速報・現地リポート

トップニュース速報・現地リポート

2018世界卓球ハルムスタッド大会速報

 スウェーデンは国際卓球連盟の創立協会のうちのひとつ。1926年に1回目の世界選手権が開催されているが、2回目は2年後の1928年にストックホルムで開催されている。過去に開催した大会は下記のとおりだ。

1928年ストックホルム
1949年ストックホルム
1957年ストックホルム
1967年ストックホルム
1985年イエテボリ
1993年イエテボリ
2018年ハルムスタッド
 
 今回がスウェーデンでの開催は7回目。卓球の伝統を持つスウェーデンで、過去にはベンクソン、ワルドナー、パーソンという世界チャンピオンを輩出した。日本より大きな国土に、人口は現在980万人の北欧の国だが社会保障が整った福祉国家である。
 税率は高いが、病院や学校は無料、女性もほぼ100%仕事に従事し、子どもを育てる環境も充実している。
 また、H&M、ノキア、IKEYA、VOLVOなどの世界的な企業を持っている。

 過去の世界選手権の歴史をさかのぼるとスウェーデンは
1967年、1969年、アルセアとヨハンソンが男子ダブルスチャンピオン、
1971年にはシングルスでベンクソン、
1973年には男子団体とベンクソンとヨハンソンの男子ダブルス、
1985年にはアペルグレンとウルフ・カールソンの男子ダブルス、
1989年に男子団体とワルドナーのシングルス、
1991年は男子団体とパーソンのシングルス、ピーター・カールソンとフォン・シェーレの男子ダブルス、
1993年は男子団体、
1997年はワルドナーのシングルス、
2000年は男子団体、
以上の数多くの世界タイトルを獲得してきた協会である。

 そんなスウェーデンで1993年以来、25年ぶりの世界選手権である。スウェーデンの栄光の時代を知っている人も、知らない若い人もこの世界選手権を心待ちにしていた。
 今大会の初戦となる女子チャンピオンシップディビジョンの予選グループ第1戦に先駆け、メインアリーナのセンターコートにはスウェーデンが誇る女子の「レジェンド」たちが登場した。地元出身のパーソンや、ともに一時代を築いたワルドナー、アペルグレンらが姿を現すかと思いきや、「それはまだ早いよ」ということか?

 下写真の右から、74年ヨーロッパ選手権2位のヘルマン、94年ヨーロッパ選手権優勝のマリー・スヴェンソン、そして90年代にスウェーデン女子の主力として活躍したオーサ・スヴェンソン。オーサは、日本の十六銀行でもプレーした経験を持っており、パーソンと同じくこのハルムスタッドの出身だ。
 卓球台が小さく見える「長身対決」だった。女子チャンピオンシップディビジョンの中国対インド戦は、中国が3−0で勝利したが、注目の対戦は2番。中国女子は世界戦デビューとなる王曼昱(上写真左)、一方のインドは今月行われたコモンウェルスゲームズ(英連邦競技大会)で、シンガポール勢を抑えて優勝を飾ったバトラ(上写真右)だ。

 バトラは右シェーク・バック粒高の攻守型で、変化の激しい粒高ショートを相手が打ちあぐむと、長身から横殴りのフォアスマッシュを打ち込んでくる。王曼昱は1ゲーム目に4−8でリードを許すなど、このクセ球に相当苦労していたが、長身を低く沈めて粘り強く両ハンドドライブを打ち続け、粘り抜いた。2020年東京五輪出場を目指す彼女にとって、まずは「第一試験」にパスした形だが、まだ動きは硬い。プレーの出来としては50%といったところだろう。

 下写真は、カット打ちにやや難のある馮天薇(シンガポール)から1ゲームを奪ったスウェーデンのベルクストレム。良く切れたバックカットからの果敢なフォアの反撃で、対カットにやや難のある馮天薇から1ゲームを先取し、大いに苦しめたが、最後は力の抜けてきた馮天薇に攻撃をシャットアウトされ、打ち切られた。
  • 王曼昱、まずは首脳陣の期待に応えた

  • バトラ、善戦するも1ゲームを奪うことはできず

  • バックカットをズバリと切る!ベルクストレム

 日本女子の初戦は世界16位のウクライナに1ゲームも落とさずに完勝した。ウクライナはビレンコ、ペソツカという1、2番手を出さずに、3、4、5番手で試合に臨み、日本との力の差は歴然。日本は圧勝でスタートした。

 馬場監督は試合後、「オーダーは予想と違った。ビレンコとペソツカが来ると思ってましたが出てこなかった。最近の調子を見て、今回の日本の3人が第1試合はベストかなと。伊藤はトップでも何番でも大丈夫。3人が良い試合を見せたので良かった」と語った。各選手のコメントは下記のとおり。

伊藤「1ゲーム目の出足から調子が良かったし、チームとしても自分たちの試合ができた。トップは好き。何番でも自分の100%を出せる選手になりたい。楽しくできました。
石川「団体戦の初戦は大事。美誠ちゃんが良い流れを作ってくれた。内容的にもみんな良かった。私たちの地力も上がっているし、油断しないで次を戦いたい」
平野「どんな相手でも全力で戦おうとした。団体戦は初めてでもシングルスでは出たことあるのであまり意識はしなかった。

 日本女子は現地時間夜の8時からエジプトと戦う。

●女子団体予選グループ第1戦
〈日本 3−0 ウクライナ〉
○伊藤美誠  2、4、6 ガポノワ
○石川佳純  3、2、2  フット
○平野美宇  3 、3、5 ブラテイコ
  • トップで切れ味抜群のカット打ちを見せた伊藤

  • ガポノワはよく拾ったが、ミドル攻めに屈した

  • 世界団体のデビュー戦を白星で飾った平野

  • 笑いを堪え切れないウクライナベンチ。こらこら

 ハルムスタッドの中心街の一角にギャラリーを見つけた。正確に言うと、額縁屋さんかもしれない。

 名前は「HALMSTAD INRAMNING」。一室に卓球のアート作品が飾られていた。1枚1万数千円というところか。お店にいたヘンリック・ヴォルデンさんに話を聞くと、自身はハルムスタッド卓球クラブでプレーしていて、パーソンのチームメイトだったとのこと。この世界選手権を記念に版画と絵を地元のアーティストに作ってもらったものを販売していたのだ。
  • なかなかシブい卓球のアート作品

  • 地元クラブでプレーしているヴォルデンさん

バタフライ・パーティーの会場に向かうため、市内をふたつに隔てるその名も「ニッサン川」に架かる橋を渡っていた王国取材班。川の下流を見やると、少し遠くに大きくて白いものが浮かんでいるのが見えた。近づいていくと、どうやら球体のようだ。その正面には大きなハートマークと、、、「XIOM(エクシオン)」の文字が!

高さ10mはあろうかという、川に浮かぶ大きなピンポン球。市民も思わず足を止めるだろう。なかなか、仕掛けてくれますねえ……。
  • 後ろの建物と見比べると、相当デカいことがわかります

  • 逆側には「LOVE TABLE TENNIS」のメッセージ

 世界選手権開幕前日の恒例となっている『バタフライ・パーティー』が、市内のハルムスタッド・シアターで開催された。
 会場にはバタフライの契約選手をはじめ、バイカート会長を始めとするITTF(国際卓球連盟)のメンバーなど、世界中の卓球人が訪れ、ケータリングの料理に舌鼓を打ち、明日から始まる大会に備えて英気を養った。日本選手団のホテルもほど近くにあり、日本男子チームのメンバーは揃って来場。つかの間の休息を楽しんでいた。
  • パーティーの会場となったハルムスタッド・シアター

  • コーポレイトカラーのマゼンダでライトアップされた会場

  • ケータリングの「SUSHI」は大人気。一番人気はサーモン

  • こんなお洒落なバーカウンターも。もちろん、選手はノンアルコール

  • 今大会で世界選手権に復帰するメイスも来場

  • 智和くんはマシン相手にこの本気度。手は抜けないんです

 「トレーニングしに来たのかな、俺たち」。半ば冗談、半ば本気という感じでつぶやいたのは上田仁だ。今日の午前中、日本男子チームの会場練習には水谷隼が参加しなかったため、選手の数は偶数の4人。主に丹羽と大島、張本と松平がペアになり、ボールを打ち合っていた。そしてフェンスで仕切られたコートとコートの間では、上田と木造勇人が、フィジカルコーチの田中礼人さんの指導のもと、体幹やダッシュ、敏捷性などの様々なトレーニングをこなした。「トレーニングのフルコース?」と思えるほど、時間が長くハードな内容。会場の設営をするスウェーデン人のスタッフたちも目を丸くしていた。

 日本男子のリザーブ(補欠)である上田は、2月のチームワールドカップで素晴らしいプレーを披露し、さらなる世界での活躍が期待される選手。スパーリングパートナーの木造は全日本ジュニア2連覇の若手のホープだ。もちろん必要に応じて代表選手の練習相手を務めるが、ラケットを握らない時間も無駄にせず、体作りを行って未来への種を蒔く。体幹トレーニングは見ているだけで腹筋がよじれそうになったが、「さすが日本だな」と感じた。
  • トレーニングに励む上田(左)と木造。背中が田中フィジカルコーチ

  • 「一緒にどうですか?」と田中さんに言われましたが、謹んで辞退しました

 大会開幕を控え、前日に恒例のプレスカンファレンス(記者会見)が開かれた。選手を代表して会見に出席した、ボル(ドイツ)、丁寧(中国)、そして張本智和が大会への抱負を語り、質問に答えた。主な内容は下記のとおり。

●ボルのコメント
「ドイツチームは第1シードになったが、もちろん中国が優勝候補です。今回はオフチャロフもいて、彼は好調で、心強い。中国、ドイツ、韓国、そしてスウェーデンとも良い試合ができると思います。日本の張本とはこの1年間でたくさん試合をしたし、たくさん試合を見てきました。ぼくの同じ年齢の時はコーチに練習をするように言われたけど、張本は自分から進んで練習ができる。彼はいずれ世界でもベストな選手になれるでしょう」

●丁寧のコメント
「日本選手とはたくさん個人戦と団体戦で試合をやってきて、お互いが良く知っています。私たちはタイトルを守りたいと思っています。(張本選手の印象は?)男子のことだけども、張本はまだまだ強くなる選手ですね」

●張本のコメント
「スウェーデンは町もきれいで、とても強い国というイメージを持っています。団体戦は初めてで緊張はしているけど、金メダルを目指します。記者会見は横にボルと丁寧と一緒にいて、光栄な気持ちです」
  • 「金メダルを目指します」と力強いコメント

  • 張本に「いずれ世界でもベストな選手になれる」とエールを送ったボル

  • 丁寧(中央)スマイルは健在。左はITTFのバイカート会長

 日本は男女とも元気に練習をしていたが、唯一人、男子の水谷は姿を見せなかった。
 練習後の倉嶋洋介男子監督のコメント。
 
「水谷は背中に張りを感じているので、今日の練習は休みました。スウェーデンでの事前合宿で練習中に背中にピリッときたようです。彼のメガネは、片目(の視力)が悪いの両方を合わせるためのもの。
 背中は重傷ではないです。日本にいる時からフルメニューで練習をやり込んでいたので、これが良い休養になる。彼の場合は、1日2日練習をやらなくても全く問題がないほど感覚が良い。大事(おおごと)ではないです。
 今回、昨日見たら張本がすごく良くて、今日見ると丹羽のボールが走っている。みんなは自信を持って明日から試合ができそう。張本はスウェーデンにきて徐々に調子が上がって、気持ちも高ぶり、良い状態になっている」
  • 動きの良さが光っている丹羽

  • 選手を見守る倉嶋監督、右は張本宇コーチ

  • 張本、フォアドライブの迫力もスゴイぞ