ。最後は地元の学生たちによる、美しいスウェーデン国歌の斉唱で締めた。
  • 開会式は激しいダンスで幕開け

  • 左からボ・パーソン、ヨルゲン・パーソン、アンダース・ヨハンソン

  • 国歌斉唱の歌声は美しかった

●男子団体予選グループ第1戦
〈ドイツ 3-2 エジプト〉
○ボル 4、5、4 エル-ベイアリ
 フィルス 4、-9、-9、-9 O.アサール○
○オフチャロフ 12、7、-9、6 K.アサール
 ボル -9、5、-10、9、-8 O.アサール○
○フィルス 5、6、8 エル-ベイアリ

 男子チャンピオンシップディビジョンも第1戦が進行中。ドイツ対エジプトはドイツの一方的な勝利かと思われたが、O.アサールが2番でフィルス、4番ではなんとボルに勝利。ボル戦のラストでは、ボルのバックサイドを素晴らしいフォアドライブで打ち抜き、試合を決めた。
 試合はラストをフィルスが締めたドイツが勝利したが、オフチャロフを3番に下げたのはフィルスへの信頼ゆえか、それともエジプトをややあまく見たか。ドイツとしてはヒヤリとする試合だった。

 それにしても、O.アサールの球さばきは実に面白い。サービスはズバッと切って出すYGサービス。レシーブは一発の強打を防ぐストップレシーブが主体で、そこまで厳しさはないのだが、ラリー戦になると強い。194cmの長身で、台から距離を取って中陣に構え、カーブで曲げたり、シュートで流したりと多彩な横回転を加えながら相手の強打を受け止め、チャンスボールには剛球を打ち込んでいく。相手に押し込まれて後陣に下げられても粘り強い。O.アサールに台から距離を取られたら、相手はズルズルとラリー戦に引きずり込まれる。まるで流砂に足をくわえ込まれたようなもの……か?(エジプトのイメージに引っ張られすぎですか)。
 ベンチには大ベテランのラシンもいるエジプトだが、さすがにピークは過ぎている。アサール兄弟に加えてもう一枚駒が揃えば、というところだ。
  • フィルス戦は完敗ムードをひっくり返したO.アサール

  • 後ろに下がった時の粘り強さは、相変わらず天下一品だ

  • 第1シードのドイツ、エースのボルがいきなり敗れた

  • 前回大会では悔しい思いをしたフィルス、ラストを締める

 メインアリーナの他に第二会場、第三会場もあるハルムスタッドアリーナ。セカンドディビジョンが行われている第二会場に、世界戦の舞台に復帰したメイス(デンマーク)の姿があった。

 デンマークの対戦相手はカナダ。メイスは3番に出場し、中国系選手のテレンス・ヤンと対戦。メイスのサービスをまともにレシーブできず、かなり実力差のある相手で、メイスは危なげなくストレート勝ちを収めた。そんな試合の後でも、入念にマッサージを受けていたメイス。故障続きの選手だけに、体のケアには気を遣っている様子がうかがえた。
  • メイスは第二会場でのプレー

  • 一方的なスコアでストレート勝ちを収めた

  • 試合後、マッサーに揉みほぐしてもらう

  • …この方は! 第二会場にいた粒高のカリスマ、Dr.ノイバウアー氏