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中国リポート

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 1月10日、42歳の誕生日を迎えた元国家チーム総監督の劉国梁。彼の誕生日と時を同じくして、中国国内では「劉国梁が卓球界に復帰できる望みは断たれたのか」という報道が流れた。その根拠となっているのは、国家チームに長年帯同しているCCTV(中国中央電視台)のアナウンサー、李武軍さんが「今日は劉国梁の誕生日、誕生日おめでとう!」と微博でつぶやいたのに対し、劉国梁が発したこんなコメントだ。

 「ぼくが国家チームの選手だった時も、選手からコーチに転身した時も、そしてコーチを引退したあとも、君はまだ走り続けている。この卓球という世界では、どうやらぼくは君に追いつけそうもないね……」

 「コーチを引退した」と自ら述べている劉国梁だが、昨年12月には王楠の夫である郭斌さんが微博で、ITTFワールドツアー・グランドファイナルで優勝した樊振東に対し、劉国梁が電話でアドバイスをしていたことを告白。その行為を疑問視する報道もあったが、卓球界との絆は断たれたわけではない。年が明けてからの協会側の「劉国梁カラー」を一掃しようとする動きを見ると、現場への復帰はしばらく難しいと言わざるを得ないが、中国共産党の上層部の体制が変われば復帰も可能か。

 ただ、まだ40代前半とはいえ、指導者として14年に及ぶキャリアと、国際大会での輝かしい成績を残してきた劉国梁。指導者としてはやるべきことはすべてやった、という気もする。昨年11月には郭斌・王楠夫妻とともに、山東省威海市でスポーツ・レジャーをテーマにした街の開発に乗り出し、「実業家に転身か」と騒がれたこともある。双子の娘さんのひとり、7歳の劉宇婕ちゃんはゴルファーとして頭角を現しており、本人の最大の関心事はこちらかもしれない。

 近々、国家チーム内では新しいコーチグループの体制が発表されると言われている。昨年6月、劉国梁が総監督の座を退任し、同時に監督1名・コーチ5名による国家1軍チームの管理体制を改編。「教練組(コーチグループ)」を設置して、よりフラットな管理体制を目指すと発表されたのだが、グループのチーフコーチが正式に発表されたことはない。
 中国オープンでのボイコット事件に加担した男子チームの秦志戩監督は、すでに国家チームを追われたという話も聞く。現状では男子は呉敬平、女子は李隼というベテランコーチが仮のチーフのような形になっているが、5月の世界選手権団体戦はどのような体制で臨むのか。こちらも注目が集まるところだ。
  • 昨年5月の世界選手権で、解放軍の後輩・樊振東にアドバイスする劉国梁

 1月7日に中国卓球協会が発表した、『2018年中国卓球協会・2018年国際大会派遣選手選抜規定』への疑問に対する回答文書。主な質問と回答を要約すると、以下のとおりになる。

◎この選考規定を定めた主な目的は何か?
「国際大会に派遣する選手の選考をよりオープンにして、公正かつ公平でクリアなものにすること。選手選考の範囲をより広くすること。より多くの選手たちを国際大会に出場させ、大会を通じて選手たちを強化し、卓球界での中国の優位性を保つ。2017年に様々な国際大会に出場した中国選手は、延べ人数で182人だったが、2018年は600人以上にする。同時に省チームやクラブチームの選手にも国際大会に参加する機会を与え、より活性化させていく」

◎2006年から行われてきた代表選考会「直通○○」はなくなるのか?
「そういうわけではない。『直通』選考会は国家チーム内での公平な競争を実現し、中国が長年に渡って主要な国際大会でトップの地位を占めるうえで重要な役割を果たし、社会からの注目も集めてきた。チーム内での公平な競争による選抜方式は、今後も一定の範囲内で継続していく」

◎国家チームに貢献している中堅クラスの選手たちから、世界チャンピオンになるチャンスを奪ってしまうのではないか?
「そういうわけではない。すべての選手が競争に参加し、同等のチャンスが与えられる。国際大会に出場できる延べ人数が増えるので、選手たちのチャンスはより多くなる」

◎21歳以下の選手に出場枠を与えた目的と意義は?
「卓球というスポーツでの選手育成において、重要なのは『以老帯新、以新促老(ベテランが新人を導き、新人がベテランを活性化させる』こと。若い選手たちとベテランの選手たちをともに国際大会に派遣し、彼らの精神を鍛錬し、技術レベルを向上させる。チームビルディングを行ううえで、『召之能来、来之能戦、戦之必勝(召集すればすぐ集まり、集まればよく戦い、戦えば必ず勝つ)』ということが、超一流のチームにとって重要な意義を持つ」

◎(選考に関わる)国内でのランキングシステムの公布について
「近日中に対外的に公布する。中国卓球協会が国内外の大会のスケジュールなどを考慮し、全体の計画を立てたうえで、協会HP上で定期的に最新のランキングを発表していく」

 これらの質問と回答、「質問しているのは誰なんだ?」と思うかもしれない。これは個人のブログや掲示板など、インターネット上での選考規定に対する疑問を拾い上げていったものだろう。体制の急激な変化やスーパーリーグの運営上の混乱など、ファンからの不信感が募る協会側からのすばやい対応。選考基準の発表と同じくらい画期的なことだ。
 一方で、「公開、公正、公平」や「召之能来、来之能戦、戦之必勝」といった標語の使い方、玉虫色の表現などはいかにも「お国(党中央)からの発表」という、古めかしい感じがする。「召之能来、来之能戦、戦之必勝」というのは人民解放軍のスローガンで、昨年8月に解放軍の90周年祝賀大会で習近平主席が発言している。ある意味、タイムリーですね。
  • U-21の選考会を制し、2月のワールドチームカップで代表入りした于子洋

 1月7日、中国卓球協会は5日に発表した『2018年中国卓球協会・2018年国際大会派遣選手選抜規定』への疑問に対する、回答の文書を発表した。

 ……その前に、前回の1月6日の中国リポート『前代未聞? 中国が国際大会への選考基準を発表』の記事の中で誤りがありました。世界選手権の選考基準(1)〜(5)の中で、(4)の「2017-2018中国スーパーリーグの通算成績1〜3位から1名」という基準の後に「国家チームの選手に限定」と記載していましたが、正しくは「国家チームの選手は含まれない」です。内容的には逆で、前代未聞の誤りでした。今後は十分に気をつけます。
 ちなみにこの中国リポートの記事、中国のポータルサイト「新浪」でも「日媒(日本のマスコミ)が選考基準についてこう分析している!」として紹介。何とも恥ずかしい結果になってしまいました。

 なお、この(4)の選考基準については、中国の卓球雑誌『ピンパン世界』にも問い合わせて確認しました。これは国家チーム以外の選手を必ず1名選ぶ枠ではなく、あくまでもスーパーリーグの個人総合成績で上位3名に入ることが条件。実際は国家チーム以外の選手が、個人総合成績の上位3名に入る可能性は限りなく低い。
 上位3名に国家チーム以外の選手が含まれない場合は「国家チーム内で選考会を行うか、コーチ陣による総合的な評価によって代表を決定する」という注がついており、規定の上の建前(たてまえ)では、国家チームに入っていなくてもチャンスがあるということ。

 中国卓球協会からの回答文書に話を戻すと、「スーパーリーグの上位3名に入った省チームの選手にチャンスを与えるというのは、国家チームの選手に対して不公平な選考にならないか?」という質問に対し、協会側はこう答えている。
 「この規定の主な目的は、省チームやクラブチームの選手たちにも国際大会に出場するチャンスを与え、各地方やクラブに積極性を発揮させること。国際大会に出場する延べ人数は大幅に増加するし、国家チームの選手たちの機会を奪ったり、不公平になるような問題は存在しない」。至極マジメな回答だが、実際に省チームやクラブチームの選手たちがチャンスをつかむことはまずないと考えると、質問も回答もなにやら「やらせ」のようにも思えてくる。

 少し長くなってしまったので、回答文書のその他の内容については「その2」に続きます……。
 1月5日、中国卓球協会は公式ホームページ上で、『中国卓球協会・2018年国際大会派遣選手選抜規定』を公布した。
 これは2018年1〜12月に行われる国際大会で、選考基準を設けた選手派遣をテストするというもの。世界選手権からワールドジュニアサーキットまで、全部で12の国際大会について、派遣選手の選考基準を定めた。その一例を挙げると、5月の世界選手権団体戦に出場する5名は下記のような選考基準となる。

(1) 2017年世界選手権シングルス1〜3位から1名
(2) 2017年全中国運動会シングルス1〜3位から1名
(3) 世界選手権選考会のシングルス1〜3位から1名
(4) 2017-2018中国スーパーリーグの通算成績1〜3位から1名(国家チームの選手は含まれない)
(5) 中国卓球協会U-21(21歳以下)ランキング1位


 この選考基準を男子チームに当てはめてみると、(1)は馬龍・樊振東・許シン、(2)は馬龍・樊振東・王楚欽、(5)は発表されることはないが、もうすぐ21歳になる樊振東の下の世代、于子洋や薛飛、王楚欽らが対象になる。近年はベテランを重用し、経験重視の選手選考が多かった中国だが、将来有望な若手のために枠を設けている。

 現時点での中国男子のベストメンバーは、馬龍・樊振東・許シン・林高遠の4名が確定で、残りひと枠は経験重視なら方博、将来性重視なら王楚欽というところ。上記の選考基準では「1〜3位から1名」というように柔軟性を持たせているので、それぞれの枠で選手を選んでベストメンバーを組むことは可能だろう。

 しかし、中国卓球協会が明確な選考基準を発表するというのは、前例のないこと。中国卓球史に残る「事件」と言っても過言ではない。これまで代表選考会「直通○○」を行うことで、ある程度は競争の公平性を確保していたものの、代表選考はすべて中国卓球協会がハンドリングし、決定していた。「秘密兵器」の戦略的な起用が、中国のお家芸だった時代もあった。今回、選考基準を透明にすることで、協会幹部に権力が集中するのを防ぎ、国家体育総局の管理を行き届かせる狙いがあるのではないか。

 また、(3)の世界選手権選考会というのは、これまで行われてきた「直通○○」のようなオープン形式のものではないだろう。現在、中国女子チームでワールドチームカップの代表選考会が行われているが、観客を入れることはなく、報道しているのも一部のマスコミだけだ。
 昨年行われた世界選手権個人戦の代表選考会「地表最強12人」は興行的にも成功を収めたが、今年は開催されるというアナウンスはない。従来の「劉国梁カラー」は、徹底して排除されようとしている。
  • かつての中国の「秘密兵器」のひとり、カットの丁松(95年世界3位)

★★★ 2017中国卓球クラブスーパーリーグ ★★★

◎男子第9節終了時点での順位

1   山東魏橋・向尚運動   8勝1敗
2   天津権健        6勝3敗
2   山東魯能        6勝3敗
4   八一大商        5勝4敗
4   深圳宝安明金海     5勝4敗
4   安徽朗坤        5勝4敗
4   覇州海潤        5勝4敗
8   上海中星        3勝6敗
9   江蘇中超電纜・利永   2勝7敗
10  四川長虹        0勝9敗

◎女子第9節終了時点での順位
1   武漢安心百分百     8勝1敗
1   山東魯能        8勝1敗
3   吉林長白山農商銀行   6勝3敗
4   深圳大学        5勝4敗
5   山東斉魯交通      4勝5敗
5   山西大土河・華東理工  4勝5敗
5   北京首鋼        4勝5敗
8   八一京博控股      3勝6敗
9   龍福環能        2勝7敗
10  四川穹窿先鋒      1勝9敗

 第1節の結果のみお伝えして、結果のリポートを中断していた中国スーパーリーグ。1月2日に男子第9節、1月3日に女子第9節が終了。今シーズンはプレーオフが行われず、第1ステージの全18節のみで順位を決定するが、ちょうど半分を消化した。

 男子は第9節終了時点で、林高遠・閻安・薛飛を擁する山東魏橋・向尚運動が首位に立ち、2位以下は大混戦。馬龍を獲得した天津権健、方博・張超に尚坤が加わった山東魯能が2位を並走し、優勝候補だった樊振東を擁する八一大商など4チームが4位で並んでいる。四川は男女を通じて唯一の全敗と、今年も1勝が遠い。
 女子は第8節を終えて8戦全勝だった山東魯能に、第9節で武漢が3−2で競り勝ち、8勝1敗で首位に並んだ。山東魯能は朱雨玲、武漢は劉詩ウェンがエースだ。王曼昱がチームを牽引する吉林が3位、陳夢と孫穎莎という2枚看板を擁する深圳は5勝4敗で4位と今ひとつ成績が伸びていない。

 2007年にスタートし、遅れがちになりつつも中国スーパーリーグの全結果を掲載してきた中国リポート。今シーズンも全結果をお伝えしたいところなのですが、今シーズンの混乱した運営状況などを鑑み、節目での順位や個人成績のみお伝えします。代わりにトップ選手の動向や中国卓球協会が発表した新しい国際大会への選手選考基準など、より話題性のあるトピックスを取り上げていきたいと思います。
  • 山東魏橋を牽引する林高遠。スーパーリーグでも飛躍の年を迎えている

☆☆☆ 2017中国卓球クラブスーパーリーグ 女子第1節 11.1 ☆☆☆
※3番ダブルス・5番シングルスは3ゲームズマッチ、すべての試合の最終ゲームは7点先取

〈吉林長白山農商銀行 3ー2 八一京博控股〉
 王曼昱 ー9、ー9、10、6、2ー7 孫銘陽○
 袁雪ジャオ 6、ー5、9、ー3、4ー7 木子○
○陳可/袁雪ジャオ 6、2 孫銘陽/劉㬢
○王曼昱 5、ー9、7、4 木子
○陳可 5、ー9、7ー1 胡麗梅
(博興県京博体育館)

〈山東斉魯交通 3ー2 龍福環能〉
 陳幸同 7、ー9、ー6、5、4ー7 李佳イ○
○武楊 3、8、ー4、11 張薔
○文佳/陳幸同 ー10、9、7ー5 張薔/朱朝暉
 武楊 ー3、7、ー5、ー7 李佳イ○
○文佳 8、ー7、7ー4 朱朝暉
(済南皇亭体育館)

〈武漢安心百分百 3ー0 四川穹窿先鋒〉
○馮亜蘭 6、ー7、9、8 郭艶
○張瑞 11、10、5 楊惠菁
○馮亜蘭/銭天一 ー9、6、7ー4 楊惠菁/袁媛
 張瑞 ーーー 郭艶
 孫芸禎 ーーー 袁媛
(黄陂体育館)

※山東魯能 vs. 山西大土河・華東理工は11月3日開催
※深圳大学 vs. 北京首鋼の開催日時は未定

11月1日に行われたスーパーリーグの女子開幕戦。5試合のうち1試合は延期、1試合は開催日時が未だに未定で、結局開催されたのは3試合のみ。丁寧(北京首鋼)、陳夢(深圳大学)、朱雨玲(山東魯能)は試合が行われず、劉詩ウェン(武漢安心百分百)は女子ワールドカップからの帰国直後で、出場しなかった。世界最高峰の国内リーグ戦としては、何とも寂しい開幕戦だ。

もう覚えている人も少ないかもしれませんが、昨シーズンのチャンピオンチームである武漢は、昨シーズン18戦全敗に終わった四川に快勝。劉詩ウェン不在でも格の違いを見せつけた。絶対的エースの劉詩ウェン、プロ根性あふれるベテランの馮亜蘭、貴重な異質の強打者・張瑞、そして銭天一と孫芸禎という長身の左腕コンビ。選手層が厚く、年齢的にもバランスのとれたメンバー構成で、対カットの不安もない。今シーズンも優勝候補の筆頭だろう。

吉林は左腕・陳可が単複2点を挙げ、八一に競り勝って幸先の良いスタート。山東斉魯もベテラン左腕の文佳が渋い働きを見せ、龍福環能に競り勝っている。龍福環能は山東省にある繊維メーカーで、昨シーズンの『鄂尔多斯1980』からスポンサーが交替。昨シーズン登録されていた平野美宇選手の名前がないのは残念だが、李佳イ、張薔、朱朝暉という昨年からの主力メンバーで今シーズンを戦う。
  • 劉詩ウェンの留守をしっかり守った馮亜蘭

  • 2勝を挙げた龍福環能の李佳イ(写真はともに17年全中国運動会)

最後まで開幕が危ぶまれる中、ようやく開幕戦を迎えた『2017中国卓球クラブスーパーリーグ』。10月31日に男子の第1節が行われ、11月4日に延期された深圳宝安明金海と山東魯能の一戦を除く、4試合が行われた。その結果は下記のとおり。

★★★ 2017中国卓球クラブスーパーリーグ 男子第1節 10.31 ★★★
※3番ダブルス・5番シングルスは3ゲームズマッチ、すべての試合の最終ゲームは7点先取

〈上海中星 3ー1 江蘇中超電纜・利永電纜〉
○趙子豪 9、8、ー11、12 楊碩
○許シン 5、10、7 張煜東
 許シン/崔慶磊 3、ー8、4ー7 孔令軒/蔡偉○
○趙子豪 8、13、ー11、10 張煜東
 崔慶磊 ーーー 孔令軒
(虹口体育館)

〈山東魏橋・向尚運動 3ー1 天津権健〉
 閻安 6、ー7、ー9、ー6 馬特○
○林高遠 11、9、7 程靖チィ
○薛飛/夏易正 4、ー7、7ー3 劉丁碩/程靖チィ
○林高遠 4、9、ー11、8 馬特
 薛飛 ーーー 劉丁碩
(濱州オリンピック体育館)

〈覇州海潤 3ー1 安徽朗坤〉
 于何一 ー8、ー5、9、ー6 于子洋○
○梁靖崑 7、9、ー9、6 周啓豪
○于何一/賽林威 6、ー4、7ー2 朱誠/周啓豪
○梁靖崑 9、ー11、6、9 于子洋
 賽林威 ーーー 朱誠
(安徽大学磐苑体育館)

〈八一大商 3ー0 四川長虹〉
○樊振東 12、7、9 厳昇
○周雨 7、ー9、9、10 頼佳新
○周雨/周愷 4、9 厳昇/許鋭鋒
 樊振東 ーーー 頼佳新
 周愷 ーーー 許鋭鋒
(大連海事大学体育館)

故障のため、11月のワールドツアー2大会にも出場しない馬龍は、スーパーリーグの開幕戦も欠場。馬龍をチームに迎え、優勝を狙う天津は山東魏橋に敗れ、白星スタートはならなかった。馬龍とともに加入した程靖チィは、中国男子でも指折りの強打者だが、林高遠との左腕対決では歯が立たなかった。

八一の樊振東も右足に故障を抱えているが、四川戦は右ペン表の厳昇に完勝。他チームへの移籍報道のあった周雨が結局チームに残留し、全中国運動会ベスト8の周愷も成長しており、今シーズンの優勝候補の大本命だ。対抗馬となるのが山東魏橋と上海か。上海は尚坤がチームを去ったが、右ペンドライブ型の趙子豪が結果を出せれば、優勝戦線に絡む力はある。

冠スポンサーも決まらないまま、「見切り発車」でスタートしたスーパーリーグだが、上海と江蘇の一戦はCCTVで高い視聴率を記録したという。来年2月のシーズン終了まで、ここからどこまで盛り上げていけるだろうか。
  • やはり強い樊振東、八一の大黒柱に成長

  • 期待に応え、江蘇戦トップで勝利した趙子豪(写真は17年全中国運動会)

 10月31日、ITTF(国際卓球連盟)は6月の中国オープンの男子シングルス2回戦をボイコットした、馬龍・許シン・樊振東の3選手に対して、それぞれ2万ドルの罰金を課すことを発表した。中国卓球協会はその日のうちに、以下のような文章を発表し、国際卓球連盟からの処罰を受け入れることを表明している。

 「北京時間の2017年10月31日、国際卓球連盟は中国・成都での中国オープンで試合をボイコットした3名の選手、馬龍・許シン・樊振東に対してそれぞれ2万ドルの罰金を課し、今後は国際卓球連盟の規定を遵守すること、イメージアップを図り、良き模範となることを求めた。

 中国卓球協会は国際卓球連盟の意向を尊重し、それに従うとともに、その提案を支持する。中国卓球協会は真摯に教訓を汲み取り、さらに国家チームの思想・行動規範を強化するとともに、愛国主義、集団主義教育を推し進める。
 中国卓球チームの『艱苦創業(苦労して新しい事業を始める)』『頑強併搏(粘り強く努力する)』『為国争光(祖国のために栄光を勝ち取る)』の精神を広く伝え、高揚させるとともに、社会主義の核心となる価値観の模範となり、優秀な成績を収めることを自らの責任として、社会各界からの支持と厚情に応えられるよう務めていく」


 まるで数十年も昔の文章のようで、読む気にもならない。中国代表として国際大会に出場しながら、試合をボイコットした3名の選手たちに対し、彼らはあくまでも「アンダー・ザ・コントロール」、国家(中国共産党)の支配下にあるということを強調する文章だ。
 今、中国では国から卓球界への政治的な圧力が大きい。昨日開幕したスーパーリーグに関しても、ようやくニュースが流れるようになったものの、スーパーリーグ関連の報道は控えるよう要請があったという。

 国家体育総局の権力闘争の一端だった、今回のボイコット事件。結果的に国に反旗を翻した形になった3選手が、選手本人にその意思はないにせよ、インターネット上で「英雄」に祭り上げられるという可能性もゼロではない。ITTFの処罰に対する、異例なほど早い今回の声明も、ボイコット事件への「火消し」のように感じられる。

 先日閉幕した、5年に1度の中国共産党の全国代表大会。国家の中枢を担う186名の中央委員のリストに、中国卓球協会会長である国家体育総局の蔡振華副局長の名前はなかった。過去2回、中央委員の候補委員だった蔡振華は、規定によって再び候補委員になることはできず、中央委員への道も閉ざされた。

 そして今回、中央委員となったのは蔡振華の「政敵」である苟仲文局長。権力闘争はひとつの決着を迎え、今後の中国卓球界にも大きな影響を与えるだろう。今回発表された文章を見る限り、その前途には暗雲がかかり始めている。
 オフィシャルな情報公開がほとんどないまま、明日31日に開幕を迎えようとしている『2017中国卓球クラブスーパーリーグ』。リーグを戦うクラブ、そしてそのメンバーも正式には発表されていないので、断片的な情報を集めてお伝えしましょう。
 まず、国家体育総局の卓球・バドミントン管理センターが公布した、移籍する選手たちのリストは下記のとおり。

[男子]
◎完全移籍

鄭培峰(江蘇中超電纜・利永)→ 深圳宝安明金海
崔慶磊(深圳宝安明金海)→ 上海中星
ハオ帥(山東魯能)→ 深圳宝安明金海
劉吉康(深圳宝安明金海)→ 江蘇中超電纜・利永
張煜東(山東魯能)→ 江蘇中超電纜・利永
林晨(山東魯能)→ 江蘇中超電纜・利永

○レンタル移籍
馬龍(山東魏橋・向尚運動)→ 天津権健
尚坤(上海中星)→ 山東魯能
徐晨皓(八一大商)→ 深圳宝安明金海
程靖チィ(覇州海潤)→ 天津権健
習勝(山東魯能)→ 安徽朗坤

[女子]
◎完全移籍

劉高陽(武漢安心百分百)→ 山東魯能

○レンタル移籍
李佳イ(山東斉魯交通)→ 龍福環能
銭天一(深圳大学)→ 武漢安心百分百
劉斐(吉林長白山農商銀行)→ 龍福環能
劉銘(山東魯能)→ 山西大土河・華東理工

 男子では馬龍が山東魏橋から天津権健にレンタル移籍。昨シーズンは天津豪安としてスーパーリーグを戦った天津チームは、今シーズンから医薬品や化粧品、健康食品などを扱う天津権健集団がスポンサーとなった。2015年にスーパーリーグの冠スポンサーとなった企業で、サッカーのスーパーリーグでも欧州のトップ選手を「爆買い」して話題を集めている。

 今シーズンの天津権健のメンバーは新規加入の馬龍と程靖チィに、15年世界ジュニア優勝の劉丁碩、9月の全中国運動会でベスト8に入ったカットの馬特という顔ぶれ。馬文革監督は「若手も優秀な選手が多く、今シーズンは混戦になるだろう」と気を引き締めるが、ダブルスを強化できれば優勝のチャンスは十分ある。現五輪・世界王者の馬龍だが、スーパーリーグでプレーするクラブはこれで6チーム目。地元である北京市男子チームがもう10年もスーパーリーグに復帰できないのは寂しい限り。

 なお、山東魯能の張継科は、発表された今シーズンの「特級運動員」のリストに名前がなく、昨シーズンに続いて欠場する見通しとなった。山東魯能は方博を放出し、馬龍の獲得を狙っていたという報道もあるが、結局方博はチームに残留。上海から尚坤をレンタル移籍で獲得し、優勝候補に名を連ねるが、一戦も気の抜けないシーズンになりそうだ。
  • 故障も増えている馬龍だが、天津を優勝に導けるか?

  • 2015年シーズンのプレーオフから欠場が続く張継科(写真)

 シーズンの開幕が大幅にずれ込んでいる『中国卓球クラブスーパーリーグ』。来週の10月31日に開幕し、2018年2月11日に閉幕する日程になったようだ。ただし、11月にドイツオープンとスウェーデンオープンという、中国の主力級が出場するワールドツアーがふたつあるため、第2節は11月21日に行われる予定だ。

 ただし、開幕日や試合日程については各紙の報道や、クラブ側からの情報発信があるだけで、正式なアナウンスは未だにない。開幕にこぎつけるまでには、今シーズンはスーパーリーグを開催しない、あるいは第1ステージの日程を半分にするという意見も出たと聞く。スポンサーからの要望で例年どおり、全18節の第1ステージが行われる一方で、プレーオフは廃止。第1ステージのみで順位が決定する。

 2015年シーズン、医薬品や化粧品、健康食品などを扱う天津権健集団が冠スポンサーとなったスーパーリーグ。しかし、このスポンサー契約はわずか1年で打ち切られ、昨シーズンは冠スポンサーがつかないままで開催。マスコミからは「裸奔(裸で走る=ストリーキング)」と揶揄された。今シーズンも冠スポンサーどころではないようだ。
  • 2015年シーズンのプレーオフの様子