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中国リポート

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 世界選手権個人戦デュッセルドルフ大会の中国代表選考会、「地表最強12人(地上最強の12人」直通選抜の男子第2ステージ。第1ステージで代表権を獲得した樊振東の代わりに尚坤、途中棄権した張継科の代わりに周愷が入り、12名で代表権を争った結果、林高遠が代表第2号となった。結果は下記のとおり。

〈男子〉
●予選リーグ
[グループA]◎1回戦

許シン 2ー0 方博
徐晨皓 2ー1 梁靖崑
◎決定戦 許シン 2ー0 徐晨皓
[グループB]◎1回戦
林高遠 2-0 尚坤
閻安 2-1 周啓豪
◎決定戦 林高遠 2-0 閻安
[グループC]◎1回戦
馬龍 2-0 周愷
周雨 2-0 劉丁碩
◎決定戦 周雨 キケン 馬龍

●決勝リーグ
林高遠 8、ー5、9 許シン
許シン 8、ー8、3 周雨
林高遠 5、3 周雨
★林高遠が2人目の代表権獲得!

 グループリーグで4名がトーナメントを行い、優勝候補筆頭だった馬龍がグループC初戦の周愷戦で腰痛を悪化させ、周雨戦を棄権。「最近は試合続きでゆっくり休養が取れず、体重が3kg以上落ちてしまった。周愷戦の第1ゲーム中盤から腰の痛みが悪化して、バックサービスを使って戦ったけど、腰をひねる時には痛みを感じた。(試合後に)しかたなく棄権という決定を下した」(馬龍/出典:『新浪体育』)

 決勝リーグに進出したのは林高遠、許シン、周雨という3名のサウスポー。林高遠が許シンと周雨を連破して代表権を獲得した。1995年3月19日生まれで、もうすぐ22歳になる林高遠。4歳で卓球を始め、同じサウスポーの陳杞(04年アテネ五輪ダブルス優勝)に憧れ、14歳で国家2軍チーム入り。先日も触れたが、10〜12年世界ジュニア2位で、ビッグゲームではあと一歩頂点に届かない「シルバーコレクター」という印象だったが、今回の選考会では鮮烈な活躍を見せた。左腕から繰り出すフォアドライブは、スピードよりも回転量重視で、緩急をつけるのが非常にうまい。

 劉国梁総監督が「彼の出現は、4人の主力選手(馬龍・張継科・許シン・樊振東)による中国男子チームの勢力図を打ち破るものだ。出場権を獲得しただけでなく、チームの絶対的な主力になるチャンスをつかんだ」(出典:『新浪体育』)と賞賛した林高遠の優勝。解説を担当した張怡寧も、「林高遠はまだ若いけれど、まるでベテランのように試合をうまくコントロールできる。技術的にも穴がなく、まだまだ伸びる余地がありますね」とコメントしている。また、中国男子チームが集合訓練を行う際、基本的に選手たちはふたりひと部屋で、チームの誰かと相部屋になるのだが、林高遠のルームメイトは馬龍。「馬龍はぼくに、もっとゆっくりとしたリズムで一本ずつプレーしていけばいい、あわててはいけないと言ってくれた。そのアドバイスがとても大きかった」(出典:ITTF)と語っている。

 シングルスの5枚の出場切符のうち2枚を、樊振東と林高遠が手にした中国男子。残る3枚、馬龍と許シンは確定と言ってよさそうだが、張継科の出場はあるのか。劉国梁総監督曰く、まだコーチ陣でも最終的な結論は出していないという。選手エントリーの最終期限は3月29日、エントリーの修正は4月15日まで認められる。
  • 15年超級リーグプレーオフでの林高遠のプレー

 世界選手権個人戦デュッセルドルフ大会の中国代表選考会、「地表最強12人(地上最強の12人」直通選抜。女子第1ステージは、国際大会への出場停止処分が解けた劉詩ウェンが、11戦全勝と文句なしの成績で代表第1号となった。これまで代表選考会などでも、大事なところで取りこぼすことが多かった劉詩ウェンだが、その成長を印象づける結果だ。総合成績は下記のとおり。

〈女子〉
1   劉詩ウェン   11勝0敗 ★世界選手権代表権を獲得

2   丁寧       9勝2敗
3   陳夢       6勝5敗
4   馮亜蘭      6勝5敗
5   木子       6勝5敗
6   朱雨玲      5勝6敗
7   陳可       4勝7敗
8   李佳イ      4勝7敗
9   王曼昱      4勝7敗
10  袁雪ジャオ    4勝7敗
11  武楊       4勝7敗
12  顧玉ティン    3勝8敗

★主な対戦成績
[○劉詩ウェン 8、ー7、3 馮亜蘭][○劉詩ウェン ー8、11、8 木子]
[○劉詩ウェン 13、ー3、5 朱雨玲][○劉詩ウェン 11、9 丁寧]
[○木子 ー11、6、3 丁寧][○木子 6、ー6、7 朱雨玲]
[○陳夢 4、ー9、5 木子][○武楊 ー5、11、8 陳夢]
[○陳夢 ー8、10、1 朱雨玲][○王曼昱 8、5 朱雨玲]

 3位の陳夢以下は12位の顧玉ティンまで勝ち星の差が3つしかない大混戦だが、やはり劉詩ウェンと丁寧の実力は頭ひとつ抜けている。このふたりが激突したのは最終の第11戦。丁寧が勝利して10勝1敗で並べば、直接対決の結果で丁寧が1位になるところだったが、劉詩ウェンは第1ゲーム8ー10から追いついて13ー11で奪取。第2ゲームは4ー0と劉詩ウェンがスタートダッシュをかけ、丁寧が追いすがるも、10ー9で2回目のマッチポイントを迎えた劉詩ウェンの回り込みドライブがエッジ。劉詩ウェンが鮮やかな11連勝で代表一番乗りとなった。

 女子ワールドカップを消極的な理由で欠場したとして、昨年11月から今年1月半ばまで国際試合への出場停止処分が下されていた劉詩ウェン。その時期には「もうプレーするのをやめようと思ったこともあった」という劉詩ウェンだが、代表権獲得について「この数日間の非情な戦いの中で、最初に代表権を獲得できてとてもうれしい。ここ最近の中でも、一番エキサイティングで興奮する試合だったし、全体の進行などはまるで世界大会のようでした」(出典:『新浪体育』)とコメントしている。

 ちなみにこの劉詩ウェンと丁寧の決戦で、軽妙な解説を披露したのが王楠と張怡寧の「女王様コンビ」。「ふたり(丁寧と劉詩ウェン)のプレーを見ていると、昔の私たちを思い出します」と王楠が言えば、張怡寧はふたりの「緊張のサイン」をこんなふうに解説した。「劉詩ウェンは緊張すればするほど小さくなってくるんですよ、ほら見てください、どんどん縮んできたでしょう。丁寧は口の中でブツブツつぶやき始めたら、緊張している証拠ですね」。ちなみに今回の3ゲームズマッチについて、王楠はズバリとこう言っている。「絶対、劉国梁総監督が考えついたんでしょ? だって昔から選手をいじめることばかり考えていたもの」。

 女性の第1ステージの成績を見ても、3位以下は「どんぐりの背比べ」とはいえ、馮亜蘭と木子という強打者が上位に来たのはやはり使用球(ニッタク『プラ3スタープレミアム』)の影響か。朱雨玲の5勝6敗は国家チームの首脳陣からすれば期待外れの成績だが、バックハンドの堅い守りを軸にプレーする彼女は「スロースターター」の傾向がある。その課題を浮き彫りにしたのが3ゲームズマッチだとしたら、考案者(劉国梁総監督?)の狙いどおり、というところだろう。今回の選考会では、男女とも昨日10日に第2ステージが終了し、2人目の代表も決定している。その模様も続けてお伝えします。
  • 15年女子ワールドカップで優勝した時の劉詩ウェンのプレー。この時も使用球はニッタク

 3月3日から10日まで、広東省深セン市で行われている世界選手権個人戦・デュッセルドルフ大会の中国代表選考会。今回は「地表最強12人(地上最強の12人)」と銘打ち、英語での大会名称は「the Marvelous 12」。すでにイメージ写真や大会ロゴを目にした方もいるだろうが、国内選考会のスタートから11年目を迎え、思い切って商業化への舵(かじ)を切ってきた。
 12名の選手が3ゲームズマッチで総当たりのリーグ戦を行い、総合1位の選手が代表第1号となる第1ステージは、3月7日に終了。男子は樊振東、女子は劉詩ウェンが代表権を獲得した。まず男子の総合成績からお伝えします。

〈男子〉
1   樊振東   9勝2敗 ★世界選手権代表権を獲得
2   馬龍    9勝2敗
3   林高遠   8勝3敗
4   許シン   8勝3敗
5   梁靖崑   6勝5敗
6   周啓豪   6勝5敗
7   周雨    5勝6敗
8   徐晨皓   4勝7敗
9   閻安    4勝7敗
10  劉丁碩   3勝8敗
11  方博    2勝9敗
12  張継科   2勝9敗

★主な対戦成績
[○林高遠 ー5、8、8 樊振東][○劉丁碩 5、4 樊振東]
[○樊振東 6、ー5、12 馬龍][○周啓豪 4、ー6、10 馬龍]
[○馬龍 6、ー7、5 許シン][○樊振東 4、5 許シン]
[○林高遠 ー4、6、11 許シン][○許シン ー8、10、4 張継科]

 すべて3ゲームズマッチで行われる今回の選考会で、代表第1号となったのは樊振東。馬龍と9勝2敗で並んだが、直接対決で勝利していたために総合1位となった。惜しくも2位となった馬龍、樊振東戦は第3ゲームに3回のマッチポイントを握りながら、あと1本が取れず。馬龍は試合後に「ぼくらはふたりともレベルの高いプレーをしたと思うし、素晴らしい試合だった。お互いにプレーがベストのものなら、どちらが勝ってもおかしくない。これが試合というものだよ」(出典:『新浪体育』)とコメントしている。

 そして、今大会の波乱の立役者となったのは、総合3位の林高遠と6位の周啓豪だ。林高遠は樊振東と許シンを破り、周啓豪は馬龍との打撃戦を制して金星を挙げた。林高遠は10・11・12年世界ジュニア2位、周啓豪は13年世界ジュニアベスト8。ジュニア時代は攻めが遅く、もうひとつ突き抜けた成績を残せなかった両選手だが、この選考会では5月の世界選手権個人戦と同様、ニッタクの『プラ3スタープレミアム』を使用。中国選手が普段の練習で使う紅双喜のボールに比べると硬質で、中陣から回転量の多いフォアドライブを放つ両選手のスタイルにフィットしたのではないか。

 そして総合12位の張継科は、2勝9敗という成績になっているが、第6戦を終えて2勝4敗となったところで棄権。周啓豪と方博に競り勝ったものの、初戦で劉丁碩に敗れ、第4戦から徐晨皓・許シン・周雨に3連敗を喫した。棄権の原因となったのは、昨年の10月に傷めた左足のくるぶしの部分の故障。今回も試合を消化するうちに腫れがひどくなり、国家チームのドクターからストップがかかった。劉国梁総監督は北京から専門のドクターを呼び寄せ、レーザー治療に当たらせたが、第2ステージ(8〜10日)も出場はかなわず。骨に異常はなく、靭帯(じんたい)を傷めているのだというが、あまりにも長引き過ぎている。

 しかし、劉国梁総監督の張継科に対する信頼感は揺らがないようだ。「張継科とは毎日連絡を取っているよ。東京五輪に向け、彼は本当に努力をしていると感じる。ゆっくりとではあるが、カムバックしようとしている。彼の潜在能力は大きい。一度こうやると決めたことについては、張継科はいつだって奇跡を起こすことができる」(出典:『信息時報』)。果たして、デュッセルドルフの舞台に張継科は立てるのか。
  • 男子で代表第1号の樊振東(写真は16年ジャパンオープン)

 2月17日、中国女子チームでは新たに隊長(キャプテン)1名・副隊長(副キャプテン)2名を選ぶ無記名投票を実施。前キャプテンだった李暁霞の引退にともなって行われたもので、女子1軍チームの24名の選手、そして6名のコーチによる投票の結果、丁寧がキャプテン、劉詩ウェンと武楊が副キャプテンに選出された。

 中国女子の孔令輝監督によれば、監督やコーチ陣と選手の間に入って、それぞれの意思や要望を伝えるのが国家チームのキャプテンや副キャプテンの仕事。その点では大学や高校の卓球部と大きな違いはない。ちなみに男子チームのキャプテンは2014年から馬龍が務めており、北京男女チームのエースが中国男女チームのキャプテンという重責を担っている。

 丁寧は2月23〜26日に行われるカタールオープンが新キャプテンとしての初戦だったが、この投票が行われた2月17日の練習中に捻挫(ねんざ)をしてしまい、残念ながら出場を回避。劉詩ウェンもエントリーしておらず、中国女子は朱雨玲・陳夢・武楊・王曼昱・顧玉ティンの5名が出場する。
  • 現五輪&世界女王の丁寧が新キャプテンに選出

 2月11日、国家女子チームは5人の選手による「女隊5選2」の総当たりリーグ戦を開催。馮亜蘭、盛丹丹、文佳、李暁丹、木子が出場し、3月に深センで開催される世界代表選考会「直通杜塞尓多夫(直通デュッセルドルフ)」の最終ステージに進む2名が決定した。その結果は下記のとおり。

☆☆☆ 世界選手権代表選考会「直通杜塞尓多夫」・女子第2ステージ 2.11 ☆☆☆
1   木子(人民解放軍/3勝1敗)
2   馮亜蘭(湖北省/3勝1敗)
3   李暁丹(山西省/3勝1敗)
4   盛丹丹(北京市/1勝3敗)
5   文佳(遼寧省/0勝4敗)
※上位3名の順位はゲーム率の計算による

☆上位3名の対戦結果
木子 5、3、5 李暁丹
馮亜蘭 7、8、−8、6 木子
李暁丹 −9、10、8、5 馮亜蘭

 ……出場者がベテランばかりだなと思ったら、1月10〜13日に行われた14名によるリーグ戦は「1993年以降に生まれた選手」、一方こちらの5名は「1993年以前に生まれた選手」という区分だった。文佳と木子が28歳、馮亜蘭が27歳、李暁丹が26歳、そして盛丹丹が25歳。ちなみに盛丹丹は昨年のクリスマスに、男子1軍チームのメンバーだったカットの劉イ(火×4)にプロポーズされて、めでたく結婚の運びとなったようです。おめでとうございます。

 男子と同じく、3月上旬に深セン市で行われる「直通杜塞尓多夫(直通デュッセルドルフ)」の女子最終ステージ。出場する12名のメンバーは、主力の4選手である丁寧・劉詩ウェン・朱雨玲・武楊、1月の部内リーグ戦で6位までに入った王曼昱・顧玉ティン・陳夢・李佳イ・陳可・袁雪ジャオ、そして今回の5人リーグ戦から木子と馮亜蘭だ。
 丁寧と劉詩ウェン、朱雨玲の3名はシングルス出場はほぼ確定。残る2名の人選は、2020年東京五輪を見据えたものになることは間違いない。前回3位の木子、世界選手権3大会連続ベスト8の武楊の代表入りは難しい。選考会での波乱がないかぎり、陳夢と王曼昱あたりに落ち着く……でしょうか。
  • まだまだ強い木子(ムゥ・ズ/写真は15年世界選手権)

 2月8〜11日、中国男子チームは世界選手権個人戦デュッセルドルフ大会の代表選考会「直通杜塞尓多夫(直通デュッセルドルフ)」の第2ステージを開催した。
 全日本選手権の期間中でお伝えする機会を逃してしまいましたが、第1ステージは1月17〜21日に北京で開催され、主力となる4選手(馬龍・張継科・許シン・樊振東)、そしてハンガリーオープンに出場していた6選手(方博・梁靖崑・林高遠・閻安・周雨・尚坤)を除く16名が出場。試合形式は5ゲームズマッチで、于子洋、周啓豪、徐晨皓、劉丁碩、周愷、王楚欽という、近年の世界ジュニア代表組が第2ステージに勝ち上がった。

 今回の第2ステージに出場したのは、第1ステージを勝ち抜いた6名とハンガリーオープン出場の6名に、許シン&樊振東を加えた14名。4日間の日程で13試合を戦うタイムテーブルだが、試合はすべて2ゲーム先取の3ゲームズマッチ。ビッグゲームでの取りこぼしが指摘されていた許シンと樊振東、そして代表入りの当落線上にある選手たちを鍛える、波乱の多い試合形式だ。その結果は下記のとおり。

★★★ 世界選手権代表選考会「直通杜塞尓多夫(直通デュッセルドルフ)」・男子第2ステージ 2.8〜11 ★★★

1    樊振東(人民解放軍/10勝3敗)
2    許シン(上海市/10勝3敗)
3    徐晨皓(人民解放軍/8勝5敗)
4    方博(山東魯能/8勝5敗)
5    梁靖崑(河北省/8勝5敗)
6    周雨(人民解放軍/8勝5敗)
7    閻安(北京市/7勝6敗)
8    劉丁碩(山東魯能/7勝6敗)
9    林高遠(広東省/6勝7敗)
10   周啓豪(広東省/6勝7敗)
11   尚坤(上海市/4勝9敗)
12   周愷(人民解放軍/4勝9敗)
13   于子洋(黒龍江省/3勝10敗)
14   王楚欽(北京市/2勝11敗)

★許シンが敗れた試合
[第2戦]  樊振東 5、−12、8 許シン
[第5戦]  方博 9、−5、6 許シン
[第6戦]  梁靖崑 6、8 許シン
★樊振東が敗れた試合
[第1戦]  周雨 6、−8、12 樊振東 
[第7戦]  梁靖崑 −8、8、10 樊振東
[第10戦] 林高遠 8、9 樊振東

 ワンツーフィニッシュを果たした樊振東・許シンの実力はさすが、と言いたくなるが、樊振東に対して劉国梁総監督は「13試合で3敗というのは多すぎる。コーチ陣の選考会前の予想では12勝1敗というところだった。1位になったとはいえ満足できる成績ではない」と語っている。ちなみに今回のリーグ戦での樊振東の対戦順は、初戦が周雨、第2戦が許シン、第3戦が徐晨皓、第4戦が方博……と続いた。格下の選手から先に当たっていくのではなく、出足から手の内を知り尽くしたチームメイトと世界代表クラスのツワモノの波状攻撃。この連戦を3ゲームズマッチで乗り切っていくのは、相当神経をすり減らすだろう。

 梁靖崑は樊振東と許シンのふたりを破ったのはさすがだが、最下位の王楚欽には敗れるなど、国家1軍チームの実力差はやはり紙一重なのだ。王楚欽、2014年の世界ジュニア上海大会で見た時には、「この子は必ず中国の団体メンバーに入ってくる」と感じたのだが、ここ2年くらいは足踏み状態。その上海大会で優勝した于子洋も13位に沈んでいる。

 この第2ステージで8位の劉丁碩までの8名、さらにコーチ陣による協議の上で9位の林高遠と10位の周啓豪、そして補充要員として11位の尚坤が、3月3〜10日に深セン市で行われる「直通杜塞尓多夫」の第3ステージに進出。馬龍&張継科をプラスした12名を、劉国梁総監督は「地上最強の12人」と表現する。昨年9月の中国オープン以降、大会への出場がない張継科はどのようなプレーを見せるか。
 第3ステージは2回のラウンドに別れ、まず第1ラウンドは12名による総当たりのリーグ戦。第2ラウンドは代表に決まった1名の代わりに尚坤が入り、3つのグループに分かれて予選リーグを戦った後、各グループの1位となった3選手が総当たりで優勝を争う。ここで2名の中国男子代表が決まる予定だ。
  • 第3ステージでトップ通過を決めたい樊振東(写真は16年ジャパンオープン)

 昨年11月、「女子ワールドカップの際に消極的な理由から大会を欠場した」という理由で、国際大会への出場停止処分を受けていた劉詩ウェン。1月3日からスタートした国家女子チームの冬季訓練にも、当初は姿を見せていなかったようだが、1月16日からチームに合流。孔令輝監督も出場停止処分の解除を明言した。

 劉詩ウェンは中国のスポーツ雑誌『体壇』の取材に対し、「(復帰が決まるまでは)すごく焦りがあって、引退することさえ考えたけど、再び国際舞台に戻ることができてとてもうれしい。時間を大切にしてしっかり練習していきたい」とコメントしている。ただし、劉詩ウェンは2月21~26日に行われるカタールオープンにはエントリーされておらず、丁寧・朱雨玲・陳夢・武楊という主力クラスの他は、部内リーグ戦の上位2名である王曼昱と顧玉ティンが出場。劉詩ウェンの国際大会への復帰は4月9~16日に中国・無錫で行われるアジア選手権となりそうだ。
  • 2020東京五輪で悲願の五輪単女王へ。劉詩ウェンの挑戦が始まる

 少し前のニュースで恐縮ですが、1月10〜13日、中国女子チームは国家1軍チームの若手選手14名によるリーグ戦を開催。丁寧、朱雨玲らトップ選手は出場しなかったが、3月から本格的にスタート予定の『直通杜塞尓多夫(直通デュッセルドルフ)』の模擬試験とも言えるものだ。

★中国女子1軍チーム・部内リーグ戦の結果
1   王曼昱    12勝1敗
2   顧玉ティン  11勝2敗
3   陳夢     10勝3敗
4   李佳イ    8勝5敗
5   陳可     8勝5敗
6   袁雪ジャオ  7勝6敗
7   車暁㬢    6勝7敗
8   陳幸同    6勝7敗
9   張薔     6勝7敗
10  劉高陽    5勝8敗
11  劉斐     4勝9敗
12  顧若辰    3勝10敗
13  王芸迪    2勝11敗
14  胡麗梅    2勝11敗

 総合1位となったのは、部内リーグ開始直前の1月9日に18歳になったばかりの王曼昱。昨年12月に閉幕した中国スーパーリーグでも、まだ取りこぼしはあるものの、丁寧や劉詩ウェンを破って22勝10敗という好成績を残し、今回の部内リーグで改めて実力を証明した。ちなみに唯一喫した黒星はカットの劉斐に対してのものだが、決してカット打ちが苦手というわけではない。
 2位の顧玉ティンは大健闘と言える成績だが、陳夢の3位は実力を考えると物足りない成績。敗れた相手は劉斐、王曼昱、顧玉ティンだった。2020年東京五輪を迎える時、現在の主力である丁寧は30歳、劉詩ウェンは29歳という年齢になっており、主力として期待されるのは大会時25歳の朱雨玲と26歳の陳夢。しかし、陳夢はもうひとつチームの首脳陣の期待に応えられていない。ポテンシャルでは国家女子チームでも随一だと思うのだが……。

 なお、この部内リーグの下位4名(胡麗梅・王芸迪・顧若辰・劉斐)に、国家2軍チームの総合成績・上位4名(孫穎莎・何卓佳・劉銘・劉㬢)を加えた8名で入れ替えのリーグ戦も開催。本来はこの8名のうち4名が国家1軍チームに昇格/残留となるところだが、昨年の全中国選手権で2軍チームの張瑞と孫銘陽がベスト8に入って1軍チームに昇格し、1軍チームからは李暁霞が引退したため、1軍チームへの昇格/残留の枠は「3」だった。大混戦となったリーグ戦の結果は下記のとおり。

★中国女子1軍・2軍チーム交流リーグ戦の結果
1    劉㬢    5勝2敗
2    顧若辰   5勝2敗
3    孫穎莎   5勝2敗
↑↑↑ 上位3名は1軍チームに昇格/残留

4    何卓佳   4勝3敗
5    王芸迪   3勝4敗
6    胡麗梅   3勝4敗
7    劉銘    2勝5敗
8    劉斐    1勝6敗

 劉㬢、顧若辰、孫穎莎の3名が国家1軍チームのメンバーとなった。3位の孫穎莎は16歳になったばかりだ。
  • 長身の王曼昱、いよいよ頭角を表してきたか

★★★ 2016中国卓球クラブスーパーリーグ 男子プレーオフ 12.30〜31 ★★★

●男子準決勝
〈覇州海潤 3ー1 山東魏橋・向尚運動〉

 王楚欽 7、ー9、ー4、ー10 馬龍○
○梁靖崑 14、8、ー7、ー8、7ー2 閻安
○程靖チィ/范勝鵬 7、9 林高遠/閻安
○梁靖崑 10、ー3、4、5 馬龍

〈八一大商 3ー0 上海中星〉
○周愷 9、7、ー7、ー4、8ー6 許シン
○樊振東 8、8、4 鄭栄植
○周雨/徐晨皓 7、8 趙子豪/尚坤

●男子決勝
〈八一大商 3ー1 覇州海潤〉

 徐晨皓 ー10、ー5、ー9 梁靖崑○
○樊振東 ー9、ー10、7、10、7ー5 王楚欽
○周雨/徐晨皓 9、ー8、7ー3 范勝鵬/程靖チィ
○樊振東 4、9、9 梁靖崑

 スーパーリーグの男子プレーオフは、断トツで優勝候補筆頭だった山東魏橋が準決勝で敗れる波乱があり、八一が歓喜の優勝となった。

 まず準決勝。覇州と山東魏橋の一戦は、前半は馬龍と梁靖崑、両チームのエースが1点ずつ奪って1ー1。山東にとって誤算はダブルスだった。第1ステージの中盤からダブルスに固定していた林高遠/薛飛ペアを組み替え、第6節以来となる林高遠/閻安ペアを起用して勝負に出たが、左腕の強打者・程靖チィと右ペンドラ・范勝鵬のペアにストレート負け。4番では頼みの綱の馬龍が梁靖崑の猛攻に敗れ、優勝の夢を絶たれた。
 「もう明日の帰りの電車の切符を手配してあったんだよ」と試合後の李振山監督(覇州)。敗れた馬龍は「この1年は試合が多く、すべての試合にベストの状態で臨むことが出来なかったのは事実だし、今日のプレーも理想とするものではなかった。台の弾みがこれまでとは違って、うまくリズムがつかめなかったけど、相手も状況は同じ。梁靖昆のほうがしっかり対応できていた」と語った。

 準決勝のもうひと試合は、八一の周愷がトップで許シンにゲームオールジュースで勝利。第17節でプレー中に転倒して試合を途中棄権し、第18節を欠場した許シン。サービス・レシーブで先手が取れず、前回の対戦では3ー1で勝利している周愷に2ゲームを連取されたが、ゲームオールに持ち込んで最終ゲームは6ー4でマッチポイントを取っていた。そこからフォアドライブのミスが連続しての逆転負けに、「リオ五輪の男子団体決勝(※水谷戦のこと)を思い起こさせた」(新浪体育)と批判的な論調も。トップでエースが敗れた上海、追い上げる力は残っていなかった。

 プレーオフ決勝は3ー1で八一が勝利したが、覇州も2番王楚欽が樊振東からゲームカウント2ー0とリードを奪い、ここで勝てば一気に押し切る可能性もあった。4番の樊振東と梁靖崑のエース対決は、第1ステージ・第11節での対戦では梁靖崑が3ー1で勝利していたが、樊振東がストレートで勝ち切った。
 「樊振東との試合では、まだ彼とは距離があることを感じた。これからもっと練習して、努力を重ねていきたい」(梁靖崑)。一方の樊振東は「優勝できて本当にうれしい。苦しい試合でも、チームを率いて逆転勝利できたことはすごく自信になった。昨日の山東魏橋と覇州の試合はテレビで見ていて、覇州の勢いと気迫を感じた。有利だとは思ったけど、『(覇州は)相当調子が良いな』と感じていたし、今日は本当に苦しかった」と語っている。樊振東は今シーズンの男子MVPにも選ばれ、充実したシーズンを終えた。

 男子スーパーリーグでは屈指の名門である八一だが、優勝となると2000−2001年シーズン以来、実に15年ぶり。その当時、現在の監督である王皓はチームの若手で、エースは劉国梁、2番手に馬琳、そしてベテラン王涛という、今考えてみればすごい豪華メンバーだった。しかし、翌シーズン(2002年)は劉国梁と馬琳が移籍して5位に沈み、王皓のワンマンチームという時代が長く続いた。王皓監督は「このタイトルはぼくの人生で最も重要なものではないかもしれない。しかし、ぼくが優れた指導者になるためには、必ず通らなければならない道なのだと信じているよ」とコメントしている。
☆☆☆ 2016中国卓球クラブスーパーリーグ 女子プレーオフ 12.29・31 ☆☆☆

●女子準決勝
〈山東魯能 3ー1 八一京博控股〉

○朱雨玲 10、12、ー8、8 孫銘陽
 顧玉ティン ー7、ー6、ー6 木子○
○顧玉ティン/李暁丹 5、14 劉ジン/孫銘陽
○朱雨玲 5、2、ー6、8 木子

〈武漢安心百分百 3ー1 山東斉魯交通〉
○馮亜蘭 11、7、5 文佳
 劉詩ウェン ー9、4、6、ー6、3ー7 陳幸同○
○劉高陽/馮亜蘭 12、10 蘭㬢/陳幸同
○劉詩ウェン 11、ー7、ー9、10、12 文佳

●女子決勝
〈武漢安心百分百 3ー1 山東魯能〉

○劉詩ウェン 8、ー8、3、8 顧若辰
 馮亜蘭 9、8、ー2、ー9、5ー7 朱雨玲○
○劉高陽/馮亜蘭 6、7 李暁丹/顧玉ティン
○劉詩ウェン 11、4、4 朱雨玲

 皆様、明けましておめでとうございます!
 2017年の中国リポート、第1弾は12月29〜31日に行われたスーパーリーグ・プレーオフの結果から。まず女子プレーオフ決勝は、劉詩ウェン率いる武漢が決勝で山東魯能を下し、初優勝を飾った。

 武漢にとって苦しい一戦となったのは、準決勝の山東斉魯戦。山東斉魯の監督は今年で御年75歳の周樹森監督。2010年世界選手権団体戦ではシンガポールを率いて劉詩ウェンから2勝を挙げ、中国女子を破った名伯楽。この試合でも2番陳幸同が劉詩ウェンに競り勝ち、4番文佳もゲームオールジュースまで劉詩ウェンを追い詰めた。 山東斉魯はラストにエースの武楊を配しており、ラストまで回っていれば武漢の劉高陽には確実に勝利していただろう。カットの武楊は劉詩ウェンと馮亜蘭には勝機が薄いが、プレーオフでエースをラストに置くオーダーはなかなか組めない。劉国梁総監督は微博(マイクロブログ)で、「遠謀深慮の周樹森監督は、勝利への希望がある唯一のオーダーを組んできた」と称賛している。

 この苦戦を乗り越えた武漢は、エース朱雨玲の2得点で八一を下して勝ち上がった山東魯能と決勝で対戦。この試合、山東魯能のエース朱雨玲が、2番馮亜蘭戦の第3ゲーム4ー0の場面で、ネットインのボールを拾おうとして足を捻挫するアクシデント。治療後にコートに戻り、この試合はゲームオールで乗り切った朱雨玲だが、4番の劉詩ウェンとのエース対決では守勢に回り、0ー3で敗れた。
 武漢としては、劉高陽/馮亜蘭のダブルスが今季2戦2敗だった李暁丹/顧玉ティンに快勝した1勝が大きくものを言った。昨年のプレーオフ決勝4番で丁寧に競り合いながらも敗れ、試合後に涙を流した劉高陽にとってはうれしい優勝。今シーズンから武漢に移籍した劉詩ウェンは、国際大会への出場停止処分が伝えられているが、今回の優勝で少しでも国家チームの首脳陣にアピールできるだろうか。

 それにしても、今シーズンの女子スーパーリーグは選手の移動が多かった。参考までに、下記は昨シーズンのプレーオフ決勝のスコアだ。

●2015年シーズン・女子プレーオフ決勝
〈北京首鋼 3ー1 武漢安心百分百〉

○馮亜蘭 5、ー9、6、8 武楊
○丁寧 9、ー9、11、15 劉高陽
 馮亜蘭/文佳 ー9、7、3ー7 劉高陽/李暁丹○
○丁寧 10、4、6 武楊

 2年連続でプレーオフ決勝に進出した武漢だが、チームに残って勝利の美酒を味わったのは劉高陽だけ。その劉高陽は今回、準決勝で武楊(山東斉魯)、決勝で李暁丹(山東魯能)という昨シーズンのチームメイトとの対戦を経験している。そして、昨シーズンは北京、今シーズンは武漢でチームの優勝に貢献した馮亜蘭の存在感は大したもの。彼女の場合はもともと武漢市の出身なので、武漢への移籍は里帰りと言えなくもないのだが……。