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速報・現地リポート

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全国高校選手権(インターハイ2019)

ひと目でパッとわかる伝統のウェアもあれば、個性豊かなデザインでトレンドをいれるウェアもある。会場を見渡すと、色とりどりのウェアが溢れており、見ていてもおもしろい。

卓球ウェアはボールと重なると見えなくなるため、白を基調としたウェアは禁止されている。
もちろん我々報道陣も卓球会場では白いシャツはご法度。
報道ビブスを上から着るが、袖などが見えているため中に着るのはカラーシャツ。コートと観客席が近い全国大会などでは「この席に座るお客様は極力白の上着はご遠慮ください」と一文入れるほどだ。

その流れに逆らうようにウェアは色をふんだんに使った傾向になっている。

一般の人でも特注ウェアを作るのはもう珍しくはない。ぜひとも参考にしてみてはいかがだろうか?
 会場では女子シングルスの2〜3回戦が終了し、続いて男子シングルス2〜3回戦が進行中。報道席の真横にある観客席から大声援が降ってくる。まず女子シングルス2~3回戦から、目に留まった選手をピックアップしてみよう。
●女子シングルス3回戦
加藤(日工大駒場) 3−1 相馬(遊学館)

第一シード、そして優勝候補の相馬がは3回戦で姿を消した。

左腕・加藤の振り抜く一撃必殺のスマッシュにカットが安定せず、ナックルカットも通じなかった。
ドライブで打ってくる相手なら相馬の変化の蟻地獄に引き込むことができるが、スマッシュで打ち抜いてくる相手には難しい。しかも、加藤のスマッシュにはミスがなく、相馬は点を取る手立てがなくなってしまった。

勝利した加藤は、実は卓球王国で連載中の「3カ月で変わる!ダブルス超上達法」で、監修の藤井寛子さんとともにダブルスの技術モデルを務めてくれた選手。試合後、「相馬さんは第1シードだし、Tリーガーなので勝てると思っていなかったんですけど、向かっていく気持ちでした」とコメントしてくれたが、金星の後でも表情は冷静だった。
「カット打ちは結構練習してきたので、勝てて良かったです。フォアサイドとバックサイドにロングサービスを多く出して、フォアの粒高のナックルのボールを狙って、攻撃的にスマッシュで狙うようにしました」(加藤)

「ここから1試合1試合、自分のベストを尽くせるように頑張ります」と語る加藤。ここから一気に勢いに乗るか?
シングルスの2回戦に登場し、四天王寺の三浦を破った枝広愛(就実)。姉は昨年まで広島の進徳女子でエースだった枝広瞳(神戸松蔭女子学院大)で、スイングも顔の雰囲気もそっくりな姉妹。おまけに使っているラケットも同じという。卓球姉妹あるあるかもしれない。

勝負所での速攻戦術、大胆な攻めと緩急、そして大舞台でも動じない強心臓は姉譲りかと思われるが、実は親譲りかもしれない。
父の一志さん(関西クラブ)はマスターズ上位の常連で、昨年は49歳ながら全日本社会人にも出場している名物選手。ロングサービスから相手を振り回すブロック卓球は、まさに堅くてクレバー。勝負強さにも定評があり、そのスタイルは少なからず娘に遺伝してるようだ。

姉は広島の高校へ進学したが、妹の愛は地元に残り、小さい頃から試合に一志さんが帯同し、練習場で汗を流していたのをよくみかけた。

中国大会で準優勝、1年生の注目株はどこまで勝ち進むか?
女子学校対抗、決勝までの勝ち上がりは下のトーナメントのとおり。第1シードの四天王寺と第2シードの遊学館が、きっちりシードを守って決勝まで勝ち上がってきた。

 四天王寺は3回戦の大成女子戦で、「あと1点で敗戦」という場面をしのぎ切った。続く希望が丘戦も、トップ中森が希望が丘のエース稲吉にマッチポイントを奪われながら逆転負けし、ダブルスもマッチポイントを握られるなど、苦戦の末の勝利だった。しかし、苦しい場面になればなるほど、日本一と言われる絶対的な練習量に支えられた、「球際(たまぎわ)」の10cm、20cmの強さが出てくる。相手の強打をしのぎ、苦しい体勢からでも相手コートに正確にボールを運ぶ。

 学校対抗決勝のダブルスは、出雲・相馬ペアを準々決勝で破り、昨日の女子ダブルスを制した本井・大川ではなく、これまでどおり高橋・中森のダブルスで臨むだろう。シングルスは前半に好調の大川、そして菅澤を起用するか?

 一方、遊学館はここまで3−0のストレートで勝った試合がない。不安定な試合運びの原因は、出雲・相馬のダブルスがここまで2勝2敗と精細を欠いていること。ただ、準決勝の萩光塩学院戦では、出雲・相馬はお互いに何度も言葉を交わしながら試合を進め、要所をおさえてストレート勝ちを収めている。

 相馬・出雲の変化に動じなかった、女子ダブルス準々決勝での本井・大川ペアのプレーを見ても、四天王寺が相当な「出雲対策」「相馬対策」を積んできていることは間違いない。遊学館としては出雲・相馬の単複で3点取りたいが、「四天越え」を果たすためには、昨年の学校対抗決勝を経験している2年生の津隈、1年生の高橋・泉田など、もうひとりのヒロインの誕生を期待したい。
 男子学校対抗、今日行われた準決勝までの勝ち上がりは、下のトーナメントのとおり。決勝は愛工大名電と野田学園の対戦となった。

 両校が男子学校対抗の決勝で対戦するのは、16年岡山インターハイ以来。木造・松山・高見・田中という強力なメンバーを揃えた愛工大名電が、沼村・伊丹・竹崎らを揃えた野田学園を3−1で下して21年ぶりの優勝。野田学園はトップ沼村が田中を下した1勝のみに終わった。そこから愛工大名電は3連覇を達成している。一方、今大会はどうか?

 チャレンジャー・野田学園は、左腕・宮川の充実ぶりが光っている。昨年までは台から距離を取りすぎ、強引なバックドライブでミスを重ねるシーンが多かったが、今年は前陣をキープし、切り裂くようなフォアのカウンターを連発。バックの緩急やストレートを自在に使うコース取りなど、ひと皮もふた皮も剥けたプレーを見せている。

 戸上・宮川のダブルスは、昨日の男子ダブルス決勝で愛工大名電のエースペア、加山・曽根にストレート勝ち。学校対抗決勝に向けて強烈にアピールした。ポップなデザインが多かった野田学園のチームウェアも、今年は燃えさかる闘志のようなファイヤー(炎)のデザインとなり、初優勝に向かって突き進む。

 受けて立つ王者・愛工大名電は、今年3月の高校選抜決勝で野田学園を3−1で破っている。エース曽根翔がトップで戸上をゲームオール11−9で破り、一気にチームを勢いに乗せた。曽根は昨年のインターハイ学校対抗決勝でも、鶴岡東のエース中橋に0−2から逆転勝ち。試合中はまだ不安げな表情ものぞかせるが、ここ一番での勝負強さは持っている選手だ。

 ダブルスは野田学園有利ということを考えると、名電としては戸上・宮川からシングルスで勝利を挙げるしかない。その大役を担うのは曽根か、それとも1年生の篠塚・谷垣が大仕事をやってのけるか。高校選抜決勝4番でチームの勝利を決めた左腕・加山も3年生の意地を見せたいところだ。
●女子ダブルス準決勝
大川・本井(四天王寺) 3、−18、−7、7、9 桑原・川北(正智深谷)
高田・岡田(明徳義塾) 8、12、−3、10 黒田・木塚(済美)
●女子ダブルス決勝
大川真実・本井明梨 4、8、−7、−7、6 高田菜々美・岡田琴菜

女子ダブルス優勝は、四天王寺の2年生ペア、大川真実・本井明梨!

大川・本井ペアは、昨日の女子学校対抗3回戦(大成女子戦)ラストで壮絶な逆転勝ちを収めた大川のプレーが冴えた。「学校対抗3回戦のラストで勝って、自信がついたし、勝てる感覚がでてきた。ダブルスでもラリー戦は自信があったので、どんどん振っていきました」と決勝後に語った大川。左腕からキレのあるフォアドライブを連発した。

一方で、大川は「最後は本井さんが打って決めてくれると、本井さんのことを信じ切っていました」ともコメント。相手のレシーブやツッツキがあまければ、本井が回転量が多く、威力のあるフォアドライブですかさず狙い打つ。ふたりは台から下げられても粘り強く、相手より1球多く返す姿勢で、時折ロビングで打ちミスも誘った。

「寮生活なので、大川さんの日頃の生活を結構見ているんですけど、できないこととか苦しいことでも、あきらめずに最後までやり切る。苦しいところでは大川さんが必ず入れてくれると信じて戦いました」。半年間、ケンカをしながらもコンビネーションを高めてきたというふたり。準決勝の桑原・川北戦はゲームオール11−9、決勝もゲームカウント2−0から追いつかれる苦しい展開だったが、チャンピオンペアに相応しい質の高いプレーを見せてくれた。

 準優勝の高田・岡田は、左中国式ペンドライブの高田がレシーブからのフリック、フォアドライブと裏面ドライブでチャンスメイク。強打者の岡田が狙い打ったが、岡田の攻撃は勝負所でのミスが目立った。ボールを確実に入れるところ、思い切って攻めるところの見極めができていれば、決勝も十分チャンスはあっただろう。決勝の最終ゲーム、相手ペアのマッチポイントも岡田のスマッシュミスであっけない幕切れだった。

 3位は桑原・川北(正智深谷)と黒田・木塚(済美)。桑原・川北は桑原が強烈なフォアドライブ、電光石火のバックカウンターを連発したが、プレッシャーの中で川北にややミスが多くなった。黒田・木塚はレシーブからバックハンドでラリー戦に持ち込み、ストレートへの攻撃をうまく使って強豪ペアを連破した。
●男子ダブルス準決勝
戸上・宮川(野田学園) 9、−7、6、8 蘇健恒・日置(学館浦安)
加山・曽根(愛工大名電) 4、−5、7、6 藤木・手塚(明徳義塾)

●男子ダブルス決勝
戸上隼輔・宮川昌大 9、2、7 加山裕・曽根翔

野田学園としては8年ぶりのダブルスの優勝。
それもライバル名電に決勝で完勝。戸上・宮川のコンビネーションは他を寄せ付けず、「練習してきた」という台上技術で圧倒した。

決勝はチキータではなく、両者ストップからの展開が多かった。
ストップ対ストップ、そこから浮いたボールをチキータとフリックで打ち込んでいく。
もちろん打てば決まるわけではない。そのボールをカウンターし、ラリーの展開へ持ち込むが、その台上技術とカウンターで野田学園ペアにミスがない。

野田学園ペアが攻めれば、優位な展開となるが、名電ペアが攻めてもなかなか点にならない。攻めているのに「待たれ倍返しされている」感覚だろう。先に仕掛けては、カウンターが待っているので、名電ペアとしては、そのボールをさらにカウンターで打ち返すしかない。
突き刺さるような直線的な打法が得意な曽根・加山だが、ラリーではややミスが多くなってしまい、前陣でも中陣でも野田ペアに押されてしまった。

「3種目ある中で最初の優勝が決まるのがダブルスだったから、優勝できてうれしい。去年はベスト16だった悔しさもあるし、今年はチャンスがあると思いました」(戸上)
「お互いにチャンスを作って、決めるパターンがよくできたと思います。去年はダメな時はダメなまま試合が終わってしまったけど、今年は展開を変えることができた」(宮川)

明日の学校対抗決勝で戦うであろうペアとの前哨戦に勝ったことは、戦況にどう影響していくのだろうか。どっしり構えて、オーダーを変えないのか、それとも後半勝負を見越したオーダーにするのか。名電、野田ともにオーダーに悩むところだ。

「団体も個人戦もタイトルを取るというのが目標」と宮川が言えば、「ぼくたち2人がチームを引っ張る主軸なので今日勝ってチームを勇気づけられたかな。体のキレは日に日に増してます」と戸上が続く。

名電の4連覇か、野田学園の初優勝か。
今日の強さを目の当たりにすると、名電の層が厚いとは言え、野田学園が有利か⁉
明日の決勝戦が待ち遠しい。
●男子ダブルス準々決勝
戸上・宮川(野田学園) 12、−9、3、4 吉田・大野(遊学館)
蘇健恒・日置(学館浦安) 5、−6、9、11 安江・新名(明徳義塾)
藤木・手塚(明徳義塾) −6、−8、9、11、6 篠塚・谷垣(愛工大名電)
加山・曽根(愛工大名電) −7、5、6、11 中田・西(上宮)

●女子ダブルス準々決勝
大川・本井(四天王寺) 8、−6、9、7 出雲・相馬(遊学館)
桑原・川北(正智深谷) 11、9、5 出澤・小林(大成女子)
高田・岡田(明徳義塾) 6、10、−8、7 藤森・杉本(希望が丘)
黒田・木塚(済美) 5、9、10 青木・小畑(横浜隼人)

男女ダブルス4回戦・準々決勝が終わり、ベスト4が出揃った。
男子ダブルス準々決勝では、千葉・学館浦安の蘇健恒・日置ペアが勝利。レシーブからチキータで積極的に攻め、ラリーでも粘り強かった。学校対抗では2回戦で敗れた学館浦安から、歓喜のメダル獲得となった。

女子ダブルスでは前回優勝の出雲・相馬が四天王寺ペアに敗れ、2連覇ならず。四天王寺ペアは打球点が早く、厳しいフォアドライブで先手を取り、出雲・相馬の変化のあるボールにも冷静に対応した。
●学校対抗準決勝
野田学園(山口) 3−1 鶴岡東(山形)
 松田 11、9、−9、-6、-5 佐藤○
○戸上 7、3、4 櫻井
○戸上・宮川 1、6、7 原井・佐藤
○宮川 10、6、3 小松

もうひとつの準決勝、昨年のリベンジを果たした野田学園。
なんと言ってもこの試合は4番の宮川に尽きるだろう。
「宮川は去年のインターハイ準決勝で佐藤くんに負けてる。今回も4番に置いて佐藤くんとやらせようと思っていました。負けた記憶ってすごい残っている。特に去年の試合はぼくの中ですごく残っていて、それは宮川本人はもっと残っているはず。だからもう一度やりたかった。佐藤くんは4番には来なかったけど、宮川はしっかり4番でリベンジできた。大きいですね」と野田学園の橋津監督。

トップの松田が佐藤に逆転負けを喫したが、戸上とダブルスが勝利するも、2台進行での5番の状況は五分五分。
4番の宮川へ重圧がかかる中、団体戦で何度も苦杯をなめてきた男が自分の成長を証明した試合だった。
それまでは勝負所になると闇雲に打つだけになってしまった宮川。今回は台と相手がクリアに見えているのか、コース取りや攻めのタイミングなど、人が変わったように成長している。
「今まで自分が戸上のベンチに付きすぎてた。でもこの1年くらい戸上が遠征などでいないことが多かったので、宮川のベンチにずっと入ることができました。
一言で言えば、展開がうまくなりました。このサービスを出したらこうしようとか、頭の中が整理されてパターンが明確になっています。ゲーム制が高まったと思いますね。技術は変わってないですよ。強くなったというよりも安定感が出てきました」(橋津監督)

戸上と宮川で3点と1年の時から言われていたが、今までは宮川が気負ってしまうことも多く、後半シングルスでの勝率はあまり高くない。しかし、今年の宮川は違う。この調子ならば、野田学園の初優勝が現実味を帯びてきたといえる。名電1強に待ったをかける。

敗れた鶴岡東は昨年に続く決勝進出を逃した。
星、中橋という両エースが卒業し、戦力ダウンは否めなかったが、それでもここまで勝ち上がってきたのはさすがだ。それまでの実績がなくても、高校でも選手は伸びる。最後まで足を動かし、ボールに食らいつく、これぞ鶴岡東というべき姿だ。

「去年準優勝という成績で、今年の3年生は本当に重圧がかかった大会でした。原井と佐藤は『自分たちの時代は、ベスト8以下で終わったらどうしよう』というのは常に話していて、原井は全国大会に出たことがないし、櫻井も全国大会に出ても2回戦くらいの選手。それでも練習してきたことが出せたので、今回の結果につながりました。本当に選手に感謝しています。
野田学園戦は去年のことをよく言われますけど、選手は入れ替わっているし、うちも去年より力が落ちているのは私も選手も感じていた。私たちは向かっていく精神。佐藤がエース、原井が大黒柱としてやってきたので、佐藤が戸上くんに当たっても挑戦すると言ってくれた。当たった松田くんとは相性が良かったと思います。迷わずにやれることをやろうと伝えて、明徳義塾戦に続いてそれがうまくいきました」(杉野森監督)